市民に愛され90余年!群馬・桐生市のソースかつ丼

市民に愛され90余年!群馬・桐生市のソースかつ丼

2020/02/23

桐生の食の名物といえば誰もが、ソースかつ丼とひもかわうどんと答えるだろう。そのソースかつ丼が生まれたのは大正時代に遡る。考案した志多美屋本店で、店長の針谷(はりがい)智之さんに、メニューが生まれた背景やソースかつ丼会について聞いた。

中広

中広

洋食文化の影響を受けて大正時代に生まれたかつ丼

白米の上に乗ったヒレかつに、甘じょっぱいソースがかかった、ソースかつ丼桐生市を代表する地域グルメの一つである。市内でソースかつ丼を提供する店はいくつもあるが、最初に考えたのは浜松町にある志多美屋本店で、大正時代からいまに至るまでその味を引き継ぐ。

「祖先は、栃木県にあるいまの渡良瀬遊水地のほとりで、ウナギの卸をしていました」と、語るのは同店店長の針谷智之さん。明治時代初期に足尾銅山鉱毒事件が起こり、鉱毒を沈殿させる渡良瀬遊水地を作るため、周辺に住んでいた人々は皆、退去させられてしまう。針谷さんの先祖の移った先が、桐生市だった。

明治時代は開国の影響から外国の文化が流入した時期であり、絹織物を扱う桐生市は輸出入が盛んで繁栄していた。

針谷 智之さん

針谷 智之さん

志多美屋本店 店長・桐生ソースかつ丼会 会長

大正時代になると洋食が身近なものになり、針谷さんの祖父が飲食店を開業、カレーライスやオムライスを提供するようになった。

この時、ウナギを焼くたれとウスターソースをブレンドし、丼に乗せたかつにかけたソースかつ丼が生まれる。

志多美屋本店で提供している定番のメニュー、ソースかつ丼

ソースかつ丼は、市民に愛された。「市外から来た客人をもてなすためにわざわざ食べに来たり、月に1度、お誕生会と称して織物工場の女工さんたちにふるまっていたと聞きます」と、針谷さんは笑顔を見せる。

針谷さんの祖父は、ソースかつ丼と呼ばれるのは好まず、かつ丼と呼んでほしがっていたそうだ。しかし、卵でとじるかつ丼と区別するため、現在の名称が定着していった。

いまも広く好まれる理由を針谷さんは、「食べ飽きないところと、手ごろな値段ではないでしょうか」と分析する。味の決め手のソースは、祖父の代から継ぎ足して使っており、切らした日はない。かつに使うパン粉も特別製で乾燥の強いもの。ソースをかけても衣がカリッと仕上がるようになっている。

揚げたかつにソースをかけ回す。ソースかつ丼を作り続けてから90年以上、ソースは切らした時がない

同店では多いときで、1日に200人が来店。昨今はインターネットの普及もあり、遠方から地域グルメを食べに来る人がひっきりなしだという。針谷さんは、「昔は半径1キロメートル圏内の人がお客さんでしたが、最近はネットで見たという問い合わせが多くなりましたよ」と、話す。しかし時代に合わせて内容を変えたりせず、「祖父の代からのソースかつ丼を、伝統として守るのが店の理念ですと、力強く語った。

土日は県外からの来店も多くなるそう

食で地元を盛り立てるため結成されたソースかつ丼会

桐生市内では現在、同店以外にもソースかつ丼を提供する店がある。2018年12月、それらの店舗が集まって、桐生ソースかつ丼会を立ち上げた。発起人は、桐生飲食店組合と桐生麺類商組合の有志、会長は針谷さんが務める。

発足のきっかけは、桐生市の食文化の継承と、桐生市に元気を創出するため。ソースかつ丼は、高度経済成長期を迎え盛んだった織物業に従事する人々の夜食として、出前で多く用いられていた。しかし、産業の衰退や人口減少によりその数を減らしていった。最近では観光客の増加に伴い、店内での食事数が増えている傾向にあり、これを機に、既存店で力を合わせ、地域グルメとしてPRに力を入れるのが狙いだ。

桐生ソースかつ丼会の皆さん

会の結成にあたり、桐生ソースかつ丼の定義が決まった。曰く、「豚ヒレ肉を使い、揚げたてのかつを各店舗秘伝のソースにくぐらせ、丼に盛った白米にのせる。丼にキャベツは添えない。各店舗による創作ソースかつ丼のメニュー化は可とする」

肉や具材、ソース、衣、白米で勝負するシンプルな料理だからこそ、各店を食べ比べる面白さが生まれる。それを楽しんでもらおうと、同会では現在、参加店舗をまとめたパンフレットを作成中だ。食べ歩きを楽しめる、スタンプラリーのような仕掛けを盛り込んでいこうというアイデアも出ている。

「会のメンバーでイベントに参加する計画もあります。この10月には会員店舗同士で伊勢崎市の市民交流まつりに出店し、300食を完売しました」と、針谷さんが教えてくれた。「祖父の作ったソースかつ丼が桐生市の食文化として根付き、広まっていくのはうれしいですね」。

競い合い、協力し合い、互いに成長し合うソースかつ丼会。力を合わせ新しい一歩を踏み出した同会とソースかつ丼が、桐生市をさらに活気づかせてくれるに違いない。

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中広

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中広は岐阜に本社を置く広告会社です。 地元の情報を各戸配布のハッピーメディア(R)『地域みっちゃく生活情報誌(R)』のブランドで発信しています。

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