VAZ・森泰輝さんに聞いた「飽和したSNS時代は熱量が必要」

VAZ・森泰輝さんに聞いた「飽和したSNS時代は熱量が必要」

2020/07/27

人気インフルエンサーやYouTuberを多く抱える、株式会社VAZの代表取締役社長・森泰輝さんにインタビュー。成熟したSNS時代の楽しみ方を教えてもらった。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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SNSで注目を集めるには? クリエイターが集う事務所の代表に聞いてみた

新型コロナの影響で自宅で過ごすことが増えている中、TwitterやInstagramといったSNSにどっぷりの人も多いはず。次々と登場する「バズる投稿」やインフルエンサーを目にして、「一度は自分も……」と思った人にぜひ読んでほしい。人気インフルエンサーやYouTuberを多く抱え、SNS時代のトップランナーである株式会社VAZの代表・森泰輝さんに、現在のSNSを楽しむ秘訣を聞いた。

SNS時代の寵児となった森さんはどんな話を聞かせてくれるのか
森泰輝(もり・たいき)

森泰輝(もり・たいき)

株式会社VAZ 代表取締役社長

SNS人気を高めるうえで大切なのは「HOW」よりも「熱量」

今回は渋谷区にあるVAZ本社にてインタビューを慣行

——現在は一億総発信者時代となっていて、ヘビーユーザーでもライトユーザーでも、多くの人がフォロワーを増やしたいという欲求を持っていると思います。インフルエンサーマーケティングなどSNSを駆使したサービスを得意とするVAZの代表として、どうすればフォロワーを増やしたりバズる投稿ができたりするとお考えですか?

森泰輝さん
森泰輝さん
「まず前提として『SNSとは何か?』を概念としてしっかり理解すべきです。それは数字がどうとかハッシュタグに何を付けるかよりも根本の話。インスタ(Instagram)でもTwitterでもいいのですが、ユーザーがフォローしたりフォローを外したりと毎日のように動かすことは、各々で『街』を作ってるようなものです」

——SNSが「街」というのはおもしろい考え方ですね。

森泰輝さん
森泰輝さん
「ユーザーは創造主であり、街に何を置くか(フォローするか)は各自の自由です。街の中に、すごく興味あるものからちょっと気になるものまで、いろんなものをコレクションしていく。それは自分の好きなタレントやリアルで付き合いのある友だち、はたまた企業やお店かもしれません。そして、インスタにしてもYouTubeにしても、新しい情報や新しい住人(アカウント)は、友だちからの拡散か、SNSプラットフォーム側のレコメンド機能で運ばれてくる。それをフォローするかしないかはまた自由です」
森さん「『SNSって何なのか?』がわかっているかどうかは、発信する立場の人からすると非常に重要です」
森泰輝さん
森泰輝さん
「ハッシュタグの付け方や数字の分析など、『HOW』の部分はテクニックとしてはとても大切。でも、それはあくまで手段でしかない。ユーザーの目的は街を作ることであり、フォロワーを増やしたい発信者は、その街にどうやって足を踏み入れされてもらえるかを考えなければいけません。その意識がHOWに寄りすぎてしまうと『どうやったらレコメンドに出てくるか』『どうやって拡散させるか』という思考に終始するんですが、結局、たまたまだろうが想定通りだろうが、フォローをしてもらったその後は『ちょっと興味ある』から『大好き』と愛されるところまでいかなければ、長続きしないわけです」

——長続きさせるためにやるべきことやコツはあるのでしょうか?

森泰輝さん
森泰輝さん
「毎日投稿するなど『定常的なコンテンツコミュニケーション』を通して、気になるから大好きになってもらえること。結局のところそのためには、『HOW』はあくまで手段と考え、『情熱』や『熱量』をどれだけ注げるかになってきます。するとやはり、自分の好きなジャンルで根気強く続けていくべきなのではないでしょうか。それは企業アカウントでも個人アカウントでも同じです」
インタビュー中、スマホを取り出し注目のコンテンツを教えてくれた
森泰輝さん
森泰輝さん
「簡単な例で言うと、最近、YouTubeでは球団が運営するアカウントがすごく伸びてるんですよ。特に読売ジャイアンツの公式チャンネル『読売ジャイアンツ』とか。動画のタイトルを見てみると「若大将、岡本和真の意外な日課」だったりで、YouTubeで王道的なタイトルではありません。だけど、公開している動画を見るに、ファンがどうやったら好きになってくれるか、何に熱量を持ってるかなどを、ユーザーに憑依して完全に理解するぐらいの精度で『ユーザーが楽しむためには?』を死ぬほど考えているのがうかがえます。それは数字じゃないんです。例えば僕がプロ野球チームのアカウントを運用するなら、ファンを運用チームに加えるし、ファンの思いを必死に聞くことから始めます。それがあったうえでHOWを使う程度。今の発信者に求められるのは、ユーザーと同等かそれ以上の熱量なんです」
森さん「なぜ今こういう思考になるのかというと、単純に今のSNSは、供給が需要を圧倒的に上回っているからです」
森泰輝さん
森泰輝さん
「個人もどんどん発信するし、専門家も、マスメディアもチャンネルを持ってることが当たり前になっています。人の可処分時間は有限であるため、つまらないと判断されたら街にい続けることはできない(フォローを外される)。そういう意味では、人気を保つことはすごく難易度が上がっているんです」

ドミノ・ピザの公式Twitterは飽和状態のSNSマーケティングのお手本

——ドン・キホーテ(25.3万フォロワー)やドミノ・ピザ(40.5万フォロワー)、SHARP(83.8万フォロワー)といった、フォロワーを多く抱える企業の公式Twitterもありますよね。

森泰輝さん
森泰輝さん
「ちょうど先日、僕はドミノ・ピザ公式Twitterの『中の人』と対談させていただいたんです。詳しくは僕が『note』でやっている連載ブログ『森泰輝のSNS道場』をご覧いただければと思うんですが(笑)。そこでも書きましたが、ドミノ・ピザの中の人は本当にすごい熱量を持ってTwitterを運用していますよ。例えば『ニューヨーカー1キロウルトラチーズ』のエピソードなんて、今のSNSのあるべき姿です」

——ニューヨーカー1キロウルトラチーズというと、1kgのモッツァレラチーズがインパクト大のピザですよね?

森泰輝さん
森泰輝さん
「そうです。発売当初は、迫力のあるピザの写真をのせてそれがバズって売れ行きは好調。ただ、やはり1kgもチーズがのったチーズって飽きてしまいますよね? 実際にTwitter上で『美味しいけど、途中で味に飽きてしまう』という声が出ていました」
森さん「つまり継続ユーザーが少なかったんです」
森泰輝さん
森泰輝さん
「でもそこからが、ドミノ・ピザの中の人がすごいところで、飽きてしまうというユーザーの声を拾ってすぐさま調味料とかを買いに走り、自分でいろんなものを試してTwitterで味変を提案したんです。するとユーザーにニーズがあると分かったのでマーケティング責任者に報告したところ、「今度は味変を押し出して、ウルトラチーズを販売しよう」と戦略が決まって、継続的な購買につながった。これがSNS時代におけるブランドマネジメントだと思います。なぜ彼がそこまでできるかというと、ピザが大好きで多くの人に魅力を伝えたいという情熱から、24時間ずっと考えているからなんですね」

——特にドミノ・ピザのような多くのフォロワーを抱えるTwitterなら、ユーザーの声をくまなく拾うだけでもすごい労力がかかるし、そのうえ自分で試して提案までするなんて、とんでもないですね。

森泰輝さん
森泰輝さん
「提案できる発想力やクリティカルシンキング(批判的思考)の能力ががすごく高いのに加えて、努力も惜しまない。ここでいう努力は、どうやってHOWを学ぶかといったことではなく、日々ユーザーと向き合う努力です。だけどよくよく考えてみると、これって伝統的なブランドマネジメントと同じことをやってるわけです。それなのに、広告とSNSの運用を切り離してしまっている企業が未だに多いのは残念ですよね」

SNSを消費する側にはどんな変化が?

——SNSを消費する側についてもうかがってみたいんですが、SNSのユーザーというのはどのように変わってきてると感じますか? ハマっている人に対して『SNSに支配される』といった批判的な声もありますよね?

森泰輝さん
森泰輝さん
「大きな変化として感じるのは、ユーザーの価値観ですね。SNSが使われるようになる以前は、人の価値観は、ほぼほぼ『マスメディア』と『住んでいる地域』に左右されていました。マスメディアは主にTVや新聞で、『これが成功者』とか『これが世間のトレンド』みたいな発信をするため、みんなそれが世間と捉えてしまっていて。地域で言うと、例えば僕の住んでた実家の田舎では、親戚が地方銀行に就職したら親族一同から『もう人生勝ち組だね』くらいに褒められてましたね」
森さん「それが悪いという話ではまったくないけれど、ある種、価値観が特定の情報に影響を受けすぎて井の中の蛙になりやすかったと言えるかもしれません」
森泰輝さん
森泰輝さん
「比べて現在は、マスメディアと地域のほかに『SNS』が価値観を形成する要素の一つになっていて、相対的に以前からあった2つの力が弱まったと言えます。先ほどお話したように、SNSというのは各々がアカウントのフォローを通して自分だけの街を作るもの。芸能人や都会の人など物理を超えた存在をフォローして、その人の考え方とかをインプットすることも可能なので、地域の価値観に縛られなくなるわけです。その反面、最近は『情報源がSNSのみになっているのは良くない』といったことが叫ばれたりしています。それは、SNSのフォローの性質上、自分の望んだ意見や人を集めているのに、それが世界のすべてだと錯覚してしまうことです」
森さん「でも……」
森泰輝さん
森泰輝さん
「それって、SNSの登場以前からマスメディアでも同じだったと思いませんか? ニュースで流れているから、新聞に書いてあるから正しいと思い込む。そうであるならば、本質的には何も変わっていないんです。その解決方法ってシンプルで、マスメディアから情報を得るにしても親(地元)の話を聞くにしても、責任は自身にしかとれないので、自分で考え判断するしかありません。SNSだって同じです。でもそこが難しくて、自分で考えることが不得手だったり苦痛に思う人も世の中にはたくさんいるわけです。だから、SNSにまつわる責任が自分にあることを自覚さえしていれば、自分で考えるでも、価値観を周囲に委ねるでもいいんだと思います」

取材・文=井上良太(シーアール)、撮影=内田龍

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