「地域と共存できる店を」スタバの店舗に込められた思いとは

「地域と共存できる店を」スタバの店舗に込められた思いとは

2017/09/05

日本の“コーヒー文化”をリードし続けているスターバックス(以下スタバ)。店舗を、家庭や職場・学校に次ぐ第三の生活拠点(サードプレイス)と位置づけるスタバが、大事にするのは地域との結びつき。その店づくりには、地域の人々に末永く愛され、地域の一員となりたいとの願いが込められている。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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京都の文化を感じられる3店を紹介し、スタバのお店づくりに込められた思いをひもとく

本記事では、今年6月にオープンした『京都二寧坂ヤサカ茶屋店』を中心に、京都らしい文化を肌で感じながらコーヒー体験ができる3店舗の見どころポイントを紹介。一杯のコーヒーが紡ぐ地域の憩いの場 とは?

紹介するお店はこちら

・京都二寧坂ヤサカ茶屋店
・宇治平等院表参道店
・三条大橋店

畳の間でコーヒー体験も
「京都二寧坂ヤサカ茶屋店」

その地の歴史から連想するイメージをデザインにも踏襲

道沿いには塀が立ち、庭や通路を挟んで主屋が建つのが大塀造の特徴。かつては貸席業が営まれていた

世界遺産・清水寺に続く二寧坂(にねんざか)に面する、築100年余の伝統的日本家屋に、スタバのシンボルであるサイレンを描いた暖簾(のれん)がかけられた。畳の間でコーヒー体験ができる世界初のスタバとして、早くも話題を呼んでいる。

京都有数の人気エリアへの出店計画がスタートしたのは約10年前。ようやく出合えたのが、主屋と大塀が残る大正時代の建築だ。二寧坂に現存する唯一の大塀造として、大切に保存されてきた2階建てを活用するに当たっては、随所に細やかな配慮がなされた。その熱き思いを、京都二寧坂ヤサカ茶屋店設計チームの一員である柳さんに聞いた。

お話を聞いたのは、店舗設計を担当する柳 和宏さん

\ココがこだわり/

1.開店前の儀式「ギフト」とは?
2.店内のデザインに歴史や伝統を込めた唯一無二の空間
3.どの席がお気に入り?座席からのながめにも注目

1.開店前の儀式「ギフト」とは?

「電線の地中化に早くから取り組んだり、屋外広告の制限など、この二寧坂の景観を守って来られた地域の方たちと共存できるストアづくりがテーマです」と話す柳さん

―スタバの新店舗開業前に行われる「ギフト」とは?

店舗設計担当・柳さん
店舗設計担当・柳さん
「私たちは、ストアを地域への、またそこで働くパートナー(従業員)への“ギフト”と位置づけています。そして、開業前に店舗開発のメンバーから店舗のパートナー向けにストアに関する説明会を実施。この場所に出店する思い、デザインや設計の意図について主にお話しするのですが、それも“ギフト”と呼んでいます。

いつまでも地域で愛される店であり続けるため、歴史やエリアの特徴をどのようなカタチでデザインに反映させているのか。また、地域とのつながりを表現するために、その地域で活躍するアーティストの作品や伝統工芸などを採用し、そこに込めた思いなどを伝えます。

ギフトという時間を体験することによって、店ごとに異なるコンセプトを理解し、完成したお店への思いを深めることを目的にしています」
開業前のギフトは、パートナーたちが知識を吸収できる大事な機会になる。これは『京都二寧坂ヤサカ茶屋店』のギフトの様子

―『京都二寧坂ヤサカ茶屋店』では、どんなことを伝えましたか?

店舗設計担当・柳さん
店舗設計担当・柳さん
「計画がスタートしてから約10年。ようやく実現した二寧坂ヤサカ茶屋店のキーワードは“つなぐ”。店内にはスターバックス史上初となる暖簾をくぐって入ります。

レジカウンター前の通路は、初春の京都で開催される東山花灯路をイメージ。行灯(あんどん)を思わせるカウンターの光と中庭から注ぐ自然光をたどりながら、通り庭を歩く感覚で奥に進むと、奥庭を望むバーカウンターが見えてきます。

このように、地域とコーヒー、大正時代と今、パートナーとお客様、いろいろなモノを“つなぐ”のが『京都二寧坂ヤサカ茶屋店』の役割だということを伝えました」
前庭には、茶道家元・表千家の石配置をアレンジして組んだ蹲(つくばい)、瓦で表現したサイレン(スタバのロゴモチーフ)のウロコを配している
レジカウンター前は、従来の間取りを生かしたウェイティングスペース。景観保護のため、店外での行列は禁止
カウンターの背面に設置された銅板のアートワークは、エスプレッソを抽出する時にわずかな時間だけ表れる繊細な三層と清水の美しい水の流れを表現

2.店内デザインに歴史や伝統を込めた唯一無二の空間

―お店のデザインを考える際、まず意識することは?

店舗設計担当・柳さん
店舗設計担当・柳さん
地域社会や環境に寄り添いながらスターバックスの世界観をどのように表現するか、をまず考えます。加えて、二寧坂界隈は歴史に彩られた観光拠点でもある一方、地域の方たちの暮らしの場でもあります。だからこそ魅力的な、京都人の息づかいが感じられるまちを、私たちも地域の一員としてともに守っていきたいと考えました。

そのため、景観に溶け込むことを最優先し、構造上必要な補強は行いましたが、間取りなどは極力そのままに。建具や天井の材、ガラス、大切に保存されてきたモノも最大限に活用。私たちがつちかってきたコーヒー文化を融合させた、唯一無二の空間が完成しました」
奥庭のモチーフは東山の風景。蹲(つくばい)は茶道家元・裏千家の石配置を踏襲している

―その土地ならではの個性を大事にされているのですね。

店舗設計担当・柳さん
店舗設計担当・柳さん
「前と奥の庭に茶道家元の流儀を反映させた蹲(つくばい)を配して茶の庭を意識したこともそうですが、町家などで印象に残る光と影の使い方も参考にして、京都らしさを際立たせました。

畳の部屋に置いてある座布団には、京都北部にある丹後地方で織られた生地を採用しています。

奥の座敷、四畳半、小上がり、畳のスペースには掛け軸を掛けているのですが、図柄のモチーフは、地域の象徴である清水寺や音羽の滝と、コーヒーの抽出の様子や実や芽をモチーフに京都のアーティストの方に描いて頂き、表装は京都の名工『井上光雅堂』にお願いし、西陣織の老舗『細尾』の西陣の技術、素材を生かした織生地を使用。庭も京都の職人の方にご協力頂いており、京都の文化とスターバックスのコーヒー文化の融合を表現しました」

3.どの席がお気に入り?座席からのながめにも注目。

小上がり席では、太い梁(はり)が走る小屋裏を露出させている。座布団にはかなりの厚みがあり、ラクに座れる

―お客様目線でも考えられている部分がありますか?

店舗設計担当・柳さん
店舗設計担当・柳さん
「実は、畳の間を客席にすることについては、社内でも喧々諤々(けんけんがくがく)がありました。靴を脱ぐ習慣がない文化圏から来られるお客様のこと、脱いだ靴をどうするかなど、問題点は少なくはないと思われました。けれども、床の間や庭、天井や窓の高さなど日本家屋は畳に座る前提でデザインされています。 

“つなぐ”という使命からも、やはり畳は残すべきということで最終的に決着。靴を脱がずに腰掛けることができるベンチなども配し、思い思いにくつろいでいただけるように工夫しました」
テーブル席ゾーンには、豆の断面をモチーフにしたアート、シアトル・パイクプレイスを描いた版画などが飾られている
二寧坂は物販店が多いので、2階から通りを見渡せるロケーションは貴重かも?

―オススメの席はありますか?

店舗設計担当・柳さん
店舗設計担当・柳さん
「初来店のお客様にオススメなのは、二寧坂が見渡せる2階のテーブル席でしょうか。この角度から通りが見られるのはなかなかないと思います。

とはいえ、奥の座敷の窓際、小上がり…それぞれの席ごとに異なる景色が見られるので、季節・気候・時間を変えて御来店いただき、お気に入りの席を見つけていただければと思っています」
「小屋裏の構造からこの建物が経てきた時の流れが感じられる、小上がり席が一番のお気に入りかなぁ。でも、どの席も甲乙はつけられません!」と話す柳さん

\まだある京都の美しいスタバ!/

地域に根ざしつつも個性的に
「宇治平等院表参道店」

宇治市に初お目見えした、自然に囲まれたスタバ

入口にある松の巨木が目印。外壁にも木材がふんだんに使われている。縁側をイメージしたテラス席も数多い

平成26年に大規模な修理を終え、創建当時の輝きを取り戻した世界遺産・平等院のすぐそば。人気の観光地でもある一方、府内では京都市に次ぐ人口を抱える宇治市初のスタバとして、今年3月末にオープンした。

宇治川のほとり。『源氏物語』の舞台にもなった風光明媚な地にふさわしいストアのコンセプトは“自然体になれる場所”。四季折々の花や緑が楽しめる庭に囲まれた、切妻屋根の建物が街並みに溶け込んでいる。

天井が高いガラス張りの店内は開放感たっぷり。中央のコミュニティテーブルは、コーヒーの産地であるアフリカと日本の木材などがパッチワーク状に組まれている
ウサギの位置を示す杉江店長。ほかに、茶箱の蓋に焼き付けでコーヒー豆のスタンプのデザインを描いたアートなども

―店長の杉江さんに聞く、見るべきポイントとは?

店長・杉江さん
店長・杉江さん
「宇治は、応神天皇の皇子である菟道稚郎子命(うじのわきいらつこのみこと)の宮があった所で、菟道(うじ)の字が宇治に転じたという説もあります。神様の使いであるウサギは宇治のシンボルなんです。

カウンター横にある、京都漆とコーヒー麻袋を組み合わせたアートワークには、10羽(匹)のウサギが隠れています。見つけに来てください」
庭の向こうは宇治川遊歩道。テラス席で緑を眺めながら、自然の風を感じるのもオススメだ
店長・杉江さん
店長・杉江さん
「もともとあったものに手を加えた庭では、春は桜、夏は緑、秋は紅葉と季節ごとの眺めが楽しんでいただけます。宇治にはお茶文化が根付いていますが、同じ感覚でくつろいでいただけるとうれしいですね」

地元の文化を融合させたユニークスタバ「三条大橋店」

コーヒー片手に、京の夏の風物詩体験を!

納涼床は、二条通から五条通にかけての鴨川沿いに建つ店舗だけが設置できる

夏が厳しい京都人の知恵から生まれた、“やぐら”と呼ばれる床を禊川にせり出させて涼を取る『納涼床』が気軽に楽しめる、唯一のスタバ。

水音に耳を傾け、川面を渡る風を頬に受けながら、豊臣秀吉が築いた三条大橋を眺める、とっておきのエクスペリエンスが満喫できる。

鴨川の水面を低い位置から眺め渡せる地下1階席
店長の野津さん。橋の東詰には京阪電車の三条駅があり、今も多くの人や車が行き交う。鴨川に並行して流れる小川は禊川と呼ばれている。9月の納涼床の営業時間は11:30~22:00

―店長の野津さんに聞く、見るべきポイントとは?

店長・野津さん
店長・野津さん
季節や時間によって変わる鴨川の風景です。心地良い風を受けながら味わうコーヒーは格別で、5月から9月に掛けてご利用頂ける納涼床はまさに特等席! カモやサギなどの水鳥が遊ぶ様子も楽しめますよ」
豆かすと友禅生地で作られたコーヒーアートの上には、日本の伝統模様を連続させた木製のパネルが吊られている
『京都三条大橋』店のコンセプトはKAISHO(会所)。中世から交通の要所として栄えた立地にふさわしく、多くの人が寄り集まれるスペースづくりが意識されている

地下1階の客席にはコーヒー豆かすと友禅・鴨川染の生地をコラボさせたアート、多くの方が一堂に利用できるビッグテーブルがある。川に面した席では、水面を同じレベルから眺めるような不思議な感覚が味わえる。

取材メモ/どんなことを質問しても、どの店舗のパートナーさんもスラスラ答えてくださることにびっくり。これこそが“ギフト”効果、スタバクオリティなのだと得心しました!

取材・文=小林明子 撮影=児玉愛人

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