街のリノベーション店が革命を起こす!(後編)

特集

いま、リノベーションスポットが面白い!

2016/03/22

街のリノベーション店が革命を起こす!(後編)

街の元気のバロメーターは小商いのお店が放つ唯一無二の個性だったりする。東京の街の隆興や変遷に詳しい不動産プランナー・岸本千佳さんに、注目するリノベーションされたお店を教えてもらった。というわけで、後編は「未来食堂」へ!

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

IT業界出身の女性が切り盛りする常識に縛られない「未来食堂」

次に取材に訪れたのは、同じく、不動産プランナー・岸本千佳さんがオススメしてくれた神保町の「未来食堂」

「お店に行ってまず驚くのが、壁に明記された“今日の食材”。この中からお客がいくつか食べたいものを選んで、定食に付く小鉢を作ってもらえる、“あつらえ”サービス(夜限定)が画期的なんです。お客さん一人ひとりのリクエストに対応するのは大変だろうから、わりとシステムチックなのかな?と思ってお店に行くと、そこはやっぱり女性一人で切り盛りされているということもあって、温かさがきちんと残っているところがスゴイ!」と岸本さん。

新しいのに懐かしい「未来食堂」。未来の食堂の道しるべがここにある!

この「あつらえ」のように、未来食堂には従来の飲食業の枠に収まらない斬新なサービスがいくつかあるという。というのも、店長がIBMとクックパッドで働いていた元エンジニアの女性だからで、IT業界出身だからこそ思いつく斬新なアイディアが光っているのだという。いざ、お店の中へ!

神保町のオフィスビル地下1Fの空き部屋をリノベーションして作られた

お店の扉を開くと、昭和を思わせるレトロなオレンジ色のランプと、アンティークの椅子、コの字形カウンターがあり、どこか懐かしい雰囲気。カウンターの中には、お客さんのリクエストを聞きながら、ニコニコと楽しそうに料理をこしらえる女性が一人。店長の小林せかいさんだ。

あなたの“ふつう”をあつらえます

笑顔がすてきな小林店長とのおしゃべりも食堂を訪れる楽しみの一つ

お客さんたちは、いったいどんな小鉢のあつらえを小林さんにリクエストしているのだろう? 店内に置かれている、これまでのリクエストをまとめた「あつらえノート」を開いてみた。

あつらえノートにはどんなリクエストが書かれているのか? 参考にしながら自分の“あつらえ”を考えてみよう

そこには、「ゆず皮が好きなんです」「マヨネーズをいっぱい」「皇居ランの後なんです」といった文字が。なかには「温かい慈愛あふれるスープ」「フィリピンのセブの海みたいな白い砂浜と青い海を感じられる料理」といった、ひとひねりの想像力を要するものまで。これらすべてに臨機応変に対応するのはさぞかし大変ではなかろうか…、一体どうして小林さんは、このシステムを取り入れたのだろう?

けっこう、みなさん細かいリクエストをしているみたい

「私自身が、もともと会社の新人研修の2カ月間ずっと、ランチに自家製ヨーグルトを食べ続けるような偏食家で。『アイツはいったい何を食べてるんだ?』と笑われながら、『でも自分にとっては、これが普通だし』と憤る思いを抱えていたんですね。“食”って、その人の素の部分が出るじゃないですか? それを笑われたり否定されるのって、結構ツラいよな…と。

だから、お店側が一方的にお客さんにこれがオススメです!と提案するよりも、お客さんの食べたいものとか、その日の気分とかをいったん受け止められる食堂であろうと、お店を作るときに決めました」と小林さん。

「日替わり定食」(900円)。この日は生卵とからめて食べるマグロのユッケと、ブリ大根のダシをとったアラ汁

例えば「味噌入り卵焼きが食べたい」というオーダーがきたら、普通の飲食店なら「味噌の香りと卵は合わない」と注文を断るだろう。そこを小林さんは、さりげなく「ネギも入れましょうか?」と聞いてフォローを入れつつ、卵と味噌をおいしいバランスで仕立て、提供してくれるのだ。

誰かが置いていった“まかない飯券”を使いタダ飯をいただきます!

面白いシステムは“あつらえ”だけではない。店の入り口には「タダ飯券」が数枚置かれており、お客さんはそれを使って、文字通りタダ飯をいただける。実はこれ、50分間、小林さんの仕事のお手伝いをした“まかないさん”にお礼として1枚配られる、“まかない飯券”なのだ。

まかないさんが自分で使わない場合は、こうして「タダ飯券」として、どこかの誰かのために、放出されるというわけ。今までありそうでなかったサービス。

誰かがお店で50分間働いたお礼として受け取った“まかない飯券”が入り口に貼られている。これを使えば無料でご飯が食べられる!

「アメリカでは、人から受けた厚意を別の人に贈る“善意の連鎖”、いわゆる『pay forward』(ペイフォワード)『ギフト経済』が流行しているんですね。要は、見知らぬ誰かへの“おごり文化”みたいなものなんだけど、その影響をうけて始めてみました。

未来食堂のタダ飯券は同じ『pay forward』でも、お金では買えない点が特徴です。タダ飯券に書かれている日付を見て、それを使う人は『あ、3月20日に誰かがここで50分間働いたんだなー』なんて思いを巡らせることができる。お金を出しておごってもらうより、食べることの重みを感じられる点が面白いと思います」(小林さん)。

取材で訪れた日は、食堂に伊豆大島から食材やお酒が差し入れられていた。地方とのコラボレーションは、頻繁に実施している

基本的には誰でも“まかないさん”として働ける。これまでにも、いつかはお店を開きたいという夢を持った人、日本の料理や文化に関心があるフランス人などおおぜいが、50分単位で働いてきた。

まかないのスケジュールは、公式サイトにて公開中。まかないとして働きたい人はスケジュールが空いている時間帯に、働きたいと申し出てみよう。

ちなみに、未来食堂の事業計画書も公式サイトにて絶賛公開中である。「IT業界ではオープンソースが基本。開発したシステムの情報は隠さずに無料で公開し、エンジニアたちがさらに改良を加えることで、IT技術は発達してたんですよね」と小林さん。

だから、未来食堂も“オープンソース”。そして、“ぼっち歓迎”だという。

「コミュニティーとか、人が集まる場所とか、常連さんといった考え方を意図して避けています。だって、そううたっちゃうと、コミュニティに入れない人、常連じゃない人はお店に来づらいでしょ? いつでも誰でも気軽にぷらっと一人で来れる食堂を目指しています

【メニュー】
「日替わり定食」(900円・税込み)※おひつごはんおかわり自由
喫茶(400円・税込み)※15:00〜
あつらえ(+400円・税込み)※18:00〜

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

取材・文=城リユア(mogmog gizmocchi)/撮影=神保達也、齋藤ジン

この記事を書いたライター情報

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

グルメ、おでかけ、イベントなど、ライフスタイルを豊かにする情報を編集部が厳選して紹介します。

RECOMMEND

SPECIAL

SERIES