犬養裕美子のお墨付き! 国産の素材にこだわる広東料理の店

犬養裕美子のお墨付き! 国産の素材にこだわる広東料理の店

2016/11/10

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第15回は 。

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

圧倒的に味が違う“放血神経締め”の魚

mod['contents3']
宮田シェフは大阪辻調理師専門学校卒業後、職員として残る。その後、東京・丸ビルの「福臨門酒家」で2年、世田谷「火龍園」10年、さらに「三笠会館」などを経て2013年8月に独立

初めてここの蒸し魚を食べた時の衝撃は忘れられない。

それは長崎五島列島のカサゴだった。丸ごと蒸してネギを添えたオーソドックスな広東料理だったが、テーブルで骨を外して食べやすくとりわけてくれる。サービスの手際の良さも素晴らしかったが、ホロリと取れる身の美しさ、そして口に含むとほんのり甘いカサゴの味わいが口いっぱいに広がった。

前菜盛り合わせ3種1550円。その日によって、内容は変わるが季節の前菜から組み合わせる。自家製干し牡蠣、関サバで作る〆サバ、自家製の泡菜(乳酸発酵させて漬けた野菜のピクルス。酸っぱくなくまろやかな味

それは刺身でも、焼き魚でもない、蒸すという中国料理の調理法だからこそできるジュ―シーなおいしさだった。鮮度が違う、と思ったら「うちに届いて今日で6日目です。2週間は十分に熟成させておいしくします」とオーナーシェフの宮田俊介氏。こんなことが可能なのは魚の処理の仕方にある。

奥が点心4種盛り合わせ650円。手前・台湾名物・胡椒餅1個300円(2個から)、北海道の本ししゃもの春巻1本500円。本ししゃもは11月いっぱい

点心、紹興酒…中国料理の魅力を広げる

日本の魚を扱う技術は世界でもっともていねいで繊細という定説がある。特に死後硬直を遅らせる“神経締め”という技術は鮮度を保つ上で重要な工程だ。「うちの魚は、さらに鮮度にこだわる業者さんから“放血神経締め”という手のかかる処理を施して送ってくれるんです」。しっかり血抜きをした上で締めるというひと手間が別の次元のおいしさを創り出す。

クロホシフエダイの広東風姿蒸し。これは大きいので一尾3300円。鮮度抜群の魚にくわえて、その味を引き立てる醤油に濃い口、薄口、シーズニング、金沢の魚醤・いしるを使用。四川風の“煮込み”も選べる

メニューを見ればオニオコゼ、イシカキダイ、クロホシフエダイ、グレ、アカハタなど関東では聞きなれない魚がズラリと並ぶ。海鮮が売り物の広東料理とはいえ、このバラエティさは日本でなければ、そして宮田シェフのように魚のクオリティにこだわらなければたどりつかない。さらに言えば、丸ごと一匹で2000円から4000円(3~4人前)の値段では到底出すことはできないだろう。

「この値段で出すのは正直採算的には厳しいですけど、この味を知ってしまうと他の魚を使う気になれません。だからと言って、魚だけ高くしても他の料理と釣り合わない。とにかくこのおいしさを知ってほしいんです」(宮田シェフ)

松坂ポークのスペアリブ オーブン焼き、ココナッツ風味2000円。肉料理もうさぎを使ったり、ホルモン系を使うなど個性的

魚の話でテンションが上がってしまったが、落ち着いてこの店全体を見まわしてみよう。

ロケーションは中野駅から14~15分、高円寺駅から17~18分。歩けばけっこうな距離だ。早稲田通りに面した入り口は看板以外はシンプルなドアだけで、初めてでは見過ごしてしまいそう。しかもドアを開けても、店の全容が見えるのはさらに奥。手前にはボックス席が2つ、店はさらに奥という複雑な造り。「ビル自体がL字型で。奥は意外に広く、個室1を含め28席もあるんです。何とか席数を少なくしようと考えてこの造りになったんですが」。当初は奥さまの可奈さんと二人でやる予定だったが、さすがにこの席数では、キッチンはシェフ、サービスは3名という体制となった。

豚肉と高菜のあんかけ蒸しご飯(夜)600円。料理でお腹いっぱいでも麺飯を欠かせない人のために麺飯料理を少しだが用意している
mod['contents3']
宮田シェフと奥様の可奈さん。調理師学校時代の同級生

料理はシェフ一人、といっても実は可奈さんも元料理人。同じ調理師学校を卒業し、可奈さんは点心師として活躍してきた。メニューにはシェフと二人で考えた点心が豊富に揃っている。また、可奈さんは紹興酒やワインの担当でもあり、料理に合わせた楽しみ方を提案してくれる。

「紹興酒も地方によって甘い、酸っぱい、さっぱりなどいろんな味があるんですよ」(宮田シェフ)

紹興酒は約20種。可奈さんが担当。「いろいろ試したい方のために3種のテイスティングセット930円を用意しています」

比較的早く出てくるおつまみや前菜とお酒を楽しみながら、メインの魚や肉で盛り上がり、あとは〆の麺飯(夜の量は少な目)、デザートまで好きなように楽しめる。アラカルト中心だが、広東料理の店ならお決まりのフカヒレやアワビなどの高級乾物料理は、レギュラーメニューにはない。

担々麺600円。ゴマ風味のスープが好評。昼は量も多く800円。夜は半量

「海鮮にこだわった店をやりたかったので…。もちろん事前に予約を頂ければお出しできます」(宮田シェフ)

最初はふつうの中国料理店と違うスタイルに少し戸惑うが、魚好きには、まさに「目からウロコ」。こんな中国料理、魚料理もアリです!

奥のダイニングは空間としてはゆったり。平日は会社帰りのグループ、週末は家族連れでにぎわう
こんなにゆったりした接待向きの個室もある

Sai(サイ)

住所:東京都中野区野方1-6-1
電話番号:03-6454-0925
営業時間:11:30~14:00LO(土・日12:00~)、18:00~21:30LO
定休日:月曜、日曜不定休
予約:要予約

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

この記事を書いたライター情報

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

犬養 裕美子 が最近書いた記事

おすすめのコンテンツ