料理人が買い出しに来る、業務用の街だった築地場外市場。今では日本人に加え、インバウンドの波で外国人観光客が押し寄せ、より開かれた場になっている。そこで築地のおいしさをさらに広めようと、場外の老舗が力を入れるのが、テイクアウトの一品。手頃な値段なので、ぜひハシゴして楽しんでみたい。
Yahoo!ライフマガジン編集部
【ご紹介するのはこの5軒】
1.「築地山長」の串玉
2.「幸軒売店」のシュウマイ
3.「気まぐれ屋」のタマゴサンド
4.「築地 佃權 門跡橋工房」のベーコンチーズ
5.「茂助だんご 場外2号店」の茂助だんご
気軽につまんで、場外市場でおいしい散策
とにかく海鮮、お寿司のイメージが強い築地。場外市場にも、ゆっくり座って海の幸を楽しめる店はある。しかし意外とおいしいと言われているのが、海鮮以外のテイクアウト。老舗、名店も手頃な値段で提供しているので、思い思いのものをつまみながら、場外の小道を散策してみたい。
1.「築地山長」の串玉
老舗の味をたったの100円で
新鮮な魚介を求めてやって来る寿司職人が多いため、場外市場では昔から、玉子焼きの需要も大きい。こちら「築地山長」は1949年に創業、現在社長の松江國雄さんで三代目。厳選した養鶏場から毎朝届く新鮮な朝採り卵を丁寧に手割り、鰹節だけで採っただしに砂糖、塩、本直し(甘みの強いみりんに焼酎を混ぜたもの)を加え、熟練の職人が丁寧に焼き上げている。
山長が長年守り続けてきた味を気軽に味わってほしいと、名物「山長 玉子焼」を食べやすいサイズに、テイクアウトとして販売し始めたのが7年ほど前。今では「串玉」と名付けられたその商品を買うために、長蛇の列ができることも。100円というお手頃な価格で老舗の味を楽しめると好評だ。
築地山長
住所:東京都中央区築地4-10-10
アクセス:築地市場駅A1出口から徒歩約3分、築地駅1出口から徒歩約4分、東銀座駅6出口から徒歩約6分
電話番号:03-3248-6002
営業時間:6:00~15:30
定休日:無休(年末年始休みあり)
- 口コミ・写真など
※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。
2.「幸軒売店」のシュウマイ
豚肉・玉ねぎのうまみたっぷり
昭和25年創業の「幸軒」は、スープが醤油ベースの「ラーメン」や「チャーハン」など、昔ながらの大衆中華の味わいが人気。市場に買い出しに訪れる料理人の間でも好評だ。そんな評判店の名物がシュウマイ。本店の近くにある売店でテイクアウトすることができる。
売店を取り仕切る江尻義晴さんは元・料理人。食材の買い付けで築地へ通ううちに、幸軒の味わいに魅せられ、前職を退いたあと、こちらの店を手伝うことになったのだとか。毎日、本店のスタッフとシュウマイを手作りし、多いときは約800個を販売する。「ソースをかけて食べるのもおいしいですよ」。70歳を過ぎてもなお元気、ニコニコ接客の江尻さんの姿を眺めながら(お店が空いているときは会話も楽しみながら)、イートインスペースでシュウマイを頬張るのがいい。
幸軒売店
住所:東京都中央区築地4-13-15
アクセス:築地市場駅A1出口から徒歩約3分、築地駅1出口から徒歩約4分、東銀座駅6出口から徒歩約6分
電話番号 03-3545-5602
営業時間 6:00~14:30
定休日 日曜、祝日、市場休業日
- 口コミ・写真など
※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。
3.「気まぐれ屋」のタマゴサンド
築地の胃袋を満たすポケットサンド
築地場外市場の北西の外れに位置し観光客は少ないが、代わりにターレットトラックが往来し、活気ある雰囲気。「『気まぐれ屋』っていう名前なんだから、いつ開いていつ閉まるか、分からない店なんだよ」。謙遜する店主の松原雄二郎さん。そう言いながらも、市場が開いている日は大抵、5時から軒先にあかりを点し、できたてのサンドイッチやおにぎりを提供、魚河岸で働く人たちの胃袋を満たしている。
「気まぐれ屋」のサンドイッチの特徴は、具材を挟まず、1枚の食パンで包んでしまうことだ。これにラップして販売するが、こうすることで忙しい築地の人たちは、作業着のポケットに入れたまま、サンドイッチを持ち運べる。またおなかがいっぱいになるように、とパンの耳もつけたままだ。
サンドイッチの具材は、場内、場外から仕入れているため、素材の鮮度は折り紙つき。専門店から仕入れる鶏肉を使った「チキンかつ」、となりの店から仕入れるという「エビかつ」も人気のメニューだ。通称「ポケットサンド」を片手に、築地を散策してみよう。
気まぐれ屋
住所:東京都中央区築地6-21-6
アクセス:築地駅1出口から徒歩約5分、築地市場駅A1出口から徒歩約6分、東銀座駅6出口から徒歩約7分
電話番号:03-3541-8602
営業時間 5:00~10:00
定休日:日曜、祝日、市場定休日
- 口コミ・写真など
※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。
築地場外をあちこち歩いていると、いろんな風景に出会える。「最近は外国のお客さんも多いよ」とお店の人も話していたように、アジア系の人を中心にいろんな国からの来場者が。そんな人たちに目を向けながら市場の小道に迷い込むと、東京、いや日本ではないどこかにトリップしたような感覚になる。ラビリンスを巡るような楽しさも、場外散策の楽しみの一つだ。
4.「築地 佃權 門跡橋工房」のベーコンチーズ
練り物のおいしさ再発見
「水産練り製品」と聞いて、かまぼこやはんぺんを連想する人は多いだろう。しかしひとり暮らしの学生やビジネスパーソンで、毎日買っている、という人はそう多くないのではないだろうか。そんな水産練り製品のおいしさを再発見させてくれるのが、「佃權」のフィンガーフード「ベーコンチーズ」。串に刺して持ち歩ける、まさしく新感覚の練り物だ。
ベーコンチーズを頬張れば「練り物って、こんなにおいしかったの?」と驚くことだろう。ベーコンとチーズのボリューム、巻き込んである玉ねぎの甘みにほっこりするが、それに負けないくらい白身のすり身の旨味の濃さ、甘さに感激する。お店でひとつひとつ丁寧に揚げているから、できたてのおいしさもまた格別。同じく通年でテイクアウトできるあつあつの「おでん」を買っていこうか、はたまた「練り物の詰め合わせ」をお土産に、と気移りしてしまう。
江戸時代に築地近くの佃島での白魚漁から創業し、約140年前からは水産練り製品を製造、販売するようになった老舗・佃權。ベーコンチーズの味わいを通して、温故知新、昔からある日本の美味を再発見させてくれるお店だ。
築地 佃權 門跡橋工房
住所:東京都中央区築地4-12-5
アクセス:築地駅1出口から徒歩約3分、築地市場駅A1出口から徒歩約5分、東銀座駅6出口から徒歩約6分
電話番号:03-3542-0180
営業時間:6:00~15:30
定休日:日曜、祝日、市場休業日
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5.「茂助だんご 場外2号店」の茂助だんご
老舗の和スイーツでちょっと一服
場外市場でさまざまな美味を堪能したところで、ちょっと一服、甘いものでもと思ったときに最適なのが、昨年オープンした「茂助だんご 場外2号店」。ゆったりとしたイートインスペースで、歩き疲れた足を休めることも。他の「茂助だんご」店舗では味わうことのできない「あんみつ」や「おしるこ」もいただけるが、創業1898年の老舗が誇る代表作「茂助だんご」はぜひ、味わってみたい。
「茂助だんごもいいですが、草もちもおいしいですよ」と店長の武田修二さん。聞けば、かのマツコ・デラックスがロケで「茂助だんご」を訪れた際に絶賛し、その後は飛ぶように売れたのだとか。ヨモギの味がしっかりとしながらも、甘さ控えめで上品さもただよう一品。甘いものが苦手という人でも食べられそうな味わいは、お土産に最適といえよう。
茂助だんご 場外2号店
住所:東京都中央区築地4-12-6 シングネット・ドゥ 1F
アクセス:築地駅1出口から徒歩約4分、築地市場駅A1出口から徒歩約4分、東銀座駅6出口から徒歩約6分
電話番号:03-6228-4900
営業時間:6:00~15:00
定休日:水曜日
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※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。
「築地=海鮮を食べに行くところって思っていたけれど、今回、イメージが変わりました。フィンガーフードだとあれこれ試せて、ちょうど女の子のお腹にも良いサイズだし。友達とふたりで、また遊びに来たいです」。築地の新たな楽しみ方を知ったと話す、森ふうかさん。寿司や海鮮だけではない築地を体験しに、あなたもふらっと、場外市場を散策してみてはどうだろうか。
\本日のまんぷく散歩コース/
取材メモ/仕事が立て込むと、ついジャンクフード中心の食生活になる私。今回、玉子焼や練り物など、古き良き日本の食を再発見した。今度、忙しくて徹夜になったときは、開けた朝、築地に出かけてみたい。あの味、あの笑顔に出会いに、だ。ほっこりして、また次の日からの活力にしよう。
取材・文/岡野孝次 写真/片山 拓