駄菓子屋から始まった老舗酒場の聖地、一之江の『カネス』へ

2017/09/14

駄菓子屋から始まった老舗酒場の聖地、一之江の『カネス』へ

昭和の時代にタイムスリップしたかのような、なんとも懐かしい景色と、味と、人の温かさがあるお店。そんな昔の下町雰囲気溢れる居酒屋『大衆酒場カネス』の世界にご案内。

エイ出版社

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昭和7年に誕生した「カネス」は日本の大衆酒場文化そのもの

都営地下鉄新宿線の一之江駅からバス通りを10分歩いていると、昔ながらの八百屋を過ぎた先に突如現れる紺地の「大衆酒場」と赤地の「中華そば」の二つ並んでかけられた暖簾。ここ『カネス』は東東京、いや東京随一の長い歴史を誇る大衆酒場だ。

すりガラスの引き戸をガラガラと開けると、懐かしい光景が目に飛び込んできた。一本3メートル程度の板が左右に二本奥に伸び、入り口手前の2メートル弱の板がそれをつないでいるコの字形カウンターだ。中央の空間の奥には大鍋と椅子がぽつねんと佇んでいる。

「昔はこの前にトロリーバスが走っていたそうなんですよ」

まず瓶ビールで喉を潤しながら、壁に掲げられたセピア色の写真を眺めていると、二代目女将の浅野頼子さんが話しかけてくれた。

「茅葺屋根の写真は、東京オリンピックの年の昭和39年。その翌年に建て替えたんです」

店内の壁に掛けられた写真

『カネス』の歴史は戦前の昭和7年、江戸川区が誕生した年に始まる。当初は駄菓子屋としてスタートし、昭和10年代に酒の量り売り兼飲食店に鞍替えした。戦前は野菜も酒も配給制で、店の営業は17時から。配給されるお酒の量も種類も決められていたので、3日に1日ぐらいしか開けられず、開店前にはお酒と交換する券を持った100人のお客が行列をなしていたという。

現在は二代目の女将と料理を担当する夫の彰彦さんの二人で切り盛りしている。

肉の旨味が凝縮した煮込みの深い味わい

名物の煮込み

「話ばっか聞いてないでさぁ、煮込み食べてみなよ」。

開店とほぼ同時に入ってきた常連客から声がかかった。60年程前に始めて以来の名物だという。

「うちは余計なものは入れずに馬のモツ牛のフワ(肺)だけ」といって女将さんがよそってくれた潔いほど茶一色の煮込みは、まさにトロットロの食感。以前は佐渡の赤味噌を使っていたが、今は千葉の二種類の味噌で仕立てているとか。「一人で何杯も食べたり、昔はどんぶりで出してっていうお客さんもいてねぇ(笑)」。肉の旨味が凝縮された味は、そんな逸話も納得できるほど深く心に響く。

グラスが空になったところで二杯目は焼酎ハイボール。焼酎を炭酸で割り、レモンを浮かべた一杯には氷が入っていない。一口飲むと微かに広がる甘みが独特だが、聞けば生のレモンや砂糖で自家製のエキスを作って割っているとか。シンプルなメニューもさりげなくこだわる老舗の本懐が垣間見えた。

ここにしかない空間が大衆酒場の醍醐味

客と話す大女将

一人で静かに飲んでいたお客さんが、会計後、大女将に話しかけた。

「30年ぶりに来たんです。覚えてないと思いますが、ご健在で感激しました」
「遠くにいたからわからなかったよ。太ったんじゃない?」

卒寿を超えてもなお、お客さんの顔を覚えている大女将の記憶力に驚かされるが、それは「何度ももうやめようと思ったけど続けてこれたのは、お客さんたちのおかげ。みんなと話している時が一番楽しいね」という変わらない想いを胸に生きているからだ。

21時を過ぎた頃からお客さんがポツリポツリと帰り始め、暖簾をしまったのは22時過ぎだった。

ここには手のこんだ料理はない。学校や会社でもないから来る義務もない。でも、その日その場にしかない時間が、泡とともに消える会話が、そして変わらない情景がここにある。

数え切れないほど多くの人と酒が交差し、過ぎ去り、また出会う『カネス』は、忘れがたき日本の大衆酒場文化そのものだ。

Yahoo!ロコ大衆酒場カネス
住所
江戸川区一之江6-19-6

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アクセス
一之江駅[駅ビル口]から徒歩約9分
船堀駅[南口]から徒歩約24分
瑞江駅[南口]から徒歩約24分
電話
03-3651-0884
営業時間
平日、土曜日16:30~22:00頃日曜、祝日14:00~22:00頃
定休日
水曜日、第3木曜日
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

buonoオフィシャルサイト

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食を知っている大人の男が行き着くのは、自分で料理、という選択!そんな料理紳士たちのためのフードエンターテイメントマガジンです。

※この記事は『buonoオフィシャルサイト』を元に再編集・構成されたものです。掲載している情報は2017年5月18日時点のものです。予告なく変更される可能性もありますので事前確認をおすすめします。

この記事を書いたライター情報

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年間600冊以上の雑誌・ムック・書籍を出版する出版社。動画、ウェブ、イベント、飲食店などを提供するコンテンツクリエイター集団でもある。バイク、自転車、サーフィン、釣り、登山、ゴルフなどの趣味や、ファッション、旅、飲食、暮らし、などのライフスタイルに強い。写真とデザインにこだわる。

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