京都の花街を支えた「フクヤライス」とは?

特集

全国ご当地グルメ(京都府編)

2016/03/31

京都の花街を支えた「フクヤライス」とは?

ハイカラ好きで知られる京都人。和のイメージが先行する京都だが、実は昔ながらの洋食店も数多い。五花街の一つ、宮川町に古くから店を構える「グリル富久屋」では、西洋料理を花街の人々が好む味へと絶妙にアレンジした洋食が、今も受け継がれている。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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芸妓(げいこ)さんのリクエストで誕生した裏メニュー

鴨川の東側、四条通と五条通の間に位置する宮川町は、置屋やお茶屋が軒を連ねる京都屈指の花街。その一角にたたずむのが老舗洋食店「グリル富久屋」だ。

創業は、まだ京都に洋食文化が浸透していなかった1907(明治40)年。ここでは今でも、100年以上前からほとんど変わらないレシピで作られる「チキンソテー」や「玉子サンドウィッチ」など、昔ながらの洋食を味わうことができる。店を訪れるのは近所の常連さんや観光客のほか、芸妓さんと舞妓(まいこ)さんたち。店内の壁には、その名入りうちわがびっしり飾られている。

甘酸っぱいケチャップライスを半熟卵とあんが優しく覆う

壁には常連の芸妓さんと舞妓さんのうちわが並ぶ

店の人気メニュー「フクヤライス」は、もとは70年ほど前、ある常連の芸妓さんからのリクエストで生まれた裏メニューだったという。

甘酸っぱいケチャップライスが、絶妙に熱を通してとろりと仕上げられた卵と、ダシが優しく香るあんに覆われている。スプーンでスッとすくえるやわらかさのおかげで少量ずつ食べやすく、大きく口を開けることを嫌う花街の女性たちのお気に入りに。

今でこそよく見かける半熟卵だが、当時はハイカラな食べ方だったのだそう。新しいものを好む京都人の心をくすぐったフクヤライスの人気は、卵の上にのったマッシュルームや角切りトマト、グリンピースの鮮やかさも手伝って、今も衰えることがない。

ハム入りのケチャップライスと、見た目よりも爽やかなあんの味が好相性の「フクヤライス」(880円)

お茶屋からの注文を受け、フクヤライスをはじめ弁当やサンドイッチなどの出前も創業当時から行っており、多い日は一日に何度も出前に走るという。

芸妓さんや舞妓さん、お茶屋の女将(おかみ)やなじみ客たちは「富久屋さんとこのおいしいもんは、なくてはならない『いつもの味』」と口をそろえる。日々の厳しい修業がつらくなった舞妓見習いが、こっそり店を訪れることもあるのだとか。

グリル富久屋は長い月日を経て、花街との密接な信頼関係を築き上げてきた。西洋料理に、京の人々の舌になじむ工夫を加え、唯一の味へと進化させてきた京都の洋食。

「これからもレシピと信頼を守り続け、変わらず花街の『いつもの味』でありたい」と、店主の林さんは語る。花街の人々が愛するグリル富久屋では、実に「京都らしい」優しい洋食に出合える。

昔懐かしさ漂うレトロなたたずまい。林さんの叔母様が「おおきに」とほほえんで迎えてくれた

※掲載の内容は2016年3月時点の情報に基づきます。
※2019年5月に店舗(住所、電話番号、営業時間など)、メニュー、料金などの一部情報を更新しました。

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