犬養裕美子のお墨付き!ワインを楽しむ「ルエ・ヴェル・ロール」

連載

犬養裕美子のアナログレストラン

2017/05/03

犬養裕美子のお墨付き!ワインを楽しむ「ルエ・ヴェル・ロール」

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第27回は麻布十番「ルエ・ヴェル・ロール」だ。

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

新シェフに変わって、より気軽に入れるワインレストランに

3年前のオープン以来、すっかりご無沙汰していたこの店、久しぶりに訪れてびっくり。インテリアがグッとシブくなっていた。れんが風の壁、椅子の布地は黒とゴールドのストライプに変わり、よりトラディショナルな印象に。

新しい店内は「NYに昔からあるようなレストラン」がコンセプト
カウンター席でもコース料理は楽しめる

「ようやく3年続けて来られました。シェフが変わるのをきっかけに、より“レストラン”らしくしたくて思い切って内装も変えました!」。オーナーソムリエ・千葉和外さんの語り口は相変わらず早口だけど、3年間を地道に歩んできた余裕も出てきたような……。「余裕なんかありませんよ。もうけるなら自分がサービスして、シェフ1人の小さなワインバーの方がよっぽど効率がいい。でもここでは、料理とワインをいろいろな人にもっと楽しんでいただきたいから」と千葉さん。

カリフォルニアの有名店で3年半ソムリエを務めた経験を持つ千葉さん。マニアの店・ワインバー“千葉ちゃん”は「老後の楽しみ」だという。それもまた、怖いけど行ってみたい店!

新しく迎えた佐藤猛シェフは、フランスで3つ星を経験、帰国して京都のイタリアンレストランでの修行経験や、麻布十番のフレンチ、熟成肉ブームの火付け役となった熟成肉専門店「中勢以」でシェフを務めた。34歳という若さだけに、料理の幅はまだまだ広がる予感。

佐藤猛シェフ。フレンチの名店「ラ・ビュット・ボワゼ」や「オルタシア」でスーシェフを歴任。修業時代にはフランス、サヴォワ地方の3つ星「Flocons de Sel」で本場のフランス料理を学ぶ

前菜盛り合わせ、スープ、魚、肉、デザートで5940円というコースのそれぞれの皿は、アラカルトの半分の量だというが、コースで食べれば十分な量だし素材の変化も楽しめる千葉県印西布の「柴海(しばかい)農園」北海道十勝の「村上農場」などから取り寄せるシェフお気に入りの野菜が季節感を添える。

コース5940円より。前菜盛り合わせ(パテドカンパーニュ コンソメのジュレ、ジャンボンブラン バルサミコのソースとトマト、スモークサーモン 柴海さんの農園サラダ)単品1980円
岩中豚肩ロースのグリエ ジンジャーソース。付け合わせにカリフラワー、ブロッコリー、小松菜、カブ、黒キャベツ、ニンジン。単品2180円
パウンドケーキと柑橘(かんきつ)リキュールのスフレグラス。コースはこれに飲みもの、焼き菓子がつく。単品で780円

レストランに慣れていない人に、ここをおすすめする理由

麻布十番は隠れ家的な店が多い。この店もビルの2階だけに、いきなり入ってくる人はまずいない。階段を上がって来ても「ご予約でしょうか?」と聞かれて尻込みをして帰る人もいる。別に意地悪をしているわけではない。ある程度ここがどんな店なのかを知って来なければ、その良さを十分堪能することはできない。予約とは、いわば “取り扱い説明書”を読んできたことを表しているからだ。

「ルエ・ヴェル・ロール」は、料理とワインをこよなく愛する人のための店であり、ワインは約600本の在庫のうち9割がアメリア産。千葉さんが他のソムリエと違うのは、アメリカ産(カリフォルニア産、というと、訂正される!)への並々ならぬ愛情をお持ちであること。そしてその知識とセレクトがすばらしく魅力的だということを知って訪れてもらいたい。

店名は「ゴールド・ラッシュ」の意味。アメリカに多種多様な文化、食文化が持ちこまれた時代。ワインはアメリカ産9割、残りがフランス産、イタリア産など

実は、ここはカルトなカリフォルニアワインマニアには有名な店。オークションもののオールドヴィンテージのワインがあったりする一方、初心者にはコストパフォーマンスの高いワインをおすすめしてくれる。料理に合わせてさまざまな変化球を用意しているので、入門、中級、上級とステップを踏んでいく楽しみがある。

パニエに入っているのが、「シャトー・モンティーナ84」48000円。奥は「カルテット」(4つ畑の意味)。「ローデレール」が早くから購入した海沿いの涼しいアンダーソンバレー

パニエに入っているのが「シャトー・モンティーナ84」。熟成したカベルネソーヴィニヨンの圧倒的な香りは、フランスのものにも負けない品質。カリフォルニアの特徴的なカベルネソーヴィニヨンで「今の“コスディストネル”よりボルドー的」。奥は「カルテット」。フルーティなだけでなく、イースト感、うまみがあり、ゆっくり熟成されている。これで5800円は驚異のコストパフォーマンスだ。

「テーマを考えてワイン会を開きたいとか、ご自分のワインを持ち込んで飲み比べたいとか、ご要望にはなるべくお答えしています。まずはみなさんが会話を楽しむ中にワインがある、そんな風景が理想でしょうか。そういうレストランを目指しています」と千葉さんは語る。

千葉さんが目指すのは「ワインバーよりレストラン。マニアよりワインが好きなお客さん」。この店にはこんな優しさにあふれている。

この記事を書いたライター情報

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

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