精神科医が「いきなり!ステーキ」でいきなり感じたカタルシス

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6月の連載記事まとめ

2017/06/28

精神科医が「いきなり!ステーキ」でいきなり感じたカタルシス

精神科医として総合病院に勤務する傍ら、文筆、音楽、ラジオなどマルチに働く星野概念が「食べに行く」という行為を通して、「こころ」に関する気づきをひも解く。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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思いっきり自分を出しても大丈夫な環境というのはとても大切です

こんにちは、精神科医の星野概念です。

この連載は、日常の食生活の中から僕が感じたり考えたりしたカウンセリング的要素をみなさんにご紹介するものです。

野生に返ったように、思いっきり肉に突進するなんて環境はなかなかありませんよね。そんな場所に、いきなり!出会いました。そして、お店を出た時のスッキリ感は、カタルシス、つまり心の浄化作用のようでした。今回はそんなお話です。

  

【目次】
1. いきなり、「いきなり!ステーキ」
2. カタルシスについて
3. いきなり、得た「浄化」みたいなもの


1.いきなり、「いきなり!ステーキ」

・原稿、書けません

僕は病院勤務をしていますが、それ以外に、有難くも執筆のご依頼を頂くことがあります。この連載もそういった有難いお仕事の一つです。

これらのお仕事に、僕は非常に嬉しく向き合っています。

ただ、嬉しくやり甲斐も大きく感じているのですが、とにかくなかなか書けないのが悩みです。

  

総括的には、とても楽しいお仕事ですが、この、なかなか書けない時期の辛さには、いつまで経っても慣れることが出来ません。

そんな時はいつも、自分の能力の限界を呪います。

  

そして、永遠に抜けられない迷路に迷いこんだような気持ちになり、食事をする場所も決められず街中をグルグルとさまよい歩くのです。

  

その日もそうでした。

「あぁ、腹は減ったけど何食べよう。ていうか、あの原稿はどうやって書いたらいいんだろう。何も見えない……」

  

・いきなり……!

そんな僕の目の前に、いきなり、行列があらわれました。

  

そして、その行列の先には

「いきなり!ステーキ」

  

というお店があったのです。

ちょうどその日、毎週読む週刊誌が29周年記念号で、29だけに「肉」が多く取り上げられていました。

  

中でも「ミートソルジャー」と言われる寺門ジモンの「今すぐ食べたい肉料理」という記事を読んだばかりだったこともあり、

これは何かしらの導きだ!

  

と思って、普段は諦める行列に並んでみることにしました。

  

結構長い列でしたが、回転がとても早い。数分に1人、または1組がお店に吸い込まれていき、どんどん自分の前の列は短くなっていきます。

  

そして、ふと後ろを振り返ると、そこには夕焼け……ではなく、さらなる行列がありました。

  

本当に何年ぶりのこと、僕は行列に並んでいました。

  

・入り口を目前にして

さて、友部正人「一本道」を思い出した頃には、入り口は目の前。入り口には

   当店のスタイルは
「腹ペコでいきなり!ステーキ!」
  お腹がとても空いた状態で、
  分厚い美味なステーキを
たっぷりお召し上がりください!
   これが本場アメリカで
   当たり前の食べ方です。

と書かれていました。他にも、きたる「肉」に向けて、テンションが上がるようなメッセージがいくつかあり、いよいよ!な感じが高まります。

  

でも、今書いていて思ったのですが、腹ペコな時くらいしかステーキって食べないですよね。あの時は「いきなり!」という言葉のアゲアゲ感にやられていたのか……。

だって、例えば居酒屋だったら

いきなり!お通し!

例えば寿司屋だったら

いきなり!白身!

おぉ、すごい。全部テンションが高い感じになります! この「いきなり!」の使い方は、もはや発明とさえ言えそうです。

  

・ついに中へ

そんなことを「東京大学物語」並みに瞬間的に、ごちゃごちゃと考えていたところ、ついに呼ばれました。店内に入ると

全員立っている!!

  

入店してはじめて知ったのですが、このお店は「立ち食いステーキ屋」だったのです。

そして、店員さんは、恐らく衛生上、皆さんがマスクをされているのですが、ほとんどの人のマスクが透明です。

立って肉を食らう野生の雰囲気と、透明マスクの方々が行き来するSF感。

  

体感したことのない、新しい「場」の感覚に混乱しながら、SFの方々に「カット場」に案内されました。

・「カット場」とは?

「いきなり!ステーキ」では、肉がグラム単位で売られていて、1グラム6.5円とか8円とか10円とかの肉を何グラム、という感じで「カット場」で注文します。

  

すると、「カット場」に君臨する、肉を切る担当の、いわば「カットマン」

  

いや、「カット長」

  

とも呼ばれていそうな役割の方が、目の前で大きな肉の塊、つまり大きな「肉塊」をカットしてくれるのです。

これまた野生の雰囲気!

  

しかし、「カット長」も当然、透明のマスクをしています。

や、野生SF……!

  

もう、考えが全然まとまらないので、焼き上がるのを待ちながらグラスの赤ワインを注文しました。

  

こ、これは……、

  

さながら生き血です。

  

ブドウなのに!

  

・ひたすら食らう

そんな感じで、勝手にワッショイしているところに、先ほど「カット場」で注文した300グラムのステーキがついに運ばれてきました。

  

どーん!とした肉のみで、ライスもサラダも、注文しなければついてきません。

  

でも、それで良いのです。

その時は、生き血(ワイン:原材料はブドウ)を飲みながら、大きな肉を食らう、ということ以外、求めていませんでした。

  

しかも、立ち食いなので、何となく地面を踏みしめている感じもあり、座って食べるよりも野生的な要素をだいぶ強く感じました。

  

この、野生返りのような感覚を得られるのは、非常に貴重だと思います。

しかも、300グラムもの肉を食べたのに、そんなに胃もたれのような感覚がありません。これは、炭水化物をほとんど入れていないからかもしれません。

炭水化物抜きダイエットには諸説あると思いますが、もしかしてダイエットにも効果が?

  

結果、とてもスッキリした気分転換になり、原稿のアイデアが浮かばない辛さを、その時間は忘れることができました。

  

2.カタルシスについて

・「防衛」について

誰でも、不快な感情の体験は嫌ですよね。

不快な感情の体験というのは、例えば、
不安、ゆううつ、悲しみ、罪悪感、恥などのことです。

こういった感情の体験を、知らないうちに調整したり、避けたり、「ない」ものにして、心の安定を得ようとすることを「防衛」といいます。

  

調整する、避ける、「ない」ものにする、など手段は色々あり、その手段自体は「防衛機制」と言われます。

この「防衛」は、自分でも無意識に行われる心理作用なので、基本的には何をどうしているのか、自分でも分かっていません。

・「防衛」しても、たまるものがある

例えば「ない」ものにしている感情は、「ない」ものにしているだけで、実は「ある」わけです。

  

見えないし、自分でも何か分からないけど、何らかの「重み」のようなものを抱えている可能性は誰にでもあります。

  

それを、うまいこと放出したり発散したりできたらどうでしょうか。

・カタルシス、浄化

それは想像に難くありません。心の緊張はとかれるはずですよね。

  

このように、知らない間に「ない」ものにしていた感情などを、うまいこと外に出して発散することで、心の緊張をとくことを「カタルシス」とか「浄化(訳しただけ)とか言います。

  

・どうやって、うまいことやるのか

昔は催眠をかけて、自由にお話してもらうと、「ない」ものにしていた感情が出てきたりしたそうです。

  

他の治療法で言うと、例えば「芸術療法」では芸術作品を創る過程で、また、子供を対象にした「遊戯療法」では、遊びの過程で、など、「療法」とは言っても、「療法」であることを忘れそうな、雰囲気が緩いものによって、カタルシスは得られると考えられています。

つまり、

① 自分を出しても、大きく失望されたりしない「大丈夫」な環境(例えば「療法」という守られた環境)

  

で、

② 肩ひじ張らずに自分を出すことが出来る(「療法」だけど雰囲気が緩い)

  

と、カタルシス、つまり浄化されて、なんだかスッキリしやすいということだと思います。

  

だから、例えば、すごく信頼できる友人に話を聞いてもらう、とか、「泣ける映画」=「泣いても恥ずかしくない映画」を観る、などはこれに近いのではないでしょうか。

3. いきなり、得た「浄化」みたいなもの

「いきなり!ステーキ」を見つけた時、僕は原稿のアイデアが浮かばず、自分で自分に呪いをかけたようにモヤモヤしていました。

  

そして、導かれるように入った店内では、肉塊!立ち食い!などによる、全体を覆う野生の雰囲気がありました。

  

「がっつく」ことが誰にでも許されているような感じです。

  

しかも、肉のみで、炭水化物はなし。なんとなくドカ食いした罪悪感も少ない気がします。

  

これらによって、その時のモヤモヤを食事に、肉塊に、思い切ってぶつけて大丈夫、と思えることが出来たのでしょう。

  

結果、食べ終えた後、なんだかスッキリした感じを得られたのではないでしょうか。

  

・野生返りの証拠に

野生に返ったように夢中になる感覚が僕だけのものではないということは、レジの近くに

「食べ物による窒息時の救急処置」

という張り紙がされていて、その内容がかなりしっかりしたものだったことからも分かります。

腹部突き上げ法(ハイムリッヒ法)①
腹部突き上げ法(ハイムリッヒ法)②

普段、夢中で肉を食らうことが少ない現代人、特に日本人には、少々危険さえ伴う、スリリングなステーキ体験。

  

これからの暑い時期には、より一層野生感が増すかもしれませんね。

  

ガオーーーー!!

  

星野概念(ほしのがいねん)

星野概念(ほしのがいねん)

精神科医

権田直博(ごんだなおひろ)

権田直博(ごんだなおひろ)

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Yahoo!ロコいきなり!ステーキ
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定休日
無休
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