秘境の湯治場に伝わる入浴法“綱の湯”を再現 幸乃湯温泉/栃木

秘境の湯治場に伝わる入浴法“綱の湯”を再現 幸乃湯温泉/栃木

2020/02/18

栃木県北部、板室温泉伝統の“綱の湯”が楽しめる源泉かけ流しの「幸乃湯温泉」。その人気の秘密について話を伺いました。(とちぎの時間充実マガジン「月刊twin」)

Yahoo!ライフマガジン編集部

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ミネラル豊富な源泉かけ流しが魅力の「幸乃湯温泉」

JR黒磯駅から車で約25分の場所にある幸乃湯温泉。路線バスもあり

栃木県内には、名湯と呼ばれる温泉が豊富! 中でも、平安時代に発見された那須塩原市(旧黒磯市)にある板室温泉は下野の薬湯と称され、武将が傷を癒しに訪れる秘境の湯治場として栄えてきました。昭和46年には、心身の療養・保養・休養を行うのに相応しい場所として国民保養温泉地にも指定されたそう。この温泉地で昭和59年に開湯した「幸乃湯温泉」も、健康長寿・美肌の湯として全国からリピーターが通う人気の名湯なのです!

間口が広く、243mある建物の中には、日帰り温泉のほか宿泊施設がある

男女日替わりで楽しめる6種類の湯船

開湯したのは幸乃湯温泉の創設者であり、先代の荻原兵吾さん。この土地を観察し続け、雪解けの早い場所があることに気づき源泉を引き当てたそう! 「この温泉を訪れた人が幸せになれるように」という思いを込めて、「幸乃湯温泉(さちのゆおんせん)」と命名。日帰り入浴から始まり、その後に宿泊施設も設け、湯治客や観光がてら入浴を楽しむ人で賑わいを見せています。

案内してくれたのは、女将の荻原里香さん

以前は混浴だったそうですが、現在は6種類の湯船を完備。男女に分かれ、日替わりでさまざまな温泉を楽しめます。大滝の湯、鮫川石の湯、檜の内湯(女性が月・水・金、男性が火・木・土・日)、綱の湯、茅葺屋根の湯、十和田石の内湯(男性が月・水・金、女性が火・木・土・日)なので、お目当ての日を事前にチェックしてから来る常連客も。

趣きの異なる4つの露天風呂へ!

茅葺屋根の建屋の下にある「茅葺屋根の湯」は、幸乃湯温泉の原点

オープン当初は、茅葺屋根の建屋に簡単な浴槽を設えた古い湯治場だったとか。20年前の秘湯ブームをきっかけに男女別で入浴できるようになったそうです。

女将 荻原里香さん
女将 荻原里香さん
「うちの温泉は源泉かけ流しです。温度を均一にするため、季節や入浴者の人数によって湯量を調節しています」
ライター 金谷
ライター 金谷
やわらかくてなめらかな肌触りですね~! じんわりと温まり、温度も絶妙です。日帰りで楽しめるのがうれしいですね」
荻原さん
荻原さん
「日帰りのお客様も多いですが、現在も湯治を目的に宿泊で来られる方もいらっしゃいますよ」
ライター 金谷
ライター 金谷
「そうなんですね! 周囲は自然も豊かで、日々の疲れも癒えそう。おすすめの入浴方法はありますか?」
荻原さん
荻原さん
「最初にかけ湯をすることですね! かけ湯は血圧の上昇を抑える効果があるんです。足の指からお湯をかけ、少しずつ心臓の近くまで温めていきます。また一度に長時間入るよりも、回数を分けて入浴する方がいいんですよ。額にじんわり汗をかいたら上がって、横になって休むと温泉成分が身体に浸透します」
ライター 金谷
ライター 金谷
「なるほど……! 温泉の入り方にもちゃんとコツがあるんですね! つい欲張って長時間入ってしまうので気をつけねば」

板室温泉に古くから伝わる入浴法、「綱の湯」とは?

茅葺屋根の湯から、さらに奥へ進むと見えてくる「綱の湯」。温泉の中に綱がある不思議な光景に釘付け!
深さのある浴槽の中を、綱をつたって入浴する

名物の「綱の湯」(立湯)は、1.25m~1.4mの湯船の中に5本の太い綱がぶら下がり、その綱につかまり立ったまま入浴します。これは板室温泉古来の伝統的な入浴法で、時代と共に一度途絶えたものを幸乃湯温泉で再現したそう。足が不自由な人、腰痛がある人も気軽に入浴することができます。

荻原さん
荻原さん
「体を曲げずに入浴できるので、足腰の痛みの改善も期待できるんですよ」
ライター 金谷
ライター 金谷
「この入浴方法は初めて知りました。これなら幅広い世代の方が温泉を楽しめますね!」
荻原さん
荻原さん
「杖が必要だった湯治客が杖をつかずに歩けるほど回復したという逸話もあり、“杖いらずの湯”とも呼ばれていたそうです」
ライター 金谷
ライター 金谷
「ええ! それはすごい! 湯治場としての歴史の深さを感じます」

綱の湯に次いで人気の「大滝の湯」

打たせ湯が勢いよく落ちてくる「大滝の湯」

4mの高さから源泉が落ちてくる「大滝の湯」(打たせ湯)は見るからに迫力満点! こちらも人気で、一度訪れた人は綱の湯派、大滝の湯派で分かれるそうです。

ライター 金谷
ライター 金谷
「打たせ湯が4本も! 想像を超える迫力で驚きました……。こちらも入り方にコツはありますか?」
荻原さん
荻原さん
「滝に対して直角ではなく、肌に滑らせるように当てるのがおすすめですよ。長時間当たっていると揉み返しがくることもあるので、大体10~15分が目安ですね!」

石の浴槽で作られた「鮫川石の湯」

大滝の湯の側にある「鮫川石の湯」も風情が漂う。滝を眺めながらのんびり入浴を楽しめる

どの露天風呂にもそれぞれ違った風情があります。そのほか内湯もあり。何度も入って、ここで1日のんびり過ごしたい!

荻原さん
荻原さん
「大きな湯船に手足を伸ばしてゆっくり浸かってみてください。リラックスできますよ」

入浴の合間に、お楽しみもいろいろ!

休憩できる「やすらぎの広間」。食事もとれるのがうれしい

「やすらぎの広間」では入浴後に休憩できるほか、食事も楽しめます。看板商品の幸ラーメン、地元産の牛乳を使った牛乳ラーメンなどユニークなものも。ぜひお試しあれ!

廊下には、足裏の血行を良くする「竹踏み街道」がある。最後まで歩ければ健康の証!

敷地内には“幸乃湯ファミリー”の動物たちも!

ミニチュアホースの太郎くんと桃ちゃん。とても穏やかな性格
友人が連れてきたという、インド孔雀のピ-ちゃんとコックちゃん。春になると羽を広げた姿を見ることができる

敷地内には、ミニチュアホース、クジャク、ヤギ、犬の姿が! みんな幸乃湯温泉の大切な家族なのだそう。人間だけでなく、動物たちにとっても憩いの場になっているのかも? 伸び伸びとリラックスしている様子が印象的です。それぞれ自由に行動しているので、タイミングが良ければ出会えるとか。

訪れた人にとって“ふるさと”のような存在でありたい

二代目の荻原正寿さん(左)と女将の里香さん。夫婦二人三脚で幸乃湯温泉を盛り上げてきた

「小さい頃から通ってくれた子が結婚して、自分の家族を連れてきてくれることもあるんですよ」と笑顔で話してくれた女将。温泉施設としての役割だけでなく、東日本大震災後には無料で温泉を開放するなど、人々の心に寄り添ってきました。最近は旅の思い出帳をつける人が増え、記帳を頼まれることも多いそう。そんな時、必ず書くのは童謡の「ふるさと」の歌詞だそうです。

荻原さん
荻原さん
「全国からいろいろなお客様がいらっしゃいますが、転々としていて今は帰る田舎がない、というお話を伺うこともありました。それならば、この場所を自分のふるさとだと感じてもらえたらうれしいなと思って。『困ったことがあったり、疲れたりしたときは、いつでも帰って来てください』という気持ちで皆さまをお迎えしています」

その名の通り、訪れた人が幸せになれる温泉なのだと実感。豊かな源泉と、女将の温かいおもてなしに、心も身体もほっこり。日々の喧騒から離れて温泉でゆっくり羽を伸ばせば、元気を充電できそう!

■温泉DATA 奥那須・大正村 幸乃湯温泉▼
・泉質:ナトリウム・カルシウム 硫酸塩温泉(低張性・アルカリ性・高温泉)
・効能:腰痛、乾燥肌、リウマチ症、疲労回復、健康増進、きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症ほか
・風呂の種類:6種類
・源泉風呂:有り
・露天風呂:有り
・入浴料(税込):日帰り入浴 ※休憩所あり(10:00~17:00)大人800円/子ども500円、立ち寄り湯 ※入浴のみ(17:00~21:00)大人500円/子ども300円
・駐車場情報:有り、 100台

取材メモ/源泉かけ流しで、さらにいろいろな種類の露天風呂が楽しめるなんて、この上ない贅沢なひととき! 最高のロケーションで、気分もリフレッシュできました。周囲には観光名所もたくさんあるので、宿泊もおすすめです!

取材・文・撮影=金谷有美子

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