“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第19 回は代々木「マーガー・バーガー」。
犬養 裕美子
レストランジャーナリスト
ハンバーガーショップをやる! マリちゃんは有言実行。そして次なる夢は?
「いらっしゃいませ」「こんにちは」。大きなイチョウの下にある小さなハンバーガーショップの中から、元気な声が飛んでくる。昨年12月12日、代々木にオープンした「マーガー・バーガー」は、わずか3坪ほどのキッチン(トイレ付)に、その場でも食べられるように、折り畳み式の椅子が4席とテーブルが1卓あるだけ。“レストラン”には程遠い店構えだけど、マリちゃん(坪井真理子さん)のハンバーガーには、“アナログ”な手間と愛情がたっぷりこめて作られている。
マリちゃんは3代遡っても生まれも育ちも由緒正しい江戸っ子。元気はいいのに、子供のころから小食だったとか。しかも好きなものしか食べない。それが“ポテトとハンバーガーとイチゴ”。特にハンバーガーはアメリカに留学していた兄のところに遊びに行った所、本場のハンバーガーを食べて大感激! 即、将来はハンバーガ―屋をやる!って決めた。高校卒業後、迷いなくハンバーガー屋で修業を始める。同時に他の店でも接客を勉強するためにかけもちで働いた(私は本郷のイタリア料理店で彼女と知り合った)。身体は小さいけれど、物おじしない笑顔と張りのある掛け声は人を元気にする。
その接客ぶりもすばらしいけれど、イタリア店でのビールの注ぎ方の見事さと、隅々までピカピカにしなければ気がすまない几帳面さんに私は感心していた。すべて徹底的にカンペキを貫くところが頼もしい。これは旨い料理を作るプロの基本。彼女の作るハンバーガーを早く食べてみたいな~と思っていたら、なんと昨年末に「始めました!」という声が届いた。
あっさりとさわやかなハンバーガー。これを待っていた!
営業時間は月曜から金曜までの11時から15時まで。営業は4時間だけだ(今も夜はイタリア料理店の仕事は続けているのもスゴイ)。それでも「仕込みは朝8時から始めます」。バンズは、表面のゴマを多めにし、生地はサックリと焼き上がるタイプを特注。パテは赤身肉(アメリカンビーフ)9に対し、脂(和牛)1。つなぎなしなので、焼きあがりはホロホロした食感だが、かみしめると余韻が長いのが特徴。それと挽き立ての黒胡椒を焼きたてにたっぷり振るのも、香りにインパクトを出すための大切なポイント。ハンバーガーは肉汁がジュワーっと、にじみ出るのがおいしいという人が多いけれど、肉汁の脂が強いのは私好みではない。
「個人的に、和牛のギトギトした脂が苦手なんで」というマリちゃんは、パテを焼くときも鉄板の上でしっかりプレスして余計な脂は落としている。肉があっさりしている分、パイナップル、チーズ、アボカドなどのトッピングが水分や脂分として旨味に変化する。1個食べ終えて、お腹は満足だけどもたれていない。これはガールズ・バーガーの理想…というと男性にアピールできなくなっちゃうから、これぞヘルシー・バーガーとでも言っておこうか。
開店間もないのに周辺のオフィスから買いに来る人や、お散歩途中のカップルにも好評で早くも週に2,3回通う常連も。その吸引力はマリちゃんだけではなく、相棒の粕壁遥さん(元芸人!)の笑顔も大きく貢献している。温かくなったら水曜だけは夜22時まで営業もする予定とか。マリちゃんの夢もお店も一歩一歩、着実に大きくなっていって欲しい!
マーガー・バーガー
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-3
電話番号:080-4090-1811
営業時間:11:00〜15:00(春からは水曜のみ22:00まで営業の予定)
定休日:土・日・祝