対談「横浜DeNAベイスターズ」はなぜ愛されるのか?【前編】

対談「横浜DeNAベイスターズ」はなぜ愛されるのか?【前編】

2017/05/29

数ある球団の中でも、“ファンと球団の絆が堅い”といわれる横浜DeNAベイスターズ。なぜこうも愛されるのか? 横浜で生まれ育ち、チームの公式ソングも作ったクレイジーケンバンドのリードギタリスト・小野瀬雅生氏と『4522敗の記憶』の著者・村瀬秀信氏に、その魅力を語ってもらった。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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劇変したベイスターズ。チームの魅力と新旧ファンの心持ちは?

ファンに愛されすぎる球団、横浜DeNAベイスターズ。生粋のベイスターズファンであり、先日は始球式にも参加したCKBのリードギタリスト・小野瀬氏と、ファンの間で“バイブル”と呼ばれる『4522敗の記憶』を上梓した村瀬氏に、その魅力を存分に語ってもらう対談のはじまり〜!

ベイスターズ愛が炸裂の対談スタート!
村瀬
村瀬
小野瀬さんには、2013年に出た『4522敗の記憶』の文庫版であとがきを書いていただきまして。本当にあの時はありがとうございました。
小野瀬
小野瀬
あの本が出た時は長く負け続けた時代からやっとよくなりはじめたかな、という時でしたからね。いや、でもあの頃からまだ2~3年しか経っていないのに凄くいいチームになりましたよね。
村瀬
村瀬
感慨深いです。スタメンを見ても若い選手ばっかりですよ。ドラフトって大事なんだなと改めて思い知る昨今です。
小野瀬
小野瀬
先発ローテを見たって石田(健大)投手、今永(昇太)投手に今年のドラフト1位・濱口(遥大)投手とこの3年間のドラフトだけで左腕が三枚も揃っている。ちょっと前までブルペン含めて左投手が誰もいない時もあったのに、ですよ。僕は毎年リストを用意してドラフト見るんですけど、毎年「なんで左を獲らない! 左投げが嫌いなのか、なんで外野ばかり取るんだ」って叫んでいましたからね。
村瀬
村瀬
くじ運も悪かったですしね。ただ、暗黒ど真ん中の09年、NO.1左腕の菊池雄星(西武)にいかず、筒香嘉智の単独指名に行ったあの辺りからなんとなく今の流れははじまっていたような気はします。ただ、ここ数年の横浜スタジアムの変化はちょっと驚きます。
2009年にドラフト1位で入団した筒香嘉智選手。昨季は自身初の本塁打王と打点王の二冠に輝く。今やチームの大黒柱であり、日本を代表するスラッガーに ⒸYDB
小野瀬
小野瀬
今年、オープン戦も観に行きましたけど平日の昼間に2万人入っていましたよ。一体、どうしちゃったんだっていうね(笑)。
村瀬
村瀬
確かに球団と職員の方の努力は素晴らしかったのですが、わずか数年でここまで劇的に変わるなんてちょっと信じられないですよ。去年はCSにも出られましたしね。ベイスターズファンがいっぱいいて、楽しかったなぁ……。

球場を訪れるファンにも変化が

小野瀬
小野瀬
スタンドを見ても、お客さんの層も変わりましたよね。これは音楽でもいえることですけど、今のお客さんはあんまり文句を言わなくなりました。スタジアムでも延々と野次ってる嫌なオヤジがいなくなった。みんな、どこに消えちゃったんでしょうね。
村瀬
村瀬
多分、来なくなったわけじゃないと思うんですよ。球場に来てもネガティブな感情でしか見られなかったのが、まともに野球と向き合えるようになった。暗黒で塗り固められていた魂が浄化されたというか。負けても負けてもスタジアムに来るって、やっぱり勝敗とは違った視点を持たないとできない。今日は負けたけど、来年につながるとか、ひいきの選手が元気そうだったとか。他球団のファンが見たら、同じように見える黒星の山でもその中から光り輝く黒星を見抜いていく。全員が丹波の黒豆職人並みの目利きになるしかありませんでしたからね。そんな人たちが今は目をキラキラさせている。
小野瀬
小野瀬
お客さん、選手のことをよく知ってたもんね。野次でも「買い換えた車の調子はどうだ〜!?」とか、何でそんな情報を知っているんだ? というものをよく聞きました。駒田さんがよく一塁側のお客さんとケンカしていましたねぇ(笑)。
 
村瀬
村瀬
新しいお客さんも増えて本当にうれしいですよ。ただ、98年の優勝時もすごいお客さんが入っていましたけど、その後あっという間にいなくなっちゃったことを考えると、気は抜けないですよ。
小野瀬
小野瀬
横浜の人間は熱しやすく冷めやすいですからね。弱くなるとそっぽ向いちゃう。
村瀬
村瀬
「3日住めばハマっ子」って言いますからね。でも、その辺のことも球団の人はすごく危機感を持っていますね。球団の人によく「ファンの人はどう思っているか」という意見を聞かれるのですが、お客さんが入っていても次の手を常に考えている感じがします。
小野瀬
小野瀬
最初は「全額返金チケット」みたいなことをやって失敗したりもしていましたけど、積極的に新しいことをやろうという姿勢はいいですよね。横浜は本牧辺りに「100年やっている店が新入り」という何百年も前から人が住んでいる古い土地はあるんですけど、意外と古いもんに頓着しないんですよ。歴史的な建物も県庁みたいな有名どころは残すけど、無名だとちゃっちゃと壊しちゃう。それでいて“来るものは拒まず”の精神ですからね。長く米軍基地もあったし、新しい概念もどんどん取り入れようとする。
村瀬
村瀬
ペリーも受け入れちゃった土地ですしね(笑)。ハマスタのあった場所は日本で初めて野球の国際試合をやった場所。そういう歴史を尊重しながら新しい試みをしていく。DeNA初年度に掲げた「継承と革新」ってのは本当にいいテーマだったなぁと思いますよ。

横浜の応援歌はカッコいい!

 
村瀬
村瀬
小野瀬さんは学生時代に、ハマスタのある横浜公園で演奏をされていたと聞いたことがあります。“ハマのギター大魔神”のデビューもやはりハマスタだったのですか?
小野瀬
小野瀬
あれはまだスタジアムが立つ前。僕が中学生の時ですね。日比谷の野音みたいな音楽堂があって、中坊の僕らにも気前よく貸してくれたんです。横浜駅の方で楽器を借りて、リアカーで運んで。デビューライブではなかったとは思いますが、人生初の野外ライブだったと思います。ビートルズの曲をやってね。
村瀬
村瀬
僕はビートルズって屋鋪要(やしきかなめ)選手の応援歌で知りました。「大脱走」も映画見るより先にパチョレックの応援歌で知りましたし。あれ、前の年にレスカーノって外国人が途中で「球が恐い」って帰っちゃったから自虐で大脱走の曲にしたって噂がありますよね。
小野瀬
小野瀬
レスカーノ。すぐ帰っちゃいましたね。でも、横浜の応援歌は伝統的に覚えやすくてカッコいいのが多いですよ。

球場でのエンタメ要素を工夫したベイスターズ

 
村瀬
村瀬
球団歌も「ゆくぞ大洋」「勝利花」から名曲は多いですよ。2004年に出たCKBの「BE A HERO」も大好きなんです。今でもジャジャーンってイントロが来ると胸がキューンと締め付けられる。98年の優勝から最下位に沈み、再興を期して生え抜きの山下大輔さんが監督になって2年目。多村、相川、村田、古木、内川、吉村などの才能あふれる若い選手を積極的に起用して、新しい時代が来るという時。「おまえがヒーローになれ」というロック調の曲はあの時代にすごくハマっていました。
小野瀬
小野瀬
ありがとうございます。そういう願いを込めて作りましたからね。若くて才能はあるけどなかなか花開かない選手が多くて……とりあえずチームワークは後でいいから、一人一人がまず頑張れという思いを込めました。最初はうちの横山剣が応援歌の制作を頼まれたんですけど「自分は野球のことよくわからないから、のっさん(小野瀬のこと)が書いて!」と急に振られて(笑)。丸投げで僕にきたというわけです。
村瀬
村瀬
「BE A HERO」ができた2000年代中期のベイスターズは、球場のエンタメの部分でメジャーリーグを強く意識しはじめていた頃ですよね。内野のネットをなくしてみたり、石橋貴明EA(エグゼクティブアドバイザー)がベイドッグなんてホットドッグを開発したり、球場内で放送する「ハマスタWave」なんてのもできたり。今の礎になるものがあの時からはじまっていた気もします。
現在、球場で食べられる球団オリジナルホットドッグ「BAYSTARS DOG」(700円)。辛いのが苦手な人は、ハラペーニョ抜き(550円)にもできる気づかいが!(写真提供/横浜スタジアム)
小野瀬
小野瀬
曲を作る時にもそういう意識はありましたね。当時、MLBの中継を聞いていると、たまにツェッペリンやメタリカなんてロックの曲が流れていたんですね。中継だと著作権が発生しちゃうので普通は切るんですけど、たまにカットしそびれた曲が小さく聞こえてくる。あ、ロックってありなんだなと思って、アメリカンロックっぽい曲にしたんです。
村瀬
村瀬
07年には横山剣さんとF.U.T.O.さんで出した「シューティングスター」もよかったなぁ。同じぐらいの時期に(石井)琢朗さんの出囃子も小野瀬さんが提供されていましたよね?
小野瀬
小野瀬
そうそう。琢朗さんの2000本安打の記念に作らせて頂きました。
村瀬
村瀬
横浜を根城にするCKBとベイスターズがそういうコラボをしてくれるのはファンとしては無茶苦茶うれしいですよ。
小野瀬
小野瀬
まぁ、ヒーローが、なかなか出なかったですけど……。僕も思い出しますよ。ダントツの最下位で、今日もボロ負け。ガラガラのスタンドに「BE A HERO, BE A CHAMPION」って僕の歌が妙に明るく流れてね。夏でもスーッと寒くなるというか、なんともいえない気持ちになりましたよ。
村瀬
村瀬
チームスローガンも「BE A HERO」から「MOVE ON~なせばなる~」になってましたしね。
小野瀬
小野瀬
それもならなかったよね……(笑)。

チームにも選手にも得体の知れない魅力が?

村瀬
村瀬
ベイスターズ時代の名曲にはもうひとつダ・カーポさんの「ベイスターズを観に行こうよ」というほのぼのとした曲がありましたけど、あれも暗黒時代のスタンドでしみじみ聞くと涙が滲んできました。「勝っても負けても我らのベイスターズ」なんて歌詞が目の前の勝敗に無視を決め込む達観した内容に聞こえてきて、最終的に「野球など知らなくても今日からみんなベイスターズさ」ですからね。今もあの曲を聴くとズキズキと胸が痛みます。
小野瀬
小野瀬
「よくぞ言ってくれた」。「本当にそうだよ」っていう共感を得るところまでいきましたよね。
 
村瀬
村瀬
ベイスターズって振り返ってみると楽曲的に優れたものが多いと思うんですよ。応援歌も名曲揃いで、ベイスターズになってから清岡千穂さんが絡んでいたり、COCOの「WINNING」(92年)や「横浜BoyStyle」(92年)は及川眠子、後藤次利コンビでした。
小野瀬
小野瀬
人選の妙はいっぱいありますよね。DeNAになってからの布袋寅泰、森雪之丞による「勇者の遺伝子」(13年)は定着しましたね。
村瀬
村瀬
今でも映画の主題歌で高橋優さんや秦基博さんが曲を作ったり、今シーズンの開幕時に公式HPにUPされたOZROSAURUSさんの「THIS IS My Era」も凄かった。暗黒時代からCS出場を経た歴史を盛り込んだ曲ですからね。当初は販売予定がなかったのが反響がありすぎて急遽発売したらしいです。僕もHIPHOPではじめて涙を流しました。
 
小野瀬
小野瀬
ベイスターズは他球団と比べても音楽面では結構アドバンテージがあるように思うな。選手の登場曲も洗練されていたというか、ほら、昔ブラッグスっていたでしょ。彼が来日して、チームメートにブラックミュージックが広まって、登場曲がみんなオシャレになりましたよね。
村瀬
村瀬
奥さんがアン・ヴォーグのシンディ・ヘロンでしたよね。ディーバですよ。そりゃ、向こうの最新の情報が入ってくるわけです。今のベイスターズだとロペスがラテン音楽をガンガンに流して皆を巻き込んでいますけど、外国人選手って音楽への影響力がかなりありそうですね。
小野瀬
小野瀬
そうそう。昔ね、巨人のクロマティが、モントリオール(エクスポズ)にいるときに“RUSH”(カナダのロックバンド)がやっていた草野球チームのコーチをしていたらしいんですよ。その縁でアルバムにも名前のクレジットがあって、巨人に来た時「あ、こいつはモントリオールのあいつだ!」ってピンときました。クロマティもドラマーとしての腕前はなかなかですよ。
村瀬
村瀬
そうだったんですね。遠藤一彦投手が「ここが違うんだよ」と頭チョンチョンって挑発し返した記憶しか残っていません。
 
小野瀬
小野瀬
あれは痛快でしたね(笑)。横浜人の気質って荒っぽいいけど、荒くれではない。普段は大人しいけど、いざという時に暴れるんですよね。ベイスターズも親会社が変わってチームも選手もガラッと変わったように思えるけど、実際、根本に流れるものってのは大洋の時からそう変わっていないと思います。雑というか、荒っぽいんだけど、魅力的なクセのある選手に、外国人も面白い。
村瀬
村瀬
今の選手でも、荒波(翔)、石川(雄洋)、梶谷(隆幸)、宮崎(敏郎)、桑原(将志)、倉本(寿彦)、白崎(浩之)、乙坂(智)……ただの“いい選手”では終わらない得体の知れいない魅力がありますよね。
小野瀬
小野瀬
横浜の街も表向きの顔は、みなとみらいとかすごく洗練されているように見えるけど、真髄はその奥深いところにありますからね。今は野毛なんかも若い人の店も増えてきれいになっちゃったけど、ちょっと路地の奥に行けば「えっ!?」という店はまだまだある。そう考えると、やっぱり、今のベイスターズの選手は爽やか。恐さが少し足りないかもね(笑)。

トップの写真では、「普段は自分からはしないんだけれど」と照れながら、“イイ~ネ!”ポーズをキメてくれた小野瀬さんと村瀬さん。二人の横浜DeNAベイスターズへの偏愛(?)ぶりが炸裂する続きは後編へ!

小野瀬雅生(おのせまさお)

小野瀬雅生(おのせまさお)

ミュージシャン・エッセイスト

村瀬秀信(むらせひでのぶ)

村瀬秀信(むらせひでのぶ)

ライター・コラムニスト

取材・文・構成/Yahoo!ライフマガジン 撮影/高仲建次

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