商店街はダイバーシティ。箭内道彦が語る商店街×東京

特集

商店街は大人のプチテーマパーク!

2016/11/30

商店街はダイバーシティ。箭内道彦が語る商店街×東京

実は“商店街育ち”という、クリエイティブ・ディレクター箭内道彦。地元では苦手だった商店街のおせっかいな人間関係が、東京で暮らす今は温かく感じるという。「商店街は街のコミュニティの中心」と彼が話す、その理由とは。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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箭内道彦、商店街の魅力を熱く語る!

原宿のオフィスにてお話を伺います

「東京メトロ」などのCMや、地元・福島で開催する「風とロック芋煮会」といった音楽イベント、今年4/1に開局した「渋谷のラジオ」まで。常に世の中を巻き込み、なんだか面白そうなことを発信している箭内さん。実は、実家が商店街の中のお店だった!ということで、その魅力を探るべくインタビューを敢行。これを読んだら、きっと商店街が好きになりますよ。

商店街の魅力を語ってくれたのはこの人

箭内道彦

箭内道彦

クリエイティブディレクター


1. 商店街に漂う心地よい“ホーム感”

「初めて行くところでも“ただいま”って感じがする」
  

ーー箭内さんは普段、商店街に行かれたりするんですか?

箭内道彦
箭内道彦
買い物に出かけることはないけれど、そもそも僕、実家が商店街で店をやってたんですよ。福島県郡山市の「中央通り商店街」。だから自分の商店街体験としてはそれが大きいですね。

ーー商店街で生まれ育ったというわけですね。

箭内道彦
箭内道彦
うちはお菓子屋と牛乳屋をやっていました。自分が商店街の中で育ったからか、どこの土地で商店街を見ても“ホーム”のような感じがするんです。店同士の仲のよさとか、売れているのかなとか、内部のドラマも気になったり(笑)。

ーーご実家があった商店街にも、さまざまな人間模様が?

箭内道彦
箭内道彦
立ち退きにあっちゃってうちの店はもうないんですけど、僕は3年前から祭りに復帰して。久しぶりに町内会に参加してみると、「大きくなって」なんて言われるのはもちろんだけど、瀬戸物屋の長男が若連のリーダーになっていたり、魚屋の兄ちゃんが代替わりしていて、ついでに同級生がそこの嫁になっていたり。そういう人が代々紡いでいる歴史みたいなものも、商店街のエネルギーだと思う。

ーー商店街って生活と密着した場所ですもんね。

箭内道彦
箭内道彦
思い返せば、母校の東京藝大近くには谷中銀座があり、高円寺に住んでいた時は商店街が帰り道で、現在の事務所も原宿の商店街の中にある。“ふるさと”とはまた違うんだけど、商店街って初めて行く場所でも「ただいま」と言いたくなる。住んでないのに地元感があるというか。店やお客さんによって、そういう空気が作られているんでしょうね。

谷中銀座商店街

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

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2. 街&人のコミュニティが大切

「東京にこそ田舎のような、おせっかいなコミュニティが必要」   
          

ーーオフィスを原宿通り(通称:とんちゃん通り)という、これまた商店街に構えたのはなぜだったんですか?

箭内道彦
箭内道彦
街の人の顔が見えるから。窓が開かないオフィスで世に発信するCMを作るより、この辺を歩いて、通りすがりの若者に何をしたら驚くかな、喜ぶかなって思いながら企画する方がやりやすいと思ったんです。以前はこの周辺で4つほど小さな会社スペースを借りていたんですが、会社間を行き来する時に通るこの商店街を“世界一贅沢な廊下”って呼んでいて、それはすごく面白かった。
原宿とは思えない下街感の漂う通り。ファッション、雑貨、飲食など人気店も多いエリアだ

ーー原宿の商店街というと、店同士の繋がりは薄そうなイメージですが...。

箭内道彦
箭内道彦
原宿のど真ん中なのに、実はかなり田舎なんですよ。すぐそこに「エイト」っていう、日本で一番リーゼントが上手いと評判の理髪店があるんですけど、そこの店主がいつも僕の金髪を褒めてくれるんです。一度も彼にヘアセットしてもらったことはないけれど(笑)。この前は斜向かいのレストランの店主に閉店後呼び止められて、一緒にワインを飲んだりして。こうやって顔なじみができると、ホッとしますよね。一人で生きているんじゃないんだなって。
竹下通りやラフォーレ原宿、表参道にも近い通り。「原宿通り」だが、別名「とんちゃん通り」として親しまれている。箭内さんはこの通りにこだわって事務所を構えている

とんちゃん通り(原宿通り)

住所=東京都渋谷区神宮前3丁目付近
アクセス=JR原宿駅から徒歩約7分、東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前〈原宿〉駅から徒歩約5分

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

ーー以前の箭内さんは「田舎的なおせっかいな人間関係が苦手」とおっしゃっていたので、そういったエピソードはちょっと意外です。

箭内道彦
箭内道彦
若い頃はコミュニケーションなんて面倒だと思っていたのに、最近は“人好き度”がどんどんアップしてますね(笑)。年齢のせいかもしれないけれど、東日本大震災が起こったことが大きいんだと思います。人と人が繋がらないと乗り越えられないことが、たくさんあるんだなって実感した。
箭内さんが付けているのは東日本大震災後に発足した「東北ライブハウス大作戦」のラバーバンド

ーー今年、箭内さんが立ち上げた「渋谷のラジオ」は、まさに繋がりを作るメディアですよね。

箭内道彦
箭内道彦
東京にこそ、田舎のようなコミュニティが必要だと思って。東京は隣人の顔も知らない、なんてイメージがよく語られるけど、実際に一人一人と話すと本当に温かいし面白い。「渋谷のラジオ」は本当は人間くさい都会の街や、互いの顔が見える場になったらいいなと。毎週木曜日には『商店部』と題して、渋谷の各エリアの商店街の人が出演する番組もあって、ローカルなトークがけっこう面白いんですよ。
とんちゃん通り入口付近の壁はステッカーやグラフィティでいっぱい。ここに集ってきた人の軌跡のようなものを感じる

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3. 商店街は現代の都会に必要な存在

「商店街は“ダイバーシティ”を象徴する存在であってほしい」        

ーー「商店街」はこれからの世の中にも残っていくと思いますか?

箭内道彦
箭内道彦
残りますよ! うちの母親が昔、郡山に初めてコンビニが出来た時に「あれはすぐ潰れる」と断言したんです。物を売り買いする場所でも、人は心や会話を求めるし、それが必要だからって。結果、ハズレたんですけど(笑)。

ーーコンビニはコンビニで便利ですもんね(笑)。

箭内道彦
箭内道彦
でも確かに、毎日会う顔なじみがいて、会話があって、歴史があって。商店街って街のコミュニティの中心なんじゃないかな。一年中やっている縁日のような。

ーーコンビニに慣れた世代には、逆に商店街での買い物体験が新鮮に感じるかもしれないですよね。

箭内道彦
箭内道彦
最近「写ルンです。」やカセットテープが再燃してると聞くけれど、これは最初のブームを知らない世代が消費者としてデビューして、我々が“もう古い”と思うモノゴトを先入観なく面白がっているからだと思います。商店街で言えば、人と挨拶して買い物することをアトラクションとして楽しむみたいな、新鮮な楽しみ方ができるかもしれない。“失われていくものと思わない世代”が、今後の商店街を輝かせるかもしれないですね。

ーー箭内さんにとって、商店街ってどんな場所であって欲しいですか?

箭内道彦
箭内道彦
いろんな店があって、いろんな人がいる、ダイバーシティを象徴するような場であって欲しい。欲しいものがそろうとか、人情味があるとか、B級グルメがおいしいとか、商店街の個性もさまざまじゃないとつまらない。めちゃくちゃ頑固でキライな客には口をきかない!くらいの店主がいても面白いと思いますよ。僕らお客は「その親父がどうしたらニコッとするかな」って、考えるくらいでありたいですね。
いろんな店があって、いろんな人がいる。商店街は街に必要です(箭内)

取材メモ/「商店街っていいよねぇ」としみじみ言っていた箭内さん。ピピッとレジをするだけの買い物もいいけれど、自分の住んでいる場所に一つでも、“地元感”を味わえる商店街があると楽しいかもしれません。

取材・文=井上麻子/撮影=斉藤大地/構成=栗山春香

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