1日2万食以上を販売!横浜・崎陽軒「シウマイ弁当」7つの秘密

1日2万食以上を販売!横浜・崎陽軒「シウマイ弁当」7つの秘密

2017/06/14

横浜を代表する駅弁といえば、崎陽軒の「シウマイ弁当」だろう。全国にもファンの多いこの駅弁、1日約2万3000個を販売する人気ぶりだ。でもなぜ「シウマイ」と言うの? どうしてあんずがおかずに?さまざまな憶測も飛び交う、「シウマイ弁当」の謎。工場見学をしながら、真相に迫った。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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超ロングセラー商品「シウマイ弁当」のヒミツ

あんずは「シウマイ弁当」のおかずのひとつ。「なぜあんずが?」と疑問を抱く人もいるが、一方で「あんずがなければ『シウマイ弁当』じゃない!」と豪語するファンも多い

\崎陽軒 横浜工場へ!/

横浜港北ICの近くにある「崎陽軒 横浜工場」。JR横浜線・小机駅から歩いて15分ほどかかるため、新横浜駅からのバス利用が一般的。ただし本数が少ないため、注意

\「シウマイ弁当」の中身はこちら!/

「シウマイ弁当」は830円。シウマイだけでなく、さまざまなおかずが盛り込まれる

「シウマイ弁当」の謎を解明する前に、その中身を確認しておこう。

まず、ご飯は俵型なのが特徴。また「シウマイ弁当」という商品名なのに、他のおかずの方が多いのも少し疑問だ。そのおかずも「玉子焼き」「かまぼこ」「鮪の照焼き」は幕の内弁当の三種の神器に当たる。この商品は「シウマイ弁当」という名の、幕の内弁当なのか? そして最大の疑問、なぜおかずにあんず? あっ、忘れてた、「シューマイ」でなく「シウマイ」なのも気になる…。本当に「なぜ」「どうして」が尽きない駅弁、それが「シウマイ弁当」だ。

\今回の案内人はこの方!/

 
高井未希さん

高井未希さん

株式会社崎陽軒 広報・マーケティング部

工場見学を通して「シウマイ弁当」の誕生秘話を知ろう

「崎陽軒 横浜工場」の見学は電話で予約する。しかし2017年8月以降は工場改装につき変則的だ(ページ末尾の「工場見学詳細」を参照のこと)。

見学はホールにて崎陽軒の歴史やシウマイの製造工程を紹介するVTR鑑賞から始まる。部屋の後方の棚には、崎陽軒の商品パッケージや、しょう油入れの「ひょうちゃん」などが陳列されている。

崎陽軒の商品のパッケージや、しょう油入れの「ひょうちゃん」。見学の合間にのぞいて見よう

VTRでは、シウマイ誕生の歴史をひも解いていくーー。

\崎陽軒の歴史概論ダイジェスト/

崎陽軒は明治41年(1908年)、横浜駅(現在の桜木町駅)構内での営業許可を受けて創業。しかし横浜駅は駅弁を販売するには不向きな立地だった。東京発の列車の乗客はまだおなかをすかせていないし、逆に東京へ向かう列車の乗客には駅弁を平らげる十分な時間がないからだ。

初代ひょうちゃんは昭和30年(1955年)登場。初めてシウマイが発売された昭和3年当時は小さなガラスビンだったが、戦後ひょうたん型の白い磁器に。そこに漫画家の横山隆一さんがイラストを描いたのが始まりだ

そこで崎陽軒の初代社長だった野並茂吉が着目したのが、横浜南京町(現在の中華街)の飲食店で突き出しに出されていたシウマイだった。折詰で販売でき、列車の中で手軽に食べられると考えたからだ。しかし冷めたシウマイはおいしくない。そこで茂吉は南京町から点心の専門家・呉遇孫(ご ぐうそん)を招聘(しょうへい)し、冷めてもおいしいシウマイ作りを模索し始めた。

こちらは「還暦記念ひょうちゃん」。期間・数量限定で展開されたものだ。現在ひょうちゃんは62歳。“広報部長”も兼任しているとのこと。「実は、ひょうちゃんは私の上司でもあるんです」と高井さんは笑顔で話す

そうしてたどり着いたのが、豚肉と玉ねぎのタネに、干ホタテ貝柱を入れる製法。試行錯誤の末、これなら冷めてもおいしいと納得できる仕上がりになった。揺れる車内でもこぼさぬよう、大きさはひとくちサイズに。昭和3年(1928年)、満を持して発売を開始する

ひょうちゃんのパネル。工場見学の記念撮影ができる

\そして「シウマイ弁当」誕生へ/

それでもシウマイの売上げを軌道に乗せるには、苦労の連続だった。転機は昭和25年(1950年)。「シウマイ娘」の登場がきっかけだ。横浜駅ホームで、赤い服を着てたすきをかけた女性が、手籠を持ち「シウマイはいかがですか?」と、停車中の列車の車窓をのぞいて売り歩く。手を伸ばして乗客とお金や商品のやりとりをせねばならないため、身長は158cm以上という採用条件があった時期も。手足の長いすらっとした女性が多かったようだ。

歴代のシウマイ娘の制服。左から右になるほど時代が新しくなる。一番右が、現在の「シウマイ娘」こと、女性販売員の制服だ

それが評判を呼び「どうせシウマイを買うなら、シウマイ娘から」とまで言われるように。また昭和27年(1952年)、毎日新聞に連載された小説「やっさもっさ」にシウマイ娘が登場する。港ヨコハマを題材にしたもので、花咲千代子というシウマイ娘が、野球選手の赤松太郎と列車の窓を通じて恋を語るストーリーだ。翌年には映画化され、シウマイ娘を桂木洋子、野球選手を佐田啓二が演じた。こうして崎陽軒の「シウマイ」の知名度は全国区となった。

横浜工場の見学スペースにある1950年代のシウマイ娘の写真。背が高くすらっとした女性が多かった。小説や映画を通して認知され、憧れの職業にもなった

そして「やっさもっさ」映画化の翌年、昭和29年(1954年)に「シウマイ弁当」が横浜駅で販売を開始。シウマイ娘の認知度もあってか、またたく間に人気商品となり、今では横浜を代表する駅弁となった。横浜本社工場と東京工場合わせて、1日平均約2万3000個を販売するほどだ。

昔の国鉄車両と男性の販売員(左)、シウマイ娘(右)を再現した展示
木製のケースを首からかけ、横浜駅のホームを立売りで販売していた

\ついに製造ライン見学/

VTR鑑賞が終わってパネル展示も眺めたら、ついに製造ラインの見学だ。シウマイ作りの工程の一部分を、ガラス窓越しに見学できる。ここでは1日約80万個ものシウマイが製造され、その一部が横浜本社工場、東京工場に運ばれ、「シウマイ弁当」に。機械化されても、検品などは人間の手で行われている。

直前に挽いた国産のフレッシュな豚肉と、刻んだ玉ねぎ、グリンピースも混ぜ込む。干ホタテ貝柱は一晩水につけて戻し、スープごと使う
機械をうまく導入し、1日で約80万個ものシウマイを製造する

\蒸し立てシウマイを試食/

製造ラインの見学後には、蒸し立てのシウマイを試食できる。崎陽軒の歴史を知り、実際に製造現場も目で見て味わうシウマイは、また普段とは違った、格別のうまさだ。ひょうちゃんのしょう油入れも、お土産として持ち帰ることができる

右が「特製シウマイ」。左の2個が「昔ながらのシウマイ」で、こちらが「シウマイ弁当」に入っている
崎陽軒では月餅も製造する。こちらは横濱月餅(小豆)

いよいよ、「シウマイ弁当」のヒミツに迫る!

工場見学もひととおり終わり、崎陽軒への理解が深まったところで、本日の本題、「シウマイ弁当」をめぐる7つの疑問について、高井さんに答えていただくことになった。

【歴史編】

Q1. 「シウマイ弁当」が横浜名物になったのはいつから?

高井さん
高井さん
「『シウマイ弁当』が発売されたのは、昭和29年(1954)年のことです。初代社長・野並茂吉が昭和3年に「昔ながらのシウマイ」を販売し始めたときは人気を定着させるのが大変で、空からシウマイの無料券を撒いたとも聞いています。シウマイ娘の知名度もあって、「シウマイ弁当」は始めから販売も好調だったようです」
「シウマイ弁当」の掛け紙は、現在のものが4代目。いずれの掛け紙にも横浜の風景が描かれている
高井さん
高井さん
「その後も順調に売上が推移し、現在では1日平均約2万3000個の『シウマイ弁当』を販売しています。出張やご旅行、通勤、通学で横浜駅を利用される方のみならず、普段の食事としてもお買い求めいただいています。『シウマイ弁当』が横浜名物と言われるようになったのは、こういった皆さまのご支持のおかげです」
横浜本社工場で製造する「シウマイ弁当」は、手作業で掛け紙にヒモを結わえている

Q2. 「シウマイ娘」は今でもいるの?

高井さん
高井さん
「以前のように横浜駅のホームで立売りするようなことはありませんが、昔からの名残で、店舗で働く女性従業員のことを『シウマイ娘』と社内では呼んでいます。1950年代のシウマイ娘の気概や息吹は、今も崎陽軒に受け継がれています」
1950年代、横浜駅のホームで立売販売をしていたシウマイ娘を再現したもの
現在では、店舗で働く女性従業員のことを『シウマイ娘』と呼んでいる(写真は「崎陽軒 横浜工場」のプチミュージアムショップ)

【おいしさ編】

Q.3なぜ「シューマイ」ではなく「シウマイ」なの?

「シウマイ弁当」に入っている「昔ながらのシウマイ」は、発売当初から伝承されたレシピを守り続けている
高井さん
高井さん
「初代社長・野並茂吉は栃木県の生まれで、話し言葉に故郷のなまりがあったそうです。「シューマイ」と言おうとしても、どうしても「シーマイ」になってしまう。けれど、一緒にシウマイを開発した点心の専門家・呉遇孫は『“シューマイ”より“シーマイ”の方が、中国語の発音に近い』と言って、気にも留めなかったそうです。そのため、より中国語の発音に近い『シウマイ』になったと聞いています。ちなみに広東語では、“シウマーイ”と発音するそうです」

Q.4昔なつかしい経木(きょうぎ)が折箱に使われているのは、なぜ?

経木とは材木を薄く削ったもの。他の駅弁でも使用されている
高井さん
高井さん
「『シウマイ弁当』のご飯は、しっとりと、もちもち感も出るように独自の製法で炊き上げます。経木の折箱を使うと、木が水分調節してくれるので、ご飯のおいしさがより長持ちします。またお弁当作りの場合、ご飯を冷ましてから入れるのが普通ですが、経木の折箱だと熱々のまま詰めることができるんです」
発売当初と変わらない、俵型のご飯。小梅と黒ごまも添えられる

Q.5 どうして、あんずが入っているの?

ほどよい酸味のあんず。彩りを添える役割もある
高井さん
高井さん
「シウマイとご飯、おかずを食べる際の“お口直し”として入れ始めたと聞いています。生の果物に比べて保存性が高いので、お弁当向きの食材ともいえます。あんずが入ってこそ『シウマイ弁当』と言ってくださる、熱烈なファンの方もおられます」

\他にもある!個性的でおいしいおかず/

「筍煮」はシウマイに次ぐ人気のおかず。味がよくしみ込んでいるため、ご飯に合う
鮪の照焼き。こんがり焼かれ、うまみが凝縮されている
高井さん
高井さん
「『シウマイ弁当』は、シウマイだけが入った弁当ではなく、シウマイをメインにした幕の内弁当を作りたいという思いから生まれました。だから幕の内弁当の三種の神器といわれる『玉子焼』『かまぼこ』『焼魚』が入っています。一食だけでおなかいっぱいになってほしいから、できるだけ多種類のおかずを盛り込んでいます」

【番外編】

Q.6どうして横浜と東京でパッケージが違うの?

こちらが横浜本社工場製造のもの。掛け紙に手作業でヒモを結わえている
これは東京工場製造のもの。デザインは同じだが、かぶせフタになっている

「横浜のお客さまのお声をうかがうと、横浜駅で初めて発売された当時の、掛け紙にヒモを結わえたタイプのパッケージに、強いこだわりを持っておられることがわかりました。『お客さまの思い出を大切にしたい』というのが崎陽軒の願いです。掛け紙にヒモを結わえるのは手作業ですが、これでこそ『シウマイ弁当』と喜んでくださるお客様がおられるので、手間は惜しみません」

\他にもこんな違いが!/

「シウマイ弁当」の箸(下)は、一般的な箸(上)より長さが短い
高井さん
高井さん
「これはパッケージの縦の長さに収まるようにというだけで、特別な理由はないんですよ。でも確かに、一般的なものより長さが短いですね」

Q.7なぜ横浜駅周辺に10軒以上も売場があるの?

こちらは「崎陽軒 横浜工場」のプチミュージアムショップ入口。駅と電車をモチーフにしている。シウマイ弁当の販売はないが、シウマイなどが購入可能だ
高井さん
高井さん
「お客さまの需要が高いためです。駅弁というと出張やご旅行の方向けというイメージが強いですが、日常的に、たとえば昼食や夜ご飯用にシウマイ弁当を購入される方も多いんです。シウマイ単品を買ってご家庭で召し上がる方もいます。JR横浜駅の東西自由通路にある『横浜駅中央店』が一番の売り上げを誇ります」
プチミュージアムショップにある電車の座席を模した椅子。窓に当たる部分はデイスプレイで、崎陽軒の歴史や製品に関する映像が流れている

崎陽軒の「シウマイ弁当」は興味深い。触れれば触れるほど、そのおいしさの秘密を知りたくなる。そこにしっかりとした答え、企業理念があるからこそ、横浜だけでなく全国にもファンが存在するのだろう。そう思うと「シウマイ弁当」だけでなく他の駅弁のことも、もっともっと知りたくなった。昔から人々に愛されている商品には、必ずその理由があるはずだから。

プチミュージアムショップの椅子に腰掛け、「シウマイ弁当」を見つめる。さらに深く崎陽軒、そして駅弁について理解が深まる工場見学だった

<工場見学詳細>

「崎陽軒 横浜工場」の見学は希望日の3カ月前の1日から受付開始(年始のみ4日から受付)。ただし工場が改装されるため、2017年6月現在、8月以降の受付はしていない。改装後は「シウマイ弁当」の製造ラインも完成する予定。横浜工場の見学予約の再開は決まり次第、WEBサイトで告知するとのこと。7月までの予約方法もサイトを確認しよう(横浜本社工場と東京工場では、工場見学を受け付けていない)。

 

取材メモ/これでひとまず、「シウマイ弁当」の謎は解けた。しかしこれからも食べるたび、新たな疑問が湧いてくることだろう。崎陽軒が昔からある味を守ろうとすればするほど、またおいしさの秘密が知りたくなる。そして興味が尽きないからこそ、また食べたくなる。ロングセラー商品とは、こういうメカニズムで生まれるのかもしれない。ふとそう思った。

取材・文=岡野孝次 撮影=原 幹和


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