今、元気が出るスパイスたっぷりのレシピを知りたい! ということで“日本のインド”こと西葛西に住むインド人のゴーリーさん夫妻に、家庭の味(=インドカレー)を教えてもらうことに。いつしかご近所の“仲間たち”もやってきて……、踊るマハラジャ状態に!
Yahoo!ライフマガジン編集部
「インドの神様に隠れて……」チキン好き“不良インド人”のもう一つの素顔
あの“ココイチ“(カレーハウスCoCo壱番屋)がインドに初上陸したという吉報が飛び込んできた2020年・夏。コロナ禍と厳しい残暑で気が滅入りがちな取材班がどうにか元気を取り戻したいとコンタクトをとった相手は……
かつてYahoo!ライフマガジンの「インド人をココイチに連れて行ったら、スゴイことになった」という記事で大暴れしてくれたインド人・ゴーリーさん。みんなの知恵を共有し合うWebサービス「Yahoo!知恵袋」にも、「本格インドカレーのレシピを知りたい」という質問が届たので、感染対策をとった上で西葛西へとやってきました……、ナマステ!
【伝説の記事】インド人を「ココイチ」に連れて行ったら、スゴイことになった
まずはインド人御用達のスーパーで食材を購入し、早速ゴーリーさん宅へ直行。麗しの奥様・ヴィディヤさんが迎えてくれました。
ところで……
奥様を前に、大きな声では言えませんが……
ゴーリーさんといえば、「インドの神様は日本までは見えていない、全然見えていない」「ひとたび自宅を出れば大好物の『チキンカレー』にまっしぐら」などの迷言をYahoo!ライフマガジン史上に刻みつけた張本人。”不良インド人”として、あまたの読者をザワつかせてきました……。
「私の家族がチキンを頬張る写真を見たら卒倒しちゃいます!」と言いながら、スプーンの上のチキンを巧みに隠すゴーリーさん(写真右)は、もはやプロの手付き。
ーーお招きありがとうございます……! ところで、今日教えていただくゴーリー家のインドカレーとは何でしょう? まさか、チキンカ……
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「今日は『ナスカレー』と、うちの娘が大好きな『ニンニクカレー』と、『サツマイモのインド風炒め』を、うちの奥さんが作ってくれま〜す!」
- ヴィディヤさん
- ヴィディヤさん
- 「はい、このナスを全部入れますよ〜! 夫も、日本人のみなさんも、ナスが大好きですから!」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「うちの家庭の味のヒミツは、奥さんのお義母さんが作ってくれる自家製スパイス。来日する時、日本では手に入らないスパイスも大量に持ってきてくれるので、大変感謝しております」
どうやら肉は一切入らないようでひと安心です。
ーーゴーリーさんは普段、お料理はしますか?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「独身の頃は少し作ってたけど、今はお湯を沸かすとか、ちょっと奥さんのお手伝いをするくらいです。それも方法が間違ってると、よく怒られるけど」
- ヴィディヤさん
- ヴィディヤさん
- 「(夫は)味見だけは、毎日欠かさずしています」
ゴーリーさんの日頃の悪行がなにかの拍子に奥様にバレてしまわないだろうか……ハラハラしながらゴーリーさんを見守ります。
リモートワークで深まった「家族の絆」
ーーところで、コロナ禍で、ゴーリーさんや、西葛西に住むインド人のお友達はどう過ごしているんでしょう?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「私は朝から夕方まで、自宅でリモートワークしてます。ランチはほとんど、家で奥さん&二人の娘と一緒にカレーです。夕方ちょっと散歩して、それ以外はあまり遠くに行きません。西葛西に住むインド人の友達も、できるだけ家で過ごしている人が多いかな」
- ヴィディヤさん
- ヴィディヤさん
- 「大変な時だけど、家族で過ごす時間が増えて、もっと仲良くなりましたね」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「まさに、その通りです」
ーーゴーリーさん、今日はいつになく“いい人”でうれしいです。
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「え!? いつもこんな感じでしょ……? もしかしたら何かに自然と恐怖を感じているのかもしれないケド……」
いつもと様子が違うゴーリーさんに関心しているうちに、料理が完成しました。いったいどんな味に仕上がったのでしょう?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「おお、ゴーリー君! これはよくできました〜!って、奥さんが言ってくれないから自分で言うしかないっ!」
ーーやはり、いつものゴーリーさんだったようです……。
「奥さんが初めてのラブラブ」。インドの結婚は占星術で決める!
せっかくなので、お二人の馴れ初めを伺ってみましょう。ゴーリーさん夫妻は結婚14年目。「奥さんにインド人の友達ができないとかわいそうだから」という理由で、結婚(=ヴィディヤさんの来日)と同時に“日本のインド”こと西葛西へ引っ越してきました。
ーーヴィディヤさんとはどちらで出会ったんですか?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「私がインドに一時帰国して、お見合い結婚しました。最近は恋愛結婚も増えてきてますけど、インドでは80%くらいがお見合い結婚なんです」
- ヴィディヤさん
- ヴィディヤさん
- 「親が、占星術で相性がいい相手を見つけてくれるのが、インドでは普通なんですよ」
ーー占星術?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「占星術では、お互いが産まれた日と時間などの情報から二人の相性が分かるんです。まず、いろんな人のホロスコープ(=産まれた時の天体の配置図)が集まる占い師さんの元を、親が訪ねます。相性がいい人が見つかったら、次に写真と占星術のホロスコープをお互いに交換し、相手の故郷や親戚について調べて気に入れば、対面でのお見合いに進みます」
- ヴィディヤさん
- ヴィディヤさん
- 「私は、10人くらいからお見合いのオファーがありました。両親は最初、『遠い日本に住んでるから、この人(=ゴーリーさん)はナシ』と言ってました。でも、占星術で一番結果が良かったのが夫でした!」
ーー実際に初めて会うまで、不安はありませんでしたか?
- ヴィディヤさん
- ヴィディヤさん
- 「電話で何度も話してたから安心でした。実際に会ったら、彼がいろんな冗談を言って楽しませてくれて……好きになりました」
“不良インド人”の知られざる素顔に、取材班の心がいつしか浄化されてゆきます……。
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「彼女へのお土産に立派なバッグと、日本のお金を渡したんです。『日本に来なければ、このお金は使えないんだよ〜』とか言いながら(笑)」
ーー当時から舌好調だったんですね。ロマンティックなことは言わなかったんですか?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「ロマンティックとか知らなかったで〜す。それまで仕事で女性と話すことはあっても、恋愛のために話したことはなかったから。奥さんが、私にとって『初めてのラブラブ』です。多くの夫婦がきっと、そう。当時彼女はインドで立派な仕事をして、私よりも高い給料を稼いでいたけど、私と結婚するために日本に来てくれて、日本語を覚えてくれました」
- ヴィディヤさん
- ヴィディヤさん
- 「勤めている会社の日本支社で働こうと思ったら、日本に来てすぐ支社がなくなりました(笑)。今は別の仕事をしています」
ーー「初めてのラブラブ」ということは、インド人のみなさんは、きっと、結婚相手と深く長く愛を育むのですね。
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「まぁ、人によるけどね〜。最近は離婚するカップルもいるけど、うちは喧嘩しても、お互いに愛があるから〜!」
インドにいる頃から、お肉を隠れて楽しんでいたことを過去記事で告白したゴーリーさんですが、こと恋愛に関しては道を外すことなく、故郷のならわしをしっかりと守ってきたご様子。高感度が一気にアップし、彼がチキンにまっしぐらの“不良インド人”であることを、危うく忘れそうになったのでした。
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リモートワークで深まった「お酒への愛」
と、その時。ゴーリーさん宅のチャイムがピンポーンと勢いよく鳴りました。
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「私の親友のアルさんと、アショークさんが会いに来てくれました!」
聞けば、二人ともこの界隈の自宅でリモートワーク中とのこと。気分転換がてら、ご近所のよしみでちょっとだけ挨拶に来てくれたのです。いつもの仲良しトリオ、久々の再会!
ーーアルさんの奥様も、初めましてですね。ご結婚されて長いんですか?
- アルさん
- アルさん
- 「はい、お見合い結婚して、14年目になりま〜す」
ーー奥様のどんなところが好きですか?
- アルさん
- アルさん
- 「(少し照れながら)そうですね〜、この歳になっても私がオンラインでインドの伝統音楽を習うことを許してくれて、寛大なところです」
ーー奥様のヘーマさんは、アルさんのどんなところがお好き?
- ヘーマさん
- ヘーマさん
- 「新聞を毎日読んで難しい言葉の意味をSNSで友達に解説したり、漢字をよく知ってたり、とっても賢いところです」
- アルさん
- アルさん
- 「うふふ」
- ヘーマさん
- ヘーマさん
- 「あとは、真面目なベジタリアンなところが本当に好き。私がどんなベジタリアン料理を作っても喜んで食べてくれます」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「アルさんとゴーリーは、相当なベジタリアンですからね‼‼」
- アルさん
- アルさん
- 「……!」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「まぁ、アショークは“なんちゃってベジタリアン”だけど!」
- アショークさん
- アショークさん
- 「(ニコニコ)」
ーーな、なるほど……。アショークさんの会社も、現在リモートワーク中とのことですが、ストレスはたまっていませんか?
- アショークさん
- アショークさん
- 「やっぱり、家の中では酒が飲めませんから、ちょっとつらいです」
- アショークさん
- アショークさん
- 「この前、友人の誕生日に缶ビールを買って、家の前の公園で1時間くらい乾杯しました。ゴーリーさんと一緒に」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「…………」
- アルさん
- アルさん
- 「ゴーリーさんとアショークさんは、いつでもこの調子ですから……。以前の記事で、アショークさんは『インドの大学生時代から隠れて飲んでいた』とケロッと告白して……、本当にびっくりしました!」
- ヘーマさん
- ヘーマさん
- 「二人の(飲酒の)ことは、西葛西の噂で聞いたことはあったけど、まさかホントだったなんて……!」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「アショークさんは不良だなぁ、お酒は私、日本に来てからですよ!」
- アショークさん
- アショークさん
- 「いいえ、ゴーリーさんは3歳からです」
- ヘーマさん
- ヘーマさん
- 「……!」
暴かれた真実
募る罪悪感……。これまでゴーリーさんの奥様・ヴィディヤさんに視線を合わせられないでいた取材班ですが、思い切って振り返ってみると……
- ヴィディヤさん
- ヴィディヤさん
- 「私は……すべてを結婚前から知っていました。夫が、肉とお酒が大好物だということを。仕方ないと、もう諦めています。私はニオイも見ためもまったくダメですけど」
どうやら、いろいろ吹っ切れているご様子……。
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「まぁ、奥さんに正直に告白したよね。ただ、一切、家の中には、肉もお酒も持ち込みません! ここ“だけ”はインドの神様がしっかり見ていますし、彼女こそが、我が家のクイーンですから!」
- ヴィディヤさん
- ヴィディヤさん
- 「家と外でしっかり態度を区別してくれるから、そこは信頼しています。だけど、チキンもお酒も……私だけが知ってる夫のヒミツだと思っていたのに……」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「ヴィディヤも、チキンくらいなら、一緒に食べられちゃうかもよ!?」
- ヴィディヤさん
- ヴィディヤさん
- 「……!」
取材メモ/インド人の神様、いつも、ごめんなさい……。
後編はゴーリーさんの家のカレーレシピを大公開!
波乱の前編記事に続く後半の【レシピ編】では、ゴーリーさん家のナスカレー、ニンニクカレーの作り方を具体的にご紹介します。お楽しみに!
構成・取材・文=城リユア(mogShore)/撮影=岡本卓大