ベテラン脚本家が営む、映画人も集うカフェが人形町にあった!

特集

映画好きなら一度は行きたいスポット

2017/06/03

ベテラン脚本家が営む、映画人も集うカフェが人形町にあった!

東京の中心にありながら江戸情緒の残る町・人形町。その大通りに一軒、入口に映画ポスターを掲げ、何やらワケアリな雰囲気の人々が出入りするビルがある。実はここの2階は、タイミング次第では映画業界人に直接会うことができるかもしれない、映画ファン垂涎のカフェだ。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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映画館を作るつもりが、いろいろあってカフェ開店

カフェの名は「人形町三日月座」。経営するのは柏原寛司さんと柏原久美子さんのご夫妻。と書くと、その名前はどこかで目にしたような……と思われる方もいるかもしれない。

こちらが人形町三日月座の入り口

柏原寛司さんは『西部警察』『探偵物語』『あぶない刑事』『ルパン三世』『名探偵コナン』等々、映画やテレビなど、アクションものを中心に活躍するその道40数年のベテラン脚本家だ。

今回は、そんな“特別なお店”を取材、ご夫妻にお話を伺った。

三日月座経営者の柏原寛司さんと柏原久美子さんご夫妻
ライフマガジン編集部
ライフマガジン編集部
どのような経緯でカフェをオープンされたのでしょうか?
寛司さん
寛司さん
本来はカフェをやるつもりじゃなかったんだよ。たまたまオークションで映画館用の映写機を落札しちゃったのが最初のきっかけ。

当時はこのフロアは俺の事務所で、映写機もそこに置いてたんだけど、オブジェにしといてもしょうがない。そこでビルの地下に映画館を作ることにして、2階は映画館のロビースペースにしようと。

でも消防法の都合で映画館にはできなかったので、うちの会社の試写室にしちゃった。となると映画館じゃないからロビーもチケットブースもいらない。でもせっかく片付けたスペースがあるんだから、かみさんに何かやってもらおうってことでカフェになったわけ。本人は最初はいやいやだったけど。

と、いきなりカフェのみならず「試写室」や「会社」というフレーズまで出てきたが、そのあたりは後述。

まずは妻・久美子さんが切り盛りするカフェについてお話を伺おう。

映画ファンなら気になるモノだらけの店内

本格焙煎コーヒーと美味しいフードも味わえます

サイフォン式でいただくコーヒー。店の雰囲気にもばっちりあう
ライフマガジン編集部
ライフマガジン編集部
カフェはたまたまとのことですが、アラモブレンドやヒルツブレンドなど、コーヒーにかなりこだわっていますよね。
寛司さん
寛司さん
初期のカフェスタッフがコーヒー好きでさ。今は長野で「カネコーヒー」って焙煎やってて、そこから仕入れてるんだよ。
久美子さん
久美子さん
やるならコーヒーオンリーのお店にしたかったの。コーヒーと映画好きのためのお店にして、お客さんにもゆっくりしてもらって。それなら私一人でも営業できるんですけど、それはそれでお客さんが来ないので、スタッフさんとフードメニューも考えて出すことにしたの。いわゆるカフェメニューですけどね。フレンチトーストとかパンケーキとか。

といいつつ、取材時に注文したドライカレー他、フードもなかなか本格派。メニューのイラストもかなりオシャレだ。

久美子さん
久美子さん
これはさとうまさあきさんという、Facebookで見つけたイラストレーターさんの絵が素敵だったのでお願いして描いてもらいました。さとうさんの個展を店内で開くこともあります。
さとうまさあきさんによるイラストメニュー。上手い。美味い

レアな映画ポスターコレクションが店内を飾る

久美子さん自身が写真を撮っているとのことで、店内の壁はギャラリースペースとしても活用されることも。ただし通常は、テーマに沿ってさまざまな映画ポスターが展示されている。

寛司さん
寛司さん
俺らが子どもの頃は、公開が終わると映画館でポスターをくれたりしたんだよ。人形町にも映画館が7館あってさ。ジョン・フォード監督の騎兵隊三部作(『アパッチ砦』『黄色いリボン』『リオ・グランデの砦』/1948〜50)とか、今はえらい高額になっちゃったのもその頃に手に入れてる。それが嵩じてネットオークションでもどんどん落とすようになって、せっかくだから店内に飾ることにしたんだ。
ライフマガジン編集部
ライフマガジン編集部
枚数とか、コレクションの傾向は?
寛司さん
寛司さん
相当な数だけど、分量は全然わからない。基本的には自分の好きな監督や俳優の作品だよね。俳優だとジョン・ウェインやスティーブ・マックイーン、監督ならジョン・フォード、ハワード・ホークス、アルドリッチ、ペキンパー、日本映画だと岡本喜八さん、黒澤明さん、長谷部安春さん、村川透さん、深作欣二さんあたりの作品はけっこうあるよ。
取材時のポスターは東宝特撮映画特集で、こちらの2作品は柏原さんが脚本を担当した『ゴジラ2000ミレニアム』(1999)海外版と『ゴジラVSスペースゴジラ』(1994)
久美子さん
久美子さん
ポスター選びや入れ替えのタイミングはこの人の好き勝手にやってもらってます。でも以前、深作欣二監督作品のポスターをかけてたら、OLさんに「こういうのが趣味なんですか……」って怯えながら言われました。確かにご飯食べながらアレはきついよね。
寛司さん
寛司さん
『仁義なき戦い』とか『仁義の墓場』とか、拳銃かまえてたり、道端に死体が転がってるのばっかりだからね(笑)。

こうしてしばしばポスターが入れ替わる中、不動の作品もある。名作『第三の男』(1949)のキャロル・リード監督が晩年に撮ったラブコメディ『フォロー・ミー』(1972)だ。

『フォロー・ミー』ポスター。生真面目な男が妻の浮気を疑いマヌケな探偵に調査依頼したところ……というお話。ポスター表記の『THE PUBLIC EYE』はアメリカ公開時のタイトル

好みの映画は夫婦正反対…だけど、店名やレイアウトは共同で

久美子さん
久美子さん
この人が好きな映画って、私は趣味が全然あわないの。ずーっと目を伏せてなきゃいけないようなのばっかり。でも、そうやって観せられた中で『フォロー・ミー』はほとんど唯一、私もすごく好きになった作品。ポスターの色合いも明るいから、お店に飾るのにいいかなと思って。実は展示物も私とこの人のとで場所が分かれてるんです。『フォロー・ミー』周辺の置物は私の趣味になります。

と、夫婦間の対立が……と余計な心配をしそうになるが、店名の「三日月座」は久美子さんが昔から三日月がとにかく好きということと、寛司さんの映画好き(映画館の名称は「◯◯座」が多い)のミックスによるもの。安心です! ちなみに元事務所でもある三日月座店内では、現在も営業時間中にスタッフやキャストが集まって新作の打ち合わせを行っていることもあるという。

『空の大怪獣ラドン』(1956)ポスター左が久美子さん、右が寛司さんの趣味のモノ。『ラドン』は東宝特撮映画特集のものなので、現在は別の作品となっています
ライフマガジン編集部
ライフマガジン編集部
来店時に俳優さんがいらっしゃった場合、サインのお願いをしてもいいんでしょうか。
寛司さん
寛司さん
いいけど、ここに来るのはおっかない顔の人ばっかりだから声かけづらいかもね。小沢仁志氏とか片桐竜次氏とかさ。
ライフマガジン編集部
ライフマガジン編集部
“顔面凶器”こと小沢仁志さんがこんなステキなカフェに! たしかに声かけられません!
久美子さん
久美子さん
でも、サインを頼めばこころよく応じてくれるわよ(笑)。
店内で閲覧できる書籍類。最下段をよーく見ると、柏原寛司さん自身が手掛けた作品の貴重な撮影台本も!

基本はマスコミ試写用だが一般向けイベント会場になることも

防音ばっちりな試写室「Base KOM」。天井からはプロジェクター、奥の映写室にはごっつい映写機

地下の試写室にも案内していただいた。こちらの名称は「Base KOM」。映画館用の35ミリフィルム映写機、ブルーレイやDVDにも対応したプロジェクターも備えた本格的なスペースで、上映時は寛司さん自身が映写技師となる。

寛司さん
寛司さん
座席数は補助席入れて30ぐらい。若手監督の作品とか、低予算映画のマスコミ試写用に使うことが多いね。
久美子さん
久美子さん
評判になった『百円の恋』(2014)のスタッフ試写もうちかな。
寛司さん
寛司さん
映画館じゃないんでいつでも誰でも入れるわけじゃないけど、一般向けのトークイベントを行うこともあるから、タイミング次第だね。

「Base KOM」の名称にある「KOM」、こちらが冒頭で触れた「会社」にあたる。正確には「KOM PICTURES」といい、柏原寛司さんに加え、大川俊道さん、室賀厚さんという、日本のアクション映画ファンなら絶対目にしているクリエイター陣によって立ち上げられた映画制作会社だ(社名「KOM」は3人の頭文字から)。

取材日は「KOM PICTURES」制作作品のDVDリリース記念イベントでもあったので、そのままお邪魔させていただくことに。イベント内容はKOM制作のオムニバス映画『6月6日』(2012)の上映と、同作の監督でもある柏原寛司さんと室賀厚さん、石井良和さん、原隆仁さんによるトーク、そしてDVD即売会にサイン会と盛りだくさんの日だった。

左から室賀厚さん、原隆仁さん、柏原寛司さん、石井良和さん。全員『6月6日』監督

なお、KOMのDVDは三日月座でも販売中。こちらも当然ながら寛司さんがいる場合はサインをいただける、はず。まずは気軽に訪れて、その時その時の映画ポスターを眺めながらのんびり過ごしてみよう。

久美子さん
久美子さん
三日月座は貸切サービスもできるので、パーティ会場をお探しの方も遠慮せずご相談ください。隠れ家的なカフェを目指したら本当に隠れ家になっちゃったけど、少なくとも東京オリンピックまではがんばります。
寛司さん
寛司さん
平日は夕方5時半までだし土曜は休みだから、映画ファンでもカタギの仕事してる人にはちょっとハードル高いけどね(笑)。
三日月座店内で販売中のKOM作品2作。柏原寛司監督作品『STRAIGHT TO HEAVEN 〜天国へまっしぐら〜』(2008)の冒頭には主人公のアジトとして三日月座以前の柏原事務所が登場している

人形町三日月座

住所:東京都中央区日本橋人形町1-15-5 柏原ビル2階
アクセス:東京メトロ/都営地下鉄人形町駅[A2]から徒歩約1分
     東京メトロ水天宮前駅[8]から徒歩約1分
電話:03-3667-0423
定休日:火・水・土曜日

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

取材・文・写真/田中元

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