群馬県・太田市 地元名産のやまといもと共に歩んだ夫婦の絆

群馬県・太田市 地元名産のやまといもと共に歩んだ夫婦の絆

2020/10/15

太田市を代表する特産品として、多くの人々から愛されている、やまといも。40年余りにわたり、二人三脚で栽培に励み、今年4月、日本ギフト大賞2020で群馬県賞に選ばれた、生産者の田端さん夫妻の畑を訪ねた。

中広

中広

独自の有機発酵肥料で栽培方法を確立

群馬県南東部に位置する太田市尾島地区。利根川の豊富な水がもたらす肥沃な土壌の広がるこの地は、日本有数のやまといもの産地だ。

こうしたなか、畑を案内してくれたのは、阿久津町でファームたばたを営む田端弘太郎さんと、よしみさん夫妻だ。結婚から41年、3人の娘を育て、やまといも栽培に愛情を注いできた。

ファームたばた代表 田端弘太郎さん
田端よしみさん

山芋の一種であるやまといもは、中国が原産といわれ、日本では正倉院の文書に登場するほど歴史の長い野菜である。良質なタンパク質やミネラル、ビタミンB群、食物繊維を多く含み、栄養価が高いところから、「畑のうなぎ」と呼ばれてきた。

やまといもの最大の特長は、すりおろした芋が箸でもつかめるほどの強い粘りと、コクのある甘味だ。そのおいしさを広めようと、太田市役所農業政策課を中心に、やまといも販売戦略会議を結成。多数の飲食店でやまといもの多彩な料理が提供され、まちおこしにもひと役買っている。

濃厚な甘みと、粘り気の強いやまといも。道の駅おおたでも販売している

代々続く農家の4代目として生まれた弘太郎さんは高校を卒業後、かつて前橋市にあった群馬県立農業大学校に入学。農作物の栽培技術や経営ノウハウを2年間学び、20歳で家業に入る。先代までは米や麦、養蚕、露地野菜など、多くの作物を育てていたが、「収益性の高さと作業効率を重視し、少しずつやまといもの栽培に切り替えました」と話す。

乾燥に弱く、油断するとすぐに傷ついてしまうやまといもは、栽培が難しい。そこで、弘太郎さんは、学校で学んだ知識をベースに、施肥や水やり、土壌などを創意工夫。試行錯誤を重ね、油カスや大豆カス、肉骨粉、魚カスなどを独自にブレンドして発酵させた、有機発酵肥料にたどり着く。

農薬や化成肥料を限りなく抑えた芋は、味の良さだけでなく、安心、安全性の高い商品として評判が少しずつ上昇。品質の良さは地元スーパーに認められ、毎年夏になるとファームたばたのやまといもを使用した、冷やしとろろそばが販売されるほど、ブランド力を高めていったのである。

土づくりから収穫まで丹精を込めるやまといも

田端さん夫妻のやまといも栽培は、4月の土づくりから始まる。おいしい芋を栽培するには、良い土壌が重要だからだ。芋がのびのびと育つよう、深く耕してから土壌消毒。5月になると、自家製の有機発酵肥料でふかふかになった畑に種芋を定植する。6月になり、つるが伸び始めると、自然との戦いだ。天候や気温、葉を見ながら、長年の経験に基づき、施肥や水管理に精を出す。繁忙期にはパートやアルバイトの助けを借りるものの、ほとんどの作業は、夫婦二人で行っている。

白く可憐な花を咲かせるやまといもの花

「極力農薬を使用しない減農薬栽培を目指しているため、病気の予防には特に気を使います」と弘太郎さんは語る。やまといもは、農薬を使わずに育てるのが困難である。だからこそ、手間や経費をかけても、窒素、リン酸、加里などのやまといもが吸収しやすい有機発酵肥料で、作物が病気にかかりにくい土壌を作り、農薬の濃度や与える回数の削減にいそしむ。

5月に定植したやまといもの収穫は、11月初旬から始まる。土のなかで育つ芋は、生育の途中経過が見えないだけに、思い通りに育ったときの喜びはひとしおだ。

「掘り取りまで、うまく育ったか分からないところが不安でもあるし、楽しさでもあります」と、弘太郎さんは語る。「長さの一定にそろった芋が土から現れたときはうれしくて、収穫する手も、自然に早く動くんですよ」と、よしみさんもほほ笑む。長年、喜びと苦労を共にしてきた二人は、息もぴったりだ。

1本1本の苗に愛情を注ぎ、我が子のようにやまといもを大切に育てる田端さん夫婦

しかし、思い通りに育ったからといって、出荷時までは決して気を抜けない。土から抜くとき、取り扱いに注意しないと表面に傷がつき、商品価値を下げてしまうからだ。1本ずつ丁寧に収穫した芋は、専用の冷蔵庫で保管し熟成。土のついたまま長期保存できるので1年中、旬と同じ味わいが堪能できるそうだ。

インターネットによる通信販売が発達し、全国からの注文も増えた田端さん夫妻のやまといも。多くの人々に支持され、今年4月、全国各地の魅力的な贈り物を顕彰する賞、日本ギフト大賞2020の群馬県賞を受賞した。

還暦を過ぎ、体力の衰えは感じるものの、「待っている人がいる限り、味は落とせません」と弘太郎さんは前を向く。「これからも、おいしいやまといもをたくさんの人々に届けていきたいです」と、よしみさんも笑顔を見せた。

間もなく、やまといもの収穫時期を迎える。生産者の思いが込められた地元の名産をぜひ、堪能してはいかがだろう。

自宅で簡単に作れる やまといもレシピ

やまといものお好み焼き

やまといものお好み焼き

【材料4人分】
やまといも…大1本
卵…2個
キャベツ…500グラム
桜エビ…大さじ3

①やまといもは皮をむき、すりおろす
②キャベツはみじん切り
③ボールに桜エビ、卵、①②を入れて混ぜる
④フライパンに油をひき、焦げ目がつくまで両面を焼く
⑤好みでソース、ケチャップ、マヨネーズなどをかけて食べる

やまといもの磯部揚げ

やまといもの磯部揚げ

【材料4人分】
やまといも…中1本
海苔…1枚
塩…少々
揚げ油

①海苔を8等分の長方形に切る
②やまといもは皮をむき、すりおろす
③スプーンでやまといもをすくい、海苔で巻き、180度に熱した油で揚げる
④きつね色になるまで揚げ、塩をふりかけて完成

おじま汁

おじま汁

【材料4人分】
やまといも…中1本
片栗粉…大さじ1
だし汁…4カップ
鶏肉のささみ・大根・白菜・ニンジン…各100グラム
しいたけ・みつば…適宜
酒…大さじ1
塩・しょうゆ…少々

①食べやすく切った野菜と鶏肉を鍋に入れただし汁で煮る
②皮をむいてすりおろしたやまといもに、片栗粉をまぶして混ぜる
③やまといもをスプーンですくい、鍋に入れる
④ひと煮立ちしたら、酒、塩、しょうゆで味を調える

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中広は岐阜に本社を置く広告会社です。 地元の情報を各戸配布のハッピーメディア(R)『地域みっちゃく生活情報誌(R)』のブランドで発信しています。

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