氷彫刻世界大会に挑むホテルメトロポリタン高崎の原田大輔シェフ

氷彫刻世界大会に挑むホテルメトロポリタン高崎の原田大輔シェフ

2020/03/27

毎年2月に北海道旭川市で行われる、氷彫刻世界大会。昨年、初出場ながら団体戦で特別賞を獲得した、ホテルメトロポリタン高崎のシェフ、原田大輔さんに、氷彫刻の魅力と世界大会への意気込みを聞いた。

中広

中広

匠の技に魅せられ氷彫刻の修業を志す

甲高いチェーンソーの音を響かせ、迷いもせず、かつ慎重に、氷柱を削る。冷たい氷しぶきの飛び散るなか、わずか数十分で透明に輝く白鳥が姿を現した。

氷彫刻に取り組んでいるのは、ホテルメトロポリタン高崎の洋食宴会副料理長、原田大輔さん。これまで、数々の大会に出場し、入賞を果たしている。

ホテルメトロポリタン高崎 洋食宴会副料理長 原田大輔さん

氷彫刻とは、氷の塊をチェーンソーやノミ、グラインダーなどで削る、芸術作品である。果物などを盛り付ける器から、さまざまなイベントで披露される大作まで、主に料理人が行う芸術として発展してきた。

原田さんが氷彫刻と出合ったのは、約10年前の2009年。同ホテルに入社し、板橋博前総料理長が率いる洋食宴会担当部門に配属されたのが、きっかけだ。当時、全日本氷彫創美会の副会長を務めていた板橋さんは、ホテルのパーティーや外部のイベントで氷彫刻を披露していた。その際、助手を務めるようになったのである。

はじめの数年間は、氷を削る時の支え役や片付けなど、裏方作業に徹していた原田さん。匠の技を駆使した氷彫刻の美しさに惹かれたものの、料理の修業が優先だと考えていた。こうしたなか、2012年春、転機が訪れる。「氷彫刻に挑戦してみないか」と、板橋さんに勧められたのだ。

氷彫刻は、料理人の通常業務ではない。しかし新しい分野に挑戦したいとの思いが勝ったという。原田さんは、改めて板橋さんに師事し、勤務終了後の夜間、氷彫刻の修業に打ち込んだ。

練習に用いたのは、展示後に処分する作品を、大きめに砕いて保管した氷だ。料理人になる前、建築関係の仕事に就いていた原田さんは、電動工具やノミの扱いに慣れている。それでも、割れやすい氷を扱えるようになるまで、苦労は尽きなかった。

氷彫刻にはチェーンソーやグラインダー、ノミなど、多彩な道具を使う
細かな部位は、ノミなどに道具を持ち替え、慎重に削る

本格的に氷彫刻を初めて数カ月後、予期せぬチャンスが訪れる。みどり市大間々で行われていた北関東氷彫刻大会への挑戦を打診されたのだ。初めて氷柱をまるごと1本、練習に用いたのは、大会のわずか1カ月後。多忙のなか、練習に励んだ。

2012年8月、原田さんは、みどり市大間々で開催された北関東氷彫刻大会に出場し、銅賞に入選。以降、多くの大会で実績を重ねてきた。

2018年5月、千葉県柏市で行われた関東地区大会を勝ち抜き、ついに世界大会の切符を手に入れたのである。

作品づくりで磨いた感性を料理に生かしてまい進

「氷彫刻の魅力は、数時間で溶けていく、寿命の短さにあります」と原田さんは話す。それは、料理にも通じるもの。消えてなくなるものだからこそ、基本が大切なのだと教えてくれた。

氷彫刻は、重心が整っていなければ安定せず、すぐ倒れてしまう。同様に、料理も包丁の使い方、ベースの作り方、火加減など、誤った基本を覚えると、修正するのが難しいのだ。「氷彫刻と出合い、料理に取り組む姿勢も、基本に立ち戻れました」

洋食のシェフとして腕を振るう原田さん。基本に忠実な料理をモットーとしている

2018年に板橋さんが総料理長を引退し、原田さんは氷彫刻の責任者を受け継ぐ。現在、若手シェフたちに、技術の指導中だ。

若手料理人の指導を行う原田さん。練習は業務終了後の夜間に行われている

「原田さんの姿に憧れ、弟子入りを志願しました」と話すのは、高橋一輝さん。「完成した時の達成感がやりがいにつながります」と、安田隼人さんは目を輝かせる。「四角い氷から形を作り出すのは、難しいからこそ楽しいです」と話す山本康高さんは、近々、大会に挑戦する予定だ。氷彫刻を学び、料理人としての成長につなげたいと皆、声をそろえる。

氷彫刻の練習に励む若手シェフの皆さん。右から安田隼人さん、高橋一輝さん、山本康高さん

一方、同ホテルのシェフたちは、高崎まつりの技能祭をはじめ多彩なイベントに出演し、ボランティアで氷彫刻の実演を行っている。「一人でも多くの人に氷彫刻の魅力を知っていただけたらうれしいです」と、仲間たちはほほ笑む。

2019年2月、原田さんは、共に学んだホテルメトロポリタンエドモンドの赤石知也さんと一緒に、北海道旭川市で行われた氷彫刻世界大会に出場。マイナス10度以下という極寒のなか、重さ135キログラムの氷柱16本を使い、2昼夜40時間の過酷な大会に挑んだ。23組の参加した団体戦で、特別賞を獲得したが、決して満足はしていない。「世界トップレベルの技術を間近にし、さらなる高みを目指そうと決意しました」。

2019年2月に行われた氷彫刻世界大会で、特別賞を受賞した原田さんの作品「ポセイドン」

氷彫刻と出合って10年。原田さんは昨年、料理人として誇らしい栄誉を得た。第17回JRホテルグループ料理コンテストで、準優勝に輝いたのだ。「氷彫刻で磨いた感性が、料理の向上にもつながり、相乗効果を生んだのだと思います」と原田さんは胸を張る。

今後も地元シェフの活躍が、おおいに楽しみだ。

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中広

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中広は岐阜に本社を置く広告会社です。 地元の情報を各戸配布のハッピーメディア(R)『地域みっちゃく生活情報誌(R)』のブランドで発信しています。

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