サンドイッチ1000個を売る日も。「カリーナ」が愛される理由

サンドイッチ1000個を売る日も。「カリーナ」が愛される理由

2017/03/09

カフェスタイルの店が増えるなか、まだまだ気を吐いているのが街のサンドイッチ専門店。西武新宿線・上井草駅近くには、今でも朝には行列ができる評判店が存在する。1日1000個を売る日もあるという、人気のワケは? 目にも鮮やかなサンドが並ぶショーケースの向こう、厨房の中を取材してみた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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サンドイッチ専門店「カリーナ」
31年間、引き継がれる味わい

上井草駅には、西武新宿線の普通列車しか停まらない。駅前もにぎわいの印象はなく「なぜここに人気店が?」と疑問に思うかもしれない。駅の北口からカリーナまでは、歩いて1分だ。

大きな看板と、色とりどりのサンドイッチが並んだショーケースが目印。以前はイートインスペースでサイフォンコーヒーを出していたが、今は提供していない
朝6時のオープン時には、ひととおり商品が並ぶ。約20のラインナップで、開店から12時くらいまではなくなり次第、補充する。それでも閉店時間の14時までに売り切れ終いとなる日がほとんどだ
店主の種村耕一さん。31年前に父親が西武柳沢駅前で開業した店を(その後、現在地に移転)、二代目として取り仕切っている
カリーナの人気ベスト3。左からタマゴ(200円)、ハムカツ(180円)、フルーツ(230円)。このボリュームでこの価格設定はうれしい

【カリーナが支持される理由】

1.できたて商品を補充する
2.具材は最良の状態で提供
3.安くても手間を惜しまない


1.できたて商品を補充する

通勤・通学の時間帯には、行列ができる。一方で毎日通っている、というお年寄りのお客も多い

店が一番の活況を迎えるのが、通勤・通学の時間帯だ。お客の数も劇的に増える。ショーケースの様子をうかがい、欠品しそうな商品を作って補充するのが、店主・種村耕一さんの仕事。特に一番人気のタマゴは、常に作り続けているような状況だ。
営業時間中の種村さんは常にサンドイッチを作り足しているから、パンとパンの間に挟まれる具材(フィリング)は、いつ誰が作っているのだろう。そんな疑問が残る。

次々に商品が売れていくため、補充に追われる種村さん。一番人気のタマゴは短いスパンで作り足していく
タマゴのフィリングは、中央が山になるように塗ることで、三角に切ったとき断面が立体的になる
カットするときは、タマゴのふわふわ感を殺さないよう、無駄な力で具材を押し付けないようにナイフを入れる
見よ、このボリューム感ある断面を! ビニールの三角パックに封じ込めることで、逆にタマゴのふわふわ感が増して見える。ますますそそられるから不思議だ

2.具材は最良の状態で提供

店の始業は、まだ日も上がらない2時半。実は前日までに揚げ物以外の具材は、ほぼ仕上がっている

「当日、出勤してからフィリングを作っていては、商品の陳列、補充に手が回らないんです」と、人気店ならではの悩みを口にする種村さん。「それにタマゴやポテトサラダは一晩、冷蔵庫で寝かした方が、マヨネーズが具材になじんでおいしい」とも話す。野菜も前日に塩もみして余計な水分を除いたものを冷蔵庫で保存し、パンの間に挟んでいる。

この日の営業時間中、種村さんに代わり次の日の具材作りを任されていたスタッフに、店の一番人気「タマゴ」のフィリング作りを見せてもらう。

店頭の活況の裏では、もう翌日の具材作りが始まっていた。タマゴサンドのフィリング作りの様子
LLサイズの卵を固めにゆで、白味の上部だけ除いたものを55個ボウルに投入、パイブレンダーで砕く。「タマゴ」50個分の具材に相当する
パイブレンダーを使うと、空気を含んで黄身はふんわりと仕上がっていく。ここまでに約30分を要する
味付けはマヨネーズと塩だけというシンプルさ。一晩、冷蔵庫で寝かせることで、より味わいが深くなる
このボリュームとフワフワ感! 完成したタマゴサンドは、黄身の味わいが濃厚なのに、どこまでも優しい口当たりだ

一番人気の「タマゴ」の具材は、日に50人分を4回に分けて作る。200人分を用意しても、ほぼ毎日完売の人気ぶりだ。

玉子をパイブレンダーで砕く作業は時間も力も必要。だが出来上がりを口にすると、黄身の味わいの力強さと食感の軽さに驚かされる。この適度に空気を含んだ、ふわふわのタマゴフィリングに魅せられて、みんながみんな「カリーナ」の大ファンとなってしまうのだろう。

他にも二番人気の「ハムカツ」は、自家製パン粉のサクサク感が際立って、全くしつこさがない。しかしパン粉の歯ごたえは強いため、食べ応えは充分。これで180円というから、売れば売るほど損をするのではないか、と要らぬ心配もしたくなる。

その日届いた食パンの耳から作った自家製パン粉。「ハムカツ」「カツ」の具材に使用。冷蔵庫で一晩寝かせて、翌朝に揚げる
「ハムカツ」は、やや甘みの効いたソースで味をつけ、レタスとともに挟む
「ハムカツ」に自慢のタマゴフィリングをプラスした「ハムカツタマゴ」は210円

3.安くても手間を惜しまない

開店から12時くらいまで、淡々と具材をパンで挟み続ける種村さん。当日分を作り切ると、今度は翌日の仕込みに回る

開業から31年、消費税の分くらいしか、値上げはしていません。本当に薄利多売なんですよ」。人気の理由を聞かれ、「価格が安いからじゃないですか」とも謙遜する、種村さん。ただ安くてもおいしいものを提供したいから「自分たちができる手間は、いとわないでやっています」とも付け加える。

2、3月限定の「イチゴ」(250円)。この美しくも食欲をそそられる断面と味わいに、販売の時期を心待ちにしている人も多いとか

ここにある材料は、確かにどの家庭にでもあるものだ。卵もハムも、フルーツも。それが種村さんたちの丁寧な手作業を経て、三角パックに詰め込まれると、遠出してでも食べたい一品に生まれ変わる。まさしくサンドイッチの魔法だ。

そして「カリーナ」のスタッフも、サンドイッチの引力に魅せられている。営業中は黙々と仕事に打ち込む種村さんだが、それでも心は躍っているように映るのは、自身のサンドイッチを頬張った、たくさんのお客の笑顔を見てきたからだろう。

常連さんが多いこともあって、ショーケース越しに会話の花も咲く。一方で、評判を聞きつけて東京以外、全国からお客がやって来るともいう

具材をパンで挟んだだけのサンドイッチを、なぜ人々が愛してやまないのか。その答えを「カリーナ」は証明している。

カリーナ

住所:東京都杉並区井草5-19-6
アクセス:
上井草駅北口出口から徒歩約1分
井荻駅北口出口から徒歩約12分
上石神井駅南口出口から徒歩約15分
電話番号:03-3301-3488
営業時間:6:00~14:00(売り切れ次第終了)
定休日:月曜、火曜日

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

取材メモ/「カリーナ」店主の種村耕一さんは、多くを語らない。「当たり前のことをやっているだけです」。この言葉が印象的だった。当たり前を繰り返すことほど、難しいことはない。この一言で「カリーナ」の真髄をのぞけた気がした。

取材・文/岡野孝次 写真/原 幹和

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