落語対談「初心者はホール落語がおすすめ」の理由とは

2016/11/16

落語対談「初心者はホール落語がおすすめ」の理由とは

12月16日(金)COREDO落語会が開催。今回、この催しのプロデューサーである山本益博氏と柳家権太楼師匠に「落語の楽しみ方」について話しをしていただいた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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落語を気軽に楽しむならホール落語がおすすめ

「もっと多くの方に生の落語を楽しんでもらいたい」との思いから、多くの観客を収容できるホールで開催されるホール落語。地方では地元のホールなどを利用して落語を楽しむイベントが開催されることが多いが、日本橋COREDOでも定期的にホール落語が開催されている。今回は「COREDO落語」のプロデューサーである山本益博さんと、落語家の柳家権太楼師匠のおふたりに初心者でも落語を楽しめる方法をうかがった。

山本益博(写真左):料理評論家。料理だけでなく、芸事や職人の技を愛し現在は落語会「COREDO落語会」もプロデュース 柳家権太楼:落語家。今回のCOREDO落語会でもトリを務めるなど落語界の第一人者

落語家は座っているから
どこにでも行ける

山本益博さん(以下:益博さん)
山本益博さん(以下:益博さん)
今回は「落語を見るのは初めて」という方のためにいくつかお話いただきたいんですけれども。落語家さんは常に座布団の上で話してらっしゃいますが、あんな不自由な格好で老若男女、森羅万象を表現していらっしゃいますよね。
柳家権太楼師匠(以下:権太楼師匠)
柳家権太楼師匠(以下:権太楼師匠)
立ってやるよりずっと自由なんですよ。座布団というひとつの決められたものがあると、そこから発想するものは無限大に広がっていくんですね。立ってやるより座布団に座ることによって、すべての大きさのものを表現できるんですね。
益博さん
益博さん
以前、「座ってる方が声が出しやすい」と言われてましたね。
権太楼師匠
権太楼師匠
落語の声はお尻から出すんですね。よく大きな声を出すときは「腹に力を入れて腹から出せ」と言われますが、あれは立ってる人の喋り方。政治家さんなんかはそうかな。

座ってる場合は足腰がちゃんとしてないと声が出ないんですね。お尻から声を出す落語家は足腰がちゃんとしてないといけない。だからぼくは毎日足腰を稽古してます。今日もここに1時間半くらい歩いてきました。僕は毎日どんなときも1時間半くらい稽古しながら歩いている。そのときは足腰の稽古だと思っている。

落語での扇子は使い方で無限大になる

益博さん
益博さん
落語では扇子を使っていろんなものを表現しますが、あれは師匠から稽古でおそわったときにきちんと正確に覚えるものなんでしょうか。
権太楼師匠
権太楼師匠
稽古で覚えるというよりも、脇から盗む。そのために落語は前座をやるんですね。前座さんって高座返し(座布団返し)をするためにいるんじゃなくて、舞台の袖から人の芸をずっと見るためにやるんですね。前座を務めながら「こうやって使っているんだ」と覚えるんですね。あとは先輩から教えていただいたり。

扇子は持ち方や扱い方で槍や傘、筆に見えたりしますよね。扇子は無限大なんですね。噺の中で「この傘かりるよ」と言って手にした扇子のどこを持つかで長さも表現できるんですね。お客さんをどれだけ空想させられるか。
益博さん
益博さん
つまり、見る方も想像力を働かせないと落語は面白くない。現代の人は落語が楽しまれていた江戸時代とは縁遠いわけじゃないですか。江戸時代のことを伝えようとする場合、どういう工夫をするんですか? たとえば長屋ひとつ説明するのに。
権太楼師匠
権太楼師匠
細かく状況の説明をしていると、落語ではなく講釈になりますね。だから「あなた方が想像してください」となる。落語の持つその冷たさ。聞き手が自分で状況を想像していく、落語はそこがかっこいいんだと思うです。芝居は映像美、綺麗。すべてが所作で綺麗、それが歌舞伎の魅力だと思ってます。
お箸を手にとり、扇子を持つ手の位置を変えることで刀に見える様子を再現する権太楼師匠
権太楼師匠
権太楼師匠
落語はそのへんのところを、お客さんに想像させるんですね。座布団の上に座ってしゃべることで噺を聞いているお客さんたちを時間も空間も飛んで連れて行く。最初、お客さんはとまどうかもしれないけれど、そこを面白がれるようになると落語の魅力にはまっていく。

地方で落語を楽しむメリットとは

益博さん
益博さん
たとえば「笑点」などで落語に興味を持って、落語が好きになりはじめた人、一度落語を生で聴きいてみたいと思った人はまずどこに行けばいいんでしょう? 寄席は落語に慣れた人がいくと、あの客席の雰囲気を含めてほんとにいいなと感じると思うんですが、僕はやはり一回目に「ああ、いい落語を聴いたな」と思っていただくことを考えたら寄席じゃない方がいい気がしています。
権太楼師匠
権太楼師匠
難しいですよね。。。(笑)。その人の好みになるでしょう。

「落語を聴きたい」としたら、ホール落語に来ていただいて、たっぷり一席聴いていただく方がわかりやすいかもしれないですね。僕らが地方に行って落語会をやるときは、たいてい一人会、二人会になるんですね。すると二席ずつやることになるんですが、そうなるとネタとしても大きなネタ(長い話)になるんですよ。地方でそういう落語を聴いた方が東京に来られて、寄席で落語を聴くと「なんでこんなに一人の噺家の時間が短いの?」と思われてしまいますね。
益博さん
益博さん
そうするとやはり地方の方はラッキーですね。落語に触れる回数は少ないけれども、その地方で行われる落語会に行けば、落語を長い時間たっぷりと味わえる。いまは札幌や福岡などいろんな都市で落語会をやっていますね。僕が日本橋でやっている「COREDO落語会」も、いままで落語を聴いたことがない方に落語の魅力を長い時間生で味わっていただこうと思ってやっているんです。落語って、大喜利みたいなものと混同している部分があるじゃないですか。「今日の落語を聴いてなんだか感動しちゃった」と言ってくれる人がいると、それが落語なんだよ!って嬉しくなります。
落語の楽しみ方を語り合うふたり
益博さん
益博さん
権太楼師匠がトリを取るときはどういうことを考えているんですか?
権太楼師匠
権太楼師匠
あのね、ネタは実はあれは仲間に見せているんですよ。(たくさん)ネタを持っておくんです。その日、自分がやりたい噺があっても、前座の人間に同系が出てくるネタをされたらほかのネタにしなきゃいけないし。
益博さん
益博さん
同系とは「ネタがかぶることもだめ」だけれども、「話の中に出てくる登場人物たちもかぶせてはいけない」ということですね。たとえば若旦那が出てくるネタを前の誰かにやられたら、その日はもう若旦那が主人公のネタはできない。一番最後に上がる人ほど制約があるんですよね。だいたいサッとすぐできるようなネタはいくつくらいお持ちなんでしょうか。
権太楼師匠
権太楼師匠
サッとすぐできるのはだいたい50くらいでしょうね。
益博さん
益博さん
50もあるんですか。
権太楼師匠
権太楼師匠
そうですね。前座でどんなネタが話されるかわからない寄席のトリを普段からとっているし、当日までどんなお客さんがいるのかもわからないし。

みんなが幸せになる「儲かり噺」とは

益博さん
益博さん
権太楼師匠はどういう噺がお好きなんですか?
権太楼師匠
権太楼師匠
みんながハッピーになってくれる話がいい。これね「儲かり噺」っていうんですよ。私もお客さんも儲かってるわけじゃなく、噺の中で儲かっているんですね。

「井戸の茶碗」という 噺があります。

仏像を渡して、200文受け取って、そしたら仏像の中に50両のお金が入っていて、「拙者のものではないからもとの持ち主に返せ」となって、相手は「もう売ってしまったものだからいらない」となって、その仲介役となった人がではその50両をこちら側で分けようとなって。そしたら律儀な男だからその代わりに自分が持っている茶碗を渡そうということになって、その噂を聞いた細川のお殿様がその茶碗を見て、それが「井戸の茶碗」という名器ということがわかって、その茶碗を300両でお買い上げになって。それを150両ずつふたつにわけようとなったら「ただで150両もらうわけにはいかないので娘を嫁にもらってくれ」という話になるという。
益博さん
益博さん
はい。
権太楼師匠
権太楼師匠
登場人物みんなにいいことがある。聴いているとなんだか儲かった気になる。これを「儲かり噺」って言うんですよ。

みんながハッピーになっていくじゃないですか。みんながいい気持ちになって帰ることができる。
権太楼師匠
権太楼師匠
今度の「COREDO落語会」で話す「子別れ」もそう。いい話なんですよ。みんながハラハラどきどきしていたものが最後の鰻屋で家族がまた一つになる。もとに戻って平和な家庭を生きるだなぁって。心の儲かり噺なんですね。

私はそういう話をみなさんの心の中にスーッと持って言って、全てを説明することなく、その時味わった気持ちを帰りの電車の中で考えていただく、その余韻が「また落語に行きたいな」と思ってもらえるんじゃないかなと思います。
今回の対談は鰻の老舗「野田岩」で行った(店舗データは下記参照)

人気、実力ともトップの4人の落語家が登場

今回対談でご登場いただいた柳家権太楼師匠のほか、柳家喬太郎、柳家花緑、春風亭一之輔らが登場。豪華メンバーによる夢の共演を見逃さないで。

柳家権太楼師匠は「長講子別れ」を披露
柳家喬太郎師匠は「うどん屋」
柳家花緑師匠は「長短(ちょうたん)」
春風亭一之輔師匠は「蒟蒻(こんにゃく)問答」

COREDO落語会
12月16日(金)18:30開演(18:00会場)

会場:COREDO室町1日本橋三井ホール4F
住所:東京都中央区日本橋室町2-2-1COREDO室町4F
開演:18:30(開場18:00)
料金:5000円(税込、全席指定)
チケットぴあ Pコード453-803(電話0570-02-9999・24時間)
お問い合わせ:03-6263-0663

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※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

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