なぎら健壱が語る! 立ち飲み屋を楽しむ3つの醍醐味

なぎら健壱が語る! 立ち飲み屋を楽しむ3つの醍醐味

2017/05/08

古くからある大衆的な店から近年増えているバルスタイルまで、幅広い世代に注目を集める「立ち飲み」。でもどうやって楽しめばいいのかわからない……。そこで、芸能界イチ酒場を知る男・なぎら健壱さんに立ち飲み屋の醍醐味を聞いてみた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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酒場を愛し、愛されるフォークシンガー・なぎら健壱さん

テレビや雑誌、書籍では生粋の酒好き、居酒屋好きのイメージがある、なぎら健壱さん。そんななぎらさんが、実はあまり立ち飲み屋さんに行っていないというウワサが……。その真実も含めて、とある立ち飲み屋にお越しいただいた。

なぎら健壱

なぎら健壱

シンガーソングライター・タレント

\お話を聞いたのはココ!/
『立呑処 やまとや』(田町)

お店はJR田町駅西口のエスカレーターを降りたところにある。都営浅草線、東京メトロ三田線の三田駅からもすぐ

今回、なぎらさんにお越しいただくのは、田町にある『立呑処 やまとや』。約60年前に田町駅前で甘味喫茶として創業し、13年前に現在の場所で立ち飲み店を開店。店主の渡辺さんが、毎朝芝浦の食肉市場から仕入れる豚肉や鶏肉を使った串焼きがいただける。

ホルモンがすべてつながった状態から処理し、部位ごとに切り分けて串打ちする
「おまかせ5本盛り ネギ塩」(750円)。左から、ハツ、ナンコツ、上シロ、つくね、とり皮。ゴマ油と塩で和えた「ネギ塩」はヤミツキになるおいしさ

L字のカウンターと樽型のテーブルを完備。15時の開店と同時に多くの人が訪れ、17時半頃には満席になるほどのにぎわいを見せる人気店だ。

立ち飲みが好きだけどなかなか行けない。その理由とは……

入店するやいなや「生ビール」(中400円)を注文。「チンカチンカの〜」とは言っていなかったが、冷えたビールがスッと運ばれてきた

『立呑処 やまとや』に入店したなぎらさん。立ち飲み好きの人はなぎらさんも大好き。入店するやいなや店内がざわつき始める。そんななか、なぎらさんに早速気になるウワサの真相を聞いてみた。

ーなぎらさんはあまり立ち飲み屋に行かないと聞いたのですが……。

なぎら健壱
なぎら健壱
「いや、行きたいんだけど行けないんだよ。座りと違って、立っていると店の全体が見渡せるでしょ。だからすぐに見つかっちゃう。それで『サインください』『写真撮ってください』と声をかけられる。ひとつ受けちゃうと次から次へとなっちゃうし、ひとりも許さないと『なんだ、アイツは』となるから行けないのよ。それだけ立ち飲み屋が非常に開放的な空間だということだよね」

行かないのではなく「行けない」。ホントは立ち飲み屋が大好きで、何度も足を運んでいるなぎらさん。ならば、久々の立ち飲みを楽しんでいただきつつ、その醍醐味を教えていただくとしよう。

【なぎらさんが語る立ち飲みの醍醐味】

1.安く飲み食いできる
2.周囲のお客さんと気軽に話せる
3.サッと来て、サッと出られる気軽さ


1.安く飲み食いできる

早速、ビールと焼きとんに舌鼓を打つなぎらさん。おもむろに最初の醍醐味を話しはじめた。

串をガブリ。なぎらさんはタレの「おまかせ5本盛り」(700円)を注文。13年継ぎ足しているタレの味に満足。「やっぱり串焼きはタレだねぇ!」
なぎら健壱
なぎら健壱
「この店もそうだけど、つまみが安い! これって立ち飲み屋の魅力だよね。ここの串焼きはおいしいけど、多少デキが悪い店でも安ければ腹がたたない。これが重要。なんでも納得できる素晴らしさが立ち飲み屋にある。ある意味で、みんなそれを求めて行ってると思いますよ」
メニュー表を眺めながら「安いねぇ」とポツリ

立ち飲みといえば忘れてはいけないのが、商品と引き換えにその都度お金を支払う「キャッシュオンデリバリー」。「杯飲み(ぱいのみ)」とも言う。

『立呑処 やまとや』では小さな木の籠に入れられている。小皿に入れる店もある

ーさて、この「キャッシュオンデリバリー」のスタイルについてはどう思われますか?

なぎら健壱
なぎら健壱
「これって店が客に対して『ごまかさせないぞ』ということなんです。串を数えて計算していたときは、串を下に投げたり、持って帰ったりした人がいた。そういうこともあって、1回1回お金を渡していたんだよね。一番キレイなのは『今日はこれだけしか飲まないぞ』と決めたお金だけ置いて飲むこと。

20代のとき、あるオヤジさんが500円だけしか置いてなかったことがあった。煮込みひとつと鯨ベーコン、それとホッピー2杯だけで500円。それを見ながら、『かっこいいなぁ、キレイだなぁ』って一緒に行ってた仲間と言ってて。同じように最初にコーンとお金を置いてみたけど、どんどんお金が増えていって、『あぁ、全然タメになってねぇなぁ』って(笑)」
2杯目に下町のサワー「ホイス」を注文。引き換えに350円を籠からお支払い。ちなみにここの「ホイス」は、渡辺さんがなぎらさんの著書を読んで置くことを決めたそう

2.周囲のお客さんと気軽に話せる

続いては、なぎらさんが立ち飲み屋に行けない理由にも出てきた“開放的”だからこその醍醐味。

なぎら健壱
なぎら健壱
「立ち飲みっていうのは、わりとすぐに隣の人と友だちになれるんだよ。同じ境遇みたいな、傷口をなめ合うようなね。居酒屋より話しやすいし、お店にも入っていきやすい。そんな傷口をなめあいながら飲んでる人たちの姿を見ていると美しいね。立ち飲みで商談とかビジネスのまともな話をするために行かないよね。開放的なものを求めて行ってるわけでしょ?」
お酒が進み、L字カウンター越しに会話も進む

ーそれでもなかなか話せない人も多いと思うのですが、どうやって話せばいいでしょうか?

なぎら健壱
なぎら健壱
「この店にもテレビがあるでしょ。するとね、誰かがねテレビに話しかけるから。例えばニュースを観て、『ひでぇことするなぁ』って言ったときに『ホントですよねぇ』なんて話しかければそこから盛り上がってくるわけ。『ペギー葉山さん、死んじゃったよ』と言ったら、『なんだペギーってのは』なんつって『ベッキーと似てるの?』なんて言いながらさ。そしたら、どこかから『ウソ、あれはベッキーのお母さんだよ』とか言うわけのわかんない訳知りが出て来んのよ。でまた、それに納得するヤツがいてね。だからテレビがなきゃダメなのよ」

3.サッと来て、サッと出られる気軽さ

「生ビール」と「ホイス」を両手に持ち、グビッ

お酒のピッチが上がってきたなぎらさん。ここで立ち飲みでの粋な所作について話しはじめた。

なぎら健壱
なぎら健壱
「トント〜ンと飲んでどこかに河岸(店)を変えるというのが、立ち飲みの基本。立ち飲みで居座るのは無粋なんですよ。『ぶすい』と書くけど、江戸前の読み方だと『ぶいき』ね。
立ち飲みは腰がねダメになっちゃうんだね。それがあるから、1、2杯で出られるというのがあるかもしれない。どこかで意識的に「軽く」飲むというのがあるんだろうね。赤提灯とかそういう居酒屋で飲む醍醐味は、腰を据えて楽しむ人との会話。それが最大のつまみだけど、立ち飲み屋はそこにいる人たちとの“開放的な”会話が楽しい。だから長居しないのがいいんだよ」

つまみといえば、『立呑処 やまとや』のソレは立ち飲みならではの良心的な価格ながら、絶品の料理を提供している。

「ハムカツ」(300円)、「カレーマカロニサラダ」(300円)、「ホイス」(350円)

そのなかでも人気の1品が「カレーマカロニサラダ」。ポテトサラダと味が被らないよう、スパイスなどで調合した自家製マヨネーズで和えている。カレー風味でグイグイお酒が進む。

また、立ち飲み屋の定番メニュー「ハムカツ」も用意。ビール片手に食べられるようにと、大きすぎず小さすぎないサイズにしている。サクッとした薄い衣とハムの厚さが程よい。

お酒もサワーが13種類と充実。なかでも「ホイス」は珍しい一杯。下町で親しまれ、秘伝の漢方やエキス、リキュールを混ぜた割り材のサワー。ほんのり甘さがあり、スッキリとした飲み口が特徴だ。焼酎ベースなので、飲み過ぎ注意。

「もつ煮込み」(並450円)

こちらも立ち飲み屋、いや居酒屋の定番料理・煮込みもぜひ食べてほしい。味噌ベースの煮込みに、牛の小腸、大腸、ハチノス、ギアラが入る。大きめのサイズながら、口に入れるとスッとほどけるほどやわらか。ザク切りの大根、ニンジン、ごぼうも入り、食べ応え抜群だ。

さてさて、ホイスを飲んでいい感じになってきたなぎらさんに最後の質問。

ーなぎらさんにとって立ち飲みとは?

なぎら健壱
なぎら健壱
「イタリアでバルのようなお店に行ったとき、労働者諸君が集まって飲んでいたんです。仕事を終えた安堵感が広まっているのが、はたから見ていても気持ちいい。この額に汗しない人間が見ていてね、非常に恥ずかしい思いをしますよ。だからわたしゃね、たまには恥ずかしい思いをしなきゃいけないと、自分を戒めに立ち飲み屋へ行くんだね。日曜に教会に行くような感じだよ。そう、懺悔してんだよ、立ち飲みで。それをやらないヤツっていうのは、人間の心が荒んでるね!」
「クーッ」と「ホイス」を飲むなぎらさん。いい感じです

そう言って「ごちそうさま!」と店を出たなぎらさん。飲んだお酒は2杯。まさに「長居は無粋(ぶいき)」とわれわれに言うかのように、夜の街へ消えていった。

取材メモ/冗談半分、いや、冗談8分で我々を楽しませてくださったなぎらさん。撮影中も周囲の反応が凄まじく、最終的に店内が“開放的”な状態に。みなさん、これからは立ち飲み屋でなぎらさんを見かけても、そっとしてあげてください。

取材・文=エビス_セイキ(リベルタ) 撮影=瀬戸口 善十郎

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