ガツンとスパイシー!麻婆カレーの誘惑 神保町|源来酒家

ガツンとスパイシー!麻婆カレーの誘惑 神保町|源来酒家

2020/02/29

中国料理に魅せられて、国内はもとより中国にも足繁く通って取材する中国料理探訪家・サトタカさん。“中国を食べ尽くす”プロに、今行くべき東京の中華料理店を教えてもらいます。

FOOD PORT.

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カレーと中華の街・神保町へ

 

中華の連載なのに、いきなりカレーの話で恐縮だが、神保町は「カレーの街」や「カレーの聖地」などと言われて久しい。

インド風カレーライス専門店「エチオピア」や、スマトラ風カレー「共栄堂」をはじめ、欧風カレーなら「ボンディ」や「ガヴィアル」。ガツンとカツカレーを味わうなら「キッチン南海」。新しめの店もあるが、老舗がしっかり繁盛している。

そして本題(笑)。この界隈は、実は中華も強いのだ。そもそも神保町は、アカデミックな「神保町チャイナタウン」だった歴史がある。

かいつまんで紹介すると、明治時代、日本が清(現在の中国)から国費留学生を受け入れる際、嘉納治五郎が神田三崎町に私塾を開いたのがそのはじまり。以後、界隈には学校や留学生のための施設がつくられるとともに、彼らの胃袋を満たす場所として、中国料理店が激増した。

有名どころでは、現在は赤坂などに店を構える「維新號」(現在の神保町3丁目が発祥)もその一店。孫文や周恩来も足繁く通った「漢陽楼」や、冷やし中華発祥の店と提唱している「揚子江菜館」も、留学生の胃袋を支え、老舗として今に続く名店だ。

神保町の二大名物、カレー×中華のハイブリッドメニュー

 

そんな神保町の二大名物、カレーと中華を見事に融合させた料理が、今回ご紹介する「源来酒家」の麻婆カレーである。

麻婆豆腐もカレーも、店によって個性がハッキリと出る料理だが、ここでは花椒の痺れと唐辛子の辛さをしっかりと効かせた四川式の麻婆豆腐に、ジャパニーズスタイルのカレーを合わせている。

そしてこの、スパイシーな麻婆×少しとろみのあるマイルドカレーという取り合わせが、実に絶妙。どちらもスパイシーだと収集がつかず、逆にまろやかだと刺激が足りないところ、二つの味がまったくケンカしていない。ケンカするどころか、麻婆でもカレーでもなく、本当に「麻婆カレー」としか言いようがないのだ。

麻婆もカレーもごはんによく合うが、個人的には「麻婆カレー飯」より「麻婆カレー麺」をおすすめする。少し縮れた太麺が麻婆カレーによく絡み、コクがあって食べやすい。さらに言うと、麻婆の挽き肉を余すところなく食べられるよう、穴あきレンゲまで添えてあるのがニクい。

融和して、定着することこそ中国的?

 

最後にちょっとマニアックな話をしよう。実はこの記事で店名を挙げた中国料理店は、いずれも上海の南方にある港町・寧波(にんぽう)出身の華僑が開いた店である。

もっと言うと、上海蟹で有名な「新世界菜館」や、この麻婆カレーを出している「源来酒家(げんらいしゅか)」のオーナーも、ルーツは寧波にある。つまり「神保町チャイナタウン」を構成した店は、麻婆豆腐とは縁のない、揚子江の下流域である江南地方の料理が本懐なのだ。

しかし、華僑は故郷の料理も大切にしながら、料理をローカライズし、魅力ある要素を取り込みながら、移住した国に定着させていく強さと逞しさも持っている。

そう思うと、日本で圧倒的な人気を誇る麻婆豆腐とカレーを合わせるという発想は、非常に中国人的と言えなくもない。温泉卵がのっているから、ちょっと日本的な要素もあるが、味わいは和風でも、ましてやカレーのインド風でもない。どう味わっても、最終的に中華の味わいに着地している。

ボリュームがあり、ガツンとパンチがあって、食べやすいのに食べたら滝汗。味わいは全く違うのだけれど、この一杯と出合ったとき、初めて「天下一品」のラーメンを食べた時のようなインパクトを感じたものだ。 神保町で麻婆でもカレーでもない麻婆カレー、未体験の方はぜひ!

 
サトタカ(佐藤貴子)

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