まるでフォアグラ 蕩ける煮牡蠣 「鮨いち伍」の秋の握り10貫

連載

早川光の最高に旨い寿司

2016/10/20

まるでフォアグラ 蕩ける煮牡蠣 「鮨いち伍」の秋の握り10貫

寿司専門の情報番組「早川光の最高に旨い寿司(BS12)のナビゲーターを務めてきた私が、最高に旨い旬の名店と、そこで食べられる極上のおまかせ握り10貫をご紹介いたします。第19回は千歳烏山「鮨いち伍」。

早川光

早川光

著述家、漫画原作者

カフェを思わせるお洒落な店内

今回は、千歳烏山の閑静な住宅街にありながら、銀座にも負けない、レベルの高い寿司を握ると評判の「鮨いち伍」のおまかせ握り10貫をご紹介いたします。

親方の樋口達也さん

親方の樋口達也さんは浅草生まれの江戸っ子。寿司屋と和食の店で修業し、2009年に独立。古典的な江戸前寿司に和食の技とオリジナルのアイデアを加味し、独自の味を追求している気鋭の職人です。

スタートはスミイカから

1貫め スミイカ

おまかせ10貫のスタートは爽やかな味わいのスミイカから。新イカのシーズンが終わり、大人のサイズに成長してきたスミイカは、歯切れの良さが心地よく、噛むほどに甘みを感じます。

2貫め 子アマダイ

2貫めは、アマダイの子供「子アマダイ」。サイズは小さいけれど水分の多い魚なので、まず湯引きをしてから塩をあて、さらに昆布〆をして、ひと晩置いてから握ります。こうして手間をかけることで、子供でも大人に負けない旨みが引き出されるのです。

青森県**大畑**産のホンマグロを食べ比べ

3貫め マグロのづけ
4貫め マグロ中トロ

3貫めと4貫めは、青森県大畑に揚がった極上ホンマグロの赤身と中トロを食べ比べ。大畑は大間ほどの知名度はありませんが、最高クラスのホンマグロが揚がる漁港として知られています。

赤身は煮きりに5分ほどつけてから、さらに1時間ほど置いて味を馴染ませてから握ります。旨みもコクもたっぷりあって、なんとも奥深い味がします。

そして中トロは、脂の甘さはもちろん、極上のホンマグロならではの香りが見事。飲み込んだ後もしばらく香りは消えず、それが長く余韻となって残ります。

5貫め コハダ

5貫めのコハダは、普通なら振り塩で締めるところを「たて塩」と呼ばれる塩水で締めることで、皮目の柔らかさを出しています。親方曰く「これ以上にコハダが大きくなると難しいけど、このサイズなら立て塩の方がふっくら感が出る」とのこと。確かに食感はふんわりとして、塩味もほとんど感じません。

6貫め クルマエビ

続く6貫めはクルマエビ。こちらは茹でたてのエビに、特製の「海老味噌」を乗せて握ります。この海老味噌はなんと、ボタンエビの味噌と卵から作ったもの。クルマエビの身の甘さにボタンエビのコクが加わって、まったく新しい味の握りになっています。

まるでフォアグラのような煮牡蠣

7貫め 煮牡蠣

次の「煮牡蠣」にはさらにびっくり。これは北海道厚岸産の牡蠣をごく弱火で火入れし、茹で汁に醤油、砂糖、味醂、酒を加えて味を整えた漬け汁にひと晩漬け込んだもの。見た目はつるんとして弾力のある食感を予想するのですが、口に入れると中身はとろりとして、まるでフォアグラのよう。味わいも濃密で、深い旨みがずっと舌に残ります。寿司なのにワインが欲しくなってしまう1貫です。

8貫め アジの棒寿司

濃厚な煮牡蠣の後は、さっぱりしたアジの棒寿司。塩と酢で〆めたアジと大葉、ガリ、ゴマを混ぜたシャリを合わせて、白板昆布を巻いています。押し寿司のようにしっかりと空気を抜き、アジの身とシャリを密着させているので、味に一体感があり、何貫でも食べたくなる美味しさです。

9貫め アナゴ

9貫めは、神奈川県小柴産の江戸前アナゴ。15分かけて炊いたものを直前に軽く炙ってから握ります。きめ細やかな身の質、ふんわりとろとろの食感、鼻に抜ける香りも素晴らしく、江戸前アナゴの醍醐味が存分に味わえます。

10貫め かんぴょう巻

そして最後の1貫はかんぴょう巻。「地味な巻き物が旨いのが、本当にいい寿司屋」というのが親方のポリシー。甘辛味のかんぴょうと香り高いパリパリの海苔ハーモニーに、親方の気概と誇りが感じられます。

伝統的な技法と新しい発想が見事に共存し、心から美味しいと思える味を真摯に追求している「鮨いち伍」の握り。何度でも訪ねたくなる、魅力に溢れた店でした。

「早川光の最高に旨い寿司」公式サイト。

「早川光の最高に旨い寿司」公式サイト。

(BS12で日曜15時から放送中)

産地・旬にこだわった 極上の素材 と、経験を積んだ職人による 熟練の技 。 そんな寿司の醍醐味をとことん味わい尽くし、寿司を食文化として捉えた情報番組。

「早川光の最高に旨い寿司」

「早川光の最高に旨い寿司」

びあMOOK

BS12で放送され、多くの寿司好きを狂喜させた番組の書籍版。 若手の注目店から星付きの名店まで、「最高の寿司」が揃っています。

「ごほうびおひとり鮨」

「ごほうびおひとり鮨」

原作・早川光 作画・王嶋環

「美味しいもので癒されたい! そんなアラサー女子のおひとりさま鮨デビュー!!!」 江戸前鮨の人気店に食べに行って描いた、体験型コミック。実際に店で支払ったお勘定の金額も載っています。

この記事を書いたライター情報

早川光

早川光

著述家、漫画原作者

鮨職人を描いたコミック「きららの仕事」の原作のほか「日本一江戸前鮨がわかる本」「鮨水谷の悦楽」など鮨に関する著書多数。 現在、BS12で放送中(毎週日曜15時〜)の「早川光の最高に旨い寿司」のナビゲーターを担当。 書籍版「早川光の最高に旨い寿司」(ぴあMOOK)も発売中。

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