“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。タ第19回は幡ヶ谷「炭火焼肉まるいち」
犬養 裕美子
レストランジャーナリスト
おまかせコースを焼いて、食べて大満足
最近の焼肉屋はやたらゴージャスで、肉の希少部位を強調する店が多い。そういうギラギラ系の焼肉屋が個人的にはとても苦手。なので、滅多なことでは新店になびかない。それには理由がある。私には「炭火焼肉まるいち」というオアシスがあるからだ。
ここならホルモンも、ジビエも、牛肉希少部位もなんでも揃っている。しかもおまかせコースなら、淡い味から濃い味まで、少量多品種を満喫できるように用意してくれる。
先日は5000円のコースで急なお客様をもてなしたが、肉の種類は17種類。それぞれ2~3切れなので肉の総量はそれほど多くないが、その満足度はお値段以上! 肉だけでなく、野菜がたっぷりつくのもいい。そんなわけで全員大満足であった。
店主の田島一彦さんは、もともとパティシエだったが、食品会社勤務の後、焼き肉、それもホルモンのうまい店で開きたいと思い立った。1999年、東京に第1次ホルモンブームが起きた頃、方南町に店を出した。ウリは鮮度がよく、しかもていねいに掃除をした塩ホルモン。
「においもなく、ホルモン本来の香りと食感を楽しめます」
そんなまじめな営業方針だからあっという間に人気店となり、2005年に東北沢にも出店。メニューも徐々に増えて、ジビエも扱うようになった。
2015年夏には幡ヶ谷に移転した。それと同時にアメリカ留学していた息子の聖也くんが正式に厨房に入り、よりホスピタリティがアップする。客層もおいしいものを食べなれた人たちが押し掛け、いつのまにか「おまかせコース」のオーダーが増えたという。
構成は第1部がホルモン、第2部が豚、鶏、ジビエなど牛以外、第3部が牛の希少部位。その合い間に、多種類の野菜が出される。おまかせコース5000円の具体例を紹介しよう。
ベストの厚さ、大きさで出された肉の“焼き方”を学ぶ
第1部のホルモンは、上レバー(別皿)にハツ、ホルモン、ギアラ、豚ムネ、シビレ、上ミノ。第2部は冬ならではのジビエでエゾ鹿、仔羊、豚ヒレ、セセリ。そして、最後が牛肉の希少部位(ホホ、上ハラミ、とも三角、上ロース、本日のおすすめ1品としてシンシン)。
これだけいろいろな肉を食べられるコースは珍しいに違いない。しかもスタッフはそのひ1つひとつに「軽くあぶって」「じっくり焼いて」と焼き方アドバイスを忘れず、網の上の焼き加減をいつもケアしてくれる。
「そろそろ、大丈夫」「今が食べごろ」「早く食べないと炭になっちゃう」など、親身の指導もこの店ならでは。
「もちろん、初心者のお客様には私たちが焼いてさしあげます。でも、最終的には自分で最高の状態に焼けるようになってほしい」
それが親ゴコロというもの。ちなみにコースに含まれる野菜料理の豊富なことも、自慢のひとつ。
「人気があるのはミョウガや大葉をまぜた薬味サラダ。これが肉の合い間に口の中をすっきりさせてくれると評判がいいですね。うちは肉もたっぷりだけど、野菜が多いから女性も多い」
これだけ量を食べても、やっぱり締めの麵飯ものも欲しくなる。シンプルな素冷麺は和風出汁ですっきり後味。
炭火焼肉まるいち
住所:東京都渋谷区西原2-31-7 内藤ビル2F
電話番号:03-3466-0029
営業時間:18:00~1:00LO(土曜17:30〜深夜1:00LO 、日曜17:30~23:00LO)
休日:月曜(祝日は営業)
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