幻想的な大台ヶ原と山あいの料理旅館・朝日館

幻想的な大台ヶ原と山あいの料理旅館・朝日館

2020/07/09

慎重な行動は必要ですが、ようやく都道府県境をまたぐ移動ができるようになりました。ならば体を開放し心を癒してくれる、絶景と秘湯の山旅はいかがでしょう。奈良県と三重県にまたがる日本百名山の大台ケ原と、山あいの料理旅館・朝日館をご紹介します。とても居心地のいい、心に残る宿でした。

TABIZINE(タビジン)

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秘境・大台ヶ原へのアクセス

大台ヶ原へと向かいます

大台ヶ原はピクニック気分で散策できる山ですが、東京や大阪、名古屋からも遠く、アクセスが不便な場所にあります。車で奈良県から向かうルートは、国道169号線をひたすら南下し、川上村の大台ヶ原ドライブウェイで大台ヶ原ビジターセンターを目指します。また近鉄の大和上市駅から、奈良交通のバスに乗り2時間ほどでビジターセンターに行くこともできます。

この日は雲がかかっていました

紀伊半島南部にありますが標高が1,600m前後なので、冬場は路面凍結や積雪のため4月下旬までは通行止めになります。ですが道路はすべて舗装されており、決して悪路ではありません。晴れていれば大台ヶ原ドライブウェイからも眺望がきくのでしょうが、この日は雲がかかっていました。

大台ヶ原は世界的にも雨の多いところ

大台ヶ原は年間降水量が5,000ミリ、「1年に400日雨が降る」といわれ、世界的にもたいへん雨の多いところとして知られています。アップダウンはゆったりしていますし、木道も整備されているのでピクニック気分で散策ができますが、雨の用意だけは怠らないようにお願いします。

霧に包まれた幻想的な大台ヶ原

ポピュラーな散策路は東大台ルート

もっともポピュラーな散策路は、大台ヶ原ビジターセンター脇の登山口から東側を一周する東大台ルートで、のんびり歩いて3時間半ほどの散策路。ちなみに西側は自然保護・景観保全のために入山規制されており、事前申請が必要です。周囲は吉野熊野国立公園に指定されているのです。

コースも多少のアップダウンがある程度

駐車場の標高はすでに1,500mを超えているので、最高峰の日出ヶ岳1,695mでもわずかに200mほどしか上りません。コースも多少のアップダウンがある程度。木立ちの中を進み、20分ほどでゆっくりと日出ヶ岳への上り坂となります。

雲の向こう側に太陽が見えます

この日は曇り時々雨といった天候。雲の向こう側に太陽が見えますが、雲は厚いようです。

日出ヶ岳の山頂に到着

日出ヶ岳の山頂に到着です。雲がなければ周囲の見晴らしがよいのですが。時折、雲の合間に遠くまで続く熊野の山並みが顔をのぞかせます。日本国内ですが、果てしなく遠い山奥まで来たことを痛感しました。

大台ヶ原ならではの不思議な光景

幻想的な雰囲気

日出ヶ岳から移動し、正木峠と呼ばれる高台に建つと、これまでにも写真で見たことのある、不思議な光景が目の前に広がりました。トウヒなどの樹木が立ち枯れて、笹が斜面一帯に広がっています。霧がたちこめると、周囲は幻想的な雰囲気に包まれました。

木道の階段もきちんと整備されています

正木峠からは少し下り坂です。多少アップダウンがありますが、木道の階段もきちんと整備されていました。

樹木を守るための柵

シカから樹木を守るための柵が各所に設けられています。いま日本の山はシカの食害で、どんどんやせ細っています。シカだけが原因ではないかもしれなせんが、シカは保護され、増えすぎているのです。

かつての同じ場所を写した案内板が

さらに歩いてゆくと、かつての同じ場所を写した案内板があります。1959年の伊勢湾台風によって豊かな森を作っていたトウヒがなぎ倒され、そのまま立ち枯れたといいます。そしてトウヒの下にあったコケが笹となり、シカが笹だけでなく木の皮もはがして食べてしまい、このような光景を作り出していたのです。奇妙で不思議な光景は残念ながら自然が壊れていく光景かもしれません。

東大台ルートのなかでもっとも迫力がある「大蛇嵓」

そして、東大台ルートのなかでもっとも迫力がある場所は「大蛇嵓(だいじゃぐら)」でしょう。パノラマのような谷間に大きくせり出した岩崖です。大蛇の鎌首のような岩が、写真の向こう側に大きく落ち込んでいます。高低差は800mもあるといい、深い谷を目の前にして滑り落ちそうで足元が震えます。

色鮮やかな花々

雨が降ったりやんだりの天候ですが、アケボノツツジやシャクナゲなど、色鮮やかな花々に心が洗われます。どんなに険しい岩場や急斜面でも花が咲くことに感心します。

大蛇嵓からシオカラ谷へ向かう道は急こう配の下り坂

大蛇嵓からシオカラ谷へ向かう道は急こう配の下り坂で、注意が必要です。この周辺にシャクナゲが群生していました。東大台コースの中ではもっとも低い場所になります。吊橋を渡って登り切れば、出発した駐車場に戻ります。

天気は曇りがちで霧も発生

天気は曇りがちで霧も発生し、見通しの悪い散策でしたが、幻想的な立ち枯れの光景は印象深いものです。しかし現在のこの光景が、かつての豊かな自然が失われてゆく姿だったことも初めて知りました。将来、大台ヶ原はどんな姿になっていくのかが気になります。

居心地のよい川上村の料理宿「朝日館」

朝日館 外観

大台ヶ原ドライブウェイからほど近い、川上村柏木集落にある朝日館。創業は明治14(1881)年といい、建物は大正時代のものだといいます。かつては「行者宿」と呼ばれ、大峰山で修業をする方々の「精進明け」の宿だったそうです。修業中は普通の食事を絶って山中を歩き厳しい修行を行います。その行が明けて晴れて通常の食事をいただく宿なのです。

日本家屋の庭園

道を挟んで、母屋と離れの2つの建物があります。宿泊客は離れの建物に通されるようです。斜面に沿って建てられた2階建ての建物で、中庭を囲む形で2階が客室になっています。中庭は明治大正時代から変わらないような、落ち着いた日本家屋の庭園です。

一組ごとに広い2間をゆったりと使えます

客室は一組ごとに広い2間をゆったりと使うことができます。この日の客は私たちだけでしたので、離れの建物すべてを気兼ねなく使うことができました。3年前には外国の方も使えるようにトイレとお風呂を改装したそうです。

森のなかにいるような爽やかな香りのお風呂

じつは朝日館のお湯は温泉ではありません。とはいえ山からの清水を注いでいるといい、サラサラしたお湯はとても軽やかで柔らかいのです。アルカリ性単純泉の美肌の湯といった趣き。また浴槽は高野槙の木を使っているそうです。森のなかにいるような爽やかな高野槙の香りがして絶品のお風呂なのです。

新鮮で味わい深い料理

そして夕食。朝日館は料理旅館と銘打っているだけに料理はそれぞれ、新鮮で味わい深いものでした。なによりも心がこもっているのがよくわかる、素晴らしくおいしい料理でした。

シカ肉の刺身
しし鍋

地元で採れる山菜や野菜、アマゴの塩焼きにシカ肉の刺身、そしてしし鍋と続きますが、どれも新鮮で味わい深く、上品なのです。食材の目利きなのでしょうか、料理の手際なのでしょうか。これほどの山あいで出会う料理とは思えない絶品の味わいでした。ちなみにこれで、ひとり1泊2食で1万2千円ですから、訪ねた甲斐があるというものです。

〆は山菜の炊き込みご飯

そして〆は山菜の炊き込みご飯。イクラがちょっと上にのっています。このときは女将さんが足を痛めていたようで、立ったり座ったりするのに痛そうなのが気がかりでしたが、もう回復したでしょうか。ちょっと心配ですが、これからもお元気で居心地の良い宿を切り盛りしていただければと願いました。

[All Photos by Masato Abe]

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