カレーの王子様が語るDEEPなインドカレーの歴史&未来予想

特集

癖になる、インドカレーの奥深き世界

2017/02/14

カレーの王子様が語るDEEPなインドカレーの歴史&未来予想

インドカレーの普及に貢献した偉大なインド人の祖父をもつシャンカール・ノグチさんと、メタ・バラッツさん。まごうことなきインドカレー界のサラブレッドたちが、日本インドカレー界に老舗店が残してきた爪痕(つめあと)と、注目のお店について語り合う。スパイスカレーの、明日はどっちだ!?

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

\お話を伺うのは/

シャンカール・ノグチさん

シャンカール・ノグチさん

「東京スパイス番長」リーダー

メタ・バラッツさん

メタ・バラッツさん

「東京スパイス番長」メンバー

スパイスカレーの未来キーワードは「東インド」と「魚カレー」!?

——お二人は日本のインドカレー普及に貢献した偉大なインド人のおじい様をもつ「カレーの王子様」ということで大丈夫でしょうか?

メタ・バラッツさん(以下、バラッツさん)
メタ・バラッツさん(以下、バラッツさん)
「王子……って(笑)。確かに、ノグチさんは王子っぽいけど……」
シャンカール・ノグチさん(以下、ノグチさん)
シャンカール・ノグチさん(以下、ノグチさん)
「いやいや……(苦笑)」

——ところで昨年、王子たちは一緒にインドに行かれたとか?

ノグチさん
ノグチさん
「はい(笑)。僕たち二人は2010年から毎年、テーマを決めて『チャローインディア』という本を出すために一緒にインドを訪れるのですが、昨年はタンドール(ナンやタンドリーチキンを作る際に使われる壺窯型オーブン)をテーマに定めて旅をしました」
「ペルシャからラジャスタンの砂漠を通ってインドに入ってきたと言われているタンドールのルーツをたどり……」(ノグチさん)
「実際に砂漠に穴を掘って地熱と炭の力でタンドリー・マトンを焼いたり!」(ノグチさん)
バラッツさん
バラッツさん
「砂漠の中のオアシスに立ち寄って、バナナの葉っぱを譲ってくれと交渉を試みるなど、とにかくエキサイティングなトリップでしたね!」
ラジャスタンの砂漠で微笑むカレーの王子様……

——王子たちが、最初に出会ったのはいつでしょう?

バラッツさん
バラッツさん
「おそらく10年前くらい。ともにインドから日本にスパイスを仕入れる輸入商なので……以前から、互いの存在は知っていて。ずっと『ノグチさんの商品が邪魔だなぁ』と思ってました(笑)」
ノグチさん
ノグチさん
「僕はずっと『バラッツと、仲良くやっていきたいなぁ』と思ってましたよ(笑)。百貨店の販売フェアで初めて会って、そこから丸3日ず〜っと二人で話し込んだよね。懐かしいなぁ」
今やインドカレー人気は世界規模。地球各国で働くインド人の影響で、どの国でも人気食だ。アメリカの大手IT企業で働くインド人も多く、その周辺にはインドカレー店が点在しているそう

インドとアジアの自由のために戦った祖父たち

——お二人の偉大なるインド人のおじい様について教えてください

バラッツさん
バラッツさん
「私の祖父は非暴力主義を貫いたマハトマ・ガンジー氏とともにインドの独立運動を戦った革命家で、祖国では風邪薬の販売を生業(なりわい)としていました。その仕事関連で初来日したのはまだGHQが駐軍中の1958年(昭和33年)。当初4日間の予定が、日本の農産物に興味を抱いたのをきっかけに4年ほど滞在してインドへ帰国。私の父が成長して社会人になったのを機に、『今(70年代)高度経済成長のただ中にいる日本で働こう!』と一念発起して家族で日本に移り住んだのです。そうして出会ったのが、種が芽吹き始めたばかりの日本版インドカレーでした」
バラッツさんのお父さんが1983年(昭和58年)に制作した、インドカレーのスパイス本。家庭でも簡単に作れるスパイスミックスと、作り方のトリセツが1冊に! 現在も売られている33年のロングセラー
ノグチさん
ノグチさん
「うちの祖父は戦前、1941年(昭和16年)に新聞記者として来日し、NHKや共同通信の特派員として働いていたんです。その過程で、日本で初めてインドカレー新宿中村屋に紹介しメニュー化したインド人のラス・ビハリ・ボース氏と知り合い、インドやアジアの独立活動を推し進める“フリーダムファイター”として一緒に活動していたと聞いています」

——お二人のおじい様は、ともに革命家だったというわけですね!

ノグチさん
ノグチさん
「そういうことです。やがて僕の祖父は、日本最古のインド料理専門店『ナイルレストラン』の創業者・A.M.ナイル氏と懇意になり、当時は大変ハードルの高かったインド食材の輸入を成功させるため、インドに手紙を送って取引の道を拓きました。いつしか『新宿中村屋』『デリー(DELHI)』など多くのお店に輸入インド食材を卸すように」
前列右端に写っているのがノグチさんのおじいさん。男前な“王子顔”はしっかりとノグチさんに引き継がれている⁉︎ フリーダムファイターの仲間たちとの記念写真

バターチキンカレーとナンを最初に広めた「アショカ」

——では、ここから本題です。インドカレーが日本の国民食となる礎を築いた老舗店と、その店が開いてきた数々の扉を教えていただけますか?

バラッツさん
バラッツさん
「1927年(昭和2年)に、日本初のインドカレーをメニューに取り入れたのが『新宿中村屋』さんであることは、とても有名ですよね。日本最古のインド料理専門店『ナイルレストラン』の登場は1949年(昭和24年)」
日本最古のインド料理専門店「ナイルレストラン」の「ムルギーランチ」(1500円・税別)
ノグチさん
ノグチさん
「1968年(昭和43年)にインド政府系の料理人が腕を振るう『アショカ(ashoka)』が銀座に登場したことも、日本インドカレー年表の重大トピックです」
「アショカ」の「チキン バター クリーム」(2100円・税別)
バラッツさん
バラッツさん
「そうですね。『アショカ』は、当時インド政府観光局の上階にあり、インドのなかでも相当リッチな北インドの王宮料理を一気にブームに押し上げたことで有名です。ここから、ナンとバターチキンを食べる習慣や、タンドール(ナンやタンドリーチキンを作る際に主に北インドで使われる、壺窯型オーブン)が、日本国民に注目されるようになったわけです」
ノグチさん
ノグチさん
『あれは何(ナン)だ!?』ってね」
バラッツさん
バラッツさん
「……すみません、インドカレー界のおきまりのダジャレです(笑)」

——は! 初歩的すぎて気づきませんでした!(笑)

ノグチさん
ノグチさん
「(笑)。子供の頃『アショカ』に連れて行ってもらった時、銀座のホステスさんとビジネスマンのペアがたくさんいて大人の世界を垣間見ていたのを覚えています。当時はそれくらい、お金を持った大人のためのお店でしたよね」

バターチキンカレーの革命児! 「モティ」

バラッツさん
バラッツさん
「そして、1978年(昭和53年)にオープンした『モティ(MOTI)』は、さらに大きくインドカレーブームの火を燃え上がらせました」
ノグチさん
ノグチさん
「インドカレー界に彗星のように現れた『モティ』のシェフ・デュアンさんが、玉ねぎを使わずにトマトを煮詰め、タンドールで焼いたタンドリーチキンを入れて作った『バターチキンカレー』は革命でしたよね」
今回はその「モティ」で対談取材。写真右はほうれん草と自家製ホワイトチーズのカレー「パラック パニール」(1470円)。中央は骨なしチキンとスパイスなどで仕上げた「チキン ザル フレジィ」(1480円)
ノグチさんは、モティの「バターチキンカレー」(1650円)の大ファン!
高級感のある「モティ 新橋店」
Yahoo!ロコモティ 新橋店
住所
東京都港区新橋1-15-5

地図を見る

アクセス
新橋駅[7]から徒歩約0分
新橋駅[JR日比谷口]から徒歩約1分
内幸町駅[A2]から徒歩約2分
電話
050-5592-6564
営業時間
11:30~23:00 日・祝 12:00~23:00
定休日
口コミ・写真など

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バブル時代後は食べ放題ブーム! 2000年代は南インドカレー人気が爆発

ノグチさん
ノグチさん
「90年代には昼のバイキングやナンの食べ放題ブームが到来します。先ほどの『アショカ』や赤坂の『ザ・タージ(THE TAJ)』などの高級店がお昼の食べ放題をスタートし、OLさんを含む幅広い層の人たちがインドカレーに親しみを覚えるようになりました」
バラッツさん
バラッツさん
「そこから一気に2000年代は、まるでラーメン屋さんのように安くてうまいインドカレー店が急増しましたよね」
大好きなモティの「バターチキンカレー」を手にご満悦のノグチさん
ノグチさん
ノグチさん
「時を同じくして、それまで主流派だった高級食材を使う北インドカレーに食い込むように、サラッとした食感でスパイス香る南インドカレーブームがやってきましたよね。京橋の『ダバインディア(Dhaba India)』など人気店が誕生したんです」
「ダバインディア」の「ダバミールス」(2200円・税込み)。バナナの葉の上で、チキンカレー、魚カレー、海老カレー、野菜のスパイス炒め、サンバルカレーなど複数のカレーをライスと混ぜていただく
Yahoo!ロコDhaba India
住所
東京都中央区八重洲2-7-9 相模ビル1F

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アクセス
京橋(東京都)駅[5]から徒歩約1分
東京駅[京葉線1(南側)]から徒歩約3分
宝町(東京都)駅[A5]から徒歩約4分
電話
03-3272-7160
営業時間
11:15~15:00(L.O.14:30)/17:00~23:00(L.O.22:00)[土・日・祝] 12:00~15:00(L.O.14:30)/17:00~22:00(L.O.21:15)
定休日
無休
口コミ・写真など

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2010年代は契約農家の食材にこだわった日本人シェフの独立店、台頭!

バラッツさん
バラッツさん
「南インド料理の老舗『アジャンタ(AJANTA)』などで修行して独立した日本人シェフたちの店が注目を集めるようになったのは1980年代後半から2000年代以降のことでしたね。2010年代はその傾向がさらに顕著に」
「アジャンタ」の「チキンカレー」(1620円・税別)。この店から多くの日本人シェフが巣立っていった

——日本人シェフの作るインドカレー、お二人は好きですか?

バラッツさん
バラッツさん
「もちろん。日本人らしいとても繊細な味で、絶えず研究と進化を続けていて、とてもおいしいお店が多いと思います!」
ノグチさん
ノグチさん
「僕も同じく。例えば、表参道の『ハブモアカレー(have more curry)』や、千葉の『南インド料理 葉菜(hana)』契約農家さんから仕入れた新鮮な野菜を使うなど、食材にもすごくこだわっていて、相当丁寧に作り込んでいる印象です」
バラッツさん
バラッツさん
「きっと、70〜90年代には知りたくても知りえなかったインドカレーの知識が蓄積されてきたんでしょう。今はカレーリーフやパクチーも簡単に手に入るようになりましたもんね!」
「ハブモアカレー」の「本日のカレープレート」(1280円)。信頼できる農家から仕入れた野菜の味と、スパイスの風味を同時に引き立たせる調理法にこだわる。写真は「島人参のインド風ポタージュ」などカレー4種
Yahoo!ロコハブモアカレー
住所
港区北青山3-12-7 カプリース青山 B1F

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アクセス
表参道駅[B2]から徒歩約1分
明治神宮前駅[エレベータ]から徒歩約11分
渋谷駅[12]から徒歩約11分
電話
03-3407-7001
営業時間
[月~水・金・土]11:30~15:30(L.O.15:00) 18:00~21:30(L.O.21:00)[日]11:30~16:00(L.O.15:30)(臨時休業、営業はGoogleの店舗情報をご確認ください)
定休日
木曜(臨時休業、営業はGoogleの店舗情報をご確認ください)
口コミ・写真など

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「南インド料理 葉菜」のディナーメニュー、南インド料理9種とライスのプレート「陽」(1300円)。ベジタリアンメニューもあり
Yahoo!ロコ南インド料理 葉菜
住所
八千代市勝田台1-13-32 MTビル 1F

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アクセス
勝田台駅[A1]から徒歩約2分
東葉勝田台駅[富士銀行口]から徒歩約5分
村上(千葉県)駅[出口]から徒歩約21分
電話
047-482-8974
営業時間
ランチ 11:30~15:00(L.O.14:00)ディナー 18:00~ (L.O.21:00)BARタイム ~25:00 金土は ~27:00
定休日
水・第2火曜日
口コミ・写真など

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カレーの王子様が今注目する「東インドカレー」&「魚カレー」

実は、子供の頃はイルカの飼育員に憧れていたというバラッツさんだが、高校時代から次第に、祖父と父の跡を継ごうと思うようになったとか。自らのルーツに思いを巡らせた時、スパイスの道を歩み始めた

——今後、日本のインドカレー界はどうなっていくとお考えですか?

ノグチさん
ノグチさん
「インド料理のジャンルがどんどん細分化されて、北インドの次に南インドの波が来たように、近い未来『東インドカレー』ブームが必ず来るんじゃないかな?」
バラッツさん
バラッツさん
「東インドといえば! 2013年に初めて訪れた際に知った独自の調理方法が興味深かったですね。あそこは野菜もマスタードもなんでもペーストにするんです。パウダースパイスは水に溶いて使うし、油はツンとした独特の香がするマスタードオイルを愛用する」
ノグチさん
ノグチさん
「僕は特に、現地の魚とスパイスを融合した東インドのフィッシュカレーに惹かれましたね。粒マスタードの味わいを上手くいかした、とても個性的な味。インドも日本も海に囲まれていて魚が捕れるから、日本で流行するポテンシャルを秘めているかも? 東インドのフィッシュカレーはライスと一緒に食べます。同じく米食である日本へつなげるのも面白そう!」
「ナイルレストラン」3代目のナイルさんと、ノグチさん、バラッツさんで東インドを旅した時の写真
魚市場にて撮影

——東インドのフィッシュカレー、すごくそそられます! 今のところ、日本で食べられる店はないのですか?

バラッツさん
バラッツさん
「確か、町屋の『プージャー(Puja)』は東インドカレーが食べられたかと。以前ノグチさんと食べに行きましたよね」
「プージャー」の「Sharshe Ilish イリシュのマスタードグレービー」(2000円)
Yahoo!ロコインドカレーと家庭料理 Puja
住所
東京都荒川区町屋3-2-1 ライオンズプラザB1

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アクセス
町屋(東京メトロ)駅[1]から徒歩約5分
町屋駅前駅[出口]から徒歩約5分
町屋(京成線)駅[出口]から徒歩約7分
電話
03-3800-1636
営業時間
11:30~14:00、17:00~22:30 水曜11:30~14:00
定休日
水曜(水曜祝日の時は営業、翌木曜が休業) 不定休あり HP等で確認願います
口コミ・写真など

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いつも一緒にカレーの食べ歩きをしているという、仲の良いカレーの王子様たち
ノグチさん
ノグチさん
「行きました。イギリスから入ってきた欧風カレーがやがて日本の国民食としてすっかり定着したように、きっとインドカレーも日本各地の食文化と融合して独自の進化を遂げるでしょう。今後もそれを見守るのが楽しみですね」
バラッツさん
バラッツさん
「そうですね、インドと日本をスパイスという架け橋でつなぐ一人として!」

取材・文=城リユア(mogShore) 撮影=斎藤ジン


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Yahoo!ライフマガジン編集部

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