岐阜・飛騨高山に木のあたたかみに包まれる小さなホテルが開業!
2021/01/28
1月15日、岐阜県・飛騨高山の観光名所「高山陣屋」前に、8部屋限定の小さなホテル「cup of tea ensemble」がオープン。内装建材や家具は地元の家具メーカーにより提供され、そのほとんどに飛騨地域の木材資源を使用。細部に“飛騨高山らしさ”が感じられる施設の詳細を紹介。
Yahoo!ライフマガジン編集部
館内のほぼ全てに岐阜県産の木を使用したホテル「cup of tea ensemble」
1月15日、岐阜県高山市にオープンしたホテル「cup of tea ensemble(カップ オブ ティー アンサンブル)」。
観光名所である「高山陣屋」前に位置し、人気スポット「古い街並み」などの主要観光地へもアクセスしやすい場所に位置している。
ホテル名は、「好み・お気に入り」という意味でも使われる「cup of tea」に、日本人が一杯のお茶に込めるゲストをもてなす気持ち、ゲストにとっての cup of tea(自分の好み)になってほしいとの思いが込められ、さらに、ホテルに関わる多くの方々がアンサンブルを奏でてほしいとの思いから「ensemble」と名付けられた。
ホテルに設けられた客室はわずか8部屋と小規模ながらも、全客室が4人部屋または6人部屋となっており、家族やグループでの宿泊でもゆったりとくつろげる空間となっている。
森林率9割の飛騨地域! コンセプトは「あるものをいかす」
「cup of tea ensemble」を手がけたのは、地元出身者によるプロジェクトチームで、飛騨で持続可能なまちづくりを目指す「DONNA(ダナ)」と地元の家具メーカー「飛騨産業」。
飛騨地域の事業者である両社が共感した「あるものをいかす」というコンセプトをもとに、家具・建具・寝具のほとんどは、飛騨地域で採られた間伐材や家具として利用可能な岐阜県産材を利用している。
ホテル内のいたるところで、DONNAによって再解釈された「飛騨高山らしさ」と飛驒産業が持つ高度な木の加工技術との融合によって引き出された木を用いたさまざまな空間表現が楽しめる。
随所に使われている杉材
杉材は、小径や短尺といったその特性を生かし、不規則な隙間がデザインのアクセントとなっている建具やベッドとして活用されている。
ランダムに空けられた隙間によって、室内の明かりが通りにこぼれ、室内の温もりや団らんを感じさせる一方で、室内では屋外の天気や時間、四季の移ろいなどを感じることができる。
部屋にある要塞(ようさい)のような構造体は、二段ベッドになっており、建物の外装同様に、隙間を空けて積まれた杉材が、独特の質感と存在感を放っている。
燃料として使われていた端材
コミュニティラウンジや客室に設置されたコーヒーテーブルには、家具として使用されなかった端材が活用されている。工場で美しく積み上げられた端材を見たプロジェクトメンバーから生まれたアイディアが形になったもので、メンバーたちの手で一つ一つ束ねて制作されたそう。
間伐材
豊かな森の恵みを後世につなげるために必要な間伐作業。
ホテル内に5本設けられた枝照明は、必要に応じて間伐された木材を使用し、職人の手によって溝を切りLEDを埋め込んだもの。枝そのものの姿・形を生かしてデザインされている。
そのほかメインテーブルには、プロジェクトメンバーで採集してきた朴(ほお)の木が使用されており、木肌表面のカーブをテーブルの耳として生かしたデザインとなっている。
さらに、コミュニティラウンジに配された8脚のチェアのうち4脚はかつて飛騨産業で生産し販売していたチェア「マッキンレー」シリーズの中古品を使用しており、傷んだ箇所はベテラン技術者による修理が施されている。塗装は岐阜県山県市で生産された柿渋が使われており、経年変化を楽しむことができる。
飛騨地域の木材を生かしたあたたかみを感じる空間で、旅の疲れもしっかりと癒やせる「cup of tea ensemble」。シャワーブースは全部屋についているが、ゆっくりとお湯につかりたい時には、ホテルから徒歩2分の場所にある創業76年の銭湯“ゆうとぴあ稲荷湯”を利用するのもおすすめ。
徒歩圏内には、カフェやパン屋さんもあるので、宿泊時にはまち歩きも楽しめそうだ。
文=シーアール