蕎麦の食べ比べが楽しい新しい店 西麻布|蕎麦おさめ

蕎麦の食べ比べが楽しい新しい店 西麻布|蕎麦おさめ

2020/02/13

1年間の外食数は600軒以上。高級店からB級までをくまなく知り尽くすタベアルキスト、マッキー牧元さん。食べ歩きのプロ中のプロに、今行くべき東京の和食店を教えてもらいます。

FOOD PORT.

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そわそわする新蕎麦の季節。今年イチ押しの「蕎麦おさめ」

新蕎麦の季節がやってきた。

冷蔵技術の進歩と保管方法の改良で、一年中おいしい蕎麦が食べられるとはいえ、この時期となれば、そわそわしてくる。蕎麦屋に行けば「新蕎麦」の文字があって、ぐっと気分が乗ってくる。

さあ、どこで食べようか。

老舗やベテラン蕎麦職人の店もいいけど、若手職人の蕎麦もおもしろい。

たとえば、産地違いの食べ比べができたり、挽きたて、打ち立て、茹でたて、という蕎麦の三原則から脱皮した、打ってから3日熟成させた蕎麦を味わえたりもする。

といっても、ここまでの仕事をする店はそう多くない。

都内では、庚申塚「菊谷」、中野坂上「らすとらあだ」、神田「眠庵」といった店である。

この3軒は、いずれご紹介するとして、ここに入る1軒が今年できた。

西麻布の「蕎麦おさめ」である。

まず蕎麦をたぐる前に、「蕎麦前」といってみよう。

まずは「蕎麦前」をぬる燗で。スペシャリテは「ニシン煮」

 

お通しのわさび醤油漬けと蕎麦味噌をちびちび舐めながらやっていると、冷奴が運ばれる。池袋「大桃豆腐」だそうで、口に入れれば豆の甘い香りがひろがって顔が緩む。やわらかく、しっとりと炊かれた「昆布巻き」は、昆布のふくよかさ出ていて、しみじみとうまい。

そして、蕎麦屋の定番である「板わさ」は、和歌山の南蛮かまぼこに、自家製わさび漬けが添えられる。分厚く切られたかまぼこの、自然な甘みがいい。

 

そしてスペシャリテが、5日かけて炊いたという「ニシン煮」である。

口に入れればほろりと崩れ、舌に広がっていくのだが、やわらかいだけでない。そのにしんの繊維一本一本に、にしんの味があるのである。

酒は、長崎県の福田純米をぬる燗にしていただいた。

 

さらに「蕎麦がき」が登場する。

長野県乗鞍在来種を練ったのだという。舌にぽたりと落ちると、なにごともなかったかのようにすうっと消えていく。そして、草のような香りを残す。

二口目は辛汁につけてみたが、つゆの旨みとともに蕎麦の甘みが膨らんだ。

さらにそこへ燗酒を滑り込ませば、香りが膨らんで幸せがやってくる。

打ち立てと五日間熟成の食べ比べ

 

さあ、そろそろ蕎麦へといってみよう。お願いしたのは長崎県対馬産蕎麦の打ち立てと五日間寝かせたものである。打ち立ては香り高く、手繰ったすぐ後から野味溢れる青々しい草香が爆発する。一方、寝かせた蕎麦は色が濃く、香りは穏やかだが甘みや旨みが濃い。前者の生き生きした命の発露と違い、熟れた落ち着きがあってどちらも捨てがたい。聞けば後者は風味を強く感じさせるよう、微粉だけでなく粗目に挽いた粉も入れて打っているのだという。この辺りが、ご主人の納さんのうれしい変態ぶり躍如たるところで、ほかにもわざときしめん状の平打ちにしたり、石臼挽きだけでなくフードプロセッサーで挽いてみたりなど、様々な風味を出す工夫をされている。

温まることによって甘みが増すかけ蕎麦

 

さらには、温かいかけ蕎麦も素晴らしい。つゆの透明感のある美味しさだけでなく、温まったことによって蕎麦の甘みがより感じられて、食べると心が安らぐような気分になってくる。こりゃあ、しばらく通って、いろんな蕎麦を食べるしかないな。

マッキー牧元

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