犬養裕美子のお墨付き!日本ワインと欧風料理、麹町「春風駘蕩」

犬養裕美子のお墨付き!日本ワインと欧風料理、麹町「春風駘蕩」

2017/01/09

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第17 回は麹町

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

女性一人でも安心して通える隠れ家レストラン

まだ21時ごろなのに人通りが途絶えてしまう麹町の裏通り。道沿いにポツリポツリと灯る飲食店の中に「春風駘蕩」と書かれた看板が目につく。その素朴なデザインに惹かれて階段で2階にあがると、店の中もカウンター席と小さなテーブル席が10席。なんだか、身体の力がスッと抜けたようになる。

日テレ通りから少し入ったところ、昼はオフィス街のにぎわい。夜は静かなエリア
手作りのかわいらしい案内板に惹かれて階段を上ると…

店名は「しゅんぷうたいとう」と読む。どんな意味か? 答えは1)「のんびりと余裕あるさま」、2)「春風がそよそよと吹く様子」。190cmと大柄な店主の大塚将央さんが料理をする様子は1)、小柄な奥さまのあゆみさんがワインとサービスする様子は2)。「いえいえ、これでも真剣に仕事に取り組んでいるんですから」と将央さんは半分ふざけて半分まじめに怒ったフリをしても、あゆみさんはいつもニコニコ。二人が作りだす空気は、まさに春風のようにふわふわしているのだ。

店内はカウンター席とテーブル席。オープンキッチンの気軽なスタイル

現在ほど日本ワインが脚光を浴びていなかった5年前のオープン時から日本ワインのみを扱い、リストには北から南まで約60種を揃えている。なじみの薄いワインも多いから、ここでは日替のグラス売りワイン2~3種を試飲させてくれる。そしてボトル売りで安いものは3800円から。ただ、この値段を守るのもだんだん厳しくなっています」と大塚さん。「本来なら海外から運ばれてくる輸入ワインの方が高いと思われますが、実際、日本ワインの値段は決して安いとは言えない」。でも日本ワインには、日本人だからこそ親しみを感じる味わいがある。それが魅力だ。

中伊豆でシダックスが作る「エルドラド 甲州 2013」770円、五味「サンクブラン」は5種類のブドウで作る珍しいワイン。880円。高橋葡萄園「ミュラートゥルガウ」は980円

二人は休日を利用してできるだけ醸造元を訪ね、ワインが生まれた風土を知り、その土地の素材や料理を見ることを実践している。メニューに反映されることもあれば、されないことも。

大塚シェフはイタリア料理、スペイン料理を学び、イタリアでも修業。「地味でも、素材がはっきりわかる料理が好きです」。意外にお菓子も得意!
大塚あゆみさん。「この5年で日本ワインはずいぶん知られるようになりましたが、値段があがっているのが心配。手ごろな値段で飲めるよう頑張っているんですけど」

大塚氏のエライのは、あくまで自分の感覚に合点がいったものしか取り入れないところ。盛り付けにこだわるより、素材の味がしっかりわかること。その代表がポテトサラダだ。「どこのジャガイモ?」と聞くと、そこはあまり重要ではないようで、「これはこのオリーブオイルを味わって欲しい料理なんです」。山盛りになったポテトサラダの上から最後にたっぷりとまわしかけたオリーブオイルは、さわやかなグリーンでピリリとしたウンブリア産。「僕が、イタリアで修業していた時に行っていた場所で、メーカーは『デチミ』。今年、このオイルの生産者が日本にプロモーションに来て、うちにもよってくれました」。日本ワインとイタリアのオリーブオイル。その相性の良さを楽しめるのもこの店ならではの楽しみ方。

ポテトサラダ380円。常連のほとんどがオーダーする一品。この山盛りのポテトをご飯のように軽々食べるファンもいるとか

バルのようで料理が充実。最後のお菓子まで全部手作り

季節の炊き込みご飯。冬はカキとマイタケ。お米はあえて古米を使い、パラパラとした仕上がりに。写真はMサイズ1240円。Lサイズ1860円もあり
ハチノスの煮込み880円。内臓系もきちんと臭みをとってあり、しかもパプリカ、トマトでしっかり煮込んであるので、甘味と酸味が絶妙のバランス
苺のクラフティ580円。アーモンドクリームと苺を一緒に焼いたクラフティの上に自家製のチョコレートアイスクリームを載せて

年間を通して提供されるグランドメニューは、ポテトサラダ380円をはじめ、ハチノスの煮込み880円、佐助豚のロースト1080円、春風駘蕩風リゾット720円、タリオリーニ・イン・ブロード620円。きちんと炭水化物でお腹をいっぱいにできるので、一人客も多いという。

「特に女性のお客さまが来てくれます。ワインも料理もしっかり食べて、最後にデザートも注文してくれます。以前はまったくオーダーがなくて作るのをやめた時期もありましたが、今や、女性のお客様のリクエストで復活です」

大塚シェフ、実はデザートは得意ということで、今後は種類も増える予定だ。

日本ワインの泡ものの中で亜硫酸不使用、一次発酵でパワフルなのがタケダワイナリーの「サン・スフル」。グラス770円

オフィス街のイメージが強い麹町だが、最近はマンションが増え、一人暮らしの住民も増加。カウンター席にはそんな仕事帰りの一人客が、グラスを傾けながら、野菜メニュー、肉料理、最後に炭水化物、好みでスイーツまで堪能。それで一人5000円弱だから。日常に通える店として貴重な存在だ。実は私は以前はこの近くに住んでいたので、時々懐かしく思い出す。また、このあたりに戻って来ようかな。

春風駘蕩

住所:千代田区麹町3-12-9キャナル麹町2F
電話:03-3263-1816
営業時間:18:00~23:00LO(金曜〜1:00LO)
定休日:日曜・祝日 最終週の土曜日は飲み物一杯500円

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

この記事を書いたライター情報

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

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