最上の「RE」を求めて。1日1組をもてなす真意とは。

最上の「RE」を求めて。1日1組をもてなす真意とは。

2020/07/11

沖縄県本部町。ここに、1日1組限定のイタリアンレストラン「Ristorante RE」があります。地元食材をふんだんに使ったイタリアンを、シェフおまかせのコース仕立てでもてなしてくれます。隠れ家的で、独特な雰囲気をもつ「Ristorante RE」の魅力をお届けします。

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OVERVIEW

『Ristorante RE』シェフの三沢 賢(まさる)氏
夜光貝はソテーして肝のソースとともに。オータムポエムを焦がし気味にソテーし、ソースと合うように素材の味を引き出した

「沖縄美ら海水族館」がある町といえば、ピンとくる人もいるのではないでしょうか。那覇空港から車で1時間30分ほど、沖縄本島の北部から東シナ海に突き出した半島にある沖縄県本部町(もとぶちょう)。全国から観光客が訪れる町ではありますが、その一方で今なお古き良き沖縄の暮らしが息づくのどかなエリアでもあります。今回『ONESTORY』取材班が訪れた『Ristorante RE』は、その本部町の北部、具志堅地区の高台にありました。途中、道標となる案内板もなく、国道505号線から脇道に入り、分かれ道を進んでいくと、白亜の建物の前でシェフの三沢 賢(まさる)氏が手をふって出迎えてくれました。

那覇から遠く離れた本部という町で1日1組だけをもてなすレストラン。
そう聞けば、どんな料理で訪れる人を驚かせてくれるのか、期待せずにはいられないでしょう。しかし、ここで待っているのは、奇をてらい、訪れた人を驚かせ、未知の食体験を楽しむような、いわゆるコンセプト先行型のガストロノミックな店とは一線を画します。

誤解を恐れずに言えば、決して華やかな店ではありません。味わい、寛ぎ、心を溶かす。
店名に込められたのは、RefreshのREであり、RelaxでREであり、ResortのRE。
本部という町で10年。1日1組のための最上の「RE」を提供し続けてきた店の本質に迫ります。

素材がそのまま生かされた三位一体の美味しさ。

「こだわりがないのがこだわり」。それが、『Ristorante RE』の料理の哲学をたずね、三沢賢(まさる)氏から返ってきた答えです。初めは、少し「古臭い表現かな」と思ったのが正直なところでした。
しかし、その言葉に1日1組をもてなすことの真意が込められていたことに気付いたのは、料理を味わい、三沢氏の更なる思いを聞いてからのことでした。

『Ristorante RE』、ひいては三沢氏の料理を語る上で、欠かせないこと。その要素のひとつが、「三位一体」。これは、まさに今の三沢氏という料理人そのものを表しているようにも思えます。かつて三沢氏が盟友の宮本氏から「三沢賢 (まさる)じゃなくて、三沢マモルになったね」と言われたように、「守り」に入っているわけではありませんが、料理にもそれは如実に表れていました。そんな料理の味を端的に表現すれば、「しみじみとした美味しさ」。ただ、それは決して一朝一夕で出せるものではありません。角を削ぎ落とし、丸みを帯びた円熟味とでもいいましょうか。三沢氏が料理人として過ごしてきた経験をそのまま映し出しているかのような味わいなのです。
この日、供されたアミューズは生ハム。こちらの主役、実は生ハムではなく、添えられたバターなのです。更にいえば、そのバターに挟まれている冬瓜の砂糖漬こそが主役です。

「那覇にある『謝花きっぱん店』という琉球王朝の時代からお茶菓子を作っているお店があり、そこで作られているのがこの冬瓜漬なんです」と三沢氏。
修業時代に北イタリアにいたことがあった三沢氏が、生ハムの盛り合わせとともに付け合わせとして必ず出されていたバターをヒントに考案したそうです。干し柿のミルフィーユをイメージし、バターの濃厚さと生ハムの塩味と旨味、そこに合わさる冬瓜の砂糖漬の甘さ。それらが噛みしめるたびに一緒くたになり、しみじみとした美味しさとなって口福を運びます。まさに「三位一体」をなしたひと品でした。

沖縄の島ダコを、塩水と香草で蒸すことで煮込んだような食感を引き出した、三沢氏曰く「タコのトマト煮込まない」
アバサーはフリットに。サイズが大きくなればなるほどその旨味は鶏肉にも似た味わいに。最大で10kgのアバサーを使ったこともある
食事中、三沢氏とのコミュニケーションを取れば取るほど、この店の魅力に気付かされていく。これこそシェフズテーブルの醍醐味!

食材を理解するからこそできる、無理のない食材同士の取り合わせ。

スペシャリテのひとつであるアバサーのフリット(ハリセンボンの揚げ物)はどうでしょう。こちらはアバサーのカマの下、アゴ周りの部位に、塩・胡椒をしたセモリナ粉の衣をつけて、油でじっくりと火を通した料理です。脇に添えられるのは、完熟のシークワーサー。ギュッと搾って味わえば、シークワーサーの酸味と香りが塩味とともに浮かび上がり、鶏肉にも似たハリセンボンの身の旨味を引き立てていきます。
「沖縄ではアバサー汁というのがあって、いわゆるふぐ鍋のイメージなんですけども、これが僕的にはあまり美味しいと思わない(笑)。同じふぐの仲間だからといって、刺し身にしてもあんまりだし、出汁をとってもパッとしない。ただ、揚げるとその旨味が出て抜群に美味しくなるんです」。三沢氏はそう言って笑います。

和名をスジアラという沖縄を代表する高級魚として知られるアカジンミーバイも、三沢氏がよく使う魚種のひとつ。
「キロでだいたい2,000円台後半、高いと5,000円近くになる。ここ数年で倍に高騰している魚です」と三沢氏。
あまり脂がのらない身質ながら旨味はあり、筋肉質ゆえ皮目に塩をあててじっくりとソテーしていきます。ソースはトマトウォーターと出汁を合わせて煮詰め、仕上げにバターを入れて溶かすことで、脂の少ない身質に油分をプラスします。添えたのは県産のズッキーニと、サンマルツァーノ種のドライトマトです。アカジンミーバイの味わいにソースが合わさり、更にドライトマトの甘みとほのかな酸味が加わります。この絶妙な塩梅(あんばい)が、しみじみとした美味しさを呼び覚ますのです。

やや独特の風味があるマクブという魚。火入れした温かな身に、冷たいセロリのドレッシングを合わせて、味を含ませる技法を取った
アカジンミーバイはシンプルにソテー。ソースで油脂感と旨味を寄り添わせ、トマトで甘みと酸味をプラスした
アサリにも似たケマンガイはクリームのパスタに。やや独特な風味に、爽やかな島とうがらしの香りと辛さを合わせた

わがままをかなえる、「お客様に寄り添う料理」とは?

『Ristorante RE』を「沖縄の食材を使ったイタリアン」と思う人もいるでしょう。しかし、それだけではないのがこの店の魅力であり、また『Ristorante RE』が『RE』たるゆえんでもあります。それは「お客様に寄り添う」こと。三沢氏が料理を作る上で大切にしているもうひとつの要素です。

例えば、予約時にお客様に必ず聞いていることが、食材のアレルギーと好きなものと嫌いなもの。その上でリクエストがなければ、三沢氏は沖縄の肉や魚、野菜などの食材を駆使し、コースを考えるといいます。しかし、中には他のレストランではあり得ない要望もちらほら。以前に「パスタ4品でコースをつくって欲しい」とリクエストされた時のことでした。三沢氏は、それならばと前菜1品とメインを除き、料理は全てパスタを提供したそうです。ある時はお子様連れがいて、そのお子様のために白米を炊いて豚汁を作ったこともあり、またある時は「うどんを持っていくので茹でさせてください」と言われ、ある時は焼き魚を出したこともあったとか。こういった例からわかるように、三沢氏はそんなリクエストを決してないがしろにしないのです。

「今日もこうやってお話ししながら料理を作っていますけど、普段の営業中もまさにこんな感じなんです。『どちらからいらしたんですか?』から会話が始まって、料理の話をしたり、食材の話題になったり。そのうちお客様も自分のことを話してくださったり。だから、当たり前ですが、1回目より2回目、2回目より3回目の方がお客様のことをより知れるし、寄り添っていける料理、店になれるんです」と三沢氏は語ります。
それこそ、1日1組の『Ristorante RE』にしかできないことであり、どこまでもゲスト本位である理由なのです。

自我を押し殺した料理といえば言いすぎかもしれません。
「こだわりがないのがこだわり」。ただ、三沢氏の話を聞いた今なら、冒頭のそんな言葉の真意が腑に落ちるのでした。

「多様な部位がつながっているから食感も様々」と、本部牛の首肉はミンチと極粗挽き肉を混ぜたハンバーグに
ハンバーグに添えられた、沖縄で試験的に栽培されている胡椒。取材2日目には名前を出さないことを約束し生産者のもとへ
取材した12月某日では沖縄で100年ぶりの気温を記録。このロケーションがまた料理を美味しくするのは言うまでもない

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