三重県・玉城町 水辺に育つイネ科の農作物・マコモ

三重県・玉城町 水辺に育つイネ科の農作物・マコモ

2020/09/17

のどかな農村景色の中に、一際目を惹く畑がある。真っ直ぐに高く伸びるイネ科のマコモだ。茎や葉は2メートル前後に成長し、根元の茎の膨らんだ部分が「マコモダケ」と呼ばれ、古くから日本人の生活に深い関わりを持つ。農畜産物直売所のふるさと味工房アグリでは2005年から栽培に取り組んでいる。

中広

中広

水の張った畑は生い茂る草との闘い

アスピア玉城の駐車場横に、背丈ほどに青々と葉を伸ばすマコモの畑がある。圃場(ほじょう)には収穫期まで水が張られている。「草に気を付けるのが一番の仕事。雑草は速い、あっと思っとる間に覆い尽くされてしまいます」と、ふるさと味工房アグリで農業部門を担当する佐久間淳さん。除草のための登録農薬はない。水稲と同じように米糠で雑草の抑制もできるが、店舗隣の畑のためにおいを考慮し、現在はコツコツと手作業の草取りに励む。

「盆の台風では葉の部分が少しやられましたけど、マコモダケの食べられる部分は根元。2019年の7月は例年より晴れが少なかったものの、梅雨明けに晴天が続いたからよかったです。陽に当たらんといけませんのでね。マコモは手を入れた分だけ、ものがよくなる、わかりやすい農作物です」。栽培方法は複雑ではないが、とにかく手間のかかる農作物だという。

佐久間淳さん

佐久間淳さん

ふるさと味工房アグリ 農業部門担当

収穫は例年9月下旬から10月下旬まで。茎の株元が太り、適期になったものから順次収穫する。作業は畑の水をある程度抜いて行うが、ぬかるみを歩くだけでも体力がいる。根元の成長を目視して畑をまわり、最盛期には朝夕2回、収穫。タイミングを逃すと乳白色の部分が緑色になってしまう。それほど旬が限られ、佐久間さんは毎日畑に入る苦労を語る。

収穫時期には葉も大きく成長し、圃場を歩きまわるだけでも体力が要る。毎日の作業に頭が下がる思い

収穫を終え、春前になると、親株をのこして、水稲と同様に耕起、施肥、代掻きを行う。前年の株元から伸びたわき芽を抜き、仮植して育苗。5月に圃場に植え付けて定植させる。

アグリで取り組んでいる農業体験教室には、マコモの企画もあり、これらの植え付け、除草、収穫の作業に参加できる。毎年申し込む、根強いマコモファンもいるようだ。

生活の中にあったマコモ 食用として必要な黒穂菌(くろぼきん)

食用としてまだ歴史の浅いマコモは、日本や中国東部から東南アジアに広く分布しているイネ科の多年草で、沼や川に群生するヨシやガマと同じ植物。『万葉集』にもその名が見られ、茎葉は乾燥し、祭事や蓑やむしろなど生活道具としても用いられた。近年は河川改修や生活環境の変化で、身近にあったその姿を見る機会も減ってしまった。

湿地帯で育つマコモは、イネ科の植物。アスピア玉城の駐車場横の畑で、マコモを間近に見ることができる

古くから自生しているものは茎が肥大せず、中国などから導入し、改良された系統が食用として栽培されている。この系統は根元の茎の中の花芽に「黒穂菌」が寄生し、その影響で根元部分が肥大してマコモダケになる。マコモダケから採取した黒穂菌の胞子は、成熟すると墨のように真っ黒で「マコモズミ」と呼ばれ、かつてはお歯黒や眉墨、漆器の顔料などに用いられてきたという。

マコモダケはマコモの根元にできる肥大した茎の部分を指す。黒穂菌が入ることで、白く膨らみ食べられるようになる

現在、マコモダケは水田転作物として見直され、休耕田などを利用して、全国各地で栽培されている。三重県内では玉城町のほか、菰野町や津市美杉町でも積極的に栽培している。アグリでの生産量は年間約2トン。盛んだった頃は倍ほどの収量があったが、町内でつくる農家が減った。作業の機械化が難しく、労力がかかるため、アグリで預かって作業する農地は増えているという。

マコモの栽培普及、また加工や料理などについての技術や情報交換を目的に、「全国まこもサミット」が行われている。2008年には玉城町で開催。事業者や消費者に広く情報発信し、マコモを通じた地域の活性化も話し合われた。まこもサミットに参加する佐久間さんは、「3年前の越前で開催されたときは農家さん主体で進められましたが、去年の愛知県飛島ではマコモを使った工芸品が多くありました。そんな活用も増えていますが、そうなると育て方も違ってくるんです」と、各地での栽培目的の変化を感じている。

タケノコのような歯ざわり 中国料理に使われる食材

マコモダケはシャキシャキとしたタケノコに似た食感で、乳白色で柔らかく、ほのかな甘みが特徴。クセのない淡白な味は、どんな料理にも合い、料亭や中華料理店で高級食材としての利用も多い。

見た目も食感もタケノコに似ているマコモは、低カロリーな食材。幅広い料理に利用できる
マコモは近年注目を浴びている食材で、効能などこれからの研究に期待したい

「外葉を残した皮付きの方が保存は効くのですが、小さな虫も全てきれいに掃除して、皮むきで店頭に並べます。モノの良さを見てもらって、購入していただきたくて」とふるさと味工房アグリの広報担当・名張司さん。商品の信頼度を上げるため、手間を掛け、全て皮むき商品として販売。また、アグリでは玉城町内の学校給食にも素材提供し、ふるさとの特産を通して地産地消を伝えている。

ふるさと味工房アグリ
店内には三重県産の食材が多数並ぶ

シーズンになると、アグリの食堂「バーベキューハウス」では「まこも御膳」が味わえる。炊き込みご飯や味噌汁に炒め物など、全てマコモ尽くし。メインの皿は肉巻きで、マコモと人参などを豚肉で巻いてフライにする。「油との相性がいいので天ぷらや素焼きにして、塩や醤油で食べるのも素材のよさを味わえます。醤油漬けにして保存性を高めるなど、食べ方の提案をしていきたい」と名張さん。

ヘルシーで女性に人気「まこも御膳」。味噌汁、揚げ物、田楽、炒めもの、醤油漬けに炊き込みご飯と趣向を凝らしたメニューでマコモを存分に味わえる

低カロリーでビタミンや食物繊維、ミネラルなどを多く含む。栄養豊富なうえに、ヘルシーで女性の注目を集める食材だ。「鮮度命の作物です。時間が経てば表皮が硬くなりますが、ピーラーでひと手間かければ問題ないです。収穫時期が近付くと、まだですかって電話の問い合わせも入るようで。待ってくれとる人がおるよって、ええもんつくらんと」と佐久間さん。季節を知る食材として、マコモダケをより地域に浸透させたいと奮闘する。

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中広

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中広は岐阜に本社を置く広告会社です。 地元の情報を各戸配布のハッピーメディア(R)『地域みっちゃく生活情報誌(R)』のブランドで発信しています。

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