精神科医が「サブウェイ」で連想した、パンと人生と心の病のこと

連載

星野概念のめし場の処方箋【Vol.1〜20】

2017/07/29

精神科医が「サブウェイ」で連想した、パンと人生と心の病のこと

精神科医として総合病院に勤務する傍ら、文筆、音楽、ラジオなどマルチに働く星野概念が「食べに行く」という行為を通して、「こころ」に関する気づきをひも解く。

星野 概念

星野 概念

精神科医

辛い時、それが病か、明確には病とは言わないかは、人生との「連続性」によります

こんにちは、精神科医の星野概念です。

この連載は、日常の食生活の中から僕が感じたり考えたりしたカウンセリング的要素をみなさんにご紹介するものです。

サブウェイはファーストフードの中でも、出来上がる過程を観察し、口出しできる希有なお店です。だからこそ、それぞれのサンドウィッチに個性が生まれる。そんなことを考えていたら、人生と重なり、心の病とはなんだろう、どんな時に受診したらいいのだろう、など連想は広がりました。

  

【目次】
1. サブウェイ
〜1つのパンに1つの物語〜
1. 心の病、受診の必要性の考え方
2. 人生はサンドウィッチよりも複雑だ


1. サブウェイ
〜1つのパンに1つの物語〜

・痩せへの突破口を見出せなかった10代

僕は大学に入学するまでのほとんどの期間を「太った人」として過ごしてきました。
小学校に入学した時点でなかなかの丸さ。

  

でも、思春期前だったこともあり、全く気にせず、外で元気にとんだり跳ねたりしていたので、大きめの個性的なボールみたいで、むしろ結構かわいかったのではないかとも思います。

小学校4年の時には、友人に誘われて参加した相撲部屋の体験教室で、

  

僕だけ入門の勧誘をされました。

  

この、「友人に誘われて行ったら、誘われたこっちだけが評価される」という、アイドルのオーディションなどにありそうなパターンを経験し、

  

しばらく本当に相撲部屋に通って、

  

家の中でもマワシをつけて過ごしていました。

  

太りながらも、俄然、鼻高々だったわけです。

  

しかし、中学生になり、女子を意識する年齢になると、だんだん、今で言う細マッチョのような体型に憧れるようになります。

  

だって、「スラムダンク」の三井くんとか、「幽遊白書」の飛影とか、カッコいいと思う人達はみんな太ってない!

  

でも、当時はインターネットで調べるなんてことは出来ず、雑誌だって「月刊バスケットボール」と「少年ジャンプ」くらいしか読んでいなかったので、痩せ方は全く分かりません。

  

結局、痩せへの突破口は見出せないまま大学に入学しました。

  

・野菜を摂るならここやで

大学に入学して、同じアパートに住んでいたラグビー部のストイックな友人に、この「どうやったら痩せられるか」という悩みを相談したところ、

「野菜を食え」

  

と言われました。そして、スーパーで野菜を買い、自炊を始めたのですが、どうも美味しくない。なので、張り手をされる覚悟で(彼はすぐ張り手をしてくる人でした。相撲部じゃないのに)その友人に、毎日自炊するキツさをぼやいたところ、

「金がある時はここやで」

  

と連れて行かれたのが、当時の最寄り駅の周辺にできたばかりの「サブウェイ」でした。

  

・注文し始めはただのパン

初めてサブウェイに行った時の衝撃は忘れられません。

それまでは、ファーストフードに行ってもハンバーガーなどのように、出来上がったものが出てくるか、ドーナツなどのように、出来上がったものが置いてあるかでした。

でもサブウェイでは違いました。注文し始めはただのパン。

  

そこから野菜や、肉類など色々な具が盛られ、

  

ソースがかけられ、サンドウィッチが完成する。

  

それらの行程を一部始終観察することができます。

  

いや、ちょっと待て!出来上がる行程を観察できるといえば、たこ焼き屋とかクレープ屋もそうじゃないか!

・行程に口出しできる

確かに、そうです。

ただ、サブウェイでは、その行程に「口出し」が出来るのです。

  

基本的には、自分の食べたいメニューを選んだ後に、野菜や他の具材が置かれたショーケースを挟んで、店員さんと対峙しながら列を進んでいくのですが、その過程で例えば、

店員さん「パンはどうされますか?」
僕「パンはこの種類で。トースト(焼く作業)してください」

  

店員さん「野菜は全て入れてもいいですか?」
僕「野菜は多めで。あ、もう少しお願いします」

  

店員さん「ソースはどうしましょうか」
僕「ソースは、うーん……」
店員さん「おすすめは○○です」
僕「じゃぁおすすめで」

  

こんな感じでショーケースの前を数メートル、口出ししながら進み終わると、「マイサンドウィッチ」が出来上がります。

  

つまり、つくられる行程を観察しながら、分量や味などをある程度口出しできるのです。

  

これは、作品をつくる作業をみながら微調整などの指示を出す、いわばディレクターの領域です。

雑誌で言ったら編集長。

日本酒づくりで言ったら杜氏です。

うおー、なんだか鼻高々じゃないですか!

小学校の相撲部屋以来の鼻高々です!!

  

・ジョーゲン てなんだ!?

このような形でサブウェイのファンになった僕は、高頻度に足を運ぶようになりました。

社会人になって10年以上経った今でも、野菜不足を感じた時には特に行きたくなります。

  

つい最近も近所のサブウェイに行って、いつもの通り「野菜多めで」というオーダー、いや、ディレクションをしようと思っていました。

すると、前にいた女性が

「野菜、ジョーゲンで」

と言っています。

え? ジョーゲン?

これ、本当の話ですが、一瞬「上弦の月」の上弦かと思いました。

  

日没頃にのぼるあの素敵な半月のような野菜の盛りつけを。という意味なのか?

  

なんて洒脱な注文をする女性なんだ! 惚れてまうやろ。

  

しかし、そんな盛りつけがサンドウィッチにあるはずもなく、しかも無駄に半月のイメージが湧いてしまった僕には、「ジョーゲン」が何かすぐには分かりませんでした。仕方がないので店員さんに「さっきのジョーゲンてなんですか」と聞いたところ、

「野菜をジョーゲンまで盛るということです」

とのことでした。

あ、上限! 
MAXに増し増しということですね!

  

そんなキーワードがあったとは。

これは、その店舗だけではなく、色々なお店で共通して使える言葉のようで、他県でも試しましたがバッチリ通用しました。

  

・人生とパン生

サブウェイで、ひとつのパンがひとつのサンドウィッチになるまでには、これまで書いたような客の口出しの影響など、色々なターニングポイントがあります。

  

パンAは

  

パンBとは

  

結構違った、人生ならぬ、「パン生」を生き、それぞれ個性を持った唯一無二のサンドウィッチになるのです。

  

人間にドラマがあるように、サブウェイのパンにもドラマがある。

  

まぁ、これは究極、何においても言えそうなことですが、イートインしながら、しみじみとそんなことを考えたのでした。

  

2.心の病、受診の必要性の考え方

「心の病」という言い方がありますよね。使ってみたことがある人は少なくないと思うのですが、実際「病」と「病でない」の境目ってどこにあるのでしょうか。

  

これは色々な考え方があると思います。ここでは、一つの考え方をお話しようと思います。

  

・「病」とは

「病」になると、人は、それまでのその人の歴史から、急に「連続性」を欠いた状態になります。

例えば、「老衰」は加齢に伴い徐々に弱ることなので、「連続性」を欠いておらず「病」であるとは言えませんよね。

  

では「肺炎」はどうでしょうか。数日前まで元気だったのに、急にレントゲンで異常所見がみられたり、苦しくなったり、熱が出たりと、

  

数日前のその人とはかなり異なる状態になります。つまり、「連続性」を欠いた状態ということです。なので、肺炎は「病」であると考えられます。

  

・心の病

この法則にのっとれば、心の病についても考えやすくなります。

他にも大事なことはありますが、今回は「連続性」についてのみ焦点をあてるとすると、心に関しても、この「連続性」を欠く状態が「病」であると言えます。

つまり、それまでのその人と、全く繋がらない印象になる場合は「病」を疑う必要があるということです。

例えば、生来、物凄く穏やかで、社会的だった人が、急に怒りっぽくなった、とか、奇抜な言動をするようになった、とかなどという場合です。

・「病」には決まった「治療」がある

「病」はとても大変です。でも、「病」には、ある程度通低した「治療」があります。

  

効果の個人差があるのは否めないとはいえ、この症状にはこの薬が効くようだ、など、対処法の方向性が決めやすいのも事実です。

  

・心の病と明確に言えない状態

少なくとも心の問題の場合、先ほど書いた、心の病、と明確に言える場合と、明確には言えない場合があります。

心の病と明確に言えないものとはどういうものかというと、辛さはあるけど、「連続性」は欠いていない状態であると言えます。

  

例えば、先天性の場合。
生まれつき、「一般的」といわれる状態と比べて何かが欠けている。これは、生まれつきなので「連続性」は欠いていません。

とか

例えば、明確な原因がある場合。
失恋とか、上司に叱責されたなど明確な理由がある場合、その影響で落ち込んだり、不安になったりすることは了解できます。その気分の波は、一つの流れになっていて、突然人が変わったようになるわけではありません。つまり、「連続性」は欠いていません。

などが挙げられます。

これらは、「連続性」が保たれているだけに、対処法を考える場合は、それまでの流れの中で何がどれくらいあって、今の辛さに行きついたのかという、それぞれの事情を把握することが必須です。

  

・受診や相談の必要性の判断はどこに?

これまで「病」とか「病」と明確に言えない、などのお話をしましたが、受診や相談の必要の有無はまた別のところにあります。一般的に指標とすべきなのは「辛さ」だと思います。

  

ご自身、または周りの方が「辛さ」を抱える場合、その発生起源は何であれ、専門機関に相談に行くのが最も良い方法だと思います。

  

きっと、辛さのまっただ中にいる時に、自分の状態が「連続性」を欠いているか、いないかなんて冷静に判断できないと思うのです。なので、相談に行った先で、客観的に判断してもらい、対処法を話し合うことが必要になるわけです。

  

3.人生はサンドウィッチよりも複雑だ

サブウェイのパンが、色々なターニングポイントがありながらも連続性を保たれ、サンドウィッチになる過程をみて、なんだか人生を連想しました。

  

まぁ、当然ながら、人生はサンドウィッチよりも複雑で、サブウェイクラブになるはずが、

  

気づいたらBLTになっていた!

  

みたいなことも日常茶飯事だと思います。また、その経過の中で、「もうサンドウィッチになれないかも……」

  

と辛くなる時が訪れるかもしれません。

  

その時には、落ち着いて、まず相談すべき場所に相談してみましょう。

  

・夏のせい

さて、なんだか今回、だいぶ連想が飛躍した気がしますが、きっと夏のせいだと思います。

  

でも大事なお話ができました。

これからまさに夏本番!

  

野菜を「上限」まで摂って、アツい夏を乗り切りましょう!!

  

星野概念(ほしのがいねん)

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この記事を書いたライター情報

星野 概念

星野 概念

精神科医

総合病院に勤務し、日々精神医療に従事する傍ら、執筆や音楽活動を行う。

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