犬養裕美子のお墨付き! 魚とご飯が旨い店 「元喜」

連載

犬養裕美子のアナログレストラン【Vol.61〜】

2019/04/25

犬養裕美子のお墨付き! 魚とご飯が旨い店 「元喜」

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第66回は雑司が谷『元喜』。

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

和食とフレンチの二刀流店主

「サスエ前田魚店」の魚を仕入れているって? 雑司が谷に良さそうな和食店がオープンすると聞いて行ってみたら、この名前が出てきた。全国の3つ星レストランなど、素材にこだわるシェフがいちばん手に入れたい魚、それが「サスエ前田魚店」のものだ。鮮度を保つための神経〆が評判で、全国から注文が殺到しているらしいが、新規の取引は難しいという。

刺身5種盛り2300円。メイゴ(クログチ)、金目鯛、鯛、スズキ、ホウボウ、本マグロの中トロ

それがたまたま「元喜」の店主・岡部藤夫氏は知り合いが伝手を辿って取引できることになった。しかも3種盛り1800円、5種盛り2300円とリーズナブルだ。「日本人でよかった!と思える料理を出していきたいんです。うちで食べて飲んで、元気になってもらえれば」と岡部氏の願いはシンプルだ。

冷やしトマト 昆布出汁ジュレ600円。昆布出汁にトマトの汁もたして、ジュレ状にかためたもの。見た目はフレンチの前菜だが、和の昆布出汁が効いている

メニューは最初が刺身、続いて一品料理、最後はご飯だ。一品料理には「カリフラワーのムース」や「味噌かつ」など、洋風の料理も多い。実は岡部さんはもともとフレンチの料理人だった。それも修業が厳しいことで有名な店ばかり経験していた。ある時、フレンチのセンスを取り入れた居酒屋を担当して欲しいという依頼があり、和の道に入る。

「素材をいかした和の料理と、日本酒にも合う洋食系料理をアレンジしたメニューを手探りで勉強しました」

その結果、気楽な雰囲気だけど気が利いた料理とお酒の組み合わせは好評で、独立するならこんな店を出そう、と思うようになった。そして2019年1月、自身の店を構えたのだ。

その結果、気楽な雰囲気だけど気が利いた料理とお酒の組み合わせは好評で、独立するならこんな店を出そう、と思うようになった。そして2019年1月、自身の店を構えたのだ。

しらすと筍の炊き込みご飯1合1800円。お米は千葉のふさおとめを使用。初夏にはとうもろこし、秋はきのこなど、季節の味が楽しめる

 おいしい魚、気の利いた料理、そして日本人がもっともこだわるのが、ご飯。毎日、白米2種類、炊き込みご飯は1種類を用意している。「注文ごとに一合ごとに土鍋で炊きます」。注文から35分は時間がかかるが、炊き立てご飯の香り、甘みはいちばんのご馳走だ。ちなみに棚に飾ってあるのは20組ほどの夫婦茶碗。リクエストがあれば好きなものを選べる。

左から「山本」純米吟醸(1合900円)、「上喜元」純米吟醸(1合850円)、「田中六五」(1合800円)、「鳳凰美田」(1合800円)

サービスを担当するのが管理栄養士の資格を持つ山川エリカさん。彼女のサービスは明るくて元気いっぱい。どんなお客様とも自然に会話ができるのは天性のものだろう。その上、日本酒もすすめ上手。「彼女も一生懸命勉強していますが、あの笑顔でお客様におすすめして断られることは、まずないですね」。売り上げUPにも貢献している看板娘なのだ。

右・岡部藤夫さん、左・山川エリカさん。女性一人の常連さんが多いのも彼らの自然体のもてなしが居心地がいいから
副都心線雑司が谷駅から徒歩2分。店内はコンクリートむきだしの広々とした空間。ギャラリーのような雰囲気。ちなみにランチ1000円もものすごくお得なセット

この記事を書いたライター情報

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

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