時代とともに進化を続ける老舗蔵元  群馬県高崎市「牧野酒造」

2017/07/13

時代とともに進化を続ける老舗蔵元 群馬県高崎市「牧野酒造」

榛名山麓から草津へ抜ける街道沿いの倉渕で、元禄3(1690)年に創業した牧野酒造。伝統の技を守りつつ進化を続けた歴史と、これからを、17代目社長の牧野茂実さんと18代目の顕二郎さんに聞いた。

中広

中広

造り手の思いが宿る
倉渕の地酒

326年続く老舗の技と
代表銘柄「大盃」を継ぐ

日増しに寒さが深まる倉渕町の山間で、酒造りが繁忙期を迎えた。現場を取り仕切るのは、326年の歴史を誇る老舗の蔵元、牧野酒造17代目社長・牧野茂実さんと、その後継者となる専務の顕二郎さんだ。

蒸し米、麹づくり、酒母づくりを経たもろみをタンクに移し、約1カ月発酵させる。酵母菌の力でブクブクと発泡するもろみの様子を見ながら、櫂入れや温度管理を行い、丁寧に酒を育てる

群馬県内には27の蔵元があるが、同社は最も歴史が古い元禄3年の創業。参勤交代や善光寺参り、草津温泉に向かう旅人など、多くの人々が行きかう草津街道沿いで、初代・長兵衛の手で酒造りが始まった。

代表銘柄「大盃」の名は、倉渕ゆかりの偉人、小栗忠順が万延元(1860)年、遣米使節として渡米した際に、牧野家の先祖が随行したことに由来する。無事の帰国を祝い、大きな杯で祝杯を上げたのを機に、「長盛」から改められた。榛名山麓の軟らかくて癖のない伏流水と、厳選した酒造米を用いて冬場に仕込んだ酒は、滑らかな口当たりと、酸味と甘みのバランスの良さが特徴。2003年の関東信越国税局酒類鑑評会で、大盃の大吟醸が県内初の最優秀賞を受賞したのをはじめ、数多くの受賞歴を誇る。

約1トンの米を1時間かけて蒸し上げる

酒造りの工程は、洗米、蒸し米、麹づくり、酒母づくり、本仕込み、搾り、火入れ、貯蔵、瓶詰めの順で行われる。麹の発酵を利用して、米のでんぷんを糖に変える「糖化」と、アルコール発酵が同時に行われる「並行複発酵」は、日本酒ならではの独特な製法だ。

牧野酒造18代目専務 牧野顕二郎さん
牧野酒造18代目専務 牧野顕二郎さん
「さまざまな工程のなかで最も神経を使うのが洗米と、米に水を吸収させる浸漬時間です」

米の吸水具合で麹の発酵状態が変わり、その後の酒造りに影響するためだ。同じ種類の米でも、生産年や削り方によって吸水するスピードは異なる。少量ずつ洗米・浸漬を行い、蒸した米の状態と比べながら最適な時間を見極め、ようやく本格的な仕込みに入る。

常時30種類以上商品が並ぶ、蔵元直売所

杜氏を務めるのは、岩手県から毎年やって来る岩清水文雄さん。20年以上も酒造りの要を任されているが、70歳を超えた今、その技術を少しずつ次世代に継承。現在、酒の味を決めるのは、ほぼ顕二郎さんに任されている。

酒造りを始めた頃は、浸漬前後に米の重さを計量し、吸水率を計算していたが、今では酒造りのデータが全て体に刻みこまれている。蒸し上がった米を手でぎゅっと握り、感触だけで米の蒸し上がりを確認する顕二郎さんを見ながら、「だいぶ職人らしくなった」と、目を細める茂実さん。その仕事ぶりに信頼を寄せ、蔵全体を任せている。

蒸した米の蒸気が白く漂い、ふんわりと麹の甘い香りが広がる酒蔵の冬。酒の仕込みは3月頃まで行われる。

豊かな緑と清らかな水に恵まれた倉渕の自然

常に挑戦者であり続け
日本酒の未来を拓く気概

牧野酒造が老舗の暖簾を守り続けている理由は、ただ単に、伝統の製法を受け継いでいるからではない。常に挑戦者の気持ちを忘れずに、時代に合わせて変化をしてきたからこそ、現在の同社がある。

今から30数年前、勤務していた会社を退職して家業を継いだ茂実さんは、予想以上に厳しい日本酒業界の現実を目の当たりにした。ビールやワイン、洋酒の普及に押され、廃業した同業者の話題を聞くたびに、「このままでは牧野酒造の歴史が途絶えてしまう」と、危機感を覚えたという。

創業時に使用していた井戸。現在は小屋を建て、大切に祭っている

主力銘柄である「大盃」の名を世の中に広めるため、多くの品評会へ積極的に参加。数々の受賞歴は従業員の士気向上にもつながった。さらには、「若い世代や女性にも気軽に日本酒を楽しんで欲しい」との思いから、フルーティーな発泡日本酒「純生」や、群馬県育成品種の梅「紅の舞」を使った色鮮やかな赤い梅酒など、新商品の開発にも挑戦。さまざまなイベントに協力し、地域貢献にも一役買っている。

一方、後継者の顕二郎さんは、茂実さんが一目置くほどの職人気質。高校1年生の頃、2歳上の兄が医者を目指して勉強している姿を見て、「自分が継ぐしかない」と決意を固め、東京農業大学の醸造科学科へ進学した。大学で先端の醸造技術を学んだ後は、静岡県の老舗蔵元で修業。2003年に帰郷し、酒造りに情熱を注いでいる。

日米修好通商条約の批准書交換のため、遣米使節団の監察として渡米した小栗忠順。写真はワシントン海軍造船所の見学時に撮影。帰国後、長旅の成功を祝し、牧野酒造の酒で祝杯を上げた

数年前から日本酒の活路を見いだそうと同社が挑んでいるのが、海外市場の販路拡大。世界中で日本食に注目が集まる今、それに合う日本酒の需要が高まってきているのだ。茂実さんはオーストラリアで日本酒を紹介したのを機に、ヨーロッパやシンガポールにも渡航。すでに数カ国へ輸出を始めている。

牧野酒造17代目社長 牧野茂実さん
牧野酒造17代目社長 牧野茂実さん
「常に新しいものにチャレンジして、『大盃』を次の世代へ残すことが、私の使命だと思っています」
牧野酒造18代目 牧野顕二郎さん
牧野酒造18代目 牧野顕二郎さん
「守るべき伝統は残しつつ、おいしい酒造りに必要な技術を積極的に取り入れていきたい」

酒一筋に思いを込めた牧野酒造の挑戦は、これからも続いていく。

毎年12月下旬から3月頃にかけては、搾りたて新酒「蔵春」の限定販売が蔵元直売所で行われる。この時期にしか味わえないフレッシュな生酒を、倉渕の風景とともに楽しんではいかがだろう。

蔵元直売所限定販売の品もある。ぜひ足を運んでみては
Yahoo!ロコ牧野酒造
住所
高崎市倉渕町権田2625-1

地図を見る

電話
027-378-2011
営業時間
8:30~18:00
定休日
無休
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

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