専用グッズまで作った建築家・谷尻誠さんがハマるキャンプの魅力

専用グッズまで作った建築家・谷尻誠さんがハマるキャンプの魅力

2020/08/12

2020年2月に誕生した、キャンプ用品の新ブランド「CAMP.TECTS」。立ち上げたのは第一線で活躍する建築家の谷尻誠さん。どうして建築家がキャンプ用品を? その魅力とともに話を聞いた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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有名建築家が立ち上げたキャンプ用品ブランドCAMP.TECTS

第二次キャンプブームの到来が叫ばれているキャンプ業界。ソロキャン、女子キャンプといった言葉を聞く機会が増え、近年ますます盛り上がりを見せている。ブーム到来の要因の一つが便利でおしゃれなグッズがたくさん出てきたことで、キャンプが以前よりも手軽になったことが挙げられる。そんな中「CAMP.TECTS(キャンプ テクツ)」というキャンプ用品の新ブランドが登場した。立ち上げたのは著名な建築家である谷尻誠さん。キャンプにハマっているという谷尻さんに、その魅力とブランド立ち上げの経緯を聞いてみた。

今回は谷尻さんと、同じくCAMP.TECTSの生みの親であるプロキャンパーのヒャクタロウさんに話を聞いた
谷尻誠

谷尻誠

建築家

——今回はキャンプ道具の新ブランド「CAMP.TECTS」の発足ということでお話をうかがいたんですが、そもそも、谷尻さんがキャンプをするようになったきっかけを教えてください。

谷尻誠さん
谷尻誠さん
「本格的に始めたのは2年前くらいで、きっかけはヒャクちゃん(ヒャクタロウさん)。僕は都内に住んでいて、歩けるようになった子供を遊ばせようとしたら、近くには公園など整備された場所ばっかりなんですね。僕が生まれ育った広島では、川に行けば釣りをしたり発泡スチロールで船を作ったり、山に行けば秘密基地を作ったり、自然が遊び場でした。自然がクリエイティブを養うと考え、子供にも同じような遊びをさせたいと思ったときに、ヒャクちゃんが『それならキャンプだよ』って教えてくれたんです」
CAMP.TECTSのプロダクトは、谷尻さんの事務所の棚としても活躍している

——ということは、家族で行くことが多いんですかね。

谷尻誠さん
谷尻誠さん
「そうですね。ただ、お風呂が入れないとか虫が多いという理由で、妻は当初、キャンプに及び腰だったんです。でも、ヒャクちゃんが温泉を備えたキャンプ場をチョイスして、キャンプと旅行が合わさったコンディションを整えてくれたんです。そうしたら妻が『キャンプ楽しいね』って。何より、子供が公園に行くときよりもいい笑顔を見せてくれたのは大きかったですね。親としては、子供が笑っていてくれるのは何よりも幸せですから」
「それに、大人にとっても純粋に楽しいものだったんです」(谷尻さん)
谷尻誠さん
谷尻誠さん
「家族で出かけるとお酒が飲めない状況が多い中、子供は昼間に走り回って早く寝るから、夜は大人がゆっくりした時間を過ごせる。星空の下でお酒を飲みながら話したり。家族みんながハッピーになれる時間でした」

——新型コロナの影響があり今は難しいですが、ふだんはどのぐらいのペースで行くんですか。

谷尻誠さん
谷尻誠さん
「ふだんは月に2回ほど行きます。本当はもっと行きたいんですが(笑)。妻が行けないときは息子と2人で行くこともあるし会社のスタッフを誘うこともあります。会社の人とキャンプに行くと、プライベートな話も自然とできるし、作業に追われる会社ではなかなかできない今後の夢の話になることも。そういう話ができるのはキャンプならではですね。そうやってキャンプにハマって、ヒャクちゃんに教わりながらグッズも増えて、出費も増えていきました(笑)」

——キャンプにハマると次々にいろんなものが欲しくなるっていいますよね(笑)。

谷尻誠さん
谷尻誠さん
「最初は機能性に優れたスノーピークで揃たんですが、そのうち『スタイリッシュなキャンプがしたい』と思うようになってからは、黒いアイテムを集め始めました。MURACO(ムラコ)さんの黒いテントとかコンテナやクーラーボックスも黒で集めていって」
「うちの車が黒なので、積んだときのビジュアルも考えてキャンプ場への行き帰りでも統一させています」(谷尻さん)
谷尻さんが愛用する「ムラコ」の黒いテント
谷尻誠さん
谷尻誠さん
「便利さも大切ですが、僕の場合は、全体のコーディネーションとして、それらが集まったときに美しいかを考えます。それって家でも同じ。いいソファ、いいテーブルを集めても、全体で見てにそれがいいかというとまた違ったり。総合的に見ることが僕の仕事なので、キャンプというものを俯瞰して見たときに、全体として素敵なキャンプ環境を作りたいんですよね。キャンプを続ける中で、僕の場合はそういう部分を大事にするのが楽しみの一つになりました」

——そんな谷尻さんが、今度はCAMP.TECTSを立ち上げて、アイテムを作る側ですよね。

谷尻誠さん
谷尻誠さん
「CAMP.TECTSの誕生もヒャクちゃんがきっかけです。なんでも彼になっちゃうんですけど(笑)。例えば既存のキッチンテーブルに対して、ヒャクちゃんが『こういうのしかないんだよな』とこぼしていたことがあって。確かにそのキッチンテーブルを見て、家具的な機能や仕組みが込められていれば、もっと使いやすくスタイリッシュになると感じたのが、自分たちで作ってみることにしたきっかけです」
キャンプについて楽しそうに語る2人。掛け合いの中で、次々とアイデアが浮かんでいた

——キャンプグッズにおける「家具的な機能や仕組み」というのはどういうことなんでしょう?

谷尻誠さん
谷尻誠さん
「例えば、キッチンテーブルにゴミ袋を引っ掛けられれば便利じゃないですか? でもそのためにフックを付けるのがデザイン的に正解かというと、そうとは言い切れない。何かの目的のために何かを作ることで、アイテムが持つ情報が増えてしまうんです。機能は、そこはかとなくデザインに閉じ込めることにで美しくなる。空間でいえば、明るくするために照明を、快適な温度のためにエアコンを付けますが、本来は天井自体が光って、暖かくなったり冷たくなったりすればそれでいいはずなんです。それをどう実現するかが建築家の仕事であり、その思想を込めたのがCAMP.TECTSのプロダクトです。機能とデザインがもっと複合的に同居したプロダクトを作ることは、キャンプ場を美しく設計することに繋がる。だから、家具を作ることでキャンプシーンを作り、それが組み合わさりキャンプの風景になる。いずれはキャンプ場も作ってみたいです(笑)」

——CAMP.TECTSの最初のプロダクトとして、キャンプ用のテーブルが販売されていますが、その思想はどの部分に現れているのでしょう?

谷尻誠さん
谷尻誠さん
「組み立てたときはもちろん、折り畳んだときの美しさが一つ。あとは構造的な部分にも着目しています。テーブルなどは、硬ければしっかりしていると思いがちですが、キャンプサイトって地面がグニャグニャでコンディションが整っていないので、ガッチリ作ると馴染まないんです。そのため、しなやかさを持たせて、大地にフィットするように設計しています。硬いが必ずしも強いわけではなく、柔らかさも強いの一部。雨や風など変化に順応するのがキャンプなので、プロダクトもそうあるべきだと考えます」
CAMP.TECTSの設立のタイミングで発売された「CT20SS-001(4万5000円・税別)」。組み立て前は持ち運びやすい
ものの数分で組み立て完了。キッチンテーブル(左)とバーナースタンド(右)でワンセット。写真のように配置することで使いやすいキッチンになる

——そんなプロダクトを作るにあたって、苦労したことはどんなことがありましたか?

谷尻誠さん
谷尻誠さん
「実は苦労はなくて……。試作品をキャンプに持っていてトライ&エラーを繰り返したので失敗はありましたが、楽しくやれているから苦労と感じていないだけなのかもしれないです。『ここをもっとこうすればいいじゃん!』とかって、子供の頃は誰にでも経験がありませんか? そうやって自分たちがキャンプに遊びに行って試行錯誤する。ある意味で仕方なくキャンプに行くって、最高ですよね」
キャンプ場に持ち込み試行錯誤を重ねて生まれたCAMP.TECTSのプロダクト

——今後、CAMP.TECTSで作ってみたいプロダクトはどんなものがありますか?

谷尻誠さん
谷尻誠さん
「食事用のテーブルやイスも作ってみたいですし……」
ヒャクタロウさん
ヒャクタロウさん
「カトラリーボックスやスパイスボックスとかも作ってみたいですよね。ほとんどキャンプには火があり食があるので、食がもっと楽しめるようにしたいんです。チーズや肉だけ焼いて食べるのもいいですが、キャンプにちゃんとした料理環境があると作りたいものも変わってくるはず。料理はキャンプを豊かにしてくれる大事な要素の一つですから」
谷尻誠さん
谷尻誠さん
「お酒もそうですしね。外で飲むお酒がとにかくおいしいんですよ。よくシャンパンを持って行って飲むんですが、自分たちで作った料理を肴に飲むお酒の豊さは最高です」
「まあ、キャンプ場についてすぐに飲み始めてしまうんですが(笑)」(谷尻さん)

——自然に囲まれて飲むお酒、いいですね。それ以外でキャンプの楽しみはどんなところがありますか?

ヒャクタロウさん
ヒャクタロウさん
「『キャンプ場を楽しむ』ことです。川があったり木が多かったり、キャンプ場ごとに個性がある。家族だったら、そういう個性豊かなキャンプ場を子供たちが探検するのについて行くだけでも楽しいですよ」
谷尻誠さん
谷尻誠さん
「やっぱり親としては、子供が楽しんでるのを見るのが楽しいんです。ふだん、街で遊んでると危険が多く『NO』がいっぱい。でも、キャンプ場に行くとそれらがなくなる。子供もストレスがないし、そうすると親もストレスがないですよね。家族以外と行くにしても、間違いなく仲が深まります。うっかりカップルになってしまうかもしれません(笑)。男同士だったら友情が深まるでしょうし。一方で、キャンプにおけるネガティブな面としては、毛虫が出ることもあるし突然雨に降られることもあるし、問題がすごく出る。もちろん渦中にいると苦しいんですが、終わってみればそれもネタでしかないんですよ」
ヒャクタロウさん
ヒャクタロウさん
「ライカ(とにかく高価なカメラ)が水没しちゃったしね(笑)」
谷尻誠さん
谷尻誠さん
「泣けるんですけど『イスの撥水性(水を弾く性質)で水がたまってプールみたいになったからだろう』って分析してみたり(笑)。キャンプって仕事と通じている部分が多いと思うんです。どちらにおいても、いろんな問題が起きるけど、誰かのせいにするんじゃなくて、悩みながらも問題解決に向かって行くことが大切。キャンプをするようになって、仕事での問題や変化に対して、それまで以上に強くなったし、楽しめるようになったと思います」

取材場所の谷尻さんのオフィスはご飯が食べられる

今回お話をうかがったのは、小田急線代々木上原駅から徒歩約10分の場所にある「SUPPOSE DESIGN OFFICE(サポーズデザインオフィス)」。谷尻さんと、同じく建築家の吉田愛さんが共同代表を務める建築設計事務所だ。ただこちら、事務所の機能を備えるだけでなく「社食堂」という飲食店を併設しているのがユニーク。

厨房を囲むかたちで片側が飲食店スペース(写真のエリア)、もう半分がオフィスになっている。事務所のスタッフもここで食事をしているそう
仕事で縁があった商品や、SUPPOSE DESIGN OFFICEが東京のほかに本拠地とする広島のグッズも販売されている。また壁の棚には、訪れた人がアートや建築に触れられるよう選書が並ぶ
「社食堂」のスタッフは、SUPPOSE DESIGN OFFICEに所属するプロの料理人

「社員の食堂でありながら社会の食堂」というコンセプトで作られた社食堂。スタッフの健康をケアしたいという思いから、さらにはスタッフ以外(社会)にとってもプラスになるような場所を作りたいと生まれた場所だ。フードメニューのほかコーヒーやハーブティー、アルコールもあり、カフェとして利用する人も見られた。

社食堂の看板メニューである「山椒キーマカレー(950円)」。甘さと軽い酸味に、山椒がいいアクセントになっている
肉か魚から選ぶ「日替わり定食(1100円)」。副菜が3品と味噌汁、ご飯がつく。取材日の魚メニューは「鮭の塩麹焼き」だった

取材・文=井上良太(シーアール)、撮影=内田龍

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