岐阜の夏を涼しく彩る。美濃和紙の美しい工芸品「水うちわ」

2017/08/11

岐阜の夏を涼しく彩る。美濃和紙の美しい工芸品「水うちわ」

「水うちわ」は生活用具という機能性に、繊細な作りと透明感からなる美術性を融合した工芸品です。透き通るような美しさは眺めるだけでも涼が感じられ、インテリアとしても楽しめると、ここ数年注目を集めています。一時生産が途絶えていた水うちわの復活と美しさの秘密に迫ります。

中広

中広

「使う人を考えた紙作りを」
思いの詰まった和紙が涼を届ける

容易ではなかった水うちわ復刻への道

水うちわは明治19年頃、岐阜提灯中興の祖とされる実業家、勅使河原直次郎が考案したといわれています。透けるほど薄い和紙に、ニスを塗ることで透明感が増し、まるで水のように見えることから、水うちわと呼ばれました。

明治30年代には、岐阜のうちわ業者は20軒以上ありました。しかし、時代が下るにつれ、職人、材料、ライフスタイルの変化など、さまざまな要素が影響し、現在専業は1軒を数えるのみです。特に水うちわは、制作に欠かせない「雁皮紙(がんぴし)」が作られなくなったことで、生産が途絶えていました。

「カミノシゴト」店頭に並ぶ水うちわ。アジサイや朝顔、ホタルなど涼しげな絵柄がそろいます。神谷店長によれば、一番人気の絵柄は金魚だそうで、例年夏前に売り切れてしまうことも多いといいます

そんななか町おこしの一環として、平成15年に復活プロジェクトが始まります。翌年、最重要課題である雁皮紙の再生が、和紙問屋の家田紙工に委ねられました。当時、美濃には雁皮紙の職人はいませんでしたが、美濃手漉き和紙工房「Corsoyard(以下コルソヤード)」澤木健司さんが手をあげ、復活へのスタートが切られます。

雁皮紙とは雁皮という植物の皮から作る和紙のこと。一般的な和紙の材料である楮に比べ、線維が細くて薄いため、漉くと緻密性の高い紙になります。透明感のあるフィルム状で、ツルツルとした肌触りに、独特の光沢を持ち、強度もあるのが特徴。かつては謄写版(ガリ版)の原紙としても用いられていました。
 

横と縦、交互に繊維を流して漉いていく「流し漉き」で、雁皮紙を1枚ずつ漉いていきます

美濃和紙総合部門の伝統工芸士である澤木さんも、雁皮紙を作るのは初めて。謄写版原紙を以前作っていた職人を訪ねて話を聞き、雁皮紙作りに挑みました。雁皮の皮にはちり(ゴミなどの汚れ)が多く、取り除く作業に時間がかかるうえ、漉くのも干すのも難しく、試行錯誤を重ねる日々が続きました。「当初は9割方が使い物にならない状態でした」と振り返ります。やがて見事に薄く漉き上げた雁皮紙ができあがります。

絵付け、紙貼り、ニス塗りを施し、水うちわの復活がなったのは平成19年。商品として完成にいたるまでには、実に3年の年月が費やされました。発売後大きな話題となり、現在も年間約3千本を家田紙工が製造しています。


美しさを生み出すこだわりの材料と技

復活を遂げた水うちわは、すべて国産の天然素材を使っており、複数の職人の手を経て作られています。まずは手漉きによる雁皮紙作り。原料は国産(現在は和歌山産)雁皮を100%使用しますが、前述のようにちりが多いため、それらを取る下処理が重要になります。コルソヤードではちりを薬品処理することなく、手で一つずつ丁寧に取り除いていきます。雁皮紙千枚分であれば、ちり取り作業だけで約2週間かかるそうです。

雁皮紙は極薄のため、紙干し作業は特に神経を使います。漉き重ね、脱水した紙の束から1枚ずつ慎重にはがしたら、板にはりつけて天日干しします

水うちわ用の雁皮紙の厚さは15〜16ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)と極薄。わずかでも厚みが増すと白濁してしまうため、紙漉きから天日干しまでの作業すべてにわたり、卓越した技術と繊細さが求められます。

シルクスクリーンの版にはインクを通す部分と通さない部分があり、版にのせたインクをスキージでこすり落として刷り込んでいきます

絵付けに用いられるのは、主にシルクスクリーン印刷。1色ごとに刷り重ねていく印刷方法で、スキージと呼ばれるゴムベラでインクを刷り込んでいきます。スキージの角度や速さで刷り上がる和紙の表情が変わるので、職人の腕の見せどころです。絵柄は伝統的な和柄が中心で、一部職人による手描きの作品もあります。

絵付けを終えた和紙は、香川県丸亀の職人の元に送られ、うちわ貼りが行われます。うちわを支える「竹骨」は現在大半が中国製ですが、国産の真竹を使用。通常のうちわよりも薄い和紙なうえ、空気が入ると跡が残るので、気を遣った作業が続きます。

ぼかしは専用の刷毛を使い、職人の手作業で行われます

貼り終わると、再び家田紙工の工房に戻されて、仕上げ作業のニス塗りとなります。ニスも天然由来のシェラックニスを使用。職人が透け具合を確認しながら、何度も重ね塗りをし、最後に天日干しをして完成です。

朝顔とホタルの絵柄が涼しげな印象

昔は鵜飼(うがい)観覧など船遊びの際、長良川の水につけてあおいだという話も伝わっていて、水に浸して気化熱で涼むうちわともいわれています。家田紙工の見城英雄さんは「ニスにより耐水性はありますが、濡れたままにしておくと表面が白く濁ってしまいます。水に濡らして使った後は、必ず水気を取りましょう」と呼びかけます。

涼やかで美しい水うちわ。見た目だけでなく、天然素材を使い、細部にいたるまで職人による手作りというこだわりも魅力となっています。

Yahoo!ロコ美濃和紙の里会館
住所
岐阜県美濃市蕨生1851-3

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電話
0575-34-8111
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※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

Yahoo!ロコカミノシゴト
住所
岐阜県美濃市相生町2249

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アクセス
美濃市駅[出口]から徒歩約8分
梅山駅[出口]から徒歩約10分
電話
0575-33-0621
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