「大っ嫌い」から伝道師へ<br />
生産者が語る岡山県産パクチーへの情熱

特集

その香りと味にファンが急増中! パクチーが食べたい!!

2017/08/28

「大っ嫌い」から伝道師へ
生産者が語る岡山県産パクチーへの情熱

空気が澄む自然豊かな山間で生産される「岡山マイルドパクチー」。パクチー(コリアンダー)を初めて食べたとき、まったく受け付けなかった生産者・植田輝義さんが、なぜ生産に携わり、伝道師になったのか。お話を伺った。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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全国でトップクラスの知名度を誇る岡山県のパクチー

岡山県岡山市北区の玉柏・牟佐地区だけで栽培、収穫、出荷されるパクチー、正式名称「岡山マイルドパクチー」、通称「岡パク」。年間の生産量は約25t。パクチー生産量の国内一は静岡県といわれているが、ブランドとしての知名度は「岡パク」もトップレベルだ。

葉が男性の掌サイズに育つと収穫時期。根っこも掌ぐらいの大きさが目安で、たっぷり栄養分を吸い、甘みのある上質なパクチーに育つ。1束約300円で売買される高級野菜だ

日本人の繊細な味覚にフィットした、爽やかな風味とまろやかな甘味。噛むほどに、癒されるようなクリーミーな味わいが口に広がる。まさに「マイルド」という言葉がふさわしい。生産者の植田輝義(うえだてるよし)さんに、生産に至るまでや味の魅力などについて語っていただく。

岡パクと黄ニラの伝道師・植田輝義さん

植田さんの「岡パク」畑は約1ha。年間約8~9t収穫する
植田輝義さん

植田輝義さん

黄ニラ大使

黄色のツナギに、メガネも腕時計も黄色。10数年このスタイルできた。トレードカラーの黄色は「黄ニラ」から由来し、ツナギは「いろんな人とつなぐ」に掛けている。

パクチーカラーの緑色と黄色のバイカラーのツナギも持ち、自宅にはストックと着古したものを含め、約60着置いている。ツナギは「黄ニラ」と「岡パク」の伝道師である植田さんの、初心の思いこれからの夢を意味している。

パクチー畑から程近い、植田さんのご自宅の縁側にて。取材当時の岡山県は青空に入道雲が浮かぶ快晴。畑やご自宅の縁側でお話を聞いたのだが、うだるような猛暑だった
採りたての「岡パク」と「黄ニラ」を届ける

【岡山県産パクチーに注いだ3つの情熱】

1.岡山マイルドパクチーとの出会い
2.日本一食べやすいパクチーを作る
3.手探りでのスタートだった

1.岡山マイルドパクチーとの出会い

「最初はパクチーが大っ嫌いだった」と言う植田さん。そんなパクチー嫌いがなぜ、パクチーの生産に携わり、「岡パク」をブランド野菜へと導いたのか。まずは、パクチーとの出会いについて聞くことにしよう。

「一番最初にパクチーを食べておいしいと思っていたら、マイルドパクチーに着手していなかった」と植田さん
植田輝義さん
植田輝義さん
「1999年に就農し、『黄ニラ』を出荷していた東京市場関係者から、『コリアンダーを作ってみないか』と声をかけられたんです。同じ中国野菜なのでどうか、と。

そこで種をもらい、育てたのですが、『臭い、キツイ、料理に合わない』。

初めて食べるものだったので、食べた瞬間吐き気がして、正直吐き出してしまいました。それがきっかけでマイルドパクチーの生産をするようになりました。

また、婿養子で岡山県に来て、居場所がなく、思っていた現実でもない中で、パクチーが自分の居場所になるのではないか、何かのきっかけになるのではないかと直感で思いました。今ではパクチーのおかげで楽しい毎日を送っています」

2.日本一食べやすいパクチーを作る

パクチーの原産国はヨーロッパで、種子だけでも約300種類ある。「岡山マイルドパクチー」はその中の1種類。

2000年に10種類の種子を入手し、試験栽培を開始した。9種類のパクチーは、パクチー嫌いの植田さんにとって、食べられたものではなかった。半ば諦めかけていたとき、最後の1種類を口にした。臭いも味もマイルドだった。爽やかな風味で、味わいもやさしい。

「食べられる。これならどんな料理にも合う」。光が見えた瞬間だった。

白く可憐な「岡パク」の花。清々しいい香りに癒される

生産した「岡パク」を、豚の生姜焼きのトッピングとして刻んでのせた。豚肉の旨味と「岡パク」の甘みがマッチし「衝撃的な旨さ」だった。甘めのダシで作るだし巻き卵や、麺つゆに刻んで入れてもイケる。牛乳やヨーグルトとも相性がいい。

「このパクチーなら、パクチーが大嫌いな人を振り向かせることができる。パクチー初心者の入り口にもなる」、そう確信した。

3.手探りでのスタートだった

2000年に試験栽培を開始し、「岡パク」を栽培しはじめて2017年で17年目になる。農作物である以上、天候や気候に左右される。また従来のクセの強いパクチーのイメージが一般的だ。どう克服していったのだろうか。

ブームではなく、普通のお野菜として食べたい

―「岡山マイルドパクチー」を生産するうえで苦労した点は?

植田輝義さん
植田輝義さん
「試験栽培を開始した2000年当時は、今のようにインターネットも本もなかったので、手探りの状態でした。1年を通して栽培できる技術を確立するまで、約6、7年かかり、安定するまで試行錯誤の連続。しかも年々気温も上がり、ゲリラ豪雨も多くなってきている。パクチーは軟弱な野菜なので、今でも作る難しさを感じています。

『臭い、キツイ』とパクチーのイメージが悪いため、売り込みが大変でした。信用してもらうのにも苦労しましたし、伝えるのも苦労しました。
2008年に『黄ニラ大使』をするようになってから、やっと信用を得るようになりました。持ち込んで料理にしてもらって、なんとか認めてもらい、『黄ニラ』と一緒に『岡パク』も売り込みました」

岡山での認知度向上、そして全国へ

「岡パク」は、今では東京都などで約7割、岡山県で約2割消費されているが、4、5年前までは9割以上が東京都で、岡山県での消費は1割も満たなかった。

東京では「品質のよさ」で受け入れられているが、植田さんはそれに引っ掛かりを感じていた。「マイルドな味」を評価してくれる岡山県で、しっかり食べてもらい、地産地消してほしい。新しいパクチーの文化を岡山県から発信したい。

「岡山のパクチーは、上品な日本の野菜で、洗練されていてさりげない。どんな料理にもよく合う。和食やイタリアン、フレンチ、洋食、もちろんエスニック料理にも」。仲間たちの呼びかけや、飲食店などの働きかけで、地元岡山県にも知られるようになり、受け止められ、消費が伸びた。

SNSを意識して情報発信を続ける。飲食店やメーカーにも足を運びリサーチを欠かさない。スーパーなどにも出向き、コミュニケーションを大切する。その積み重ねの17年。

「関わってくれる人たちのおかげです。周りの人たちがブランドにしてくれた。生産量は負けていますが、知名度日本一と言われることを、真摯に受け止めています。食べやすさマイルドさも日本一です!」と植田さんは言う。

2017年7月29日(土)に第1回目が備前国総社宮で開催された「パクチー奉納祭」。オリジナルの「岡山パクチー音頭」で盛り上がった
植田輝義さん
植田輝義さん
備前国総社宮の宮司さんから『昔は米や野菜を収穫して奉納していたが、パクチーでやろう』と声をかけてもらえたのをきっかけに『パクチー奉納祭』を開催しました。人々が集まり、楽しく盛り上がれる場所として、新しい文化が作れるチャンスだと思いました。

岡山県在住の民謡踊りの先生が振付を考え、岡山県の地元ミュージシャンが曲を作り、「岡パク」をテーマにした盆踊りが催されました。踊りの練習が前日まで続き、体力的にキビシイときもありましたが、当日はそんなことが吹っ飛ぶほどみんなと大いに盛り上がりました!

屋台もパクチーメニューのみで、手作りタコスの『フリーダムタコス』や『アジア食堂 アチェチェ』、『野菜食堂こやま』、『穏食酒家 うおつぼ』、そしてパクチービールの『吉備土手下麦酒醸造所』など10店舗が集結。

『岡山マイルドパクチー』を広めるための通年行事として、来年も7月下旬に開催予定です」

岡山マイルドパクチーを現地で楽しめる『野田屋町バル SAKURA』(野田屋町)

場所を植田さんオススメの店『野田屋町バル SAKURA』に移動して、「岡パク」料理をいただきながらお話を聞いた。

「桃太郎大通り」の北側。アーケードのある岡山駅前商店街「SKY MALL21」を東に渡った通りにある。黄色のツナギを着た植田さんのポスターを目印に
「パクチーコース」(1人前2800円) は2名より注文OKで前日までの要予約。※写真は2人前

「岡パク」をたっぷり取り入れ、自然とモリモリ食べられるコース。

季節のサラダパクチーのせ、前菜盛り合わせ、旬魚のカルパッチョ、SAKURAパクチーアヒージョ(バケット付き)、アヒージョの追加食材2種、岡山森林鶏ガーリックチキンパクチーのソース、岡山マルゲリータ、デザートの全8品。ボリューム満点だが、口当たりのよさに女性でもペロリと食べられる。

オールドアメリカンをイメージしたガレージ風の店内。サク飲みでも気軽に利用できるカウンター席から、グループに人気のテーブル席までがある

ー今回、こちらのお店をオススメに選んだ理由を教えてください。

植田輝義さん
植田輝義さん
「このお店は和やイタリアン、フレンチのテイストを用いた創作料理が楽しめるバルで、JR岡山駅から東へ徒歩約5分と駅近。しかも岡山でパクチーコースを出しているのはココだけです。店内もおしゃれな雰囲気で広くてきれい。パクチーのお酒、岡パクヒート(626円)も飲めます。

『お好み焼き もり』、岡山料理専門店の『Ikiya』、ダイニングバーの『Trees』、『アジア食堂 アチェチェ』、エスニック料理が人気の『アジアな季節』など、岡山県では岡山市と倉敷市を合わせて、約30軒の飲食店で『岡パク』料理が食べられます。自信を持ってオススメできる店ばかりなので、ぜひ立ち寄ってください!」
「岡パク」はほぼ通年収穫できるが、秋から冬にかけてが一番おいしい。「抵抗力を高めるビタミンB群や、体の酸化を防ぐビタミンC・Eなどビタミン類が豊富。デトックス効果もあるといわれています」と植田さん

パクチー好きを一人でも増やし、「岡パク」を世界に伝えたい

岡山県は、豊かな自然と瀬戸内の温暖な気候風土により、全国でも有数のフルーツと野菜の生産地だ。そんな舌の肥えた県民に受け入れられる「岡パク」。

2016年には全国有数のパクチー産地として、「ぐるなび総研 今年の一皿『パクチー料理』」を岡山県が受賞。そしてこの2017年8月に「大嫌いな人のためにパクチーを作り、発信している日本人がいる」と、タイの国営放送から取材があった。

植田さんは「岡パク」を、上質な岡山県産の野菜、安全で清潔な“Made in Japan”の食材として、世界に発信し、パクチー好きを一人でも増やしたいと考えている。そして今、その夢が実現しつつある。楽しみがどんどん膨らんでいる。緑色の「岡パク」、そして黄色の「黄ニラ」にかける思いは、これからも続く。

13軒の農家で延べ約10haの畑を使い、年間約25tの「岡山マイルドパクチー」を生産している
植田輝義さん
植田輝義さん
「もともとご近所の農家は、黄ニラや大根を作っていたのですが、仲間を作りたくて、何度も何度も訪れて説得し、パクチーの生産に参加してもらいました。そして2005年にこの玉柏・牟佐地区の農家だけで、正式な生産組織『パクチー部会』(JA岡山)を発足。

『岡山マイルドパクチー』の種はこのグループしか持っていません。玉柏・牟佐地区だけで生産・出荷される、農林水産省も認めている、本物の岡山ブランドの野菜です」
Yahoo!ロコ野田屋町バルSAKURA
住所
岡山市北区野田屋町1-2-15

地図を見る

アクセス
西川緑道公園駅[出口]から徒歩約1分
柳川駅[出口]から徒歩約4分
岡山駅前駅[出口]から徒歩約5分
電話
086-238-3359
営業時間
月、水~土は17:00~24:00(LO23:30)日曜日は16:00~23:00
定休日
火曜日(ただし祝前日は営業)
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

取材メモ/クセの強いパクチーは取材やプライベートで食べていたのですが、マイルドなパクチーを食べるのは今回が初めて。畑に咲く「岡パク」を許可を得てパクパク。洗練された風味で、まろやかな味わい。そして甘みがありフルーティ。そのままでも、これはヤミツキになる。新たな酒のアテが一品増えました。

取材/下八重順子(リベルタ) 撮影/大森 泉

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