これは食べたい! しんどくても行きたい山小屋ごはん5選

特集

グルメも満喫! 山登り&ハイキング

2017/08/11

これは食べたい! しんどくても行きたい山小屋ごはん5選

急こう配の上り坂、険しい道のりが待ち受ける登山。そんな厳しい道のりも、おいしいごはんがあれば乗り越えられるかも(?)。登山をしてでも行きたい山小屋を、『山と山小屋』の著者でもある編集者の小林百合子さんに聞きました。

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

教えてくれたのは、この人!

小林百合子さん

 

テレビ制作会社勤務の後、アラスカ大学フェアバンクス校で野生動物学を学ぶ。帰国後、山岳雑誌の編集者として活躍。その後独立し、山岳や自然、食や旅などにまつわる雑誌・書籍づくりに携わる。山岳出版ユニット・ホシガラス山岳会としても活動。最新刊『最高の山ごはん』が好評発売中!

無理に山頂を目指さない自由な登山のススメ

小林百合子さんの話を聞いていると山に登りたくなります

今回、おすすめの山小屋ごはんを教えてもらう小林さんに、率直にぶつけてみたいのです。どうして山登りに魅せられるのかという素朴な疑問を。

ライフマガジン編集部
ライフマガジン編集部
おすすめの山小屋グルメをお聞きする前に聞きたいです。なんでまた山に登ろうだなんて?
小林さん
小林さん
新卒で入ったのがテレビ番組制作会社で、私もADとして野生動物のドキュメンタリーを担当していていました。三脚をかついでツキノワグマなど、いきもののの撮影のために山に通っていたんです。どちらかというとつらい思い出ばかりで、山はもういいやって感じだったんですよ(笑)。いろいろあって退職したのですが、やっぱり動物のことは好きだったので、いい機会だし、動物の勉強をちゃんとやろうとアラスカの大学に留学することに。帰国後はそれまで経験のあった「メディア」と「動物」の両方の知識を活かせたらと思って、自然や山岳にまつわる書籍や雑誌を作っている出版社に入ったというわけです。安直ですよね(笑)?
ライフマガジン編集部
ライフマガジン編集部
いえいえ。離れてみてやっぱり山が恋しかったんですか?
小林さん
小林さん
まさか~! 本当は図鑑の編集者になりたかったですけど、運命のいたずらなのか配属がアウトドア雑誌で登らざる得なくなっちゃって。最初に登ったのが秋の奥多摩へ、マニアックな長いルートで登るという取材で、まぁしんどいんですよ(笑)。山に備えて何を持っていけばいいかもわからないうえ、先輩にも聞けず…。水筒も持っていったんですけど、中の水をどのタイミングで調達したらいいかわからないまま、結局、水を持たずして入山してしまって(苦笑)。
ライフマガジン編集部
ライフマガジン編集部
最初からパンチの利いた思い出(笑)! そんなスタートじゃますます山を嫌いになってしまいそうです…。
小林さん
小林さん
ところがその時、「三条の湯」という温泉付きの山小屋に泊まったです。豪華ではないですけど、ご主人がお酒が大好きというのと、レトロな佇まいにときめいてしまったんです。こんな場所が東京の近くにあるなんてって。この瞬間に唯一、山で楽しいことを見つけたんです。私、お酒大好きなので夜、しこたま飲んでこれは楽しいってぞ!と。それがきっかけですね。まぁ、その日の深夜に叩き起こされて、ご来光を見るために登山させられて大変だったんですけど、この山小屋との出会いがなかったら好きにはなってなかったでしょうね。
ライフマガジン編集部
ライフマガジン編集部
なるほど。ちなみに山頂にはときめかないものですか?
小林さん
小林さん
山頂に行くのってやっぱりしんどいんですよ(笑)。通らなくても帰れる場合や天気悪かったりすると、登頂しないという選択をすることもあります。先日も富士山に登ったんですけど、ご来光のためにみんなが深夜に起きて山頂を目指す中、私たちは7合目の山小屋で朝までぐっすり眠って、小屋の前からご来光を拝みました。ちゃんと雲海の下から太陽が昇ってきますから、山頂で見るのとほとんど変わりませんし、何より人が少なくて静か。熱いコーヒー飲みながらゆったり見るご来光も素敵ですよ。もちろん山頂に立つと大きな感動や達成はありますけど、私はしんどいときはあまり無理をしないんです。大切なのは、いかに山の中で心地よく過ごせる選択をするか、なんです。そのひとつに山小屋があるわけです。
ライフマガジン編集部
ライフマガジン編集部
新しい! 山に登るからには頂を目指すものだと思ってました。
小林さん
小林さん
頂上を目指して登る“ピークハント”だけが、登山の楽しみじゃないと思っていて。山岳雑誌をやってきて特にそう考えるようになったんです。山ガールがブームになって、女子が山を好きになってくれたのに、しんどい・つらいといった思い出ばかりじゃ山を嫌いになっちゃう。だから食べることや写真、温泉、ファッションとか 下界でもともともっていた自分の興味や趣味を、山頂を目指すためだけに犠牲にする必要はないんじゃないかって。私にとってそれが山小屋だったってだけで、それがほかのものでもいいんです。お酒も飲めるし、そこに布団があるからすぐ寝られますし(笑)。

1軒目 “森の喫茶店”しらびそ小屋

小屋の前には池もあり、雰囲気は北欧さながら

八ヶ岳の北側、北欧の森のような空間に佇む「しらびそ小屋」。小林さんと共著する写真家の野川かさねさん(この記事の写真も提供してくださった)も、「好きで好きで死んでしまいそう」というくらい、おふたりにとっては特別な場所だそう。

小林さん
小林さん
ご家族で経営している小さな山小屋で実家のようにほっとします。窓辺で鳥をぼんやり眺めたり、私はここでは本当に何もしません(笑)。ご主人も常連や一見さん、分け隔てなく接してくれますし、小さい薪ストーブを登山者たちで囲むので会話だって自然に生まれていきます。ここまで行くのに2時間半くらい、登りやすいゆるやかな道のりですし、「山小屋のオヤジが怖い!」というイメージを覆してくれるので、とくに初心者の方におすすめしたい1軒です。

家族のように接してくれるこちら。その日にある食材でメニューを展開する中で、定番として用意しているのが、ドリップコーヒーとチーズケーキ。

森の中でコーヒーとチーズケーキ味わえば、極上の幸せが訪れそう
小林さん
小林さん
壁掛けのコーヒーミルで豆を挽いて淹れてくれるコーヒー。それに合わせるのが、小さいレアチーズケーキです。このケーキの上には手作りのコケモモのジャムが乗っていて、となりにはクラッカーがちょこん。なんともいえぬかわいさです。その佇まいにキュンとしつつ、窓の外に目を眺めてのんびりしていると、キッチンから豆を挽く音やいい香りがしてきて幸せな気持ちに包まれるんです。

しらびそ小屋

住所:長野県南佐久郡南牧村海尻400-3 
電話番号:090-4739-5255
営業期間:通年
料金:素泊まり5300円~、1泊2食8300円~※冬季は暖房代+800円

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

2軒目 標高3000メートルでも料理を手作りする北穂高小屋

小屋のシックなしつらえにご主人のセンスのよさがにじんでいます
標高3000メートル超でもこだわり抜いた料理を手作り
小林さん
小林さん
死ぬほどしんどい思いしてたどり着いた先で食べられるのが、手作りの生姜焼き。キッチンをふと覗くと、キャベツを手作業で千切りしているし、豚肉もブロック肉を1枚1枚手切りしているんです。下界の定食屋で見たら当たり前のことかもしれない。だけど、ここは標高3000メートル超。この人たちはなんでわざわざこんなことをしているんだって、どうしようもなく胸を打たれるんです。
標高の高い山小屋では、生野菜は貴重な存在

登山者のお腹を満たすだけならレトルト食品を使ってもいいはず。それにも関わらず、登山者を思い、料理にも空間にも手を抜かない店主の思いやりが心に染み渡るとも。

ジューっという音と香りに登山疲れも癒されるはず
小林さん
小林さん
店主の誠実な姿勢に感謝の気持ちがとめどなく溢れます。お肉もキャベツもヘリコプターで運ばれていて、私は“空飛ぶ生姜焼き”って呼んでます。この標高で生野菜を食べられるなんて登山者にとってはありがたいですね。小屋の中にお花が生けてあるし、お皿もオリジナル、家具も松本民芸のもの。何ひとつ手を抜いてないんです。

北穂高小屋

住所:長野県松本市北穂高岳山頂
電話番号:090-1422-8886
営業期間:4月末~11月初旬
料金:素泊まり6500円、1泊2食9500円

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

3軒目 灼熱の丹沢のオアシス・花立山荘

花立山荘は、通称“バカ尾根”の途中に

夏、北を目指す登山者が多い中、灼熱と言われる丹沢を目指すには理由があると小林さんは言います。

素朴な味わいがパワーの源に
小林さん
小林さん
登頂に差し掛かる丹沢の尾根は、“バカ尾根”と言われるくらい長く、苦しいことで有名で、この途中にあるのが「花立山荘」です。ここがかき氷を出してなかったら、たぶん私は死んでいると思います(笑)。この氷は、ご主人が地上から運んできているんですよ。重たくて道のりは厳しいにも関わらず。やっぱり暑い丹沢、これで一服してほしいというご主人の心意気にやられてしまいます。巷で話題の天然氷でもないし、流行の手づくりシロップでもない。なんてことないものですが、どれだけこのかき氷に救われたことか。贅沢な定義は1つじゃないってことを教わりました。

花立山荘

住所:神奈川県秦野市堀山下金冷
電話番号:0463-82-6192
営業期間:通年(土日祝のみ)
料金:素泊まり3500円、1泊2食6000円

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

4軒目 登山者の安全を願う青年小屋の朝ごはん

標高2524mメートルの編笠山山頂から20分下ったところに佇む青年小屋

南八ヶ岳のいちばん南、編笠山の山頂下にある「青年小屋」。ここで迎える朝が小林さんのお気に入りなのだとか。

“遠い飲み屋”の赤ちょうちんが目印
ごはんとお味噌汁は、できたてアツアツが提供される
小林さん
小林さん
小屋の経営の傍ら、山岳救助隊にも参加するご主人が作る朝ごはん。レスキューに関わっているだけあってとにかく安全に登山をしてほしいという思いから、ごはんがすすむような朝食メニューを考えてくれるんです。その最終形が手作りシュウマイ。毎朝せいろで蒸したてを提供してくれます。できたてにこだわるから、ごはんやお味噌汁も冷めたものが出てくることがないんです。登山時の朝って疲れているし食欲もないもの。それなのに、ここのごはんはおかわりが出るくらい登山者に愛されています。
店主の奥さんによる手作りシュウマイは、ほっかほかで登場

青年小屋

住所:山梨県北杜市小淵沢町8881
電話番号:0551-36-2251
営業期間:4月下旬~11月上旬
料金:素泊まり5500円、1泊2食8500円

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

5軒目 マナスル山荘本館の元シェフによる本格料理

スキー場から徒歩約15分で到着

南アルプス前衛にある「マナスル山荘本館」。ゴンドラで行けるスキー場近くにある山小屋には、槍ヶ岳山荘の支配人を務めた経験もある元シェフ・山口信吉さんが腕を振るう料理が楽しめるとのこと。

居心地がよく、家庭的な雰囲気が漂う
カツも揚げたてサクサク
小林さん
小林さん
支配人の山口さんは、槍ヶ岳山荘名物の焼きたてパンを始めた張本人。そんな山口さんが新しくオーナーとなった山小屋ということでリニューアルオープン前から噂でした。行ってみたらすごいのなんの、もちろんパンも焼き立てで、丁寧に煮込んだシチューも大人気。なかでも私が好きなのは、手作りカレーです。洋食屋さんで出てくる1品のようで、まるで山小屋とは思えないクオリティです。これ食べに行くだけでも、絶対に立ち寄った方がいいです! ここから1時間弱登る山頂付近は、360°パノラマビューで南アルプス・北アルプス、八ヶ岳ぜんぶ見えますし、山、すごいって思うはず!

ホテルや旅館のような便利さはないけれど、登山者思いの料理が待つ山小屋。山頂を目指すのもいいけれど、山小屋でのんびり過ごす登山もおすすめです。

マナスル山荘本館

住所:長野県諏訪郡富士見町富士見11404-200
電話番号:0266-62-2083
営業期間:4月下旬~11月上旬
料金:素泊まり5500円、1泊2食8500円

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

撮影/野川かさね(山小屋写真)、船橋麻貴(小林百合子さん) 
取材・文/船橋麻貴

この記事を書いたライター情報

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

グルメ、おでかけ、イベントなど、ライフスタイルを豊かにする情報を編集部が厳選して紹介します。

RECOMMEND

SPECIAL

SERIES