音楽プロデューサー今井了介が教える、今だから楽しめる家と音楽

音楽プロデューサー今井了介が教える、今だから楽しめる家と音楽

2020/05/12

識者や達人のみなさんに「Yahoo!知恵袋」に寄せられた投稿の中から「StayHome」に関する質問を投げかけ、「StayHomeの楽しみ方」を教えていただきました。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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音楽プロデューサー・今井了介さん流「家時間の音楽」の楽しみ方

みんなの知恵を共有し合うサービス、「Yahoo!知恵袋」は2005年のスタート以来、日夜たくさんの質問が寄せられている。その中から「StayHome」をテーマにしたみなさんからの質問をピックアップ。

今回は、安室奈美恵の「HERO」や、TEE/シェネルの「Baby I Love You」など数多くの名曲を世に生み出してきた、音楽プロデューサーの今井了介さんに「StayHomeを音楽で楽しむ方法」をうかがいました。

今井了介さん/ヒットチャートを賑わせる数々の名曲を手掛けてきた音楽プロデューサー。今話題の飲食サービス「ごちめし」を運営するGigi株式会社の代表取締役でもある

「知恵袋」に届いた質問はこちら

みんなの知恵共有サービス「Yahoo!知恵袋」は2005年にサービスを開始

知恵袋ユーザーからの質問

『コロナに負けないために聴きたい音楽は何ですか? ジャンルでもなんでも構わないのでみなさんのオススメを教えてください!』(「Yahoo!知恵袋」から抜粋)

今井了介さん
今井了介さん
「ジャンルではないですが、僕は今だからこそ『ユナイト(=団結)』というキーワードに注目しています。コロナの影響で、今は産業としての音楽はライブができないなど大変な状況。そんな中でも、アーティストのみなさんはファンに情報を発信し続けています。例えば星野源さんがインスタグラムで公開した『うちで踊ろう Dancing On The Inside』が話題になりましたよね? こうした活動を通して見える音楽家同士がつながりや、ダンサーさんとのコラボは、ファンからすればたまらないのではないでしょうか?」
「アーティストの私生活を垣間見れるし、コラボ作品で交友関係が見えたり。ファンとのやりとりもそう。これは非日常ゆえの楽しみ方なんじゃないでしょうか」(今井さん)
今井了介さん
今井了介さん
「仲間内の話になっちゃうんですが、最近、三浦大知くんや橘慶太くん(w-inds.)、AIちゃんなどたくさんのアーティストが参加した『Be One』という曲が発表されました。弊社のチーム(TinyVoice,Production)のプロデューサーであるUTA(BTSや三浦大知、嵐の楽曲を手掛けるヒットメーカー)が『音楽で遊ぼう』ということで作ったピアノのフレーズに、いろんなミュージシャンが楽器や歌を重ねて。その輪はどんどん広がっていったんです

4月19日にYouTubeで公開された「Be One」のミュージックビデオは、5月7日時点で40万再生を超え、多くの人を勇気づけている。

今井了介さん
今井了介さん
「参加してるアーティストは事務所がバラバラ。事務所が動いたわけじゃなく、アーティストの交友関係の中でこの作品は生まれました。また、5月5日には宮本亞門さんがプロデュースする『上を向いて歩こう』のダンスカバーがYouTubeで公開され、僕は編曲で携わらせていただきました。亞門さんとは今回初めてお仕事をご一緒させていただいたのですが、同業のヒャダインくん(前山田健一)から『繋いでいい?』って連絡がきて紹介してくれたんですよ。あと、ボーカルのISSAくん(DA PUMP)と連絡をとったのも10年ぶりぐらい(笑)。こういうときだから繋がれた人たちもいて、みんな音楽を純粋に楽しみながら誰かを応援している。それって素晴らしいことですよね?」
「事務所の垣根を越えた、今でしかできないコラボレーションが人の心を繋いでいるのを感じます。『ユナイト』という、人と人との繋がりを大切にして誰かを応援できるのは素晴らしいことですよね」(今井さん)

zoom飲みならぬ「zoom聴き」

今だからこそ聴きたい音楽を教えてくれた今井さん。話を聞く中で、最近流行のzoomを使った音楽の新しい楽しみ方もあるそうです。

今井了介さん
今井了介さん
「最近『zoom飲み』がかなり流行っていますよね? 使い方が合ってるか怪しいですが(笑)、zoomの画面共有でサウンドの設定をいじることで、画面だけでなく音も共有できるんですよ。なので、友人と飲みながらでもYouTubeを共有して『この新譜いいよね』みたいにおすすめし合える。同じ曲を聴いて同じ空気を感じるのは楽しいので、みんなぜひ一度試してもらいたいです。音楽を共有すると相手の声が聞こえづらくなるという弱点もあるんですが(笑)」

自粛が明けたら名曲がたくさん生まれる?

今井了介さん
今井了介さん
「ITやガジェットの進化によって、家で音楽を楽しむ方法は多彩です。それに音楽を作る立場からしても、この進化はすごいんですよ。例えば、『Source-Live』やYAMAHAの『NETDUETTO』など、インターネットを通してリアルタイムに(限りなく近く)音声を通信できるソフトだったりが出てきています。それを使えば、スタジオにいる人と自宅にいる人が同じタイミングで音を鳴らせるのでセッションに使えたり。そうすると、互いに家にいながらでも楽曲作りができちゃうんですよ」
楽曲作りの話になると一際笑顔で教えてくれた今井さん
今井了介さん
今井了介さん
「プロデューサー目線で言えば、以前までは僕の家にアーティストが来て、トラックやピアノを弾きながらアーティストが詞やメロディーを考えていたんだけど、僕がベーシックなトラックだけ作って、zoomで会話しながらお互い同じGoogleドキュメントを開いてその場で歌詞を書いたり。もちろん対面の良さはあると思いますが、ITの恩恵を受けられる時代になっています。5G時代になれば、音のやりとりはもっとパワーアップするでしょうしね。物理的な距離が障壁にならないということは、超絶にうまいけど遠くに住んでいるギタリストと一緒に楽曲を作りあげることもできてしまう。でもこういったことって、音楽業界に限った話ではないと思うんです。今この時期にIT環境などを整えることで、自粛が明けたらそれまで以上に効率的な働き方や発想が出てくるんじゃないでしょうか」
スタジオは別にあり、今井さん宅の作業スペースはミニ鍵盤とPC、安価なスピーカーぐらいの環境。ここで安室奈美恵の『Hero』やリトルグリーモンスターの『ECHO』が生まれた

今井さんによると、曲もできていてアレンジも完成していて、あとはスタジオで録ってミックスするだけという段階まで進んでいる楽曲もたくさん。そして、今はスタジオでの大人数のセッションは難しいため、コロナが終わったら、一気にレコーディングして仕上げるという算段だといいます。

今井了介さん
今井了介さん
「今って、イベントやライブができない状況ですよね? でも音楽家は、ステージの大小に関わらず早くファンの前でやりたいと思っています。その時に新しいものを何か届けたい思いから、新曲を作ろうというムードは高まっています。我々のTinyVoice,Productionというチームは、作曲家、作詞家、プロデューサーという『曲作り』のチームなので、今はフル稼働してアーティストや事務所さんと連絡をとっています」

今井さんの話を聞き、自粛明けには新たな名曲がどんどん世に出てくるかもしれないと期待。そんな未来に思いを馳せながら、今を乗り越える糧にしたいですね。

ヒットメーカーが教える楽曲作りのススメ

「Yahoo!知恵袋」には自粛をきっかけに音楽作りを始めようと思っている人や実際に音楽づくりを始めたという人からの投稿も多いです。そういった人たちに向けて、プロから見た楽曲作りのコツを聞いてみました。

今井了介さん
今井了介さん
「楽曲作りの考え方は人によってバラバラだと思うので、あくまで僕の場合ですが、早起きすること。曲を夜にずっと考えて書ききる人もいますけど、僕は進まないと思ったらとにかく寝てしまって、早朝に起きて食事をとらずに作曲をします。夜に書いたラブレターを次の日に読み返すとすごくサムかった経験はありません? それって作曲活動でも言えると思うんです。夜に盛り上がって書いた曲が翌日聴いてみると仕上がりの意味がわからなかったり(笑)。経験上、午前中の方が発想のスピードや冷静さが高いと思います」
今井さんが2019年10月に上梓した『さよなら、ヒット曲』。音楽シーンにおけるプロデュース論を語る中で、今井さんが考える楽曲作りのメソッドも紹介している
今井了介さん
今井了介さん
「ちなみに、世界的に著名なラッパーのエミネム先生も9〜17時で仕事をして、そこからは家族とごはんを食べたりするそうですよ。ヒップホップってアウトサイダーなイメージがついて回りがちですが、エミネムに関しては全然そんなことないんですよね。僕も楽曲制作を朝、昼に打ち合わせ、午後に会計処理といったように『作業的なこと』を夜に回すようにしています。コロナの今、テレワークの人は通勤時間が節約できる。その時間を利用して、朝に楽曲を作ってみるのもいいかもしれないですね」

音楽プロデューサーが「食」のサポートにチャレンジするワケ

ここまで音楽に関する質問にプロ目線で答えてくれた今井さんですが、「ごちめし」という飲食を応援するwebサービスを提供しています。音楽プロデューサーがなぜ食に関わるようになったのか、そこには、音楽を力に真剣に向き合う、今井さんの思いがありました。

今井了介さん
今井了介さん
「『ごちめし』を始めようとしたきっかけは3.11の頃に音楽の無力を感じたから。もちろん音楽の仕事は自分のライフワークですし、20年以上やってきて音楽がない生活は考えられないしそれを作る自分が好きです。でも、人が本当に困っているとき、寒いとき、お腹が空いているときって音楽は二の次三の次になる。そこで何もできない自分が悔しくて『ごちめし』を立ち上げました」

「ごちめし」は外食を人にプレゼントして食べに行ってもらうというサービス。それを使った「さきめし」は、食事のチケットを先に購入して落ち着いたら食べに行くというもので、コロナによる外出自粛の影響を受ける飲食店を応援するためのもの。

今井了介さん
今井了介さん
「今は『競争』の時代から、みんなで社会を創っていく『共創』の時代に入っている気がしていて、僕はここ何年か『奪い合うより与え合う』というのをテーマにしています。そして今、コロナの影響で打ちひしがれている人がたくさんいる。そんな中で『さきめし』は、みんなが助け合うためにアクションができる手段になればと思っています」

取材・文=井上良太(シーアール)

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