ネットで話題!福岡・門司の干物屋社長がラーメン店を本格開業
2020/10/30
コロナ禍を乗り切るため、さまざまな飲食店が次の一手を模索するなか、北九州市門司区の有名店「じじやのひもの」の社長が、自社工房の一角に豚骨ラーメン店を開業。SNSを中心に、ネットで話題になっています。1日30~50杯限定というそのラーメンの魅力を探るべく、現地で体感してきました。
Yahoo!ライフマガジン編集部
干物工房の一角にある、秘密基地のようなラーメン店へ潜入
福岡市内から高速道路と県道を経由して、車を走らせること1時間強。北九州市門司区白野江(しらのえ)という場所に、今回紹介する「丸拳(まるけん)ラーメン」がある。この店名にピンと来た人はきっと、地元民かラーメン通。門司港の小原市場にて2010年まで、「丸拳門司港ラーメン」という店名で豚骨ラーメンを提供していたあのお店だ。
店主を務めるのは、門司港レトロ地区などで干物専門店を展開する、「じじやのひもの」の社長・秋武政道さん。ラーメン店を畳んで以来、門司港のまちづくりや本業の干物製造に力を注いでいたが、復活を望む声が多くなったこともあって再始動。SNS上のみで告知した「試食会」を2020年7月15日から開催し、1日30杯程度、1645杯を作りながら試行錯誤を重ね、9月26日に本格営業へ切り替えた。
現在の営業時間は、平日12:00~14:00、土日祝12:00~15:00で、月曜定休(祝日の場合は翌平日)。ただし、平日は30杯、土日祝は50杯限定のうえ、感染予防を講じた結果、店内への入場は30分単位で7名ずつに制限している。予約も、店頭に貼られた「予約順番表」に来店客自身が希望の時間と名前を記入し、順番になったら入店するという「入れ替わり」方式のみとなっている。
この店で味わえるのはズバリ、濃厚なのにあっさりとした豚骨ラーメンだ。秋武さんが大好きだという拳骨(豚の太い脚の骨=丸骨)のみを使って抽出した、コラーゲンたっぷりのまろやかであっさりとしたくさみのないスープを、シンプルな素ラーメンで堪能できる。
日本一しゃべるラーメン店主が、拳骨100%スープの魅力を語る
ここで、門司港レトロ地区のご当地キャラクター・黄色のバナナマン像のモデルとしてもおなじみ、「じじやのひもの」の社長で、「丸拳ラーメン」の店主でもある、秋武政道さんが登場。こだわりのスープの抽出法やおいしさの理由、おいしく食べる方法などを語ってくれた。
\この人に聞きました!/
- 店主の秋武政道さん
- 店主の秋武政道さん
- 「今回の新型コロナによる自粛によって会社がピンチになり、なんとかしなければと思った時に再燃したのが、一度はやめたラーメン店への思いでした。これをチャンスだと考えて、毎日少しずつスープを引くことから始め、新しい出店地が決まるまではと、この白野江工房の一角に店を設け、ラーメンを作っていた当時の勘を取り戻すことにしたんです」
- 店主の秋武政道さん
- 店主の秋武政道さん
- 「スープは、極力豚骨臭を抑えて飲みやすくなるよう、新しいものを作って使い切る『切り取り』製法を採用しています。作業の開始は朝5:00から。まずは、拳骨をハンマーで割って2つの寸胴に入れ、強い火力で煮沸して長時間炊きこむことで骨の中の髄(エキス)を炊き出します。こうすることにより、クリーミーでコクがあり、まろやかな『一番スープ』が完成します」
- 店主の秋武政道さん
- 店主の秋武政道さん
- 「『二番スープ』では、髄に加えて、コラーゲンも炊き出します。拳骨のくるぶしの部分は軟骨によって覆われていますが、『二番スープ』を炊き込むころにはこの軟骨に含まれるコラーゲンが抽出され、脂と水を結びつけます。こうすることで、拳骨らしいトロみのあるスープになります。最後に、『一番スープ』と『二番スープ』を合わせて完成。約6時間をかけて炊き出しを行い、1日30~50杯分のスープを作ります」
- 店主の秋武政道さん
- 店主の秋武政道さん
- 「スープの源流になるのは、50年前の昭和期に博多・長浜の屋台で出されていたラーメンです。拳骨100%のスープに、元ズメ(元ダレ)と呼ばれる醤油をベースとした秘伝調合のかえしを合わせただけ。豚骨本来の味わいを楽しんでいただけるよう、化学調味料は極力抑え、塩加減も薄めにしています。また、温度が下がるにつれて、スープの甘みが増してくるところも楽しんでいただきたいポイント。最高のおいしさを満喫するなら、開店時間の12:00がベストですね」
- 店主の秋武政道さん
- 店主の秋武政道さん
- 「倉庫の一角にスープの製造場を設けたのは、お客様に豚骨スープの解説をしたかったからです。おそらく私は、『日本で一番しゃべるラーメン店主』でしょう(笑)。私の話を聞けば、もしかしたらラーメン店が開けるかも? 解説は、毎営業日の11:45ごろから行っていますので、ぜひご参加ください」
まずは、素ラーメンを堪能するのが「丸拳ラーメン」流
さて、秋武さんの豚骨スープに関する熱い話を聞いたあとは、いよいよ店内でそのこだわりのラーメンを実食だ。ここでも、秋武さんがオススメする食べ方がある。
はじめは素ラーメンで、豚の拳骨100%スープの作り立ての味わいを堪能。余計なものをそぎ落とした、素材そのもののおいしさを感じることできるはずだ。そのあとは、自分スタイルでの楽しみ方でOK。満腹になりたい場合は、「チャーシュー・キクラゲ・ネギのトッピングし放題」(+200円・支払い時の自己申告制)がオススメ。塩加減が足りない時は卓上の元ズメ(元ダレ)を、キリッとした味わいにしたいならコショウで味を調整するとよい。
ちなみに、麺も、博多・長浜ラーメンならではの極細麺か、久留米や北九州でよく食べられる普通麺が選べる。こうした食べ比べができるところも、「丸拳ラーメン」の魅力といえるだろう。
- 店主の秋武政道さん
- 店主の秋武政道さん
- 「『替玉』(100円)をする際、麺の硬さで、生は避けてほしいですね。理由は、麺に付くゆで汁があるかないかで、おいしさが大きく変わるからです。まさに、パスタのペペロンチーノと同じ技法ですね。生以外の硬さで替え玉を注文していただき、トロみが増してコクの出たスープと一緒にご堪能ください」
お得な会員割引&テイクアウトも要チェック
今年の7月の試食会以降、さまざまなメディアに取り上げられたこともあり、地元・北九州市のみならず、福岡県内や大分県、山口県から訪れる客も増加。リピーターも増え、最大で14回も来店した人がいるそうだ。そこで、これらの人たちへのサービスを充実させようと、LINEを使った会員登録を開始。将来的には、ウェブを使った予約システムの導入も検討しているという。
「お持ち帰りラーメンセット」(600円)の販売も始めた。こちらは、「じじや白野江工房」のフリーダイヤルでの電話予約が可能。受け取りは、白野江工房のほか、門司港店や小原市場店も対応する。保冷バッグなどの準備で少し時間を要するため、事前の電話注文がオススメだ。
- 店主の秋武政道さん
- 店主の秋武政道さん
- 「まずは、私1人できっちり50杯を売り切れる形にしたいですね。そのため、今はテイクアウトだけですが、将来的には、店の営業時間が終わった後、車でこの近辺を回って、夜鳴きそば屋を始めるかもしれません(笑)。来店されるお客様との会話が本当に楽しい。こんな雰囲気を続けながら、みんなで一緒に盛り上がるラーメン店に育てていきたいですね」
拳骨100%の豚骨ラーメンと秋武さんの人柄で、北九州の新たな名物になりそうな1軒。皆さんもこの近辺に立ち寄る機会がある際は、「丸拳ラーメン」のこともぜひ思い出してほしい。
※記事で紹介している料金や内容は、2020年10月29日時点での情報になります
取材メモ/現在、お店の最新情報は、秋武さんのSNSで発信されていますので、気になる人は要チェック。車で訪問する人は、「白野江派出所」の隣の広場に来店客用の駐車スペースもがあります。下記の写真でご確認ください。
取材・文=西田武史(シーアール) 撮影=長﨑辰一