福岡・北九州の絶メシ!小倉焼うどん発祥店「だるま堂」が復活

福岡・北九州の絶メシ!小倉焼うどん発祥店「だるま堂」が復活

2020/08/27

2代目店主の死去により存続が危ぶまれていた小倉焼うどん発祥の店「だるま堂」(福岡県北九州市小倉北区魚町)が、地元のまちづくり団体の尽力もあり、2020年7月に復活。「原点の味を未来に残し、多くの人にその魅力を伝える」という3代目「だるま堂」の熱い思いを、現地で体感してきました。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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「北九州の食文化を守りたい」という思いが結実

終戦直後の1945年から今日まで、小倉の台所として地元民の食を支えてきた「鳥町食道街」。北九州市出身の作家・松本清張が愛した中華料理店やレトロな洋食店など約20店舗が並ぶノスタルジーな空間の一角に、「だるま堂」は店を構える。

JR小倉駅南口から日本初のアーケード街「魚町銀天街」を南下し、徒歩3分ほどの場所にある「鳥町食道街」。「だるま堂」は、この「鳥町食道街」と同じ年に開業した

コロナウイルス感染拡大の影響もあり、2019年9月から約10カ月も休業期間を要して復活。3代目店主には、小倉の焼うどん文化を発信する地元のまちづくり団体「小倉焼うどん研究所」所長の竹中康二さんが就任し、クラウドファンディングで集めた約150万円の資金の一部を使って、老朽化した築約80年の建物の改装に着手。西日本工業大学デザイン学部の学生たちとも連携した、新旧の良さを取り入れた店作りを行い、7月の再オープンにこぎつけた。

新しくなった「だるま堂」のファザード。白と木目を基調にして、シンプルながらもオシャレさを感じるデザインに仕上げた

1階のカウンター席は、L字型だったものをI字型に変更して5席配置。西日本工業大学の学生のアイデアで、京築ヒノキを使用した明るく温かみのある空間に新装した。また、2代目店主が夫婦で店を切り盛りされていた時に使用していたという、2階席を復活。テーブル席を10席ほど設けた。メニュー表のカバーに採用されている、小倉織にもぜひ注目してほしい。

「小倉焼うどん研究所」の所員と西日本工業大学の学生たちの手により、生まれ変わった店内。改装前後の様子は、「小倉焼うどん研究所」のYouTubeチャンネルで公開されている

小倉焼うどんの最大の特徴は、うどんの乾麺を使用するところにある。ゆで置きはできないが、焼き目がしっかりと付き、食感はもちもちあっさりとしたソースを加えると、アツアツの鉄板からその香ばしさが一気に広がる。手ごろな価格も魅力で、これらの要素が地元民の胃袋をつかみ、小倉焼うどんは北九州のご当地グルメとして全国へ知られていった。

約75年にわたって多くの人に愛され続ける、小倉焼うどん。JR小倉駅の周辺では現在、「だるま堂」のほか約40店舗で提供されている

創業から約75年を数える「だるま堂」の歴史をひも解く

「だるま堂」は終戦後の1945年、弁野勇二郎さんが始めた。関西で人気の焼きそばを出そうとしたところ、食料難からそば玉が入手できず、また、中華麺や肉も高価で、手に入れることが困難だった。そこで、弁野さんは、入手しやすい干しうどんと豚バラ肉で代用することを思いつき、試作をしてみたという。このことがのちに、小倉焼うどんの誕生へとつながっていく。

調理場の背後の壁に掲げられた、改装前の店舗の電光看板。その味わいのある趣が、店の歴史を感じさせる

1960年ごろ、従業員だった坂田照義さんと妻のチヨノさんが「だるま堂」を引き継ぐ。ちょうど、高度経済成長の時で、カウンター7席、テーブル2卓の小さな店は、連日大いににぎわったという。2009年に照義さんが亡くなった後は、チヨノさんが1人で店を切り盛り。「死ぬまでやる」と頑張っていたが、2019年9月に体調を崩して店は休業。その年の12月、チヨノさんは82歳で生涯を終える。

店を引き継いだ後、約60年にわたって調理場に立ち続けた、2代目店主の坂田チヨノさんのありし日の姿。「小倉の名物おばあちゃん」として、街で親しまれた

チヨノさんの亡き後、「小倉焼うどん研究所」が再建に動き出す。小倉焼うどんを通じて地域おこしを行っているこの団体にとって、「だるま堂」は聖地のような場所。現オーナーである創業者の親族から「いずれは『小倉焼うどん研究所』に『だるま堂』を任せたい」と相談を受けていたこともあり、所長の竹中さんが引き継ぐことを決意。2020年の4月から店を賃借し、先述のとおり、多くの人の協力を得ながら営業を再開させた。

「小倉焼うどん研究所」所長の竹中さん(写真下段中央)と所員たち。2001年に発足後、全国各地で催されるグルメイベントの参加や災害地の炊き出し活動などで、小倉焼うどんの魅力を広げてきた

現在、3人の店舗スタッフのほかに、研究所の16人の所員たちが入れ替わりで「だるま堂」の運営を担当。「北九州の食文化を守り、焼うどんで小倉の街を活性化させたい」と意気込んでいる。

チヨノさんが店を離れるまで、焼うどんの調理で使っていたというヘラ。額に入れ、改装前の店舗の電光看板と並べて飾られている

新旧の味がそろう3代目「だるま堂」の注目メニュー

ここで、3代目「だるま堂」で店長を任されている、塚腰英稔さんが登場。原点の味を復刻したという焼うどんや、北九州の食文化を伝えるために考案された定食など、新生「だるま堂」の注目メニューについて、詳しくお話を伺った。

\この人に聞きました!/

「だるま堂」店長の塚腰英稔さん
店長の塚腰英稔さん
店長の塚腰英稔さん
「3代目『だるま堂』の焼うどんメニューは、2種類を用意しています。1つは、坂田さんの家族から詳しく作り方を聞いて復刻させた『元祖だるま堂の焼うどん』(500円)、もう1つは、当所が開発し、イベントなどで好評だった『研究所の焼うどん』(500円)です。前者は、コシのある乾麺を使ったあっさりソース味、後者は太めのゆで麺を甘めの濃いソースで仕上げたひと皿になっています」
写真は、原点の味を忠実に再現したという「元祖だるま堂の焼うどん」。具材は豚バラ肉と北九州市・若松産のキャベツ、タマネギ。ソースと魚粉でシンプルに味付けをする
店長の塚腰英稔さん
店長の塚腰英稔さん
「焼うどんの上に半熟の目玉焼きをのせた『天窓(てんまど)』も、『元祖』(600円)と『研究所』(650円)で用意しています。前者は、焼うどんごと小麦粉の生地で挟み込んで焼き上げたもの。後者は、アツアツのスキレット鍋でご提供しています」
「天窓」(写真は「研究所」バージョン)。目玉焼きを天井の窓から望む月に見立てたことから、この名が生まれた。卵の黄身をからめて焼うどんを食べると、まろやかな味わいに変化する
店長の塚腰英稔さん
店長の塚腰英稔さん
『小倉定食』(750円)『玉子かけご飯定食』(350円)という2種類の定食を、新たにメニューに加えました。『小倉定食』では、北九州の郷土料理である『ぬか炊き煮』を、焼うどんと一緒に味わうことができます。単品メニューでは、鉄板で焼く『玉子焼き』(350円)が復活しました」
「小倉定食」。焼うどんは、「元祖」か「研究所」が選べる(写真は「元祖」バージョン)。単品で、「ぬか炊き煮」(サバ2切れ400円)、「めし」(150円)の注文可
店長の塚腰英稔さん
店長の塚腰英稔さん
アルコールも提供しております。ビールは2種類で、かつて門司に工場があった『サッポロビール』のラガービール(中瓶550円)と、大正時代に製造されたビールを復刻させた『サクラビール』(600円)が飲めますよ!」

テイクアウトのほか、未来を見据えた取り組みもチェック

営業時間は、月・火・木・日曜が11:00~18:00、金・土曜が11:00~21:00で、水曜が定休入口に手指消毒液を設置、店内の混雑が予想される時には、来店客にソーシャルディスタンスを確保した着席のお願いや入場制限を行うなど、感染拡大予防のガイドラインに沿った接客にもしっかりと取り組んでいる。また、持ち帰り用カウンターを新設。「焼うどん」(2種各500円)、「天窓」(2種各600円)、「焼うどん弁当」(600円)、「焼うどんパン」(200円)がテイクアウトできる。

新しく設けられた持ち帰り用カウンター。こちらのデザインも、西日本工業大学の学生のアイデアが生かされている
テイクアウトメニューの「焼うどんパン」。地元のパン店と協力して、完成させた

小倉のど真ん中にありながら、「だるま堂」がある魚町にはミーティングなどで使える場所があまりないことから、2階席はレンタルスペースとしても使えるようにした。事前予約の場合、ワンドリンク制の1時間1000円で利用できるという。

復活した2階席。小倉焼うどんを愛する福岡大学や北九州大学の学生も参加し、みんなの力で新装したという。フリーWi-Fiが用意されているところもうれしい

最後に、店長の塚腰さんは、「将来的には、地酒を充実させて角打ちも楽しめるようなお店にしていきたいですし、もっと北九州らしい地域色のあるメニューも考案していきたいですね」と、今後の目標について教えてくれた。新たな楽しみがどんどんと加わる「だるま堂」の魅力を、皆さんにもぜひ現地で体感してほしい。

制服Tシャツの背中には、研究所が唱える「小倉焼うどんの定義」をプリント。「地域の食文化を守っていきたい」という熱い思いが、ここからもひしひしと感じる

取材メモ/「絶メシ」(=歴史を途絶えさせてしまうにはもったいない絶品ローカルグルメ)が注目を集める昨今、この「だるま堂」は、私が個人的に応援したいお店の1つです。北九州の食文化を体感できる、まさに「グルメ遺産」と呼べる1軒。小倉で食事をされる際はぜひ、この記事のことも思い出していただけたら幸いです。

取材・文=西田武史(シーアール) 撮影=髙尾正秀(一部を除く)

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