昔ながらの夏の敷物”油団”。全国で唯一の作り手は福井県に!

昔ながらの夏の敷物”油団”。全国で唯一の作り手は福井県に!

2020/08/06

江戸時代から夏の敷物として重宝されてきた油団をご存知ですか?クーラーがない時代、敷くだけで冷んやりと感じられる油団は、夏に涼を取るための生活用品として親しまれていました。しかし現在、油団を作っているのは全国でも福井県にある一社のみ。最後の作り手に油団の歴史や作り方を伺ってきました

Dearふくい

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夏の敷物、油団とは

油団(ゆとん)

油団と書いて“ゆとん 。
和紙を貼り重ね、表面に油を塗った敷物を指し、ひんやりと冷たいのが特徴。
夏の日本家屋の生活で涼を取るための生活用品として親しまれてきました。

表面にはつやつやとした光沢があり、鏡面のような美しさに思わずうっとり。
また油団は、5年10年50年と年を経るごとに白色から徐々に濃い飴色になっていき、経年変化も楽しめるアイテムなんです。

ただ、エアコンが普及するにつれて油団の居場所が少しずつ失われてきたこともあり、現在油団を作っているのは全国でも鯖江市の表具店『紅屋紅陽堂』さん1社のみとなってしまいました。

全国で唯一油団を作る表具店『紅屋紅陽堂』

紅屋紅陽堂

福井県鯖江市にある紅屋紅陽堂は創業100年の老舗表具屋です。

創業してから30年ほどで油団作りを始め、そこから70年間、「巻きやすく、柔らかく、100年保つ」油団作りの研究を重ねてこられました。

4代目の牧野由尚さん

「作って半分、残り半分はお客さんに育ててもらって油団は完成します。」
そう話してくださるのは、4代目の牧野由尚さん。

油団の需要は減っているとはいえ、100年経った油団を修理したいと持ってくるお客さんも未だにいらっしゃるとのこと。
「寿命なので直さないほうがいい」と牧野さんがアドバイスしても、お客さんからすると代々育ててきたことで愛着があり「どうしてもこの油団がいい」とお直しをお願いされるそうです。

油団の歴史

油団はおそらく江戸時代から作られていたとされており、韓国で普及した床下暖房のオンドルという技術から派生して油団作りが始まったのではないかと言われています。

現代では需要が減ってしまいましたが、東日本大震災の際は「節電しながらも涼を取る」というテーマでメディアで多く取り上げられたことによって、改めて油団の存在が見直されることもありました。

ちなみにその時は注文が殺到し、長いものであれば2年待ちという状況になったそうです。

油団の作り方

油団

油団ができるまでには、主に以下のような工程があります。

1.表側になる和紙を周辺のみ貼り付け、その後何層にも和紙を貼り重ねていく。
2.それらの紙は全て、打刷毛(うちばけ)で細かく叩き、接合させていく。
3.1番外側の部分を切り落として形を綺麗に整え、外側を補強するために端を少し折り曲げる。
4.柿渋を裏側に噴霧する。
5.熱したえごま油を表側に塗る。
6.天日干しする。
7.潰した豆腐を布に染み込ませて刷り込んでいく。

打ち刷毛は硬くてしっかりとした質感

何層にも和紙を貼り重ね、打刷毛(うちばけ)で細かく叩いて接合させていく作業を続けていると、腱鞘炎になってしまうこともあるとか。
しかしながら、この技術は表具屋の腕の見せ所でもあります。

さらに、和紙を重ねた後は熱したえごま油を塗ります。
これには諸説ありますが、油を塗ることで人間の体温が下の和紙の空洞に閉じ込められること、もう1つは、汗が蒸発する際の気化熱の効果によって冷感をもたらすことが理由ではないかと言われています。

えごま油を塗った後は塗りムラがあるものの、天日干しによって油がゆるみ、色ムラはなくなります。
しっかりと乾燥させなければいけないため、4〜5時間天日干しをします。
よって、仕上げは真夏にしかできません。

さらに最後につぶした豆腐を布に染み込ませて、油団にすりこませます。
仕上げに豆腐というのが驚きですが、この工程によってツヤ感がグッと増すんだそうです。
ちなみに、韓国のオンドルは、仕上げに豆乳を塗っているそうですよ。

なお、畳6畳分のサイズの油団を作るのに3人がかりで1ヶ月ほどかかるそうです。
油団は畳1畳分で15万円とのことですが、これだけ手間がかかっているので納得のお値段。

この油団は15層なので、14回和紙を貼り重ねています

福井県は越前和紙という1500年の歴史を持つ和紙の産地ということもあり、紅屋紅陽堂さんの油団にも一部越前和紙が使用されることがあるとか。

和紙は世界一丈夫だと言われているため、これを幾重にも重ねることで、しっかりとした強度を持ち、敷物として長く使用できるようになります。
つまり、油団が長持ちする秘訣は、丈夫な和紙と柔らかく仕上げるための薄い糊、そして打ち刷毛の作業に秘められているんですね。

最近では環境・社会問題を解決するためにもエコに再度注目が集まっており、エアコンのエネルギー消費削減といった目的などで、油団も新しい形で日常と共存できるかもしれません。

涼をとるために日本の夏の生活に寄り添ってきた油団。
今後も日本の夏の馴染み深い景色として残っていってほしい一品です。

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