猿田彦珈琲が下北沢に! 街で愛されるお店作りのヒントとは

猿田彦珈琲が下北沢に! 街で愛されるお店作りのヒントとは

2020/01/15

スペシャルティコーヒー専門店「猿田彦珈琲」が、11月16日に下北沢駅前に開業した施設「シモキタフロント」にオープン。オーナーの大塚朝之(ともゆき)さんにお店のこだわりを聞くにつれ、街で愛されるお店作りのヒントが見えてきました。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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「猿田彦珈琲」が下北沢に誕生!

新施設「シモキタフロント」にオープン

場所は11月16日に下北沢駅前に開業した施設「シモキタフロント」の1階。レンガ造りの建物がレトロかわいいです。看板には珍しく漢字で描かれたロゴがあしらわれています

このたび14店鋪目として下北沢に登場した、スペシャルティコーヒー専門店「猿田彦珈琲」。同店は「たった一杯で、幸せになるコーヒー屋」というスローガンを掲げ、2011年に恵比寿で生まれました。以来、厳選されたシングルオリジンのスペシャルティコーヒーをはじめ、人々とコーヒーをつなぐ接客や街にあった店鋪作りにこだわり、その名が知られていきます。

豆を選べるハンドドリップコーヒーはもちろん、さっとテイクアウトできる写真の「すぐ出るドリップコーヒー」(Sサイズ税込340円)など、シーンにあったおいしいコーヒーが飲めるもの魅力です
「若いころは下北沢でよく遊んでいた」と話すオーナーの大塚朝之(ともゆき)さん。ここシモキタフロント店の話と共に、お店作りやコーヒーにかける思いを伺いました

スペシャルティコーヒーとは……栽培や品質管理が適正になされ、官能検査で80点以上の評価を受けるなど、厳しい基準のもと認定される。一言で言えば、さまざまな審査を経て素晴らしいおいしさ、と評価されたコーヒー

シングルオリジンとは……国単位ではなく、細分化されたエリアや単一農園によるコーヒー。どこの誰がどうやって作ったかが明確な、いわゆる“生産者の顔が見えるコーヒー”です。

「猿田彦珈琲下北沢店」へ

大塚さんが考える下北沢の街とは

それぞれ個性あるお店の雰囲気も猿田彦珈琲の魅力。ほっと落ち着く赤茶色やグリーンを配した内装は、コーヒーチェリーやコーヒー農園にある精製場からインスピレーションを得たそう

現在は都内を中心に全14店鋪を展開していますが、こちらのデザインは「猿田彦珈琲 調布焙煎ホール」、「池袋店」などに続き、建築設計事務所「SUPPOSE DESIGN OFFICE」が手がけました。出入り口を2カ所設け、ふらっと入りやすい造りも親しみを感じます。

中2階にはベンチとスタンドカウンターが。「内装はSUPPOSE DESIGN OFFICEさんにおまかせ」と大塚さん
大塚さん
大塚さん
「生産地にはドライミルというコーヒーを精製する場所があるんですが、レンガ造りなところもたくさんあり、まさにこんな感じ。産地に行った雰囲気を感じますね
ではではハンドドリップコーヒーをお供に、大塚さんに話を伺いましょう。今日選んだ豆は独特なフレーバーが印象的なインドネシアのシングルオリジンコーヒーです(トール税込530円、価格は豆によって異なります)
大塚さん
大塚さん
「シモキタフロントの大屋さんが、とっても熱い方で。『ここで下北というものを表現しきりたいんだ!』という思いのなかで呼んでいただいたので、僕たちもここで僕たちらしく愚直にやっていこうと。世の中にちょっとでも、僕らなりに頑張っていることをここで表現できたらいいなと思っています」

「昔から下北沢はカルチャー発信の拠点」

こちらの店鋪は今年5軒目のオープン。ラッシュですね!「地元は調布なんですが、下北沢は中学校1年生くらいのころ、マセたときにはじめて服を買いに来た場所(笑)。以来よくここで遊んでいましたね」と大塚さん

「昔ながらの下北沢らしさは残っているけれど、開発が進み駅も町も綺麗になった。悪い言い方をすると、いまは何でもありな時代になってきていますよね。僕らもそう見られがちなんですが」(大塚さん)。

大塚さん
大塚さん
「なので改めて、『下北沢のいいところって何?』と考えたら、やっぱりいろんなものを教えてくれる場所だったと思う。服屋で例えると、古着って何なのか、それはどうやって日本に流れるのか、とか。そういうものを学んだ場所で、下北沢にはそういう面白いことを教えてくれるおじさんやお兄さんがいたりした。本当の意味での文化発信をしていた街なんじゃないかな」
「難しい時代になってきているからこそ、愚直にやっていきたいんですよね」と大塚さんは続けます
「お店は熱い思いを持ったいろんな先輩や友人に助けてもらいながらできあがっていると思う」と大塚さんが話すように、カップもその一つ。内田鋼一(こういち)さん監修のマグカップ(2500円〜)です
大塚さん
大塚さん
「このカップ、持ち手が広くて印象的ですよね。 僕が勝手に“陶芸界のビートルズ“と呼んでいる内田さんに何てお願いしてよいか分からず……! 容量しか希望はしていません」

こだわりコーヒーと下北沢の名店によるお茶も

初のクラフトビールも販売予定!

コーヒーのいい香りに包まれながら、スタッフさんと気楽におしゃべりする時間も楽しい

豆のラインナップはオリジナルブレンドの「猿田彦フレンチ」やディカフェ(カフェインレスのコーヒー)、約5種のシングルオリジン、季節限定のブレンドと、本当に多彩! さらにはエスプレッソメニューまで豆が選べるのも、猿田彦珈琲の特徴です。

またその店鋪ならではのドリンクがそろうのも、猿田彦珈琲ならでは。そして下北沢店では、2カ月限定でクラフトビールの販売も開始する予定です。こちらは猿田彦珈琲初の取り組みだとか。

こちらならではのメニューには「下北茶苑大山」のお茶が
大塚さん
大塚さん
「2人でお店に来たとき、ある人はコーヒーが飲みたい、ある人はコーヒー以外が飲みたいってときに訪れてもらえないのはなんか寂しいなと。僕ら自身もコーヒー以外のドリンクを飲みたいときだってありますし」
煎茶「沢の春」(税込500円)。広がるまろみの後に、あとを引く甘みが印象的です。ほか、3種の茶葉を味わえます
大塚さん
大塚さん
「実はこれからクラフトビールも一部の店舗で置くんですよ。社内からも『やりたい!』という声が多くて。お酒を出すのは初めてで、今年から始まります。僕がもともと好きだった伊勢志摩限定の『神都麥酒(しんとびーる)』を、まずは2カ月限定で!」

もちろん限定メニューもあります

ここ限定の「あんラムバタートースト」(380円)は、店長さんの強い希望で実現したメニュー。ふかっとした国産小麦の食パンに、和菓子の名店「廚 菓子 くろぎ」によるぜんざい、ラム入り自家製バターが香ります

ドリンクだけでなく、フードも充実。「猿田彦珈琲では自社でベーカリーブランドも手がけているんです」(大塚さん)。国産小麦の食パンを使った2つの限定メニューにも、いろんなこだわりが。ぜひ一緒に、楽しんでくださいね。

同じくここだけの「蓮根とチキンのキーマサンド」(500円)。自家製のピリリとスパイスが効いたキーマカレーに、蓮根の食感が楽しい、具沢山な一品です
カウンターには「マカロン」(220円)など、芦花(ろか)公園のスイーツ店「ルラシオン」のお菓子が並びます

多彩なコーヒーだけでなく、メニューやドリンクもいろいろ。多くのお店とタッグを組み、さまざまに心地いい過ごし方を提案する猿田彦珈琲ですが「まだまだ実験中」と大塚さんは話します。

街に馴染むコーヒー店「猿田彦珈琲」の店作りとは?

−−−「猿田彦珈琲」と言えば、店鋪によって雰囲気が違いますよね。それぞれの街に馴染んでいるというか

大塚さん
大塚さん
「軸は一緒だけれど、お店によって顔が違う、その部分をこれからどうするか、僕らも模索中です。『すべて同じで分かりやすいお店じゃなくて、どこも個性的に』とやってきましたが、それはそれで楽しいものの、社内の人間にイメージを共有していくことが難しくなってきたのは実際ありますね。こっちはできがいい、こっちはまぁまぁってどこにでも起こりえるんだけれど」

−−−なるほど

大塚さん
大塚さん
「平均化することにも抵抗があったんですけど、その抵抗も最近はなくなってきていて。僕ららしいスタイルはいまお話した抽象的なことだったから、もう少し記号的になることも必要なのかな、と」

−−−どのお店にも共通するのが、やはり飲みにくると、いつも楽しいなと

大塚さん
大塚さん
猿田彦珈琲の人たちと接すると、楽しい! というのが一番大事なので。いいコーヒー豆を使って自分たちが『おいしい』と思うものを出しているから、自分たちも楽しめてるんだと思う」
「何よりも常連さんあってのお店作りですから」と大塚さんは続けます。「猿田彦珈琲が目指すのは非日常ではなく、日常のなかで、ここでの時間が幸せなひとときになること」と大塚さん

<より多くの人に来てもらうには?>

「1日10人来ればいい、ではなくて、300人〜500人来てくれないとやっていけないビジネスだから、よりたくさんの人にお店が愛されるよう、何をしなければいけないのか? と考えたら『自分たちが好きだと思えるコーヒーを誇りを持って、楽しく接客する』、そこが第一だと思いましたね」と大塚さんは話します。

大塚さん
大塚さん
「おいしいコーヒーを前に一番テンションがあがるのって、実はスタッフなんですよ」

猿田彦珈琲に学ぶ、街に愛されるお店の作り方

−−−「地元にある、ちょっと人に教えたいお店」、というような位置付けなのかなと感じます

大塚さん
大塚さん
「あぁ、それはそうかも。僕的にもそういう風にしたいというのがありますね。一方でお店がチェーン化しているところもあるので、マーケティング的な数字合わせや理論なども必要を迫られています。例えば、『どこに物販を置くと効果的なのか』とか」
「僕はいままでそれらをさんざん無視してやってきちゃったので、ようやく意識しなきゃ、と考えているところ。統計学的なことをするお店ではないので、確率論としてやるべきことはやる、と考えています」(大塚さん)

<『自分たちは何がやりたいか?』から逆算する理論>

「サッカーで例えれば、『勝ちやすいからこの戦術をしよう』もいいけど、『自分たちはこういうサッカーをやりたいから、そのためには確率的にこうしないと勝てないからこの戦術でやる』というような、順番が大事だと思います。勝つためだけの戦術を選ぶんじゃなくて」(大塚さん)。

大塚さん
大塚さん
「僕らは『たった一杯で、幸せになるコーヒー屋』をやりたい、というのが明確にあるから、そこを元に考えてお店作りをしていくとこうなっていくんだ、というのを体現できたらいいな。そのなかで確率論や一部の統計学も重要になってくるんじゃないかなとは思う。そういう循環したことをやりたいなと思うし、やっぱり反骨心からかちょっととがったフックをかけたいなってのもあって」
「内装とかコンセプトを含めて、基本的にはその街に馴染むというのは当たり前、と考えているというのはありますね」(大塚さん)

−−−「この街の人たちを幸せにする一杯」から逆算していく、という?

大塚さん
大塚さん
「例えば、ここのオープン時に一週間だけ、グァテマラのゲイシャ豆のシングルオリジンを出していたんですよ。6月に品評会に行ったとき11位の豆だったんですけど、僕にとっては1番好きだった。いつもは先輩たちと一緒に買っているんですが、今回は筋を通してこの豆を単独で買わせてもらったんです。単独ですべて、というのは初めてでした
「下手なプライドや虚栄心はいらないと思うんですけど、最後に自分たちが大事にしたいプライドはあると思うんですよ。それがこの4、5年は弱くなってきていたので、取り戻そうとやっている最中です」(大塚さん)
大塚さん
大塚さん
「そのコーヒーを1週間だけ初めて世の中に出せて、反応も良かった。ここはそんな実験をやれる場所としてもいいと思うし、そのコーヒーがあることで、なによりもスタッフのテンションが一番あがるから、そういう仕組みを作れるのが本来のコーヒー屋さんなんじゃないかな

<大塚さんが考える、ブレンドコーヒーの役割>

「ずっとマイナーチェンジし続けている」と大塚さんが話す、ハウスブレンド「猿田彦フレンチ」(右、100g670円&左、250g1410円)

もとはそのスタイルをリスペクトしていた「ジョージ・ハウエル」のクラシックフレンチをイメージして作ったそう。「それが深煎りの世界一だと思ってしまったので、リスペクトしたものが作れればいい、と思っていたんですけど」(大塚さん)。

「日々レベルアップしてきているなかで(追いついているかは別として)、もっと楽しい表現ができる深煎りがあるんじゃないかと模索中です。ハウスブレンドを入口として、シングルオリジンのコーヒーに触れてもらえたら」と大塚さんは続けます。

「やはり初めて来る方は分かりやすくハウスブレンド、深煎り、を選ぶ方が多いと思うので、それを入口として浅煎りのコーヒーやシングルオリジンコーヒーに興味を持っていただけたら嬉しい」(大塚さん)

−−−はじめてのお店はブレンドを頼まれる方も多いですよね

大塚さん
大塚さん
「やってきたからこそ気がついたんですが、ブレンドじゃないと出せないものって意外とあったりする。シングルオリジンだと、強烈に複雑な味わいがするものってすごく高いんですよ。でもブレンドなら、ある程度の金額でその感覚を出せるという、ブレンドの妙のような考えを持っています」
「ブレンドなんかなくていいんだ! って気持ちも僕らが過ごしてきたサードウエーブのコーヒー屋はあったりしたけれど、毎日楽しんでもらえ、リーズナブルに提供できる仕組みを作るためにも大事な存在」(大塚さん)

最後に「自分の青春も下北沢で始まったから、街の人たちや来てくださる方にとって、下北沢の一部のそんな場所になったらいいな」と大塚さん。街に愛される猿田彦珈琲。これからまた、どんな出会い届けてくれるのでしょうか。

※店鋪への問い合せは03-6407-0085

取材・文=金城和子、撮影=三佐和隆士

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