コクと旨味の口福、「しっとりチャーハン」復権のとき来たる!

特集

チャーハンに、恋い焦がれて。

2017/08/23

コクと旨味の口福、「しっとりチャーハン」復権のとき来たる!

チャーハンはパラパラが至高、とされていたのはるか昔の話。お椀型、そのまんま、パラパラ、しっとり……今ではそのお店の個性豊かなチャーハンがそれぞれ愛されている。そこで今回は、根強いファンの多いしっとりチャーハンの名店をご紹介しよう。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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しっとりチャーハンのおいしい店に出かけよう

コクと旨味がたっぷりのしっとりチャーハン

最近は、冷凍食品でも「しっとり」をうたったチャーハンが人気を得ていると言う。かつて「ベッチャリ」はまずいチャーハンの代名詞であった。例えば、一人暮らしの小さな台所で、火力の弱いIHヒーターでフライパンに具材とご飯を投入する。やがて「この食べ物はなんと呼べばいいのか」といった趣の一皿ができあがる。筆者自身の思い出である。できあがったチャーハンの味はほとんど覚えていない。社会人数年目のことだ。

だが時代は変わった

「しっとりしたチャーハンが好き」と公言する人も増えた。パラパラチャーハンと同じく市民権を獲得した今、しっとりファンから熱烈な支持を受けるお店にご案内しよう。

【このしっとりがうまい!】
1.家族経営でアットホームな「新雅」
2.有名商店街にある「一寸亭」
3.しっとりの伝道師「丸鶴」

1.「新雅(しんが)」(文京区・江戸川橋)

江戸川橋駅から徒歩5分ほど

印刷工場や製本屋、出版取次が多くある「本の街」にあって、周辺で働く労働者たちの胃袋を満たし続けてきたのがこちら「新雅」だ。
もともと先代が川口市で中華料理店を営業していたが、地元・江戸川橋に戻って店を始めたのが45年前。変わった店名は最初に居抜きで入った店舗で、それまで使われていた店の名前をそのまま拝借した名残だという。現在では主に2代目が店を切り盛りしている。家族経営のアットホームなお店だ。

シイタケを切るのは先代

そう、上の写真にもあるように、この店のチャーハンにはシイタケが入っているのだ。それ以外はナルト、チャーシュー、玉子といたってオーソドックス。うまさの秘訣はどこにあるのか。さっそく作ってもらおう。

慣れた手つきで鍋をあおるのは2代目

使われているご飯はなんと1合。だが、毎日食べても飽きがこないように、油の量は少なめにしているという。近隣の会社の台所として機能しているお店ならではの心遣いだろう。強火でご飯に焼き目をつけたらできあがりだ。

こちらが「チャーハン」(600円・税込)

1日50食以上出るという人気メニューの味の決め手は、醤油に半日つけたチャーシューだ。全体的にしっかりとした味付けだが、意外にもシイタケの風味はあまり感じない。そっとコメを噛み締めると、口の中に旨味が広がる。

これはうまい!

夕食を食べていく客も多く、定食メニューの注文も多い。多様な注文に対応するため、チャーハンと定食は同じご飯を使っている。水分の多いコメを使うことで、しっとりとしたチャーハンに仕上がるというわけだ。強火と熟練の技で作り上げたチャーハンは、当たり前だが家庭で作るものとは仕上がりのクオリティがまったく違う。目の前でプロが作るしっとりチャーハンはとにかく絶品で、温もりに溢れていた。

いつも笑顔が絶えない湯本さんご一家

新雅

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

2.「一寸亭(ちょっとてい)」(台東区・千駄木)

都内屈指の人気商店街「谷中ぎんざ」にある

みなさんが知らない人の話で恐縮なのだが、食通である大学時代の恩師が「しっとりチャーハンといえばここ!」と一番に名前をあげた店がこちら「一寸亭」だ。余談だがその先生は、焼肉で肉を焦がすと単位をくれなかった。

表通りから曲がった路地にある

店主の大塚さんはもともと千葉県の市川で料理人をしていたが、43年前にこの店を開いた。この店の始まりは4坪ほどのスペースだったという。開業当初は下町の小さな店だったが、今ではその名を広く知られるようになった。

大塚さんと息子さんの二人で店を切り盛りしている

具材はチャーシュー・ナルト・玉子のみ。水分の出る余分な具材は入っていない。レシピだって、玉子を焼いて具を入れて、最後にご飯を入れて炒めるだけ。

それなのにこんなおいしそうな見た目になる

チャーハンを作る際のコツは炒め過ぎないこと。そうすると自然としっとりとした仕上がりになるのだという。昔の自分が聞いたら「はあ」というに違いない。あの頃の作り方と何が違うというのか。

彩りも鮮やかな「チャーハン」(730円)

43年前から変わっていないというレシピで作られたチャーハンは、あとをひくうまさといえばいいのか。噛めば噛むほど米に閉じ込められた旨味が口の中に広がる。いつまで口の中にいてほしい、そんな思いにとらわれ、噛むことを忘れそうになる。

これもおいしい

「いくらでも食べられる」と評判なのも納得のおいしさである。「しっとりの方が食べやすいでしょう」と笑う店主の個性を投影したかのよう優しい口当たりの逸品。現在では息子さんがチャーハンを担当することが多いというが、その思いは確実に受け継がれている。下町で出会ったのは、食べる人を思って作られた愛情たっぷりのチャーハンであった。

先代と立派な2代目

一寸亭

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

3.「丸鶴」(板橋区・大山)

駅からは少し離れているが開店と同時に客が訪れる

数年前のことだが、「板橋のチャーハンがアツい」と話題になったことがあった。テレビ番組を発端としてブームが巻き起こり、板橋周辺のしっとりチャーハン文化は広く知られることとなった。その中心的な役割を果たしたのがこちら「丸鶴」である。

店主の岡山さんと奥さん。タレント城咲仁は息子さんである

ラーメン屋で修行していたが、19歳で独立して今の店を開いたのが51年前。生家は板橋で天ぷら割烹を営んでおり、自身も料理人という道を選んだ。

開店と同時に席が埋まっていく

この店のチャーハンを語るうえで欠かせないのチャーシューの存在だ。通常のチャーハンでご飯の半量のチャーシューを使用する。つまりご飯とチャーシューの比率が2:1ということだ。さらに、チャーシューチャーハンになるとご飯と同量のチャーシューを使用する。何も知らずにオーダーしたら閉店セールと勘違いしてしまうくらいの大盤振る舞いだ。

これを使用します

それゆえ、店では大量のチャーシューを消費する。下の写真を見ていただきたい。この19キロものチャーシューを1日で使い切るのだ。あまりの量ゆえ、チャーシューは別の場所で作っているそうだ。

雑誌で6Pに渡ってこのチャーシューの特集を組まれたこともある

店主の岡山さんは口調はぶっきらぼうだが、言葉の端々からおいしいものを食べさせたいという気持ちが溢れている。大きな店では感じづらい温もりを感じられるのがこういった街の店の良さである。チャーハンへの期待は高まるばかりだ。

背筋を伸ばして炒める姿は神々しい

次第にできあがっていくチャーハン。しっとりの秘密を聞くと意外な答えが返ってきた。

「チャーハンはパラパラがいいなんて、昔の話なんだよ。昔は炊いた米の保管技術がなかったから自然とパラパラになったんだよ」

チャーーシュがゴロゴロした「チャーハン」(600円)

今では技術が発達して、炊飯技術も保温技術も格段に進化した。おいしいお米を使った方がおいしいチャーハンになるに決まっているというのが岡山さんの意見だ。確かに、チャーシューの脂を全身にまとった米粒は、パラパラでは出せない豊かな旨味に包まれていた。これはおいしい、チャーシューもおいしい。これが板橋のチャーハンの実力である。

「ほらチャーシューもっと食べるか?」

心優しい店主が作るチャーハンは人情に溢れていた。

「昔から同じことをしていたのに、なんで今更注目されるのかわからないなあ(笑)」

丸鶴

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。


同じような具材を使って、同じような調理工程を経ているはずなのに、見事に各店の味は違った。パラパラもいいけど、しっとりもおいしい。みんな違って、みんないい。そして、チャーハンはおいしい。チャーハンすごい。

「丸鶴」の店主がかの大勝軒で修行していた時代の思い出のショット

取材・文/キンマサタカ(パンダ舎)
撮影/木村雅章

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