弘前城の敷地にあり「死ぬまでに行きたい! 世界の絶景」にも選ばれ注目を集める弘前公園のさくら。咲き誇る美しさはもちろん、散った花びらがピンクの絨毯のようにお濠を埋める「花筏(はないかだ)」は圧巻! 今年で100回目となる弘前さくらまつり。地元人だからこその絶景ポイントをご紹介!
Yahoo!ライフマガジン編集部
西谷雷佐さん
「さくら」と「りんご」の関係性とは?
まず最初に知ってほしいのは「なぜ弘前公園のさくらはこんなに綺麗なのか」。日本中にさくらの名所はありますが、弘前公園にあるさくらの特徴は、敷地内に約2600本あるその本数だけではなく「花の付け方」なんです。
一般的にさくらは、ひとつの花芽から4〜5つの花を付けるのが一般的と言われています。しかし弘前公園のさくらは、ひとつの花芽から6〜8つの花を付けることが! だから写真のようにモコモコふんわりと綿菓子のように見えるのです。
弘前公園のさくらが綺麗なもうひとつの理由。それは木と木の間にある空間を、お互いの枝が埋め合っているから。
一般的にさくらは天に向かってまっすぐ伸びます。しかし弘前公園のさくらは、左右に枝を張っているのです。
この「モコモコふんわり」と「左右に枝を張る」には弘前ならではの秘密が……。
それは「りんご」と関係があるんです!
青森県といえばりんご。弘前はその青森県内でも一番のリンゴの産地です。弘前公園のさくらの木は、そのりんごの剪定(枝を切る)技術を応用して管理されています。
昔は「桜切るバカ、梅切らぬバカ」と言って、桜の枝は管理するにあたり、切ってはいけないと言われていました。しかしあるりんご農家さんが良かれと思って切ってしまいました。当時その農家さんはすごく怒られたそうです。しかし数年するとその場所から元気な枝が伸びて来たからさあ大変(笑)。「あれ? もしかして桜も剪定した方が美しくなる?」ということに気づき、現在は弘前方式として定着しました。
この弘前方式は桜を美しくするだけではなく、木の寿命も延ばしています。一般的にソメイヨシノの寿命は60年程度と言われていますが、弘前公園の中には、樹齢100年を超えるソメイヨシノが300本以上あります。
木に近づいてよく見てみると、剪定の様子を伺うことができます。ぜひこんな視点で弘前のさくらを楽しんでください!
地元人が薦める弘前公園のさくら見所ベスト5!
5位「弘前城・岩木山・桜の今だけコラボ」
現在、石垣修復作業中で天守が別の場所に置かれています。まあ、公共工事の途中経過なのですが、捉え方を変えると今しか見ることのできない風景でもあります。木製の展望台があるのでぜひ登って見てください!
初めて弘前城を見る方は「思ってたより結構小さいのね」と言います。それもそのはず、この天守は元々「櫓(やぐら)」でした。200メートルほど離れた場所にあった5層の天守は落雷で燃えてしまい、その後櫓に手を加えて現在の天守にしたのです。
ちなみにこちらが石垣工事の様子。今後間近で見学できるよう展望台も設置される予定です。石垣工事の現場を見学することも今後可能になる予定です。何でも観光コンテンツにする弘前、攻めてますね(笑)。
4位「絵画のような桜」
まるで絵画の世界。弘前公園には5つの門があり、その中で「南内門(みなみうちもん)」と「東内門(ひがしうちもん)」からはこのような景色を楽しむことができます。画像は夜の物ですが、日中も綺麗ですよ。
写真好きには密かに人気のスポットで、人がいなくなる遅い時間や早朝を狙って三脚を構えている方も見かけます。
3位「水面に映るピンクのコントラスト」
春陽橋(しゅんようばし)から見た風景です。日中も綺麗ですがやはり夜の美しさは息を飲みます。
この美しさも、木と木の間をみっちりと桜が埋めているからこそ。剪定技術の恩恵がここにもキラリと光ります。
2位「夜の花筏と日暮れ直後の青い空」
こちらは東門前の風景。「比較的落ちたばかりの花びら」「ライトアップ」「青黒い空」という全ての条件が揃うのは難しいですが、居合わせたら息を飲むこと間違いなしです。オーロラを見るような感覚で楽しんでください。
1位「幸せを呼ぶハートの桜」
本当にわかりにくい場所にあります。看板も出ていないです。道らしき道もなく、木の間をすり抜けて入っていくような場所。だからこそ知らない人も多く、気づいた人は大喜び! 「幸せになるスポット」として地元人に愛されています。
追手門(おうてもん)から弘前公園に入り、南内門(みなみうちもん)をくぐった正面の薮の中にあります。ぜひ探して見てください。
このハート型、自然にこうなったわけではなく、実は剪定技術によって作られました。観光客の皆さんへのおもてなしと同時に、この形に仕上げて維持する剪定技術の高さを知ることもできますね。
さくらでハートを作ろうとしたきっかけ、実は先ほどから何度か登場している「門」にあります。門の金具の部分をよーく見てみると……。
もちろんこの時代にハートという概念があったわけがなく、これは「四つ葉のうちの1枚の葉っぱ」という意味です。
ちなみに弘前公園でさくらを管理している方のことを「桜守(さくらもり)」と言います。1年365日、毎日休むことなくさくらの管理をしているのです。弘前公園に行ったら桜の木の幹を見てみてください。全てに小さなプレートが結びつけられていて、一本一本個体管理されているのがわかります。
弘前さくらまつりは4月22日開幕!
今年の弘前さくらまつりは4月22日(土)〜5月7日(日)に開催。開花予想は4月22日、満開予想は4月27日となっています(3月22日現在の情報)。
今年で100回目の開催となる弘前さくらまつりは、イベントも盛りだくさん! 最後に弘前さくらまつりをさらに楽しむことができる情報をいくつかご紹介します。みなさん今年の春はぜひ弘前に遊びに行ってください!
弘前さくらまつり2017
会期:4月22日(土)~5月7日(日) 会場:弘前公園 ライトアップ:18:30~22:00 露店・出店の営業時間:9:00~21:00
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取材・文・撮影/西谷雷佐