料理評論家・山本益博が推薦、東京で食べるべき老舗洋食屋3選

特集

老舗の洋食が食べたい!

2017/08/07

料理評論家・山本益博が推薦、東京で食べるべき老舗洋食屋3選

東京には数多くの洋食屋があるが、本当の意味で「老舗」と呼べる店は、一体どれほどあるのだろうか? そこで、都内の洋食屋を食べ歩き、洋食について深い見識をもつ料理評論家の山本益博さんに、「ここに行けば間違いない」という老舗洋食屋3軒を教えてもらった。

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

山本益博さんが選ぶ正真正銘の老舗が続々登場

「私は20代の頃、最上級の味を求めて、都内の洋食屋を食べ歩きました」。

そう語るのは、SNSのFacebookページ「東京とんかつ会議」でお馴染みの料理評論家・山本益博さん。長年にわたり都内の洋食屋を食べ歩いてきた山本さんに、「これぞ老舗の中の老舗」と呼べる洋食屋3軒を選んでいただいた。どれも歴史ある名店ばかりなので乞うご期待!

山本さんには御徒町にある老舗洋食屋の1軒「ぽん多本家」にお越しいただいた
山本益博さん

山本益博さん

料理評論家

\オススメの老舗洋食屋がこちら!/
1.【創業112年】明治時代の匂いが漂う名店「ぽん多本家」(御徒町駅)
2.【創業122年】元祖づくしのメニューが味わえる「煉瓦亭」(銀座駅)
3.【創業91年】伝統の味を守り抜く「レストラン香味屋」(入谷駅)

山本益博さんに聞く、日本の洋食の歴史

「老舗」という言葉はよく聞くけれど、その本当の意味を理解している方は少ないのでは? そこで山本さんが老舗の意味をわかりやすく教えてくれた。

山本益博さん
山本益博さん
「老舗(しにせ)は『ろうほ』とも読みますが、これは先代の仕事を受け継いで、似せることを意味しています。老舗のすごいところは、店の味を守るだけでなく、今の人の好みに合うように味を微調整しているところ。それができて初めて老舗と呼べるんです。だから老舗という言葉を簡単に使ってはいけないのです。100年以上、少なくとも戦前からの歴史をもつ店こそ、老舗にふさわしいといえます」
「老舗の洋食屋に行ったら食べてもらいたいのが、『フライもの』、『シチューもの』、そして『ご飯もの』。老舗では定番メニューを食べるべきです」と山本さん

山本さんによると、洋食は老舗が多いジャンルの一つなのだとか。それでは、洋食の歴史はいつから始まったのだろうか? その歴史を聞いた。

山本益博さん
山本益博さん
「日本に初めて西洋料理をもたらしたのは、スイス人の料理人サリー・ワイル氏です。その後、宮内庁やホテル、外国航路など、さまざまなルートで西洋料理を学んだシェフたちが、町場で自分の店を開きました。当時は、本場の味をそのまま提供していたそうですが、来店するお客さんの大半は日本人。『ご飯が食べたい』というリクエストが多かったそうです。そこで、西洋料理はご飯に合う味に改良されていきました。それがいつしか『洋食』と呼ばれるようになったんですね」

1.「ぽん多本家」創業112年(御徒町駅)

明治時代の匂いが漂う名店

1階のカウンター席では、料理長の匠の技を目の前で楽しめる
2階のテーブル席。上質な木の温もりが感じられる店内

明治38年創業「ぽん多本家」110年以上の歴史をもつこの店を、山本さんは「まったく手抜きがない、日本最高峰の店」と絶賛する。ぽん多といえば、自家製ラードで揚げた名物料理「カツレツ」が食べられる店として、「東京とんかつ会議」で殿堂入りを果たした名店だ。

山本益博さん
山本益博さん
「どうしても料理の方に目がいくと思いますが、まずはご飯に注目してみてください。この店のご飯は実に美味しい。一粒一粒が立っていながら、粘り気があるんです。私はこんなご飯を『独立心と協調性に富んだご飯』と呼んでいます。洋食屋にとって、ご飯は大事なポジションなんです。洋食はご飯と一緒に味わうのが基本ですから。ご飯の注文を忘れずに」

ぽん多のメニューはすべて単品オーダー。ご飯と一緒に洋食を味わうために、「ご飯・赤だし・おしんこ」(540円)のセットを注文しよう。

さてさて。ご飯の大切さを再確認したところで、山本さんが注目するぽん多のメニューをご紹介!

\注目のメニューがこちら!/
その1.「ビーフシチュー」

「ビーフシチュー」(4320円)

たっぷり時間をかけて作った香り高いドミグラソース厳選和牛をじっくり煮込んだ「ビーフシチュー」。ナイフやフォークを使わずに、お箸でつまんで食べられるほど柔らかい。

山本益博さん
山本益博さん
「(ひと口頬張る)う〜ん、肉の味の染み込み方が半端ではありませんね。お口の中でとろけちゃいます。それでいて肉のジューシューな旨味も感じられる。ご飯と一緒に食べると、『ご飯が主役』と思えるくらい、ご飯がうまい」
ご飯が盛られたお茶碗片手に「ビーフシチュー」を頬張る山本さん。「うん、この味だ」と微笑む
3週間かけて作ったドミグラスソースで和牛をじっくり煮込んだ「ビーフシチュー」

4代目店主・島田良彦さんは、肉の選び方について並々ならぬこだわりをもつ。「うちで使用する肉は、毎日業者が持ってきてくれますが、気に入らないと返してしまいます。『これがいい』と思ったものしか選びません」と島田さん。食材の選び方一つとっても、尋常ではないこだわりをもつのがぽん多だ。

\注目のメニューがこちら!/
その2.「フライの盛り合わせ」

「フライの盛り合わせ」(手前から時計回りに)穴子、キス、イカ、柱(時価)

ぽん多を訪れたら、穴子キスイカ小柱といった海の幸のフライものをご賞味あれ。ぽん多のフライものは、自家製ラードを使って、素材ごとに最適な温度でじっくりとていねいに揚げていく。

山本益博さん
山本益博さん
「ぽん多のフライは天ぷら屋で食べるのとほとんど同じ食材を使っています。しかし、フライと天ぷらでは、味がまったく異なります。味の決めて自家製ラードです。ラードというと、体に悪い印象をもつ方がいると思いますが、それは間違いです。この店のラードは体にいい。だって、ひと口食べれば体が喜んでいるのがわかりますよ。それほど、ぽん多のラードは味わい深く、コクがあるんです。特に穴子小柱は、ラードとの相性が抜群です。調味料はつけなくても、十分にうまいんです」
メニューが運ばれてくると「これだよこれ」とほっこり笑う山本さん
自家製ラードを使って衣がサクッと揚がるまで揚げていく
4代目店主の島田良彦さん

「うちのコンセプトは、ご飯に合う洋食」と島田さん。例えば、ビーフシチュータンシチューに使うソースの味付けは、ほんの少し醤油ベースにしており、ワインの使用量を少なめにすることで、ご飯に寄り添う味に仕上げている。これぞ長年にわたり、ぽん多が下町の人々に愛されてきた所以だ。

おもむろに昔のメニュー表を取り出す島田さん。驚くべきことに、メニュー表には料理の価格が書かれていない…
山本益博さん
山本益博さん
「懐かしいメニュー表ですね。これは約45年前、私が初めてぽん多を訪れた頃に出されていたものです。恐ろしいことに、値段が書いていない(笑)。当時はすべてのメニューが時価だったんです。値段を考えるような人は、どうか違うお店にいらしてということですね」
4代目店主・島田良彦さん
4代目店主・島田良彦さん
「初代はぽん多を上野町にオープンさせたんですが、当時はメニュー表がなかったそうです。例えば、電話などで4名のお客様からご予約をいただくと、4名と相談しながら、魚のフライ、シチュー、カツなどを提供して、『もう結構です』と言われたら、お勘定をする。そんな職人気質の商売でした」

最後に山本さんにぽん多の魅力を尋ねた。

山本益博さん
山本益博さん
「ぽん多は家族経営の店です。4代目の島田良彦さんは、兄弟で店を継ぎ、昔の味を今に伝えています。おかみさんをはじめ、スタッフの皆さんはおもてなしの達人ばかり。出すぎず、引っ込みすぎず、しつこくなくて、さっぱりしすぎない。程よいおもてなしは、東京のおもてなしそのものです」
Yahoo!ロコぽん多本家
住所
台東区上野3-23-3

地図を見る

アクセス
上野広小路駅[A1]から徒歩約1分
御徒町駅[南口]から徒歩約2分
上野御徒町駅[A5]から徒歩約3分
電話
03-3831-2351
営業時間
[火~土]11:00~14:00(L.O.13:45) 16:30~20:00(L.O.19:45)[日・祝]11:00~14:00(L.O.13:45) 16:00~20:00(L.O.19:45)
定休日
月曜(祝日の場合は火曜休)
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

2.「煉瓦亭」創業122年(銀座駅)

元祖づくしのメニューが味わえる

続いては明治28年創業「煉瓦亭」ポークカツレツハヤシライスオムライスなど、洋食といえば誰もが思い浮かべるメニューの発祥の店として知られる老舗だ。パン皿にご飯を盛り付けたり、メニューに添える刻みキャベツパセリを皿に盛り付けたものこの店が始まり。まさに洋食屋の先駆けともいうべき存在だ。先代の技を受け継ぎ、現在は6代目料理長大澤正季さんが腕を振るう。

歴史を感じさせるレトロな佇まい

\注目のメニューがこちら!/
その1.「元祖ポークカツレツ」

「元祖ポークカツレツ」(1700円)

日本で初めてとんかつを提供したといわれる煉瓦亭の「元祖ポークカツレツ」。このポークカツレツが誕生したのは、今から遡(さかのぼ)ること約118年、明治32年のことだ。驚くべきことに、創業当時からレシピはほとんど変わっていないという。

6代目料理長の大澤正季さん
6代目料理長・大澤正季さん
6代目料理長・大澤正季さん
「うちではまず、しっかりと豚肉を掃除(余分な脂を落とし、筋などの肉を取り除くこと)します。それから肉の旨味を引き出すために、塩・コショウで味付けをして、冷蔵庫で1日寝かせ、肉の中まで味を染み込ませます。ドライパン粉を使わず、粗めの生パン粉を使うのもポイントです。衣にサクサク感が出て、油切れもよくなるんです。豚肉にパン粉をまぶしたら、ラードコーン油豚の背脂を配合した秘伝の継ぎ足し油に豚肉を投入していねいに揚げていきます」
170〜180℃で黄金色になるまでじっくりと揚げる
ひと口食べると、サクッと軽やかな歯ごたえの豚肉と、優しい脂の甘さに驚くはず
山本益博さん
山本益博さん
「煉瓦亭といえば、真っ先に思い浮かぶのがこのポークカツレツです。先代の頃から私はこのカツレツが大好きで、都内でトップクラスに美味しいと思います。もちろん、カツレツを食べるときもご飯は必須ですよ(笑)」

\注目のメニューがこちら!/
その2.「元祖ハヤシライス」

「元祖ハヤシライス」(1800円)

諸説あるが、煉瓦亭のハヤシライスを「元祖」と呼ぶ人も多い。この店のハヤシライスの特徴は、特製デミグラスソースとほんのり甘くて香ばしい玉ねぎだ。

6代目料理長・大澤正季さん
6代目料理長・大澤正季さん
「うちのハヤシライスは、明治33年に誕生したといわれています。昔ながらのデミグラスソースは、野菜を継ぎ足し、味付けをして、こして、一週間かけて作ります。オーダーが入ると、牛肉と玉ねぎを軽く炒め、デミグラスソースを絡ませます。ポイントは、玉ねぎのシャキシャキとした食感を残すこと。ハヤシライスに使っている食材は、牛肉と玉ねぎだけ。シンプルだからこそ、食材の旨味が引き立つんです」
素材の旨味がギュッと凝縮されたハヤシライス
山本益博さん
山本益博さん
「ハヤシライスはソースの味がダイレクトに出る料理。だから、ハヤシライスを食べると、その店のカラーがすぐにわかっちゃうんです。煉瓦亭のハヤシライスは、まさに元祖というべき風格があります。牛肉、玉ねぎとシンプルな食材しか使っていませんが、素材の旨味が存分に楽しめます。ぜひ王道の味を楽しんでくださいね」
地下1階のテーブル席。どこか懐かしい気持ちにさせてくれる居心地のいい空間
Yahoo!ロコ煉瓦亭
住所
東京都中央区銀座 3-5-16

地図を見る

アクセス
銀座駅[A13]から徒歩約1分
銀座一丁目駅[8]から徒歩約2分
東銀座駅[A8]から徒歩約4分
電話
03-3561-3882
営業時間
<昼> 月~土11:15-15:00 (L.O.14:15) <夜> 月~金16:40-21:00 (L.O.20:30) 土/祝 16:40-20:45 (L.O.20:00) 【定休日】日曜日
定休日
日曜日
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

3.「レストラン香味屋」創業91年(入谷駅)

伝統の味を守り抜く

最後にやってきたのが、下町情緒が残る根岸にある「レストラン香味屋」大正14年に輸入雑貨店として創業し、ハイカラを求める花柳人に食事を提供し始めたことから、メンチカツビーフカツといった名物料理が生まれた。今もなお、手抜かりのない料理サービスが受けられる名店だ。この店では、山本さんが「東京一」と称する「コンソメスープ」が味わえる。

柳通り沿いにある

\注目のメニューがこちら!/
その1.「コンソメスープ」

「コンソメスープ」(1150円)

澄み切った琥珀色がなんとも美しい香味屋のコンソメスープ。スプーンですくって口の中に運ぶと、深いコク豊かな香りが口の中にいつまでも漂い続ける。歴代の料理長から受け継がれてきた、伝統の味が楽しめる逸品だ。

現料理長の小田倉光夫さん
現料理長・小田倉光夫さん
現料理長・小田倉光夫さん
「うちでは毎週、丸一日かけてコンソメスープを作っています。大鍋に牛すじ牛すね鶏ガラ丸鶏(親鳥)を入れて、コトコト煮込んでエキスを抽出します。それをこし、さらに冷やしたあと、牛ひき肉卵白をかき混ぜ、コンソメスープの中に入れ、再び火にかけ、弱火にしてコンソメスープが澄むまで、アク引きをします。細かく語り始めるとキリがないくらい、いろいろな工程を経て、琥珀色のコンソメスープができあがります」
食材の旨味を引き出すために、大鍋でじっくりコトコト煮込む。この段階ですでに美味しい
山本益博さん
山本益博さん
「コンソメスープを作るには、時間手間暇がかかるから、一から作っている店は都内でも少ないんです。そんな中で、香味屋のコンソメスープはものすごく美味しい。今、東京の洋食屋でコンソメスープを一から作っているのは、香味屋くらいだと思います」

\注目のメニューがこちら!/
その2.「ビーフカツレツ」

「ビーフカツレツ」(4800円)

「ビーフカツレツ」も香味屋を代表する定番メニューの一つだ。何十年もの間、継ぎ足しで作られているドミグラスソースが決め手。牛すじ鶏ガラ牛バラなどをじっくり煮込んで出汁を取りソースに加える。さらに、タンシチューテールシチューと一緒に煮込むことで旨味やコクがアップ。古くから受け継がれてきた香味屋の味を堪能しよう。

現料理長・小田倉光夫さん
現料理長・小田倉光夫さん
「和牛はできるだけ質の高いものを仕入れるために苦労しています。付き合いの長い卸売業者でも、一年を通してみると、良質でない肉を持ってくることもあります。それを見極め、本当にいい肉を選ぶ力が求められます」
157℃の油でじっくりていねいに揚げる
伝統のドミグラスソースとミディアムレアの和牛のハーモニーを楽しもう
山本益博さん
山本益博さん
継ぎ足しで作られるドミグラスソースは、肉の旨味を最大限に引き出します。肉はミディアムレアに仕上げていて、食べ始める頃にベストコンディションになるよう計算されているのも素晴らしいですね。ビーフカツレツは、ハイカラな人が好んで食べていた洋食なんです。そんなビーフカツレツを食べながら、古き良き時代の日本に思いを馳せるのもまたオツなものです」
2階のテーブル席。天井が高く、広々としたエレガントな空間が広がっている

香味屋

住所:東京都台東区根岸3-18-18
アクセス:
入谷(東京都)駅[3]から徒歩約5分
鶯谷駅[北口]から徒歩約9分
三ノ輪駅[1b]から徒歩約11分
電話:03-3873-2116
営業時間:11:30~22:00(20:30ラストオーダー)
定休日:毎週水曜日(祝日の場合は翌日、木曜日)

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

以上が山本益博さんがオススメする老舗洋食屋3軒でした。どの店もちょっとハードルが高い…なんて思うなかれ。最高峰の店で食事をすれば、これまでの洋食のイメージがガラリと変わるハズ。

取材メモ/山本さんに「ズバリ洋食とはなんですか?」と尋ねると、「ご飯を美味しく食べさせてくれる西洋おかず」という答えが返ってきました。なるほど、今回ご紹介した店は、どこもご飯が美味い。そして、どの料理もご飯によく合います。ああ、お腹が減ってきた。

取材・文=樋口和也(シーアール) 撮影=内田龍

この記事を書いたライター情報

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

グルメ、おでかけ、イベントなど、ライフスタイルを豊かにする情報を編集部が厳選して紹介します。

RECOMMEND

SPECIAL

SERIES