大使館や外資系企業が支社を構える赤坂は、都内屈指のインターナショナルエリアだ。街を歩けば「日本人の方が少ないのでは?」と思ってしまう瞬間もあるほどに、様々な言語が飛び交う。そんな赤坂には、多様な国の食文化を体験できるレストランが点在している。
Yahoo!ライフマガジン編集部
今回は数ある赤坂のレストランの中から、珍しい国の料理を味わうことのできるお店をピックアップ。中華料理やイタリアンといった馴染みのある海外グルメとは一味違ったレアな料理にチャレンジするぞ!
アフリカ料理「サファリ」でエチオピアの激辛カレーを食べる
まず一軒目にやってきたのは赤坂3丁目のビルの2階にあるお店「SAFARI AFRICAN RESTAURANT BAR」。ここはエチオピアをはじめとしたアフリカの料理が楽しめるレストランなのだが、実はアフリカ料理好きにはよく知られたお店なんだとか。
——こちらはどんなお店なんですか?
- ワンダサンさん
- ワンダサンさん
- ここは2007年まで新宿で営業していたアフリカ料理店「ローズ・ド・サハラ」のマインドを継いだレストランなんです。「ローズ・ド・サハラ」は30年以上の歴史がある、アフリカ料理の老舗。
オープンした当時、アフリカの料理が食べられるのは日本で「ローズ・ド・サハラ」だけで、とても珍しい店だった。けれどお店がクローズすることになり、シェフだった私が2008年に独立をして、ここ赤坂で店をすることになったんです。
——早速お店のおすすめメニューを教えてください!
- ワンダサンさん
- ワンダサンさん
- やっぱりウチに来たらこれを食べてもらいたいですね!「ドロワット」というエチオピアのカレーなんですが、10種類以上のスパイスやハーブを使っているんです。玉ねぎをひたすら炒めて出てきた水分だけを使うので、水は一滴も使いません。
作るのに8時間くらいかかるから、現地では正月やお祝いの席といった特別な時にだけしか作らないんです。
——そんな貴重なお料理が気軽に食べられる、と!
- ワンダサンさん
- ワンダサンさん
- ランチでも提供しているので気軽に食べに来てほしいね。
——では早速一口……って、ワンダサンさん、めっっっちゃくちゃ辛くないですか!? 汗が止まらない……でも玉ねぎの甘みもほんのり感じてご飯が止まりません! これはクセになるッ。
- ワンダサンさん
- ワンダサンさん
- これは結構スタンダードな辛さで、レベル5まで辛くできます。どうしても辛すぎる、という人は「ビーンズサラダ」と食べると美味しく辛さをダウンできます。
——おっ、これもサッパリしていて美味しい。カレーと相性抜群ですね。
- ワンダサンさん
- ワンダサンさん
- お店の料理は基本的にすべてオーガニック。野菜をたっぷり使って、油も控えめだからすごくヘルシーなんです。けれど、どれもお酒との相性も抜群。お店ではアフリカのビールや僕おすすめのアフリカワインも置いてあるので、一緒に乾杯しましょう!
日本で唯一(?)のパラグアイ料理の店で豪快に肉を喰らう!
続いてやってきたのは、韓国料理のお店が連なる赤坂2丁目。ハングル文字の看板がちらほらと目に付くビルに入居するのが、パラグアイ料理店の「レストラン アミーゴ」だ。
——どうして赤坂にお店を?
- リンさん
- リンさん
- 私がもともと宇都宮で11年くらい居酒屋をやっていたんです。そこは韓国料理とパラグアイ料理の両方を出す、ちょっと変わったお店でね。どうしてかというと、私が韓国の出身で、妻がパラグアイの生まれだったから。韓国料理とパラグアイ料理はほとんど共通点がないんだけれど、お客さんは「いろんな料理が食べられて面白い」って繁盛していました。
特にパラグアイ料理は、おそらく関東で食べられるのはうちの店だけだったんじゃないかな。けれど、そこの物件を引き上げないといけなくなって、せっかくなら都内で店を出したいと思って、赤坂で物件を見つけました。きっと今でも、パラグアイ料理専門店は都内でここだけだと思います。
——お店の一押しメニューを教えていただけますか?
- リンさん
- リンさん
- パラグアイではとにかくよく肉を食べます。「アサード」といって、いわゆるバーベキューのようなものなのですが、炭火で豪快に焼いた肉です。パラグアイは土地が広いので、どの家庭にも大きな庭があって、そこでみんな日常的に大きな鉄板の上で炭火で肉を焼いているんです。
——骨付きで食べ応えがありますね!
- リンさん
- リンさん
- ちょうど骨の周りの肉は旨味が凝縮していてとても美味しいです。フォークとナイフで上品に食べるよりも、思い切りかぶりついた方が食べやすいし、美味しいですよ!
——こちらはお店の中でも炭火で焼いたものを提供していらっしゃるんですよね。
- リンさん
- リンさん
- そうです。庭に置いているような大きさのものではありませんが、厨房の一角に炭火で肉をジュウジュウと焼ける場所を作っています。焼き始めると肉の香ばしい匂いが漂って、いろんな席から「僕もアサードが食べたい!」と注文が入るんです。うちでは骨付きカルビ、チョリソー、ステーキを盛り合わせで提供しています。
- リンさん
- リンさん
- 他にもパラグアイの肉料理はたくさん用意しています。「チャンチョ アル オルノ」は骨つきの豚肉をオーブンでじっくり焼いたもの。横についているのはポテトサラダ。パラグアイはとても気温が高い国なので、あまり葉物野菜を食べません。だから向こうではサラダといえばポテトサラダが定番なんです。
日本のポテトサラダのようにマヨネーズをたっぷり使わないので、芋のホクホクした食感が楽しめて、クドくないのもポイントですよ!
超レアなトーゴ料理も赤坂なら味わえちゃう!
最後は、「アミーゴ」からほど近い赤坂2丁目の「エコ ロロニョン」。変わった店名の店だが、実はここはアフリカ大陸に位置するトーゴの料理がいただけるお店だ。
2015年6月時点でのデータによると、在日トーゴ人はたった27人。そのうちのひとりで、同店シェフのエドモンドさんに話を聞いた。
——お店の名前の由来を教えていただけますか?
- エドモンドさん
- エドモンドさん
- 「エコ」は私の名前のエドモン コムランに由来しています。そして「ロロニョン」はトーゴの言葉で「素敵な愛」という意味です。このお店は日本で初めてのトーゴ料理のお店でしたから、ここからトーゴ料理の美味しさをお届けしたいという思い出名付けました。
——開店初日にはトーゴのボジョナ臨時大使代理や、来日中だった保健大臣も店を訪れたとお聞きしました。オープンしてからどのような方が食べに来られますか?
- エドモンドさん
- エドモンドさん
- 2012年の3月にオープンしてから、大使館の方だけでなく、周囲のオフィスワーカーの人もたくさんいらっしゃいます。「トーゴを旅したことがあって、あの時に食べたあの料理をもう一度食べたい」と足を運ばれる方もいますよ。ここだけの話、芸能人の方もいらっしゃいますよ。
——トーゴ料理はどんなお料理なのかまったく想像がつかないのですが、早速おすすめのメニューをいただけますか。
- エドモンドさん
- エドモンドさん
- まずこちらが「フェトゥリデシ」です。揚げ魚とエビ、カニをオクラのソースで和えたものですね。「フェトゥリ」がオクラ、「デシ」がソースという意味です。現地でもオクラはすごく人気のある食材。細かくチョップしたオクラでソースを作っています。
——オクラのソースというだけあって、すごくネバネバしていますね! いただきます!……おおお、すごく魚介のダシがきいてる、ネバネバソースが今までにない食感ですが、具材としっかり絡んでくれてめちゃくちゃ美味しい!
- エドモンドさん
- エドモンドさん
- アポロというトーゴの蒸しパンと一緒に食べるのがおすすめです。
- エドモンドさん
- エドモンドさん
- こちらは「アジデシ」。「アジ」はピーナッツという意味で、ラム肉をピーナッツソースで提供します。
——ピーナッツソース、と聞くとついピーナッツバターを思い浮かべてしまうんですが、甘いというわけではないんですね。こっちはすごくピーナッツの香ばしさが出ていて、ちょっとスパイシーに仕上がったソースですね!
- エドモンドさん
- エドモンドさん
- ラム肉も臭みが出ないように一度マリネしてから焼いています。一緒に食べて欲しいのが、こちらの「フフ」です。
——フフ……? これも不思議な名前ですね。パンですか?
- エドモンドさん
- エドモンドさん
- フフはヤム芋という芋を臼で砕いてお湯で練ったものです。日本では生の芋が手に入らないので、粉をお湯で練って作りますが、トーゴではヤム芋を茹でて、杵とうすの様なもので、日本のお餅つきのようにつきます。
——ワッ! ナイフを入れるとふわふわですね!
- エドモンドさん
- エドモンドさん
- トーゴでの主食のひとつがこのフフです。とても柔らかい食感が特徴で、現地では子供達が芋をついている様子をあちこちで見かけます。ナイフとフォークで上品に食べてもいいのですが、手でつまんでこのアジデシのソースをつけて食べてみてくださいね!
今回ピックアップしたお店は料理が美味しいのはもちろんのこと、非常にフレンドリーで気さくな方ばかりだ。昼夜問わずビジネスの中心地として多くの人が行き交う赤坂。眉間にシワを寄せたサラリーマンも、ここに来ればきっと心から笑顔になれる、そんなパワーを感じざるを得ない素晴らしいレストランばかりだった。赤坂を訪れた際には、ぜひ足を運んでいてはいかがだろう。
取材・文・撮影=田代くるみ