人気バリスタが語る「2020年の東京カフェシーン」とは?

特集

東京カフェ最前線。

2017/05/27

人気バリスタが語る「2020年の東京カフェシーン」とは?

2020年の五輪開催で盛り上がりを見せる東京。年々増え続ける海外旅行者を極上の一杯で迎える東京のカフェは昨今目覚ましい進化を遂げています。そんな急成長中のカフェシーンの現在、未来を「Fuglen Tokyo」の小島賢治さんと「KOFFEE MAMEYA」の三木隆真さんに聞きました

Yahoo!ライフマガジン編集部

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Fuglen が手がけるNORWEGIAN ICONSショールームにて夢の対談が実現!

今回対談を行うおふたり

Fuglen Tokyo
(フグレン トウキョウ)
代表・小島賢治さん

Paul Bassett(ポール・バセット)出身の小島さん

居酒屋レストランに務めた後、2007年にPaul Bassett(ポール・バセット)に入社しバリスタの道へ。その2年後、ノルウェー・オスロのFuglenでバリスタとして腕を振るう。2012年にオープンの「Fuglen Tokyo」の立ち上げから携わる。

KOFFEE MAMEYA
(コーヒー マメヤ)
バリスタ・三木隆真さん

コーヒーへの愛情がすごすぎる三木さん

2007年、イタリアンエスプレッソを提供するillyに勤務。2012年からは、「OMOTESANDO KOFFEE」や「TORANOMON KOFFEE」を営む嗜好品研究所に入社。2017年1月にオープンした「KOFFEE MAMEYA」でもバリスタとして活躍する。

2007年の“WBC”が
東京のカフェシーンに
種を撒いた

Fuglen のコーヒーをいただきながらの対談です

――まずは、三木さんにお聞きしたいです。惜しまれながらも閉店した名店「OMOTESANDO KOFFEE」と同じ表参道に新店をオープンされたそうで。

三木さん
三木さん
はい、今年1月に「KOFFEE MAMEYA」をオープンしました。これは3年前くらいからずっと考えていたものなのですが、バリスタの次のステップとなる新しい位置づけのお店を作りたかったんです。技術を磨いたバリスタは、次の段階としてローストに進む人が多い。でも僕らは、バリスタとしてお店に立ち続けたいと思っているんです。

だから、香港やメルボルン、名古屋、京都、福岡などいろんなロースターさんの豆を使って、おいしい1杯を提案していきたいと考えていたんです。僕らバリスタは抽出のプロ。ロースターさんとお客様の間にたって、おいしいコーヒーの淹れ方を伝えていきたいんです。
「おいしいコーヒーをご家庭でも飲んでいただけるようにしたい」と三木さん
小島さん
小島さん
ちなみに三木さんがバリスタになったのっていつ頃ですか?
三木さん
三木さん
たぶん、11年前くらい。「illy」に入社したのがWBCの前後、どちらかなんですよね。
小島さん
小島さん
WBCって、東京のカフェシーンにとってけっこう大きかったみたいですね。僕もその後に、ポール・バセットに入社しているし。

――念のためお聞きしますが、WBCって「ワールドベースボールクラシック」じゃないですよね(笑)。

小島さん
小島さん
あ、野球じゃなくて「ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ」という、バリスタの世界大会のことです(笑)。そのWBCが2007年に東京で開催されたんですが、僕が代表を務める「Fuglen Tokyo」も、実はこれがきっかけで東京にオープンすることになったんです。

オスロにあるFuglen本店のオーナーのEinar Holthe(アイナール・ホルテ)がノルウェーバリスタチャンピオンになり、ノルウェー代表として世界大会の会場である東京に、1カ月くらい滞在しました。その時に“次、店を出すのは東京だ”って思ったみたいで。WBCがなかったら東京にFuglenはできてなかったかもしれません。
WBCを一つの契機として誕生した「Fuglen Tokyo」。決して広い店ではないが、ゆったりとくつろげる作りとなっている
三木さん
三木さん
いろんな意味で、2007年のWBCは東京のバリスタ連中にとっては大きな刺激になったんですよ。

――世界的な大会により、東京のカフェシーンの“次なる種”が巻かれたという感じですかね?

三木さん
三木さん
そうですね。今、東京でバリスタをやっている人たちは、そういう感覚があるような気がしますけど…小島さんどうですか?
小島さん
小島さん
僕の場合、個人的にもその頃って転機だったんですよね。ちょうどその頃に、別の飲食業界からコーヒー業界に転職することにしたんです。最終的に「Paul Bassett」に入ることにしたんですけど、2007年当時って自店舗で焙煎したり、丁寧に抽出したりって店が今ほどなかったんですよ。
三木さん
三木さん
そうですね。
小島さん
小島さん
それに今ほどバリスタ同士、店同士の横のつながりもなかった。僕が働いていた「Paul Bassett」も孤高の存在って感じでしたし、僕自身、他のバリスタがどういう“仕事”をしているのかまったく知らなかったですから。
三木さん
三木さん
僕も同じです。当時は、大きなチェーン店にいたので、オペレーションが決まった中で働いていたから、外の情報が入らないんです。だから休日の度に、よそがどんなコーヒーを淹れているのかを知るために、1日5軒くらいハシゴして飲み比べたりしてました。それこそ「Paul Bassett」にもよく行ってましたよ。小島さんとは、その頃からの知り合いです(笑)。

この10年で続々出現した
エスプレッソ店や
シングルオリジンコーヒー店

おふたりのコーヒー談義は止まらない

――東京のコーヒーシーンにとって転換期となった2007年。そこからの10年、東京のカフェはどのような変遷を辿ったのでしょうか?

小島さん
小島さん
2007年からしばらく、それこそ僕が「Paul Bassett」で働いた2007年~2009年は、僕が勉強したいことと、来る方の価値観に相違が生まれてきちゃっていると感じてましたね。エスプレッソをサーブしても、「小さいね」とか言われたり。当時のエスプレッソって、それくらいの一般的認識だったんですよ。

――「Paul Bassett」みたいなお店に来る方でもそうだったんですね。

三木さん
三木さん
この10年で、お客さんの意識とか知識がすごく変わったと思います。僕自身、2011年にオープンした「OMOTESANDO KOFFEE」にお客さんとして行ったとき、席もフードもないから“これで大丈夫?”って思いましたもん(苦笑)。ああいうコーヒースタンドって、海外ではすでにいっぱいあったみたいなんですけど、当時の日本ではなかったですから。でも「OMOTESANDO KOFFEE」の出現によって、一気に日本でもコーヒースタンドが増えていった印象ですね。
小島さん
小島さん
それまでの日本のコーヒーといえば、昔ながらの喫茶店やシアトル系などが主流でしたけど、2000年代後半~2010年代にかけて“新しいタイプのカフェ”がポツポツと出来はじめてました。「OMOTESANDO KOFFEE」や「Fuglen Tokyo」もそうですし、エスプレッソの「BEAR POND」(下北沢)や、シングルオリジン専門店の「NOZY COFFEE」(三宿)とかもそうですよね。

東京のカフェ文化
支えたのは
あの人気雑誌?

コーヒーの新たな体験を提供している「KOFFEE MAMEYA」。カウンターの奥には厳選された焙煎豆がぎっしり

――2000年代後半からエスプレッソ系やシングルオリジンが台頭し始めたとのことですが、きっかけはあったのでしょうか?

三木さん
三木さん
どうですかね。個人的には雑誌『BRUTUS』の影響って大きいと思っていて。OMOTESANDO KOFFEEでも2012年9月まではお客さまは少なめだったんですけど、翌月に発売された『BRUTUS』で、コーヒー特集が組まれてからすごくお客さんが増えたんですよね。同じようなこと言っているバリスタ仲間もたくさんいますけど、もしかしたらあそこから一気に火がついたのかもしれませんね。
小島さん
小島さん
うちもそう。『BRUTUS』が出るまですごく暇だったんですけど、雑誌が出たら行列になりました(笑)。Fuglenはエアロプレスでコーヒーを抽出するスタイルを採用しているんですけど、それをページにしてくれて。今でこそよく見られるエアロプレスですけど、当時はそこまでは知られてないにしても、気にはなる存在ではあったみたいで。そういう感度が高い人が訪れてくれるようになったのもあるかも。

――『BRUTUS』ってすごいんですね。

小島さん
小島さん
すごいと思います。その5年くらい前、WBCの時にも『BRUTUS』でコーヒー特集があったんです。これを見た当時の若い世代が、コーヒーはおもしろいんじゃないかって気づいていたんですよね。僕も見ていたし、NOZY COFFEEの能城さんもこれを見てカフェを始めたそうで。雑誌の力は偉大なんですよ。
2007年から10年、東京のコーヒーシーンにとっては激動の時代だったよう

勝手に宣伝してくれる
SNSのジレンマ

日常の中にあるカフェを目指すという、2人の思いは同じ

――現状のカフェブームはどう捉えてらっしゃいますか?

小島さん
小島さん
今はSNSが生活の軸みたいな存在になっているからなのか、つぶやきや写真をアップする目当てでいらっしゃるお客さんが多いような気がしますね。それがどんどん拡散していって、勝手に広告の役割を果たしてくれるといいますか。
三木さん
三木さん
確かにそう。去年、香港のお店のプレオープンのとき、告知をせずに行ったら初日は200人、次の日はSNSで拡散して400人、また次の日は800人とどんどん増えていきましたね。うちはSNSアカウントを何も持ってないんですけど、お客さんが勝手にやってくれる。ただ、SNSによる情報拡散もカフェ側にとってはある種の“ジレンマ”があるんですよね。

――どういうことですか?

三木さん
三木さん
海外からのお客様に多いのですが、“せっかく東京に来たから話題のカフェに行こう”みたいな感じで、いろいろなお店にやってきては、写真を撮っていく。それはそれで全然構わないんですが、中には写真だけ撮ってコーヒーをほとんど飲まない方もいる。飲む飲まないはお客様の自由かもしれないけど、ああいう姿を見ると「あぁコーヒーを飲みに来たんじゃないんだな」ってさみしい思いになります。
小島さん
小島さん
お客様がたくさん来てくれる今の状態はうれしいけど、本来求めていた形と違う…そこに、ジレンマを感じているバリスタは少なくないと思います。
三木さん
三木さん
僕たちが目指したのはこうだったけな、みたいなね。
小島さん
小島さん
たとえばFuglen本店のあるノルウェーでは生活の一部にコーヒーがあるんですよ。世界チャンピオンの店に、おばあちゃんが散歩がてらコーヒーを飲みに来てる。で、話しかけてみると、彼女はここが有名店だなんて知らないんです。おばあちゃんにとっては、散歩の途中、生活の中にあるだけの店でしかない。その生活の中にあるコーヒーが抜群にうまい。それが僕の理想的なコーヒーやカフェのあり方。だから日本でも、ご近所さんが気軽に立ち寄って、バリスタと他愛もない会話をする、そういう店を作りたかったんです。
町の人の生活に溶け込む、ノルウェー・オスロのFuglen
日常の一杯がおいしいと、それは絶対にうれしい
三木さん
三木さん
会話…そこですよね。お客さまと対話したいのに、現状では(混みすぎて)できない場面もいっぱいあると思います。贅沢な話ですけど、お客様にとって心地いい空間を作ることはもちろん、僕らバリスタもヘルシーに働きたいという思いがありますね。サステイナブルじゃないと、健全なカフェシーンはつくれないでしょうから。

2020年は対面でつながるカフェが必要

「現役のバリスタこそ、三木さんの店にいってほしい」と小島さん

――2020年、そしてそれ以降の東京のカフェはどうなる? どうしたい?

小島さん
小島さん
やっぱり僕らが目指すのは、誰かと誰かがつながって、何気ない会話が自然とうまれるカフェをつくること。海外からの旅行者やSNSで来ていただいているお客様の波が、2020年以降に消えたらどうなるのか。今たくさん来る人に対応し続けた結果、2020年以降に“文化”を残せているのか。そこを考えると、やはりお客様に会いたいと思われるバリスタやカフェスタッフの存在がとても重要だと思うんです。
三木さん
三木さん
正直、今のブームに溺れししまうと、本当にいいバリスタがいなくなっちゃう可能性もあるとさえ思っています。作業に追われるがゆえ、技術や知識は身につくけど、いちばん大事なカスタマーサービスがおろそかになっちゃう。昨年、コーヒー先進国のオーストラリア・メルボルンに行ってきたんですよ。マシンも整っていてオートメーション化が進んでいて、バリスタは抽出をこなすだけ。でも違和感を感じた。その技量はとても素晴らしいけど、僕にはそれができないし、したくない。だって僕はお客さまとしゃべりたいですから(笑)。
小島さん
小島さん
今後、対面のコミュニケーションはより重要になってきますよね。
三木さん
三木さん
そう思います。だから今回始めた「KOFFEE MAMEYA」では、真逆の方法をとったんです。前までは1人で数百人のお客さまと対峙していたけど、「KOFFEE MAMEYA」ではお客さまの数を半分に、スタッフの数を倍にすることにしたんです。ネットやSNSで人と人がつながりやすい今だからこそ、実体験として1対1でつながることが大事だと思って。
「KOFFEE MAMEYA」はじっくりコーヒー体験を楽しむ店。時間のない方には向いていないかもしれない

――お二方の次なる一手は?

三木さん
三木さん
実は今、「OMOTESANDO KOFFEE」を再開しようと、表参道で物件を探しているんです。香港にあって表参道にないのって、ちょっと違うと思うし(笑)。
小島さん
小島さん
来年あたり、都内に大型の新店をオープンしようと思っています。Fuglenは、1つの国で1店舗と決めてるんですが、東京のカフェシーンは、常に発展している。なので、旅行者がメインになるような店になると思いますが、海外から来たバリスタが働ける場になればいいとも考えてます。あとは、2020年以降は若い世代のコーヒーの飲み手を育てていくことも課題かもしれませんね。今のところ、それはできていると思うんですけど。
三木さん
三木さん
そうですね、もっと多くの方に一段階上の「体験」してもらいたいですね。本来の豆の味わいを知ってもらったり、コーヒーに関する会話を楽しんだり。ちょっとだけコーヒーの楽しみ方に深みをもたせられるようなことを我々もしていきたいと思っています。そうすれば、東京の、いや日本のコーヒーシーンはもっと成熟していくと思うんですよね。

Fuglen Tokyo

電話番号:03-3481-0884
住所:東京都渋谷区富ケ谷1-16-11 1F
営業時間:月・火8:00~22:00 水・木8:00~翌1:00 金8:00~翌2:00 土9:00~翌2:00
日9:00~翌1:00
定休日:なし

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

KOFFEE MAMEYA

電話番号:03-5413-9422
住所:東京都渋谷区神宮前4-15-3
営業時間:10:00~18:00
定休日:不定休

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

取材・文:船橋麻貴

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