犬養裕美子のお墨付き! ペルー料理「エル・セビチェロ」

連載

犬養裕美子のアナログレストラン

2017/03/31

犬養裕美子のお墨付き! ペルー料理「エル・セビチェロ」

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第25回は祐天寺 だ。

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

日本人の口に合う魚介料理

日本人ほど、食に対して好奇心旺盛な民族はいないのではないだろうか? 日本料理に限らず、パスタ(イタリア料理)、餃子(中国料理)、カレー(インド料理)など世界の料理が普通に日常食となっている。街には世界各国のレストランが揃っているが、そんな中最近、注目を集めているのが南米料理。

キッチンカウンターの上に青版があり、その日のメニューが書かれている。その下で谷口さんが調理中なので、わからない料理は説明してくれる

ここ数年、ブラジルやペルーでは世界の食通が足を運ぶガストロノミックレストランが次々にオープしている。今年1月に祐天寺にオープンしたペルー料理の店「エル・セビチェロ」は、ペルーでポピュラーな料理であるセビチェ(魚介のマリネ)専門の店。

谷口大明さん。ペルー料理に魅せられて料理の道に。豊富な知識と軽妙な語り口で、ペルー人も日本人にも信頼される料理人に

オーナーシェフの谷口大明さんは、もともとは公務員だったがスペイン料理に興味を持ち、この道に転向。南米旅行の際、ペルー料理の魅力に引き付けられ本場の味を覚えようと現地で1年修業の後、原宿の現代ペルー料理の店で働き、和食の店で本格的な魚の扱い方を学んだ。「セビチェとはヒラメや鯛、クエなど白身の魚を厚めにおろして塩でしっかりとしめてからにんにく、しょうが、セロリ、ライムなどでマリネした料理。

ペルー風カルパッチョ1200円。こちらは薄くスライスした、ティラディート。メジナを使用。レモンのソースに、唐辛子とコリアンダーの風味。色合いが大胆なのが、ペルーらしい

「ペルーの沿岸部ではとてもポピュラーです。海辺には小さな海の家みたいなセビチェ屋がズラリと並び、昼、夕方には大変な賑わい」。え、夜は?「夜は食べないんです。あくまで昼の食べ物」それもなんだか不思議。食文化は、その国独自のものだから、不思議な習慣があっても当たり前に思える。さらに新事実が次々と出てくる。

ペルー風鮮魚のマリネ1200円。厚切りの白身魚と赤玉ネギ、セロリ、コリアンダーをマリネしたセビチェ。魚介のあらで取るダシとライム、塩、香辛料で作るマリネ液でマリネする

「実は、セビチェ・デ・パトといって肉もあるんです」。また、セビチェは厚みのある魚の切り身をあえてマリネにしたものだが、日本の刺身のように魚を薄く切って並べてソースをかける「ティラディート」という料理もある。「また、ペルーではサシミ(sashimi)もそのまま料理として定着しています。日本の刺身スタイルですが、レモンの効いたソースにつけるなど、日本式とは少し異なります」。どうやらペルーの魚料理は他の国よりもずいぶんバリエーション豊富なようだ。スパイスや香草を豊富に使うが、さわやかな余韻が残る程度で日本人の口にもなじみやすい。谷口シェフが感激して人生を大きく方向転換したのも、食いしん坊なら納得の理由かもしれない。

カナリオ豆とご飯のお焼き1800円。右に添えられたオムレツみたいな形のものが“タクタク”。イメージとしてはパンケーキのボリューミーなもの。役割はシチューなどの煮込みをすくって食べるパン
タクタクはひとつひとつフライパンで時間をかけて焼く

祐天寺にペルー人が引きつけられる理由

店は祐天寺駅から10分程度、“昭和通り”とレトロな名前の商店街にある。間口は扉1枚分だけど奥に細長い店は、元倉庫だった場所とか。そこにカウンターとテーブル10席ほど。黒板(実はよく見るとブルー板)に書かれたアラカルトを見てオーダーする。谷口さん一人で作っているので、品数は多くないがセビチェはもちろん、ご飯もの、野菜料理、肉料理などがバランスよく並ぶ。

アロス・ザンビート600円。アロス(米)を使ったデザート。米を茹でて、ココナッツ、黒糖シロップと煮込み、レーズンやナッツを添える。甘い米?と最初は不思議に思うが、考えてみればおはぎもお米だ! 
ペルーで大人気の「キヌアビール」600円。ペルーを代表する人気シェフ、ガストン・アクリオ氏がプロデュース。これが意外にも!おいしい。桃、オレンジの香りがさわやか
10名も入れば満席。キッチンと一体になった空間は、谷口さんのシェフズルームのよう。最近は遠方からわざわざ訪れる人もいるので予約を!

「最近はもともと前日に残った豆を温め直して作るまかない料理・タクタクが食べられる店があると在日ペルー人の間に広まって、遠方からも食べにきてくれるんです」。ペルー人は魚好き、ご飯好き、そしてビール好き。何だか日本人と変わらない! ペルー人だけでなく、日本人にもリピーターが多いのは、“初めてだけど懐かしい気がする”という人類共通の“おいしい”にあるのでは?

エル・セビチェロ

住所:東京都目黒区五本木2-15-3
電話:03-6873-4081
営業時間:17:30~21:00LO(22:00閉店)
定休日: 水
予約:可能

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※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

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犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

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